TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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PART13 その魂、烈火の如く

 ゆっくりと、視界が光に満ちていく。

 明るさを認識して、そこで初めてわたくしは意識を失っていたことを自覚した。

 記憶が残っているのは、あの大悪魔ルシファーとかいうカスを論破し、そのまま地面に叩きつけたところまで。

 

「う、ぎぃ……」

 

 声を上げて、上体を起こそうとする。

 全身を激痛が走った。ちょっとマジで洒落にならない痛み方だ。骨が折れてるとかそういうレベルじゃねえ! 内臓残ってる!?

 

「あ、起きないで! 今回復させてるからストップ!」

 

 真上から降ってきたのはリンディの声だった。

 もう反論する気力もなく、頭を元の場所に戻す。

 これ角度からして膝枕されてんな……

 

「ああもう、騎士団の人たちからありったけのポーションもらって飲ませて、魔法使える人全員で回復打ち込んでもこれ!? どんな戦い方したのよあんた!」

 

 道理でおなかが膨れてると思ったわ。

 ていうかどんな戦い方って、自分の身体を一つの宇宙と仮定して、無数の流星を体内に発生・活性化させて……ええと、演算リソースを解放して現象再現を細胞スケールに圧縮することでタキオン粒子の擬似再現を狙ったんだけど時間流体の認識には失敗して、存在固定プログラムの改変というか上位権限を解放して……

 ………………何? 今わたくし、何考えてた?

 

 

適切な蟻地獄 あーよせよせ、それ考えちゃ駄目だよ

red moon 認識次元上がってたぽい?

101日目のワニ 廃人なりたくなかったらそこでストップ

 

 

 えっ何? 怖い怖い怖い。

 なんか触れちゃいけないものに触れていたっぽい。やべー。

 

 

脚本家 ルシファーは最強キャラじゃなかったのかよ……!?

日本代表 ばーかばーか!

脚本家 うっさい! もう帰る! 覚えてろよ!

日本代表 二度と来んなばーか!!

火星 上のやりとり、職場の同僚思い出してホッコリした

みろっく 職場の精神年齢低すぎない? 大丈夫?

 

 

 それはそれとしてコメント欄ではレスバがついに終わっていた。

 レスバ? もういくとこまでいっちゃったレスバだな。いつまでやってたんだこいつら。

 何にしても、いくら戦闘が終了したからといって、ぶっ倒れ続けているわけにもいかない。

 

「ふ、ぎぎぎ……」

「ちょっと!?」

 

 気合いで起き上がる。

 ぶっ倒れそうになったのをリンディが支えてくれた。

 

「あーもう! 回復かけながらじゃないと動けないわよ!」

「わかって、います……ありがとう、リンディ」

「……ッ。別に、私、こんなことしかできないし……」

 

 は? 別にいいじゃん。すげーけどな回復の精度。

 立ち上がって周囲を見渡せば、さながら野戦病院の有様だった。怪我した騎士たちが横たわって並び、救護班に治療を受けている。闘技場は半壊状態。しばらくは使えないだろう。

 見知った顔を探せば、いた。

 

「有り得ない! 有り得ない! 有り得ない!」

 

 なんだか可哀想なことになっている弟王子を見つけた。

 お前かよ。

 

「有り得ない! 有り得ない! 有り得ない!」

「……あの人、ずっとああなのよ。呼び出したっていっても、ああなっちゃうとね……」

「くだらない……」

 

 わたくしは体内に魔力を循環させると、リンディの肩を借りながら弟王子の元に歩いた。

 顔に影が差してから、やっとこっちを見る。

 涙を流しながら有り得ないと叫び続けるその男に対して。

 

星を纏い(rain fall)天を焦がせ(sky burn)極光よ、今この手の中に(vengeance is mine)

「えっちょっ、マリアンヌ?」

「起きなさい馬鹿!」

 

 三節詠唱流星げんこつを食らわせた。

 

「イッデェッ!?」

「まだ、続けますか?」

「ヒィッ……ひ、ひ、ひえっ……何この人怖い……」

「はあ? 煽ったのはそっちでしょうに!」

 

 やたら怯えた様子を見せた後、彼はきょろきょろと周囲を見渡す。

 

「って、これ、何だよ……!?」

「何だよって、アンタがやったんでしょうが」

「お、俺がッ!? 馬鹿言うなよ! 俺は選抜試合を見に来て……あ? えーとそれで……」

 

 ふぅん? なんかやっぱり、妙なことになってんな。

 わたくしが起きているのを見て、慌ててロイやジークフリートさんたちが駆け寄ってくるのを見ながら。

 どうにも──喉に小骨が刺さったような、そんな違和感が拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 無事か、大丈夫かと問い詰められ続け十分ほど。

 マリアンヌは完全に飽き飽きしていた。

 

「ええ、ええ。無事ですわ。完全勝利しましたもの」

「そうは言っても────」

「完全勝利と来たか。その分、随分と派手にやったのう、ピースラウンドの娘」

 

 重い声だった。

 一同ガバリとそちらに顔を向けて、慌てて(マリアンヌを除き)平伏する。

 

「国王陛下! ご無事で……!」

 

 並んでいるのは礼服を着込んだ、国王アーサーと、ハインツァラトス王国の王であるラインハルトだった。

 二人の王は手に持っていた物を地面に落とし、脚で乱雑に蹴り転がす。

 

「護衛の騎士たちはよくやった。だから悪いことをしたわい、わしたちが彼らを庇うなど、心臓が縮み上がったろうに」

 

 返事はない。誰も、口を利く余裕がなかった。

 ごしゃりと地面に転がったそれを見て、マリアンヌたちは絶句していた。

 だってそれは、先ほど死力を尽くして討伐した存在とうり二つ──否。まったく同じ外見だったからだ。

 

「……ルシ、ファー?」

 

 スパリと綺麗に断ち切られた上半身が3つ。

 よく見ればアーサーもラインハルトも、若干頬が煤けている。

 

「端末顕現と言っておったからの、恐らく他の場所にも顕現していると見て、慌ててケリをつけてきたが……此方ももう終わっておるとはな」

 

 アーサーは苦笑し、隣に佇む、隣国の王を見やった。

 

「ラインハルト。どうやら我々も老いたようだの? 二人がかりでこちらが一体処理するのと同速度とは、なんとも情けない」

「逆だ、アーサー。子供たちの頑張り過ぎだ」

 

 事態を理解して、流石に誰もが言葉を失った。

 国王二人は、マリアンヌたちが死力を尽くして1体を倒している間に、3体を狩っていたのだ。

 

「それで、ん? ピースラウンドの娘よ、どうだったかの。手応えは?」

「……最終的には、口論でも戦闘でもわたくしが勝利しましたが……今までにない難敵だったのは事実です。それを3体相手取っていたとは、驚きですわ」

「まあ、わしとラインハルトは慣れておるからの」

 

 何でもないことのように言われて、閉口するしかない。

 

「じゃが、一体討伐したのは賞賛に値する。よくやったの」

「……ッ。馬鹿にしているのですか?」

「けんか腰になるな。事実だ──よくやったな、若者たちよ」

 

 その言葉に。

 視界の隅で、ユイ、ロイ、リンディが歯を食いしばって俯いたことに、マリアンヌは気づかなかった。

 

「召喚術式をあらかじめこの闘技場に展開していたと見えるが、ラインハルト」

「分かっている。我々の落ち度だ……皆を危険に晒した」

「責めてはおらん。今後の話じゃ」

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()。既に我が国の騎士団に、巫女のいる神殿を制圧するよう伝令した」

「発端はそこか……」

 

 国王同士が腕を組み、難しい表情で唸っていた。

 その時。

 

「自壊、してる……?」

 

 騎士の一人が声を上げた。

 見れば、アーサーたちが討ち取ったのと比べ損耗の少ない、マリアンヌが打倒したルシファーの端末が自壊を始めていた。

 身体の端から、ゆっくりと光の粒子になっていく。

 

「────────」

 

 その光景が、目に入った瞬間。

 マリアンヌは即座に『流星』の展開準備をスタートさせ、戦闘態勢へ移行した。コンマ数秒遅れてアーサーとラインハルトも魔法を展開する。

 

「え……マリアンヌ?」

「あの器が耐え切れないほどの何かが入って来ているということでしょう!?」

 

 過程をすっ飛ばして結論だけ叫んだ。

 沈黙はコンマ数秒。全員が自分の得物に飛びついて構えた。

 

「防御陣形! 撤退準備! 最悪の場合はオレが殿になる、その際に学生は引きずってでも退避しろ!」

「いかん! お前さんも退避じゃ!」

「しかし陛下……!?」

「くどい! ピースラウンドは残れい!」

「言われなくても!」

 

 全身に魔力を循環させ、だがマリアンヌは内臓を灼くような痛みに、呻き声を上げて崩れ落ちた。

 アーサーは唇を噛み、彼女の前に飛び出した。

 

「変更じゃ、そなたも────」

「ご冗談を!」

 

 歯を食いしばって、痛みに耐える。

 全身を業火に包まれているような激痛。反動は決して軽くない。だが、こんなところで無様に引き下がれない。

 マリアンヌが必死に魔法を形成し、国王二人が攻撃魔法を発動させようとして。

 

「よせ」

 

 一瞥だった。

 それだけで、視界の隅で国王アーサーと国王ラインハルトの攻撃準備が霧散した。

 

「……は?」

「力の加減には、自信があるが……人間が壊れないラインの見極めは、慣れていない。次は身体ごと砕けてしまうかもしれん」

 

 声の主は、物言わぬ骸だったはずの、大悪魔の端末。

 だが違う。先ほどまでとは何もかもが違った。違いすぎた。

 

「分かるだろう、禁呪保有者たち。ここで戦えば……そうだな。1%は、そちらが勝つ可能性はある。この端末を破壊できる。だが、99%で死ぬぞ。賢明な判断をしろ」

 

 理解した。理解するしかなかった。

 今度こそ勝てない。直感も理屈もなく、否応なしに、分かってしまう。

 次々に騎士たちが膝をつく。重力が何十倍にもなったかのようだった。息苦しい。身体が動かない。精神が叫んでいる。もっと根底にあるものが、悲鳴を上げている。

 

「端末を呼び出されたと思えば、全てが撃滅されるとは……面白い。おれの意識を浮上させるに値する何かがある、そう判断した」

 

 その言葉は致命的だった。

 深紅の瞳が、荘厳な黄金色に書き変わっていく。

 ルシファーの端末がゆっくりと立ち上がる。

 

 端末? 否。

 まさしくそこにいるのは。

 

 

 端末の中に意識をインストールした────大悪魔ルシファー本体!

 

 

 アーサーは静かに計算した。99%で死ぬ。分かっていた。

 ならば1%を最初に引けるよう工夫する。それこそが人間の生きてきた過程だ。

 しかし。

 

「愚かな。何度やっても結果は同じですわ!」

 

 ルシファーが目を細めた。

 ただ一人、恐怖に震えることもなく、口を閉ざすこともなく。

 真っ先に、大悪魔の正面に躍り出てきた黒髪の少女。

 

「おれを前にして、虚勢ではなく……いいや。そもそも虚勢を張るのが最も無理なことか。お前は心の底からそう思っていると言うことだな、マリアンヌ・ピースラウンド」

「ええ、勿論そうですわ! 大悪魔だろうと、わたくしが何度でも──……あれ? わたくし、名乗りましたか?」

 

 圧倒的な存在感で、周囲の世界そのものを軋ませながら。

 突如としてその威圧をフッとかき消して。

 

「当然だろう。目当てはお前だ。今回はお前と話をしに来ただけなんだ」

 

 地獄を統べる大悪魔は、なんてことはないように告げたのだった。

 

 

 

 

 

配信中です。
 
上位チャット▼


red moon 待って待って待って本体の台詞!?!?!?!

鷲アンチ おいルシファー本体出てるぞおい!!!!

日本代表 スレ書き込んどいた、もうワケ分かんねえ

トンボハンター 初見

つっきー しょけうわああああああああルシ様が喋ってる!?

苦行むり さっきの脚本家って結局IP抜けた?

日本代表 だめだった、ていうかあれも下請けっぽいんだよな

つっきー この走者に深く、深く感謝します

みろっく ルシファーの女さんがいらっしゃいますね……

火星 えぇ……マジで……マジでルシファー本体が出てるのか……

無敵 散々やり込んだと思ってたのにこの女俺たちのプレイ時間を粉砕してそんなに楽しいか

日本代表 気持ちは分かるけど、大体あの雷野郎のせいだからな……

【いつか世界を】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【滅ぼすために】

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「覚えたぞ、マリアンヌ・ピースラウンド」

 

 名を呼ばれ、なんかもう呆然とするしかなかった。

 

「人の身でよくそこまで練り上げた。称賛に値する」

 

 ほ、褒められてる? これ褒められるのか?

 困惑に周囲を見渡す。みんな流石にぽかんとしていた。

 いやまあ、そうか。大悪魔、わたくしを褒めてるのか。フフン、悪い気はしないな。

 

「フッ……お褒めいただき光栄ですわ、地獄の支配者。大悪魔ルシファー。アナタから賞賛されるのは誇りであると同時、当然ですわよ。わたくしこそが、最も優れた者ですから」

「そなた、本当に誰が相手でも対応変わらんの……」

 

 国王アーサーが呆れたような声を上げる。

 だが、ルシファーが、明確に首を横に振った。

 

「違うな。お前より優れた戦士とは何度も相見えた」

「な……ッ!?」

「そして、その尽くを滅殺してきた」

 

 こいつ、負けたくせにマウント取ってきやがった!?

 

「ハハーン! 負け惜しみですの? 結果として勝利したのはこのわたくしですわ! ざまあみなさいですの、べーっ!」

「やめなさい」

「あぶっ」

 

 全力で煽り倒していると、隣のジークフリートさんが頭にチョップしてきた。

 地味にいてぇ、ちょっと涙出てきた。

 だがそうしていると、ルシファーはもう一度首を横に振る。

 

「違う。おれはお前を賞賛している」

「……はい?」

「この大悪魔ルシファーは知っている。本当に厄介な敵とは、力自慢であること、賢いこと、冷酷であること、そのどれでもない」

「……ッ?」

「ただ迷いなく強いこと。純度の高く、透き通るような強さを持ち、まっすぐ、迷いなく戦い続けられること。そうだ、美しいかどうかこそが肝要なのだ」

 

 言葉を並べながらも、ルシファーが静かに右手を差し伸べてきた。

 攻撃かと周囲の人々が警戒するが、違う。そういうのじゃないこれ。

 

 

「ああ、マリアンヌ────お前は美しい」

「は? 当たり前ですが?」

 

 

 横でロイが頭を抱えるのが見えた。

 なんだ、文句あんのか。

 

「お前という存在、確かに、このルシファーに刻まれた。故にお前も刻め。我が名はルシファー……天より追放されし者。この世界をいずれ滅ぼす者」

「はぁ……えっと、これ自己紹介だったりします?」

「いや自己紹介って、お見合いじゃないんだから」

「肯定する。お前にはおれの存在を刻んで欲しい。人間らしく言えば……おれの名前はルシファー。今後ともよろしく」

「よろしくしたくないが!?」

 

 流石にユートが声を上げた。

 まあ確かに、端末でこんだけ被害出たんだからあんま来て欲しくはねえよな。

 それはそれとして。

 

「名乗られては仕方ありません。こちらも名乗りましょう!」

「あ、やっぱそうなるんだ」

 

 完全に諦めきった声色でリンディがぼやく中。

 わたくしは右手で天を指さして叫ぶ。

 

「わたくしは世界の頂点に輝き、誰よりも先を駆け抜ける女! 覚えておきなさい。ええ、刻みつけなさいッ! わたくしの名前はマリアンヌ・ピースラウンド! 立ちはだかる者全て、絶死を覚悟なさい!!」

「おお……素晴らしい名乗りだな、マリアンヌ……」

「ちょっと待って! あんた大悪魔のくせに、美的感覚がマリアンヌと同類なの!?」

「貴様は……マリアンヌの友人か。すまない、次に来るときは、何かの手土産を持ってこよう……」

「えっ、あ、お気遣いどうも……じゃないわよ! 今外堀埋めに来たわよね!?」

「人間はこうして付き合いを深めるとベリアルから聞いたぞ。物を贈ることは前提であり、自分は礼を理解した存在だと示す意味があるとな」

「礼儀以前に世界が吹き飛びそうだったんだけどぉ!?」

「凄いですわねリンディ、大悪魔相手にも怖じ気づかないなんて」

「好きでやってるわけじゃないわよこのクソボケ共!」

 

 地団駄を踏みながらリンディが悲鳴を上げる。

 今まで全然気づかなかったけど、ここ最近、もしかしたらリンディって母性滅茶苦茶強いんじゃないかって気がしてきたな……

 

 

TSに一家言 そうわよ

太郎 お前じゃ勝負にならないぐらい母性あるよ

 

 

 は? あったまきた! 負けませんが? わたくしの圧倒的勝利ですが!?

 

 

適切な蟻地獄 「負」の文字に反応するbotなのか?

無敵 お前が積んでるそのエンジンは法規制するべきなんだよな

 

 

 静かに対抗心を燃やしている間にも、隣でリンディが大悪魔に対してあーだこーだといちゃもんをつけていた。

 

「大体地獄を統べる大悪魔なんでしょう!? 何でそんなやつが、マリアンヌに用があるのよ!」

「ああ、確かにその理由は気になりますわね。婚活でもしにきたんですか?」

「えっ? 何です? こんかつ……?」

 

 ユイさんが聞き返し、他の連中も首を傾げる。

 あ、これこっちの世界にはない言葉だったんだ。

 

「情報を検索……婚活。合コンやお見合いパーティーへの参加、結婚相談所や情報サービス会社への登録など、結婚相手を見つけるための積極的な活動か」

「アナタ今ググったでしょう!?」

 

 ルシファーがすらすらと婚活の概要を言って、流石に絶叫した。

 おいそのアクセス権限よこせ! フロムソフトウェアのHPにアクセスさせろ! なんか新作出てる!? 後ヨコオはどうなってる!? なあ!?

 発狂寸前で詰めよろうとするわたくしに、ルシファーは訝しげに問う。

 

「結婚相手というのを、人生を共にするパートナーと言い換えても構わないだろうか」

「えっ? え、ええ。ほぼ同意義でしょうね」

「ならば肯定する。おれは婚活をしている」

「はい??」

「世界の滅びは確定した。遠い先であろうと、おれが目覚めし時、必ずこの世界は滅亡する」

 

 淡々と。

 もう決まり切った、決定事項を連絡するように。

 大悪魔は世界の終わりを告げた。

 

「だが、おれにとって世界の滅びは最終目的ではない。ならば、その後を見据え……共に過ごしてくれる存在が欲しいと、思ったんだ」

「……それ、で?」

「マリアンヌ──お前こそ、その存在に相応しいのかもしれん」

 

 その言葉を聞いて。

 わたくしとルシファーの間に、何人か割り込もうとした。

 行動の予兆を察知し、手で制する。

 

「……光栄ですわね。世界の終わりを見届ける特等席というわけですか」

「そうだな」

「ならば断言しましょう。世界は滅びませんわ」

「ああ、お前ならそう言うと思った」

 

 少しだけ口元をほころばせた後。

 だがルシファーはすぐ、鉄のように冷たい無表情に戻った。

 

「しかし事実は事実だ。おれは世界を滅ぼす。決定事項だ」

「先ほども言ったでしょう! 何度やっても結果は同じ! 百度戦えば百度わたくしが勝ちましょう! 故に! 世界の滅びは訪れません!」

 

 わたくしと大悪魔の視線がぶつかり、火花を散らす。

 ──だが、ルシファーがふっと顔を伏せた。見れば彼の身体は、既に半ば粒子となって解けていた。

 

「時間だ」

「……そのようですわね。次はできれば、お茶でもしましょうか」

「フッ、いいな。楽しみにしておこう……また、会いに来る」

「いや、やめてくれんかのう!?」

 

 国王アーサーがガチの絶叫を上げた。

 ルシファーがばいばいと手を振ってくる。逡巡してから、わたくしは手を振り返す。

 

「……マリアンヌ。最後に一つだけ」

「はい?」

「端末顕現は4つ。そのうち1つであるこの身体、かなりの制限がかかっている。端末故ではない、恣意的なものだ。召喚術式が半端に改変されている……気をつけろ。おれの力を、悪用しようとしている者がいるぞ」

「なるほど……いや、世界を滅ぼすのなら、アナタがアナタの力を最も悪用しているのではなくて?」

「…………おお」

「馬鹿すぎません!?」

 

 感心したような表情を浮かべて、彼の頭部がてっぺんまで光の粒子に還った。

 最後の最後にとんでもねえイベントを挟みやがって。

 あ~~、マジ疲れた。

 思わず蹲りそうになる。てか座り込みたい。いいすか? 自分、マジで座っていいすか?

 

 その瞬間だった。

 目の前に、配信画面とは別の画面が立ち上がった。

 

 

 

 SYSTEM MESSAGE ▼ 

 条件を満たしました ▼ 

【血染の花嫁/天魔来たりて】ルートが解放されました ▼ 

 SYSTEM MESSAGE ▼ 

 条件を満たしました ▼ 

【血染の花嫁/天魔来たりて】ルートが 

 解放されました ▼ 

 

 

 

 ?

 

 

鷲アンチ 草

太郎 草

外から来ました 草

無敵 ? じゃないが

日本代表 ああああああああああああああああああもおやだあああああああああああああああああ

 

 

 なんかまた新規ルートが解放されたな。

 随分とものものしい名前のルートだ。わたくし、虐殺ですとか言っちゃうの?

 

 ていうか……何? ルートとは分岐するものではなくて? 解放されたらアナウンスされるものなのですか?

 

 

適切な蟻地獄 通常EDなら特にそういうのはないけど、隠しEDは√突入のための条件をクリアしたらアナウンスが入るよ

みろっく 今回のこれはどういうルートなん?

火星 いや……こう……もう言葉が出てこねえ……

 

 

 えぇ……? 大丈夫ですか?

 

 

火星 大丈夫じゃない……これ、簡単に言っちゃうと世界滅亡するEDの中で唯一バッドエンド扱いされてない、まあメリバってやつなのかな。ルシファーからの好感度を稼ぐと突入できると言われていたんだ

みろっく 言われていた?

苦行むり ……ルシファーって端末顕現しかしないから、本体の台詞なんて今まで一言も確認されてないんだよ

火星 好感度上げようがなさすぎて永遠に確認できないから、ライターがギャグで言ってるEDだと思ってた……マジか……マジで実在するのか……

 

 

 なんだかよく分りませんが……追放エンドにカウントしてもいいのでしょうか? もしそうなら全力で狙いますわ!

 

 

第三の性別 判定は?

日本代表 世界から追放されなきゃいけないのに世界を滅ぼしてどうすんだ馬鹿

外から来ました だそうです。解散

日本代表 あとルシファーが積極的に顕現狙い始めるのがチャプター10個分ぐらい前倒しになったけど、世界滅びたら失敗扱いなので、ご愁傷さま

 

 

 あーーーーーーーーーー

 あ~~……えっと、これってえ……

 

 

無敵 要するにラスボスがこれから先のRTAを全力で妨害してくるようになった

スーパー弁護士 お前、ツーアウトってわけ

 

 

 やっぱりな。ハッハッハ。

 

 

 

 

 

 ああああああああああああああああああああもおやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

 

 

 





『世界を守る』『追放される』

「両方」やらなくっちゃあならないってのが「悪役令嬢」のつらいところだな

覚悟はいいか?正直オレはできてない



これにてCHAPTER2完結です。
また登場人物まとめも後で載せておきます。

CHAPTER3は大体内容固まったのですが、ハインツァラトス王国回りなどの捕捉が必要なので幕間挟みます。



https://twitter.com/Aitrust2517/status/1267291115192897536?s=20
https://www.pixiv.net/artworks/82013867
碑文つかささん、支援絵ありがとうございます!

他にもいただいた支援絵をあらすじに掲載しております。恐らく登場人物まとめにも掲載するかと思います。
この場を借りてお礼申し上げます。
本当にありがとうございます!!!!

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