TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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INTERMISSION8 いつかまた、夕焼けを見て思い出す

 その日、わたくしはウッキウキだった。

 とある貴族が主催する魔法使いの競技会に出場するべく、ユイさんとリンディを連れ添って歩いていたのだ。

 

「ユイさん、モンティ、わたくしの勝利をとくと目に焼き付けなさいな!」

「はい! 優勝目指して、頑張ってください!」

「モンティって誰よ!?」

 

 個人主催の競技会としては比較的規模も大きく、わたくしの名をより知らしめるにはうってつけと言える。

 ユイさんは隣を歩きながら、招待状を読み返していた。

 

「凄いですね……ロイ君じゃない雷撃魔法の使い手も参加するそうですよ」

「雷撃魔法ですか。なんと卑劣な属性なんでしょう。たった三節でキッツいデバフかけてくるし絶対に許せませんわ!」

「ミリオンアークが新技開発してから、あんた雷撃属性のこと目の敵にしすぎじゃない?」

 

 こっちが必死こいて十三節詠唱を威力保持したまま短縮してた横で、あの野郎訳の分からない魔法を開発してやがった。開幕でぱなし安定じゃねえか。ふざけるな。

 思い出すだけでムカついてきた。こうなるともう競技会で全員ボコって憂さ晴らしをするしかねえ……

 

「やーいやーい!」

 

 ちょうどその時、いかにもなクソガキの声が聞こえてきた。

 

「う、うぅ……やめてよぉ……」

「やめねえよバーカ!」

「お前の父ちゃん負け犬の残飯食ーらい!」

 

 ちょっとクソガキにしては煽りがエグいな。

 そこまで言う必要はないだろ、と流石に両隣のユイさんとリンディも厳しい表情をしている。

 見れば数人のガキが、一人の少年を囲んで罵詈雑言を浴びせていた。

 

「見るに堪えませんわね」

「同感。流石に止めましょうか」

 

 幸いにも競技会まではいくばくかの時間がある。

 浦島太郎になれってことだろ。上等だ。わたくしは全てにおいて頂点に立つ令嬢。浦島太郎令嬢ごとき造作もない。

 

「そこのクソガ……キッズ……少年たち! そこまでになさい!」

「はあ?」

 

 クソガキたちがわたくしを訝しげに見る。

 

 

適切な蟻地獄 こいつ今クソガキとかキッズとかろくでもない呼び方しか思いつかなかったな……

第三の性別 おねショタの気配を察知(シュバババッ

日本代表 うわキモ

 

 

「いかなる理由があろうとも、煽りは法的責任を負えるようになってから! 他人に尻拭いしてもらえる環境で煽るなんて気持ちよさが半分以下でしてよ!」

「他に言うことなかった?」

「殺人の現行犯に武器のレクチャーしちゃ駄目ですよ」

 

 両サイドから冷たい視線が突き刺さる。

 クソガキたちはわたくしと、蹲って震えている少年を何度か交互に見て、馬鹿にするような笑みを浮かべた。

 

「知らねーよ!」

「こいつの父ちゃん魔法ヘタクソだし! 的にも当たんないもんねー!」

 

 な……ッ!? このクソガキ、よりにもよってエイム煽りしやがった!

 

「なんと無礼な! お父様のエイムが良くて見事命中したからアナタもわたくしもここにいましてよ!」

「子供相手になんてこと言ってんの!?」

 

 ……せねえ。許せねえよ。

 死体撃ちや煽りイカレベルで許せねえ。

 

 

無敵 お前は嬉々として死体撃ちやってただろ

 

 

 前世の話を持ち出すな。それなりの黒歴史だぞ。

 

「てか誰だよ! 俺の父さんは今日の競技会で優勝するんだぞ!」

「あらあら。優勝者を前にしてなんと猛々しい……早くお父様に告げた方が良いですわよ、今日は辞退しなければみっともなく地面を舐める羽目になると」

「言ったなブス!」

「は? わたくしはれっきとした美少女──」

「ブス!?!?!?!?!?」

 

 わたくしの隣で突然ユイさんがブチギレた。

 

「今君、マリアンヌさんのことをブスって言いました? この宝石みたいな目を見て、ブスって言いました?」

「な、なんだよ。うるせえよブース!」

「……無刀流」

「ちょっとユイさん!?」

 

 腰を落として静かに息を吐くユイさんを慌てて羽交い締めにする。

 わたくしを引きずって少しずつ少年たちへ近づく彼女は、いつでも手刀を繰り出せる姿勢だ。

 

「はなしてください! あんな讒言を許すくらいなら、次期聖女の立場なんて捨てます!」

「早まるのはおよしなさい! 殺意漏れてますわよ!」

 

 だめだ全然止まらねえ。

 このままだと、片方が死ぬタイプのおねショタが始まってしまう。

 

「おい、もしかしてやべー女とやべー女なんじゃないのあれ……」

「い、行こうぜ。やべー女とやべー女が取っ組み合ってるのなんて怖すぎだろ」

「ちょっと待って。ヤバイ女に惹かれるヤバイ女の百合をもう少し見させて」

「お前何言ってんの?」

 

 引き気味に何事か会話しつつ、クソガキ共が撤退していく。

 全身から殺意を放出していたユイさんも背中を追い討つ気にはなれなかったらしく、構えをやっと解除した。

 

「あ、ありがとうお姉さん……」

「どういたしまして」

 

 震えていた少年にお礼を言われる。

 十歳と少し、ぐらいだろう。ランドセルの似合いそうな、短パンのショタだった。

 

「アナタ、名前は?」

「……カルファス」

「ではカルファス。アナタいじめられていますの?」

「……うん。今日の競技会でも、パパがボコボコにされるんだ」

「あら、その点はご心配なく。参加者全員、わたくしの前では一様に無力ですわ」

 

 暗にこちらも参加者であることを伝えると、少年ことカルファスは目を見開いてわたくしを見た。

 

「えっ、競技会に出るの?」

「勿論ですわ。わたくしこそが最強であると証明する為に、さっきの子のお父様も、アナタのお父様も平等に半殺しにします」

「もうちょっと言葉選びなさいよアンタ」

「でもお姉さん、美人だけど弱そう……」

「あらあら。この指はいらないようですわね」

「いたたたたた! ごめ、ごめんなさいお姉さん!」

 

 カルファスの右手を掴んで指を反対側に曲げてあげると、半泣きで謝ってきた。

 ごめんなさいのできる良い子だな。

 

 

red moon 子供相手に何やってんだコイツ……

第三の性別 これは実質おねショタでは?

101日目のワニ まだ言ってんのか

第三の性別 多分おねショタだと思うんだよ。おねショタだろ? おねショタになれ!

日本代表 さっきからお前キモすぎんか

 

 

 尋常じゃないぐらいおねショタを推してくるやつがおるな。

 凄いプレッシャーを感じ、思わず冷や汗を浮かべる。

 

「あっ……」

「カルファスくん、どうかしたの?」

 

 コメント欄を見て頬を引きつらせている間に、カルファスが顔を青ざめさせて服のあちこちをまさぐっていた。

 ユイさんがしゃがみこんで視線を合わせて、優しく問いかける。

 今にも泣き出しそうな表情でカルファスは言う。

 

「お父さんに、渡さなきゃいけなかった手紙がない……!」

 

 おいおいおい。

 これ、もしかして……そういうことなのか?

 

 

苦行むり サブクエの話の時間だコラァ!

 

 

 

 

 

 

 

次の配信は一時間後を予定しています。
 
上位チャット▼


鷲アンチ そういやこんなサブクエあったな(2回目)

みろっく 浦島太郎イベ原作にもあったんだ

red moon 原作ユイちゃんはもっと大人しくなだめてたんだけどな……

適切な蟻地獄 英才教育のたまものだな

トンボハンター 隣の蛮族が悪いよ

太郎 まあよくあるおつかいイベントだよね

日本代表 でもこの女、RTAの才能があったりなかったりするからな

第三の性別 で、おねショタはまだ?

【サブクエ】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【第二弾】

924,221 柱が待機中

 

 

 

 

 

 

 

 手紙は家に忘れたわけではなく、しっかり服のポケットには入れていたらしい。

 父親は朝早く競技会用の調整をするため出発してしまい、仕方なく会場で手渡そうとしていたのだとか。

 

「落としちゃったんだとしたら、家からの道を探すしかないわよねー」

 

 カルファスの家へ向かう道を四人で歩く。

 道ばたに落ちていないかを注意深く観察しつつ、詰め所があれば適宜そこで落とし物がなかったかを確認。

 空振りが続く。太陽が天頂を過ぎて傾いていた。

 

「お手紙、お父さんに渡したいよね」

「うん……」

 

 ユイさんに手を引かれているカルファスは、少し恥ずかしそうだった。

 ははーん……流石は乙女ゲーの主人公。見事に初恋を奪っていくやつだなこれ。

 

「いいですわね、若いって」

「アンタ何言ってんの? うら若き乙女がそんなこと言わないの」

 

 隣のリンディが肘で小突いてくる。

 

「ふふっ。リンディさんがお姉ちゃんみたいですね」

「うっさいわね」

 

 思えばこの二人、決闘までしたのになんだかんだで仲良くなっている。

 リンディの面倒見の良さが伝わったのだろう。悪の組織に入れたいと思う面白さはないが、その辺はしっかりしてるしな。

 ……前世の感覚で行くと、まあ付き合いたいって思うのは彼女なんだよな。

 

 

 これ乙女ゲーですけど、リンディルートってあるんですの?

 

 

無敵 あるけどリンディは死ぬ

 

 

 は? ……えーと……リンディのバッドエンドの話ですか?

 

 

外から来ました いや、リンディグッドエンドでリンディは死ぬ

 

 

 グッドエンドとは!?

 

 

 なんだかんだ、わたくしは各キャラクターの現在こそ知っていても、過去の人格形成やらは全然知らない。

 ロイなんて小さい頃一緒に遊びまくってたけど、気づいたらマゾ入っててびびったし。

 リンディは遊ぶという感じではなかったな。つーか気楽に会話するようになったのは、なんだかんだで最近だ。

 ユイさんやジークフリートさん、ユートのあたりなんてもう数年前の顔すら知らないのだ。

 

「……まあ、だからなんだという話ではありますが」

「? どうかしたの、真剣に考え込んでたみたいだけど」

「いえ、なんでも」

 

 ちょっとブルー入ってた。リンディに心配され、首を横に振る。

 というか──ちゃんと、考えを改める必要がある。

 これゲームじゃないんだよな。

 ゲームであるというメタ視点を持ち込んでうまいこと生きていくだけで、れっきとしたセカンドライフなのだ。なら、もうちょい他人に興味を持った方がいいのかもしれない。

 

「お姉ちゃんたちも競技会に?」

「ううん、出るのはあのお姉ちゃんだけだよ」

 

 ユイさんがカルファス君に、わたくしを手で指し示して説明する。

 

「マリアンヌさんはすっごく強いから、お父さんも勝てないかもね」

「……別に。勝ってるの見たことないし」

 

 そういや言ってたな。

 

「そんなに弱いのですか」

「……うん」

 

 冷静な諦めだった。

 かつてはヒーローだったのかもしれないと思った。期待の残骸が声色に宿っていた。

 手紙は見つからない。競技会開始時刻が迫っている。

 

 ────潮時だな。

 

「……アンタは会場行った方が良いわよ」

 

 時刻を確認して、リンディが小さく囁く。

 やっぱりいいやつだなと思った。

 

「そうですわね。ではわたくし、辞退しますわ」

「は?」

 

 時間になっても会場にいなければ自動で失格になる。

 このまま手紙探しを続行するだけだ。

 

「マリアンヌさん、私たちは助かるけど、いいんですか……?」

「優先順位は大事ですわ。競技会で勝ったとしても、ここで彼を見捨てたのなら、それは栄光ある勝利ではありません」

 

 ぽかんとしているカルファスに対して、わたくしは微笑みを向ける。

 

「手紙、大事でしょう?」

「……ッ。だけど、お父さんどうせ勝てないし……」

「ええ。ずっと言ってますわね。勝てるはずがないと……では、手紙には何を書いたのです」

「…………」

 

 おかしな話だ。

 もう何も期待しないのなら、手紙なんて書かない。

 

「良い子ですわね、カルファス。アナタが諦めなければ、きっとお父様も諦めませんわ」

「……そんなことないよ」

 

 子供らしからぬ、自嘲するような響きだった。

 

「僕が諦めないから、お父さんも諦められないんだ」

 

 国王アーサーの下、他国と比べても、我が国は異常なまでに実力主義の思想が強い。

 口先だけのカスに生きる価値はないし、弁えていたとしても弱者の立場は弱い。

 わたくしにとっては理想郷に近いレベルの環境だったが──まあ、光があれば闇もあるか。

 

「諦められないのだとしても……実際に諦めない以上、アナタのお父さんは強いですわね」

 

 ユイさんとリンディが、静かに頷く。

 カルファスは釈然としない様子だったが……大丈夫。

 いつかきっと、分かるときが来る。

 そう信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 結局手紙が見つかったのは、競技会が終わろうとする時間になってからだった。

 

「まさか君が、競技会を蹴って手紙探しに奔走しているとはな」

 

 治安維持目的の騎士団詰め所にて。

 部下を連れて休日を謳歌していた私服姿のジークフリートは、手紙を片手に唇を微かにつり上げる。

 

「申し訳ありません。ジークフリートさんのお力を借りることになるとは」

「いや、いいさ。確かに警邏中の騎士たち全員に通達を出してまで探すことになるとは思わなかったが……見つかったのなら、みんな喜んでいるさ」

 

 マリアンヌは圧倒的なコネと権力による物量作戦で手紙を見つけていた。

 

 

ミート便器 宿屋のおじさんとか汚職してる神父とか全カットかよ!

日本代表 こいつ、規定イベント全部カットしてローラー作戦でサブクエ終わらせやがった!

 

 

 最短記録にカウントして良いのか悪いのかコメント欄が議論で紛糾する中。

 マリアンヌたちは、終わっているであろう競技会の会場へ歩いていた。

 空がオレンジ色に染まっている。気づけば半日を手紙探しに費やしていた。

 

「ごめんなさい。僕のせいで……」

「気にしないでいいわよ。勝手にやっただけだし」

「そうだよ。カルファスくんも、よく最後まで諦めずに探したね」

 

 二人が気にするなと言っても、少年の足取りは重く、ついには立ち止まってしまった。

 

「……意味ないのに。僕なんかのために、お姉ちゃんが出場できなくなって……」

 

 やはりカルファスの表情は晴れない。

 一行より先を一人で歩いていたマリアンヌは、嘆息して足を止めた。

 競技会会場の屋敷は目前だった。

 

「カルファス、よくお聞きなさい」

「……?」

 

 振り向くことなく、マリアンヌは背中越しに語る。

 

「いいですこと、カルファス。本当に強き者とは、誇りを失わない者のことですわ」

 

 夕焼けの下。

 マリアンヌは燃えるような空を見上げて、そう言った。

 

「……誇り?」

「ええ。自分自身を、見損なってしまわないこと。アナタが今ここにいるという事実が、いくつもの奇跡を経ているのを忘れないこと。大事なのはそれだけですわ」

 

 マリアンヌが振り向く。

 その、驚くほどに優しい笑みを見て、ユイとリンディはぽかんと口を開けた。

 

「カルファス。お父様を笑顔で迎えてあげなさい。彼はきっと……アナタがいるから諦められないのではなく、アナタがいるからこそ、立ち上がれるのですわ」

 

 ちょうどその時。

 屋敷の門が開いた。競技会に参加あるいは観戦していた人々がわっと外に出てきてから、優勝最有力候補でありながら棄権扱いとなっていたマリアンヌの姿を見てざわめく。

 その人混みをかき分けて、一人の男性が前に進み出た。彼の顔を見てカルファスがあっと声を上げる。

 

「パパ!」

「カルファス……」

 

 メガネをかけた、いかにも冴えない外見の男性だった。

 だが今は、彼は誰よりも誇らしげな笑みを浮かべていた。

 

「カルファス────勝ったぞ!」

「……!」

 

 マリアンヌはふっと微笑むと、カルファスの元に歩み寄って、背中を優しく押す。

 

「行ってあげなさいな」

「……うん!」

 

 元気よく駆け出し、彼が父親の胸に飛び込むのを見送って。

 ユイとリンディは、マリアンヌの隣に並び微笑む。

 

「良かったですね。お父さん、勝ったって。親子ってああいうものなんですね」

「多分ね。ああいうの……自分も、って思うのはおこがましいけど。ああいう家庭も世の中にはある、っていうのが、救いに感じちゃうわ」

「少し羨ましく思ってしまうぐらいですわね。自分の身に置き換えても、想像することすらできない……ああいうのを、幸福と呼ぶのでしょう」

 

 

宇宙の起源 おい急に重力発生させてくんな

TSに一家言 あっそうかこいつら機能不全家族×2と人工聖女か!

無敵 考えてみればこの三人全員家庭終わってるの草

 

 

 三人してしんみりしていると。

 

「それはそうと────忌々しい虫けらがいたものですね。墜ちろ(fall)

 

 不意にマリアンヌが右腕を振るった。

 バヂ、と雷撃の弾ける音。

 マリアンヌが展開・射出した流星の直撃を受け、カルファスの父めがけて、指向性を持って打ち出されていた稲妻が空中で霧散する。

 

「な……!?」

 

 発生源であった、人混みに紛れていた一人の魔法使いは、狼狽の声を上げて後ずさった。

 

「気に入らない相手へ、ちょっとした仕返しのつもりですか?」

 

 人混みが割れた。

 マリアンヌの指摘は的を射ていた。その魔法使いは、まさに今日カルファスに敗れた魔法使いだった。

 試合では執念ともいえる粘り強さに、根負けする形で黒星を喫した。

 

「ああ、まったくもって……同じ雷撃魔法でも、こんなにも、見るに堪えないのですね」

 

 恐ろしいほどに底冷えした声だった。

 誰も悲鳴を上げなかったのは奇跡だった──無様な姿を見せられないとプライドが踏ん張ったのか、或いは叫ばなかったのではなく、叫ぶことすらできなかったのか。

 

「……お姉ちゃん」

 

 カルファスは静かに彼女を呼んだ。

 夕焼け空に黒髪をなびかせ、上品なブラウスを着こなした美少女。

 燃えたぎる炎の色をした瞳は、しかし今は見る者を凍てつかせる絶対零度の氷焔。

 

「救いようがないほどに愚かですわね。プライドすらないとは、残飯食らいの負け犬がお似合いでしょう」

 

 見ればカルファスをいじめていた少年が、その魔法使いのすぐ傍で、怯えた表情でマリアンヌを見ている。

 フンと鼻を鳴らし、マリアンヌは黒髪をなびかせて右手を掲げた。

 

「リベンジしたいなら、表舞台で正々堂々となさい! そうでなければ、今ここで────心の芯すら折れる、本当の敗北を教えて差し上げましょう!」

 

 マリアンヌの言葉を聞いて、魔法使いは泡を食って立ち去っていった。

 子供は愕然としたようにその背中を眺める。それから何度かマリアンヌと交互に視線を走らせて、慌てて父親を追っていった。

 

「……しょうもないやつ。いちいち相手にしなくてもいいでしょ、あんなの」

「気が済まなかったので。さ、帰りましょうか」

 

 用事は終わったとばかりにマリアンヌはユイとリンディを連れて帰ろうとする。

 

「お姉ちゃん!」

 

 ピタリと、足が止まった。

 振り返ればカルファスがはにかんで、父親の隣でこちらに手を振っている。

 瞳に映し込まれた、夕暮れの下で天に手をかざす彼女の姿を。

 きっとカルファスは一生忘れない。

 

「また、ね」

 

 お世話になったと分かり、父親がぺこぺこと頭を下げている。

 そんな優しい家族の姿に。

 

 

 マリアンヌは満面の笑みで──チョキを出した。

 

 

「わたくしの勝ちですわね」

「あんた本当にいい加減にしときなさいよ」

 

 

日本代表 負けたら死ぬんか?

第三の性別 う~ん……これはおねショタ!

無敵 このおねショタ、まず煽り方のレッスンとかしそうで嫌なんだよ

 

 

 夕暮れ空の下、流石にそれはあんまりだ、とユイとリンディは嘆息するのだった。

 

 

 






碑文つかささんからイラストをいただきました!
https://twitter.com/Aitrust2517/status/1274287704348323841?s=19
https://www.pixiv.net/artworks/82448138
シュインシュイン言ってそうなマリアンヌです!オーラの音であって頭があったまる音じゃないから注意


古戦場なので更新遅れます。
ウルトラマンZ、面白ぇな……

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