TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

27 / 188
PART12 その令嬢、流星の如く

 最終局面。

 瓦礫を押しのけて立ち上がる大悪魔ルシファーに対し。

 わたくしは両手を腰に当て、胸を張って相対した。

 

「……なんだ、それは?」

 

 ルシファーの端末が、わたくしの身体各部に迸る火花を見て眉をひそめる。

 

「『流星』にそのような機能はない。一体何をした、貴様……」

「フフン。アナタ如きでは理解出来ないでしょう。わたくしと『流星(メテオ)』は最早、人呪一体の境地へ至りましたわ! これこそが悪魔すら泣かせる最強の力、ツッパリフォーム!!」

「──そうか。成程考えたな。自身を一つの宇宙と仮定し、体内で流星を燃やしているのか」

「一発で見破られましたわ!?」

 

 思わず悲鳴を上げた。

 何コイツ、理解力高すぎない?

 

「セーヴァリスめ……『流星』を改変したのか。いや逆か、余白を残してロールアウトしたな」

「ええい、原理を理解されたところで痛くもかゆくもありませんわ!」

 

 叫ぶと同時、わたくしは脚部から推力を放出。

 無数の『流星』を瞬時に活性状態へ移行させ、爆発的な加速を生み出す。距離を詰めるのに刹那もかからない。

 勢いのまま、真正面から拳を叩きつけた。ルシファーは左手でわたくしの加速流星パンチを受け止める。接触の余波で大地が軋んだ。

 

「不条理な威力の代償として、不合理な負荷がかかっているだろう。それを採用するのは理解出来んな……そのまま自滅しろ」

「死ぬなら、アナタを殺してからにさせてもらいましょうッ!」

 

 至近距離。

 思い切りのけぞってから、勢いを乗せて──流星頭突き(メテオヘッドバット)をかます。ルシファーの鼻面に思い切りわたくしの額が激突。

 

「……ッ!?」

 

 数歩たたらを踏んで引き下がったところに、再度右ストレートを打ち込む。

 複雑なコンビネーションは要らない。

 今はただ、真正面からこいつの顔をぶち壊してやりてぇ!

 

「無駄だと言っている……!」

 

 後退しながら翼から無数の氷柱を射出し、わたくしを遠ざけようとするルシファー。

 無駄だ。振り抜いた拳が氷柱を粉砕し、壊しきれなかったものは身体で受け止め、そのまま駆け抜ける。

 

「何なんだ、貴様は!?」

 

 懐に潜り込んだ。

 大悪魔がその両眼を赤く光らせる。攻撃の予兆を感じ取った。

 

()()

 

 

外から来ました それ即死攻撃!

適切な蟻地獄 避けろ馬鹿!

脚本家 当たれ! 死ね!

 

 

 当たらねーよ死ぬのはコイツだアアア!

 両眼から深紅の光が放たれるのを、至近距離、微かな上半身の捻りで回避する。

 そのまま回転の勢いを乗せ、ストレートではなく鎌のようにしならせた流星フックを打つ。狙い過たずルシファーの左頬に直撃。やつの身体が地面から浮き、二度目のふっとばしに成功した。

 

「ご……ッ!?」

 

 ルシファーは空中でくるりと一回転して体勢を立て直し着地。だが顔を上げた瞬間、既に加速の準備を終えているわたくしを見て、ギョッとしていた。

 さっきから絶妙にテンポが悪いというか、わたくしが優位性を確保できている、できすぎている。格闘戦には慣れてないなこいつ。

 

「ッ、近づくな!」

 

 腕の一振りで、空間を断絶するような、超高密度の風の障壁が展開された。

 面白ぇ。わたくし相手に出力勝負か、乗ってやるよ!

 

「随分とまあ、可愛らしい怯え方ですわね!」

 

 最大限に体内の『流星』を活性化。

 ユートの見よう見まねだが、背中と右肘から加速用に推力を放つ。周囲の地面が軋みを上げてひび割れていく。大気そのものが鳴動した。

 腰を落とし、左手を突き出し、右の拳を弓矢のように引き絞った。

 

「撃ち抜け、わたくしの『流星(メテオ)』──!」

 

 加速すると同時、乾坤一擲。

 解き放ったパワーが障壁を濡れ紙のように引き裂いて、向こう側のルシファーに叩きつけられた。

 咄嗟に両腕をクロスさせガードしたが、そのままやつは脚の底で地面を削りながら数十メートル後退。砂煙を巻き上げながら、やっと静止する。

 

「ぐ、ぅ……ッ!?」

 

 そして。

 がくんと力が抜け、ついにルシファーが、地面に膝をついた。

 いいねえ。防御抜けるようになってきたじゃん。エイムがあったまってきたかな?

 

「ダメージを、受けているだと……!? 端末顕現とはいえ、これは大悪魔ルシファーの一部だぞ、有り得ないッ!」

「有り得ない? ご冗談を! 現実にそうなっているでしょうに!」

 

 光り輝く拳を突き出して、わたくしはルシファーを正面からにらみ付ける。

 

「大悪魔だか何だか知りませんが、よくもわたくしの前で偉そうにしてくれましたわね! わたくしは受けた屈辱は十倍、いや百倍にして返す女! 結論から申し上げましょう! アナタは今日、ここでわたくしに敗北しますわ!」

「…………ッ!」

 

 わたくしが宣言すると同時。

 ルシファーが目を見開き、コメントにキッズの名前がしゅっと入ってきた。

 

 

脚本家 何なんだよ……こいつ……

ミート便器 ドン引きしてて草

鷲アンチ ウッキウキで黒幕ロールしてたのに音速で全部ぶち壊されて可愛いね❤絶望顔見せて❤

脚本家 何でルシファーに対抗できる!? 何なんだよ、こいつは!? 頭おかしい!! 異常だ!!

 

 

 人のこと頭おかしいだの異常だの、失礼ですわよ!

 

 

TSに一家言 そこは事実だろ

red moon そこ強弁するのは無理筋だからやめとけ

無敵 脚本家くんに謝ってほしい。謝れ! 謝れよ!

 

 

 一瞬で裏切るのやめてくださいます?

 

 

 クゥーン……

 しょぼくれていると、立ち上がったルシファーが腕をかざした。

 

「我がしもべたちよ、奴を止めろ!」

 

 わたくしの周囲に漆黒の魔法陣が展開され、そこからのそりと、長身の骸骨騎士が歩み出た。

 おいおいここに来て雑魚召喚かよ。

 

 

日本代表 それはそうと、答えを教えてやろうか?

脚本家 答えだって……?

日本代表 なんでルシファーに対抗できるんだって質問。それはな、マリアンヌがこの場で一番、自分のエゴのために戦ってるからだ

 

 

 一蹴するべく拳を構えた途端、がくんと膝から力が抜けた。

 

「ぎっ……!?」

 

 やっべガタ来てるな。

 舌打ちしながら、口元から溢れた鮮血を乱暴に拭う。

 囲まれたか。殲滅に割く余力は正直ねえ。

 どうする? 確殺できる保証なしに、強引に突破するのは悪手だが──

 

「伏せろマリアンヌッ! ────オオオオオオオオオオラァッ!!」

 

 その時だった。

 咄嗟に頭を下げると同時、熱波が雑魚共の上半身を薙ぎ払った。

 

「忘れてもらっちゃあ困るな! こう見えて俺もダンスは得意なのさ!」

「『灼焔(イグニス)』使いか……!」

 

 

日本代表 誰かのために、って戦える奴は、きっと凄く偉い

日本代表 色んな人と助け合える、色々な人とわかり合える

 

 

 ユートが鎧から蒸気を上げながら、拳を鳴らして歩いてくる。

 

「随分と、元気そうですわね……」

 

 わたくしは結構限界なんだけど、こいつピンピンしてるな。

 疑いの眼差しを向けると、彼は頭を振った。

 

「俺は勘違いしていたよ。確かに堅牢さがウリのように見えるが、こいつの本質は、あくまで持続性だ」

 

 手を差し伸べられた。さっきとは逆だ。

 流星に輝く手で、灼焔を纏う手を握る。

 なんとなくだけど──禁呪保有者がこうして手を取り合うことを、国王アーサーは考慮しているのだろうか、と思った。

 

「問題ねえ。最後の瞬間まで力は温存しておけ」

 

 ぐらつくわたくしを、ユートが胸で抱き留めるようにして支える。

 

「見ていてくれマリアンヌ。俺が諦めない限り! 俺の心が折れない限り! この炎は消えやしねえってことをな!!」

 

 ああ。

 なるほど、理解した。

 これは己の脆弱な心を守るための鎧じゃない。

 特製の、最高にかっこいい一張羅なんだ。

 

 そう──『灼焔』が鎧を象る理由はただ一つ。

 最速を走り抜ける男のための、ライダースーツだから!

 

 

日本代表 だけど、手を取り合わなくても

日本代表 心の底から、こいつを応援したい、こいつのために何かがしたいって思えるなら、それでいいんだ

日本代表 流星を追いかけるためにみんなが走っているなら、それはもう『和』なんだよ

 

 

 さて、雑魚は蹴散らしてもらった。

 だがわたくしはユートに寄りかかるような姿勢でギリギリ立てているだけ。

 果たして二人で足りるか。周囲を見渡す。王子たちは流石にいねえし、騎士たちはほとんどがもう戦えそうにない。ユイさんとリンディが二人がかりで、ロイに肩を貸して安全地帯まで退いている。

 あ? 一人いねえな。

 

「オレの読みでは、君たち二人だけでは一手足りないな」

 

 背後で斬撃音。

 ユートと二人揃って、ガバリと振り向く。骸骨騎士が崩れ落ちた。討ち漏らしていたのか。

 そいつを斬り捨てた後。

 大剣を携えて、ジークフリートさんが隣に並んだ。

 

「ユート。オレたちは、友達(ダチ)なんだろう?」

「……ッ!」

「なら、オレを頼れ。友のためなら惜しむものは何もない」

 

 紅髪の騎士が、前に一歩進み出る。

 ははっ……どうやら友達ごっこは終わったみたいだ。

 大きな背中だと思った。ああ、やばい。ここぞという時に、本当に頼れる人だよ。

 それから彼は、背中越しにわたくしを一瞥する。

 

「あの時と同じだな」

「……いえ。心持ちは逆ですわ。アナタの背を押すのではなく、わたくしが背を押されています」

「フッ……それは光栄な話だ。ではあの時の借りを返すぞ、ドラまたマリア嬢」

「~~~~~~ッ!! この戦いが終わったら一発ぶちますわ!」

「あ、すまない。この呼び方は好かないのだったな……」

 

 この人、どんだけその名前が印象強いんだよ! もう勘弁してくれ!

 

「随分と余裕だな、貴様たち……()()()()

 

 ルシファーがその眼光を輝かせ、背中から炎の渦を吐き出す。

 属性めちゃくちゃ持ってんなこいつ。火に氷に風に衝撃波に即死攻撃て。最後だけでよくね?

 

「やつの攻撃は俺が防ぐ! 至近距離まで運んでやるよ!」

 

 前に一歩出たユートが、片手を突き出して炎の渦を吹き払う。

 同じく炎系統の極点、押し負ける道理は微塵もない。

 

「ならばオレが、君が攻撃を届かせられるよう、入り口をこじ開けるとするか」

「できますか?」

「無論だ。それで、君は? ここまで言っておいてなんだが、不安なら後ろに下がっても構わない」

「発破かけてるのか本気で心配してくれてるのか、アナタだと判断付きませんわね……」

 

 てか結構な高確率でこれ本気で心配されてると思うわ。

 だが、答えは決まっている。

 ユートの身体から離れ、両足で立ち、わたくしは静かに告げる。

 

「やります。必ずやわたくしが、あの大悪魔を打倒してみせましょう。ですから──」

 

 目を閉じ、息を吸う。

 目を開き、唇を開く。

 

 

「わたくしに、アナタたちの全霊と、明日と、命を。全てを賭けてください」
 
星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)────裁きの極光を、今ここに(vengeance is mine)
                                       

 

 

 

 

 

 

 

脚本家 和、だと……?

日本代表 ああ、まだ習ってないかな?

脚本家 お前、馬鹿にしてるだろ!?

日本代表 うん。馬鹿にしてる

 

 

 気づくとコメント欄でレスバが始まっていた。

 何やってんだこいつらとドン引きしつつも、それを横目に、静かに呼吸を整える。

 

「準備はできたな?」

「ああ」

 

 ユートが鎧を蠢動させ、ぐつぐつと煮えたぎらせる。

 ジークフリートさんが大剣の剣先を後ろに下げ、剣道で言うところの脇構えの姿勢を取った。

 

「ええ……決着をつけましょう!」

 

 そしてわたくしの声を合図に。

 三人同時に、爆発的な加速でルシファーめがけて飛び出した。

 

 

日本代表 だって知らなかっただろお前

日本代表 だから、しょうがないから教えてやる

日本代表 こういう時には、こう言うんだよ

日本代表 ────和を以て貴しとなす、ってな!

 

 

脚本家 いや、ルシファーに対抗できる理由の説明になってないんだけど?

日本代表 っせーな死ねよ

第三の性別 こいつ途中で気持ち良くなってたな

日本代表 死ね、お前も死ね

日本代表 全員死ね

無敵 可哀想

日本代表 しね

 

 

 ルシファーが両手をかざす。

 不可視の衝撃波と、轟音を響かせる雷撃が迸った。

 

「しゃらくせぇっ!」

 

 先頭を走るユートがそれらを弾き飛ばす。

 続けざま、攻撃する暇を与えることなく次の一手。

 ユートの背中を踏み台にして飛び込み、ジークフリートさんが真正面から剣を振るった。

 

「オオオオオオオオオオオオッ!!」

「無意味だ」

 

 ルシファーは余裕の表情で右手をかざす。

 不可視の衝撃が放たれる。だが、ジークフリートさんは先程それを受けている。

 同じ攻撃が2度通用するほど、竜殺しは甘くない。

 

「来ると思ったさ!」

 

 騎士の身体が跳ねた。

 空中で姿勢制御し、放たれた衝撃波を足場に変えて、ルシファーの真上に移ったのだ。

 

「何ッ──だが、ただの人間如きに!」

 

 今度は左手を伸ばす。

 硬質な音こそ響いたが、大剣はあっさりと受け止められた。ルシファーが唇をつり上げる。

 だがそれに対し、紅髪の騎士は無感情に告げる。

 

「そうだな、オレはただの人間だ──お前はただの人間に両手を使わされたんだ、底は知れたな」

「……ッ!?」

 

 もう遅い。

 反対側。ユートの横を駆け抜け、懐に潜り込んだわたくしと、視線が重なる。

 

 ユートが防ぎ。

 ジークフリートさんがこじ開け。

 わたくしが撃ち抜く。

 三人がかりで数秒間を積み上げ、勝ち取った一瞬。

 

「ダメだな。不足しているぞ、『流星』使い」

 

 ルシファーの翼が閃いた。

 左の翼が、わたくしの肩を深く切り裂き。

 右の翼が、身体を守るべく覆い被さっている。

 

 最後の最後で、わざと残しておいた余力を使った形。

 諦めの悪い野郎だ。

 しかし──

 

「お忘れですか? わたくしは格闘家ではなく──『流星(メテオ)』使いでしてよ?」

「……は?」

 

 最終局面の、最後の一手。

 それは右の拳ではなかった。

 差し伸べているのは左手。銃口のように人差し指を突き付けて。

 わたくしは唇をつり上げて、バチンとウィンクした。

 

「BANG!」

 

 至近距離──既に詠唱を済ませていた四節版『流星』が炸裂する。十三節詠唱と並行して行える中での最大火力。

 発生した威力が、漆黒の翼を根こそぎ吹き飛ばした。

 身体正面はがら空き。既に右の拳は握り込み、眩いほどの輝きを放っている。

 勝利への道が明瞭に可視化された。ルシファーが慄き、口を開く。

 

「馬鹿な────『流星』相手に!? 最弱の禁呪相手に、この大悪魔ルシファーの権能が、破れるはずが……!」

 

 

 は??????????

 

 

外から来ました あっ

みろっく あっ

脚本家 あっ

無敵 あ~あ

 

 

 ブチンと、血管の切れる音が、頭の奥で聞こえた。

 真っ直ぐ打ち込むはずだった拳を、アッパー気味に顎へ叩きつける。

 

「この期に及んでまだそんな世迷い言を────!!」

「あばーーーーーーーーっ!?」

 

 思いっきり打ち上がったルシファー。ダメだ、お前は星座にはしてやらねえ!

 大地を蹴り、わたくしは彼と同高度まで一気に跳び上がった。

 

「最弱の禁呪!? 最弱!? 最も弱いィィッ!? あったまきました!! 『流星』こそ最強だと何度言えば分かるのですか!?」

「ちょ、まっ……いや普通に事実……!」

「事実ですってぇ!? ソースは!? 根拠を出しなさい根拠を!」

「知らないのか!? 七種の禁呪とは、根本を構築したのは大悪魔ルシファーなんだぞ!? そのルシファーの知識が、『流星』が最弱だと断じているのだ!」

「は!? それは…………」

 

 は? ちょっと待って。え?

 あ~…………えっと…………

 ダメだ。反論思いつかん。

 

 

 こいつ、レスバにエビデンス持ち込んできやがりましたわ!! 許せねえですわ!!

 

 

red moon なんだこの負け犬!?

苦行むり キャンキャン吠えて可愛いよな

 

 

 いいや、諦めない。

 諦めてたまるか。レスバは……レスバだけは、絶対に負けたくねえ!

 わたくしはルシファーの上を取ると、首を手で掴み同高度から一気に加速をかける。奴の身体を下敷きに、地面へ一直線に落下する。

 

「貴様、我を地面にぶつけるつもりか……!?」

「『流星』が最弱と言いましたわね!?」

「は!? あ、ああ、そうだ。初期型(プロトタイプ)故に、他の禁呪と比べ尖ったものがなく、また万能性も特にない。誰がどう考えても最弱の禁呪だ──」

「ですが! それに負けたアナタは最弱以下ですわ! よって『流星』は最弱ではなくなります!!」

「は? 何言ってるんだ貴様。いや本当に何言ってるんだ?」

「よってアナタの発言に矛盾が発生し、偽と証明されました! 一方わたくしの発言に特に反論はありませんわね? わたくしの勝ちということでいいでしょうか? はい勝ちー!! 証明終了(Q.E.D)ですわーーーーーーーーーー!!!」

「ええええええええええ意味分からん」

 

 身体内部で無数の『流星』がオーバーロード。

 猛スピードで落下するわたくしの身体が、空に残光を残す。

 ジェットコースターとは比べものにならないスリル。アドレナリンがドッバドバ出てくるのを感じる。

 

「待て! 落ち着け『流星』使い! この速度はどう考えても貴様も巻き込まれる! 自滅するつもりか!?」

「ご心配なく! 死ぬのはテメーだけですわ!」

「て……テメー!?」

 

 

 やっべお嬢様言葉崩れた。

 絶対に生かして帰せなくなったわ。ここで口封じのために死ね!

 

 

 

「──必殺・熱血悪役令嬢パァアアアアアアアアアアアンンチッッ!!」

 

 

 

 首を掴んだまま、わたくしはルシファーを下敷きにして、地面へ思いっきり突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはまさしく、一筋の流星が、夜空を切り裂くが如く。

 高高度から一直線に落下した光が、大地に突き刺さった。

 爆音と共に、一帯が大きく揺れる。

 

 粉塵吹き荒れる中で咄嗟に目を庇った後。

 ユートとジークフリートが、恐る恐る、落下地点を見やった。

 

 

「────大悪魔、ここに敗れたりですわ!」

 

 

 勝ち鬨と共に。

 砂煙を吹き飛ばして、少女が姿を現す。

 足下に物言わぬ大悪魔の骸を転がし、右手で天を指さして。

 マリアンヌは黒髪をなびかせて叫ぶ。

 

 

「『流星(メテオ)』こそが最強の禁呪! それ即ち、『流星』を操るわたくしが最強という証明に他なりません! これこそが天下無敵の拳、誰よりも先を行く不敗の拳ッ!! それを持つ絶対的勝者とは、ほかでもない──このわたくし、マリアンヌ・ピースラウンドですわッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「今のは……拳では、ねえだろ……」

 

 ユートのうめきを、マリアンヌは聞かなかったことにした。

 

 

 








前回の感想で「自身がメテオになることじゃん!」という感想をたくさんいただいて
本番は次回なんだよなあ…って思ってました
まあなんか大悪魔巻き込まれてたけどノーカンってことで

次回こそチャプター2完結です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。