TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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PART5 その輝き、目を灼いて

「特級選抜試合に、私が?」

 

 ユイの素っ頓狂な声が教室に響いた。

 授業を終えた放課後、HRでのことだった。

 

「そうです~。所謂、国と国の外交の一環ですが~……今年は両国から二名ずつ、代表に相応しい若手を出して戦うコトになりまして~。国王陛下から、タガハラさんに打診が届いています~」

「あ、いえ、概要自体は知っているんですけど……って、国王陛下から!?」

 

 担任の言葉に、教室が一層ざわめく。

 特級選抜試合。隣接するハインツァラトス王国と毎年行っている、両国の若手をそれぞれの国王の御前でぶつけ合う催事だ。

 

「例年はもっと大人数の、大々的な催し物なのですが~。今年は教会再編などもあって、規模を縮小して、関係者のみで内々に行うそうで~。今年は、国王陛下が是非、タガハラさんとミリオンアーク君を選出したいとのことです~」

 

 ロイの名前に限れば、当人も含めて全員当然だと思った。

 名家ミリオンアークの嫡男。御前試合でも圧倒的な強さを誇る、貴族院勢力きっての若手エースだ。

 場合によっては箔をつけるのも兼ねて、将来的に軍属・将軍クラスの抜擢すら現段階で噂されている傑物。

 

(ロイ君は、当然だ。だけど、何故私が……)

 

 思い当たる節は、なくはない。

 いいやむしろユイにとっては望むところだった。王国の二大勢力は貴族院と教会だ。その片方がトップの事実上の失脚とあって、王国は対外的には弱体化したと見られている。

 禁呪同士の激突などという馬鹿げた真相は伏せられているものの、教皇は権威を失い、聖女は悪魔を失い禁呪を十全に行使できなくなった状態で幽閉されている。

 

(……だからこそ。次代の聖女がここにいるぞって、私が喧伝する絶好のチャンス)

 

 ユイは考える。この流れ、余りにも自分にとって都合が良すぎると。

 

(何よりも、本来は指名されるべき人が他にいる)

「あらあら、まあまあ」

 

 隣に座る黒髪の令嬢。

 深紅の瞳を面白そうに細めて、彼女はユイの肩に手を置いた。

 

「随分とまあ、責任重大ですわね。失敗は許されませんわよ?」

「……ッ」

 

 わざとらしいプレッシャーだった。

 本来、誰もが予想するのは、誰もが国家代表に相応しいと考えるのは、彼女だ。

 御前試合無敗にして、その名は国外にも轟く才女。

 

「マリアンヌさん……」

「ええ、ええ。お察しの通りですわ。国王陛下には、事前に辞退を申し出ましたわ。そして……適任なら他にいる、とも付け加えております」

 

 明言こそしていないが、つまりは彼女、マリアンヌ・ピースラウンドがユイを推薦したという示唆。

 

「ふふっ。可哀想なユイさん。無様な敗北は、今度こそ、教会が立ち直れないほどのダメージになりますわ。もちろん勝てば手っ取り早い復興の兆しとなるでしょう。ですが……アナタに、できますか?」

 

 ぞわりと背筋を悪寒が走る。

 マリアンヌの目は笑っていなかった。

 

「……意地の悪い言い方だね」

 

 ロイが肩をすくめて苦笑する。

 だが。

 教室にいる誰もが。学年代表の雑務をなんだかんだでこなし、出来の悪い生徒には魔法を放課後教え、そして真っ直ぐ自分の生き方を貫く彼女を知る誰もが分かっている。

 

「……ありがとう、マリアンヌさん」

 

 ユイは席から立ち上がり、拳を握った。

 

「やります。私は未来を背負う者として。ここにいる同世代の代表として。必ずや、勝利の栄光を掴んでみせます!」

 

 瞳に炎を宿して、次期聖女が宣言する。

 

「いいね。勝とう、必ず……」

 

 ロイもまた立ち上がり、そして、教室の窓際に腰掛ける男を見た。

 

「フッ……簡単には負けてやらねえぜ?」

 

 隣国ハインツァラトス王国の第三王子。

 当然のように、ユートもまた特級選抜試合に出場する。

 火花が散った。

 

 その様子を教室最後段の席から眺めながら。

 マリアンヌは不敵な笑みを浮かべ、唇をつり上げた。

 

 

 

 

 

 あれぇ!? 結構真剣にいびり倒しましたわよね今!? なんで感謝されてますのー!?

 

 

鷲アンチ そら(勝てばリターン超でかいチャンスを譲り渡して発破かけるようなこと言えば)そう(背中を押したと思われて感謝される)よ

無敵 お前悪役令嬢向いてないよ

 

 

 マリアンヌなりのユイに対するイジメは、普通に失敗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の配信は十分後を予定しています。
 
上位チャット▼


第三の性別 特級選抜試合とかあったね

TSに一家言 原作だとユイ出場しないんだっけ

恒心教神祖 原作はロイとユートの決闘イベント扱い

鷲アンチ まだインフレしてない頃じゃん

適切な蟻地獄 禁呪の顔見せイベントみたいなもん

火星 禁呪のやばさとそれに対抗するロイのヒーローさとそれを見守るユイの構図だったな

日本代表 出場辞退は意外だったわ

red moon 確かに。相手ブチのめしそうなのに

みろっく ハインツァラトスのもう一人の出場枠誰?

ミート便器 モブ騎士(一応向こうのエース)

外から来ました ジークフリートさんの下位互換

みろっく ボロクソ言うやん

無敵 でも強いよ、普通に強いはず

日本代表 ただネームドが軒並み異常なインフレ起こしてるからなあ……

TSに一家言 今のうちに合掌しとこ

【ゆっくり】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【していきますわよ】

2,434,644 柱が待機中

 

 

 

 

 

 放課後の魔法学園。

 校舎から少し離れた、来賓用の迎賓館にわたくしたちは来ていた。

 

「よく来てくれた」

「いえ。こちらこそ願ってもない機会ですわ」

 

 玄関口で待ってくれていたジークフリートさん相手に、スカートの裾をつまんで恭しく一礼する。

 顔を上げると、彼は凄く微妙な表情になっていた。

 

「どうかされまして?」

「いや……こうして見ると、本当に立派な令嬢なんだな、と……」

「何やら含みのある言い方ですが、もっとストレートにおっしゃったらどうです?」

「頭のおかしい女には到底見えない」

「ケンカなら爆買いしますわ」

 

 

ミート便器 事実だろ

red moon 受け入れろ

 

 

 キイィィィィ~~~~! ムカつきますわ!!

 怒りの余り1677万色に発光しつつイニDの曲を爆音で流しながら高速回転しそうになってしまった。

 

「ちょっと、何突っ立ってんのよ。私たちが入れないんだけど」

 

 後ろに振り向くと、腕を組んでリンディがわたくしを睨み、隣でユイさんが苦笑している。

 

「まあまあ、リンディさん。マリアンヌさん、ジークフリートさんとのお話が楽しいんですよ」

「ふぅん? 中隊長クラス相手がコネになるのかしら」

 

 当人の前でなんてこと言うんだお前。

 

「フッ……そうだな。オレはいわゆる中間管理職に過ぎない。だが、マリアンヌ嬢とは立場を超えて、仲良くできると思っている。オレの勘違いだったかな?」

「ん、まあアナタならよくってよ」

 

 実際、騎士とか中隊長とか関係なしに、彼とは相性が良い。

 

「ふん……良かったじゃないの」

 

 露骨に機嫌を損ねた様子で、リンディはわたくしを押しのけるようにして迎賓館の奥へずんずん進んでいく。

 

「ちょっとリンディ、そちらではなくってよ!」

「はあ!? 知らないわよ!」

「わたくしにキレるのはおかしいでしょう!?」

 

 見当違いの方向へ進む彼女を引き留めに、わたくしはやむなく駆け足で追いかける羽目になった。

 

 

「何か、オレは粗相をしてしまったかな?」

「あはは。羨ましいんですよ。マリアンヌさんと対等の立場で語り合えるって、凄いことだから……」

「そうか。それは光栄だ」

「ええ。本当、本当に……羨ましいです……」

「…………」

 

 

 リンディを連れて戻ると、取り残されていたユイさんとジークフリートさんが歓談していた。

 歓談? なんかジークフリートさんがやたら冷や汗をかいてるけど。

 

「……マリアンヌ嬢」

「はい?」

「背中には、気をつけておきなさい」

「はあ? 流星ガードはともかく、不意打ちされても簡易な防護障壁ならコンマゼロ5秒未満で出せますわよ?」

「いやそう意味じゃ、ああもういいか……」

 

 やたら疲れた様子で、彼は迎賓館の奥へわたくしたちを案内した。

 案内された先では、テーブルを囲んで十名ほどの騎士たちが佇んでいる。

 

「紹介しよう。我がミレニル中隊の部下たちだ。ユートの護衛として、選抜メンバーを連れてきている」

 

 一糸乱れぬ動きで、騎士たちが敬礼した。

 パッと見て……まあ、単体なら相手にならないか。だが統率はしっかり取れている。

 

「簡素な茶会とはなってしまうが、是非、今後も仲良くしてくれると嬉しい」

 

 隣でリンディが息を吐いた。

 

「これって、貴族院と教会で、手を結ぼうって話よね?」 

「早急な対応が必要だとは思わない。だが、世代が変わっていく中で……改めるべき点もまたある」

 

 何でもないことのように言ってのけて、ジークフリートさんは椅子に座った。

 わたくしたちも顔を見合わせてから、それぞれの席に着く。

 

「ええ。そうですわね。加護ある騎士と、魔法使いが手を組む。国のことを考えるなら、一枚岩であることに越したことはありませんわ」

「あんたがそういうこと言ってると違和感凄いわね」

「張り倒しますわよ」

 

 軽口を叩きながらも、対応が意外と良いなと思った。

 次期聖女であるユイさんにはもちろんだが、わたくしとリンディ相手にも椅子を引き、素早く茶を用意してくれている。

 気になるといえば、空席が一つあることか。

 

「おっ、来てたのか」

 

 声と共に、部屋にヌッとユートが入ってきた。

 空いていた席にどかっと腰を下ろすと、彼は真っ直ぐにわたくしを見やった。

 

「いやあ、マリアンヌたちと俺の護衛が茶会を開くって聞いてな。こりゃ面白そうだと思ったんだ」

「はぁ……」

 

 おいおい。なんかこの部屋、ちょっとした談合になってきたぞ。

 王国を二分する教会と貴族院に属するメンバーだけじゃなくて、隣国の王子まで来やがった。

 

 

適切な蟻地獄 G7かな?

外から来ました こ れ は ひ ど い

 

 

 いやわたくしもこんなことになるとは予想外だった。こんな、こんなはずでは……!

 誰もの表情が強ばっている。肩肘張ってるんだ。

 自然体なのはわたくしとジークフリートさんとユートぐらい……ああいや、最後は違うか。

 

「成程。ですが大した話をするわけでもありませんわ。本当にただのお茶会……」

 

 言いつつ、空気ちょっとやべえと思った。

 完全に死んでいる。そりゃそうだ、大物が多すぎる。

 仕方ねえ。

 

「それでは一つ、遊戯でもしましょうか」

「ほう? いいじゃないか。残念ながらオレたちはそのあたりにとんと疎くてな。正直に言うと助かるよ」

 

 流れを補佐しつつ、ジークフリートさんが視線で続きを促してくる。

 わたくしは頷き、口元をつり上げた。

 

「王様ゲームでもしましょうか」

「は?」

 

 珍しい。ジークフリートさんがぽかんとしている。他の面々も同様だ。

 わたくしはふふんと笑って、木の枝を削って用意していた王様ゲームセットを取り出した。

 

「ルールは簡単ですわ。番号を振った棒をそれぞれが引いて、王様のマークがついてる人が名前でなく番号を指定して命令を下す。例えば、3番が猫の物真似をする、1番が5番の好きなところを10個上げる、などですわね」

 

 このために夜なべして準備してきたぜ! 

 いや棒の見た目で番号分かったりしたらまずいから、本当に丁寧丁寧丁寧に線を引いて作った。

 わたくしの匠の技に驚嘆するがいい。最終的には流星(メテオ)で表面を均一に加工するまでこだわったからな。

 

「命令を終えれば、また番号をリセットして、次の王様を選んでいきます。簡単でしょう?」

 

 端的に説明したものの、反応はいまいちだった。

 みんな首を傾げたり、ちょっと引いた様子でわたくしを見てくる。

 

「……何か分からない点でも?」

 

 尋ねても沈黙しか返ってこねえ。

 なんだ? 貴族様のゲームは理解出来ません~ってか?

 随分と渋るものだと眺めていれば、気づく。なんか反応が違う。騎士たちはやべぇよやべぇよと狼狽している。ユイさんとリンディも少し顔を青くしていた。

 ん……? これ、わたくし、何かやっちゃいました?

 

「もう一度確認するが、このゲームは……王様ゲームと言い、当たりを引いた人間が王を名乗るんだな?」

「ええそうですわ。そんなに難しいルールでしょうか」

 

 わたくしが自然に理解しているだけで、この時代では理解しにくいルールだったのかもしれない。

 そう思っていると、ジークフリートさんは嘆息した。

 

「普通に、不敬罪だな」

「あっ……」

 

 めっちゃくちゃ普通にやっちゃっていた。

 やっべこの国絶対王政だったじゃん。

 両隣でユイさんとリンディが頭を抱えている。

 

 

宇宙の起源 バ~~~~ッカじゃねえの?

無敵 王様ゲームが原因で追放されかけるのは面白すぎるのでもっとやれ

 

 

「あー……名前変えましょうよ名前」

「それがいい。うん。王様はちょっとな」

 

 名前も知らない騎士たちすらフォローを繰り出してくれていた。涙出そう。

 少々計算違いこそあったが、名前さえ変われば興味はあるらしい。

 騎士たちも面白そうに頷き、命令何にしようかなーとか隣に相談していた。

 

 

 

 というわけで。

 

 

 

「「「上位存在、だーれだ!」」」

 

 

 

「待ってくれ……」

 

 重い声でジークフリートさんが私たちを制止する。

 

「あら、ジークフリートさんが上位存在ですの?」

「そうじゃない。何だこれは」

「何って……上位存在ゲームですが?」

 

 紅髪の騎士は宇宙猫の顔になっていた。

 

「いやあ、確かに隊長って上位存在みたいなところあるからな」

「分かるわ。加護抜きでも死ぬほど強いし」

「おい、冗談だろう? お前たちこれをすんなり受け入れているのか……?」

「あ、私が上位存在ですね」

「タガハラ嬢まで……!?」

「じゃあ4番の人、今までで一番恥ずかしい思い出を話してください!」

「結構エグめの命令出すじゃないあんた」

「あ、4番自分ですね」

 

 騎士の一人がスッと手を挙げた。

 

「一番恥ずかしい思い出か……いや、ちょっと洒落になんないんだけど……」

「でーすーがー? 上位存在の命令はー?」

 

 わたくしが声をかけると、皆笑顔で声を揃えた。

 

「「「ぜったーい!!」」」

「適応力で選抜したのがこんな裏目に出るのか……!?」

 

 わたくしと騎士たちはそろってイェーイ! と拳を突き上げる。ユイさんとリンディも控えめに付き合ってくれた。

 ついて来れてないのはジークフリートさんと、隅っこで居心地悪そうにしているユートだけだ。

 

「……ユート、どう思う。オレは部下の再選定をすべきか?」

「はは……いや、いいんじゃねえかな。うん。楽しそうだし……」

 

 完全に笑顔が引きつっていた。

 ふーん……?

 

「えっとじゃあ、恥ずかしい話なんですけど」

「あっ、どうぞどうぞ」

「自分、甲冑に性的興奮を覚えることがあって」

「開幕10割やめてくださいます?」

「騎士団の入団試験を受けたのも沢山甲冑に囲まれることができるからなんですよ。でもミレニル中隊に選抜されて、隊長の方針として甲冑を最小限にした実戦訓練が多くて。正直溜まってたんですよね。それでこの間、他の中隊の甲冑保管所の手入れを手伝わせてもらって。もう必死に頼み込んだんですよ。それでなんとかOK出してもらって。いやあすごかったんですよね。魔法防御性能とか最高でした。ビンビンでしたね」

「あの、リンディさん、耳塞がれると全然聞こえないんですけど」

「安心しなさい、タガハラ。聞かなくていいわ」

「それで手入れはきっちりやらせてもらったんですね。終わってみれば、自分、こういう性癖だから手入れは結構ガチで極めてて。これからもお願いしたいぐらいだなんて言われちゃって。ジークフリートさんにこの間パンサー中隊から差し入れあったじゃないですか。あれってその時のお礼だそうで」

「本当に知りたくなかった」

「あっ、ここからが恥ずかしい話なんですけど」

「もうアナタはどこに出しても恥ずかしい変態ですわ」

 

 4番の騎士、両サイドから五歩ぐらい距離取られてるからね? もう抜刀して切り伏せる準備をしてる間合いだからね?

 

「ジークフリートさん」

「言わなくていい。今、真剣に部下の再教育を考えている」

 

 中間管理職って大変だな……

 見ればユートも圧倒されていた。嘆息して、彼に声をかける。

 

「やっぱりアナタ、根は陰キャなのですね」

「え? あ、何? いん……?」

「いえ。こちらの話ですわ」

 

 OKOK。

 無理してテンション上げた分の成果はあった。これで確定だ。

 風を浴びてきます、と言って、4番の騎士が演説をブチ上げている隣を過ぎて窓際に向かう。

 ジークフリートさんも後ろからついてきた。

 この距離なら会話は聞かれないな。何より甲冑性癖男の声がデカい。

 

「どう思う?」

「随分と急ごしらえの仮面でしたわね。こうして、自分でない者がイニシアチブを握る場を作れば、あっさりと剥がれてしまいます」

 

 結論は出た。いつからかは知らないが、あの、友達になろうと言い寄ってくるユートの性格は、無理に組み上げた架空の人格に過ぎない。

 敵を知り、己を知れば百戦危うからずだ。事前に相手のパーソナルな領域を探れるのに踏み込まない奴は馬鹿だ。

 ユートという男の人格が手に取るように分かってきた。バトルスタイルが、戦いにどんな心理状態で臨むか、それらを類推する材料が十全になりつつある。

 

「……悪い女だな」

 

 ジークフリートさんがわたくしに半眼を向けてくる。

 そんなことを言ってるこの人、わたくしの狙いに途中から気づいてたっぽいんだよな。ユート寄りの対応をしてたのも、ユートに『味方がいる』と思わせて素の反応を引き出させていた可能性が高い。

 

「それを言うならアナタこそ、悪いお友達ですわね」

「言い方を弁えなければ……オレは騎士として、信頼できる同僚相手なら友好を喜んで結ぼう。だが、()()()()()()()()()には付き合いきれないな」

 

 ズバリ言いやがった。

 流石だと内心舌を巻く。いの一番にユートの友達(ダチ)になっておきながら、そこまで言うか。

 

「恐らくマリアンヌ嬢の考えは当たっている。彼が率先して友達を作り、輪の中心に居座ろうとするのは……そうすれば、誰にも裏切られない。誰からも攻撃されることはないと踏んでのことだ」

「ええ、でしょうね。攻撃的な防御反応ですわ」

「良い表現だな」

 

 すなわち、攻撃は最大の防御と言ったところだろう。

 流石にここから政治的背景まで切り込むのは他の連中の仕事だが、材料を得ただけでも収穫はある。

 わたくしはわたくしにできることを、一つ一つ丁寧にやっていこう。

 

「さて、戻りましょうか」

「ああ、そうだな」

 

 二人して部屋の内側へと戻る。

 もういい加減終わってるだろと思っていたところ、お茶会の様相は激変していた。

 

「──以上が、自分の恥ずかしい話です」

「ぐすっ、ひっぐ、えっぐ……」

「そんなのって……そんなのってないでしょう!? ミクの想いはどうなるのよ……ッ!?」

 

 なんか全員号泣していた。

 ユイさんは俯き、リンディは真っ赤に目を腫らして怒鳴っている。ユートは天井を見上げ、静かに涙を流していた。

 

「嘘だろう!?」

「あのスタートから感動系に着地するってどんなアクロバティックですの!?」

 

 

鷲アンチ マジで画面見えねえ

第三の性別 畜生……ミクは、ミクはそれでいいのかよ……ッ

火星 これが世の定め、か……

 

 

 ちょっ……待て、待って!

 すげえ気になるんだけど! 何だったの!? 甲冑性癖から何があったの!?

 

 結局わたくしとジークフリートさんを除いて、みんなが一体感を得たまま、お茶会はお開きとなった。

 後で聞いても、ユイさんもリンディも首を横に振り、ユートは『胸の中に、しまっておきてえんだ。悪いな……』とか寂しげな笑みを浮かべてのたまった。

 

 ──いや、本当にどんな話だったの……?

 

 


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