マリアンヌは時々夢を見る。
地面に這いつくばる自分。手を取り合い、厳しい表情でこちらを睨む、
貴公子は抜剣し、切っ先をマリアンヌの首に突き付けていた。
『僕たちの前に、二度と現れるな』
いつか訪れるであろう結末。
現状、まあ、かなり遠い未来になってしまってはいるが……それでも最後に目指すべき光景。
共に日常を過ごす少女に糾弾され。
自分を慕ってくれる人々にも裏切り者と石を投げられ。
そして、あの日共に流星を見た少年に、断罪される。
マリアンヌはその結末を既に受け入れている。
だから問題は、終わりへ至る過程だ。
別段、自分が走者だからこだわっているわけではない。
人間はいつか死ぬ。
どんなに優れた存在であろうと、死は避けられない。
だからこそ──生きている間に少しでも輝くこと、それが人間の生きる意味なのだと。
夜空を切り裂く一筋の閃光を目にしたあの日から。
マリアンヌ・ピースラウンドはそう信じている。
「というわけで、プリントは各自ちゃんとおうちに届けてくださいね~」
合法ロリ先生がそう言って、教壇を降りて教室を出て行く。
一日の授業を終えた帰りのHRにて、クラス全員に配られたプリント。
それは保護者参観のお知らせだった。
「保護者参観かあ……ウチはどーせ来ないと思うけど。ていうか、知り合いの中だと来そうなのってミリオンアークのトコぐらいじゃないの?」
リンディが羊皮紙をうっとうしそうにまるめながら言う。
「確かにそうですわね。ユートの保護者がいらっしゃったら政治会談になりますし」
「私たちはまあダメダメじゃない? 誰に渡せっていうのよ」
ダメダメ──両隣のユイさんもリンディも、なんだかんだ、羊皮紙を物欲しげな目で見ていた。
わたくし、微妙に状況が違うんだよなあ。前世だとここまでひどい家庭崩壊はしてなかったし。
「マリアンヌさんは、ご両親はどちらに?」
「全然分かりませんわね」
家帰っても大体いないし。どこに行ってるのかも知らん。
ていうか最後に帰ってきたの何時なんだろう。たまに他国で目撃情報があったりするらしいけど、もう両親っていうかUMAなんだよな。
「それはまあ……なんといいますか」
「変わってる、で片付けていいのかは微妙なラインよねえ」
二人揃ってそこはかとなく同情するような視線を向けてきやがった。
わたくしは腕を組み、二人の顔を睥睨する。
「その気色悪い目は止めなさい。哀れまれる筋合いはありません」
「あ……ごめんなさい」
「……悪かったわ」
両親に育児された覚えはない。ひっきりなしにあちこち飛び回り、資料を集め、家に帰ってきても魔法研究に没頭していた。雇われた家政婦に育てられていたが、一人で歩けるようになるとそれすら打ち切られ、研究の手伝いを始めた。やがて一通りの基礎研究を終えると、後は自分でやれと放任された。
だからこそ今の自分がある。
放任で良かった、とまでは思わないが、その家庭を軽んじることは今のわたくしに対する侮辱でもあるのだ。
「……不愉快にさせてしまったのなら申し訳ありません。ですがわたくしも、アナタたちを良い友人だと思っています。それはきっと、どんな家柄であっても変わりませんわ」
気まずくなったので適当にフォローしてから席を立った。
教室を出るときに──今の、良い友人というフレーズが勝手に口から出てきたのは、ちょっとよくねえなと思った。
悪役令嬢としてたるんでる気がしてきたな……
「あら、アモン先生」
廊下を歩いていると、ルシファーの部下が向かいから歩いてきた。
相変わらず不健康そうな見た目してるな。
「ピースラウンド嬢か。先日のレポートは非常によくできていたぞ」
「それは何よりです」
優雅に一礼する。
アモン先生は周囲を見渡し、人気のないことを確認するとそっと数歩距離を詰めて声を落とした。
「体調はどうだ」
「上々ですわ。ルシファーの意識は感じませんが……」
「当然だ。本体がこちらの世界にやって来るのは、終末の日を除けばイレギュラー中のイレギュラー。そうポンポンと来てたまるか」
苦々しい表情でアモン先生──大いなる侯爵、悪魔アモンはわたくしの身体を瞬時にスキャンする。
「因子は魂に埋め込まれているな」
「身体ではなく、ですか」
「全ての存在を物質的に捉えるのは人類の癖か。身体とは切り分けられる、物質的に存在しない別のレイヤー……そこに魂は確かに存在する。心臓に刻むよりよっぽど根深く、解除のしようがないものだ」
ルシファーの意識を下ろされた後。
わたくしの中に、ルシファーの因子が刻まれているとアモン先生は教えてくれた。
コワ~……みたいな感想しか出てこなかったが、要はわたくしの闇落ちが世界滅亡のトリガーになりかねないのだとか。
「心身共に健全な状態を保つことが一番だ。そのあたりは気をつけておけ」
「心得てますわ。寝る前にASMRとか聞けたらいいのですが」
「……お前とルシファーはたまに似ているな。その、訳の分からん言葉を突然話すあたりが実に顕著だ」
そういやアイツ、Kindle読みあさってたな……
「あっ、そういえば一つ質問が」
「何だね?」
ふと気になっていたことを尋ねようと、咳払いした。
「先生は、わたくしが禁呪保有者だと……いつから知っていたのですか? やはりルシファーから聞いたのでしょうか」
「いや。ルシファーはもちろん禁呪を習得した瞬間に把握していただろうが、それは手下の悪魔たちに伝えられてはいない。元より、地獄にてルシファーと謁見することはそうないからな」
「余り姿を見せないと?」
「地獄にいる状態でやつの存在を認識するのは至難の業だ。数万年に一度ぐらいなら、人の形を取って現れることもあるが……まあともかく……我が輩は君が禁呪『
直接? ルシファーじゃなくて?
え、誰だよ。
「……知らないのか」
「え、ええと。何の話かすら分かっていないのですが……わたくし、アモン先生に話した覚えはありませんわよ」
なんのことかと眉根を寄せていると、アモン先生は驚いたように目を見開く。
それから逡巡するように視線をさまよわせ、彼はわたくしの目を遠慮がちに覗き込み。
「君の父親だ」
「──────」
息を呑んだ。言葉を失った。
「君の父親……マクラーレン・ピースラウンドに。我が輩は一度地獄で叩きのめされ、そして『
……………………
わたくしは中庭の片隅でぼけっとしていた。
秘密のカフェテラスに行こうかと思ったが、やめた。なるべく知ってる顔の来ない場所にしたかった。
あ~あ。
なんだかんだでショック受けてる、というのが、一番ショックかもしれない。
父親が自分の元には全然顔出さないのに、地獄でなんか悪魔とバトってるって。どういうことだよ。何も分からねえ。死んだの? いや、地獄ってそういう死者が行く場所じゃなくて、純粋に異世界らしいから……まあ、殴り込んだんだろうな。
何してんだよ、あの人。
〇鷲アンチ 気にしてる、か?
〇みろっく 詳しくない、マクラーレンって暗躍ポジだったの?
〇火星 暗躍……ではない。一応だけど……
〇つっきー ルシファー様と半分同一化してるの羨ましい……でも私はその立場にはなれない……頑張って欲しい……
コメント欄もしんみりしていた。
これはいけねえな。
まあ、それはそれ。これはこれですわ。父親が怪しくなってきたので、悪役令嬢として箔がついたと考えましょう!
〇トンボハンター まあそうかも
〇ミート便器 そのテンションが一番良いよ
意味もなく肩をグルグル回して、芝生の上に座り天を見上げる。
黄昏れている暇はない。
もっとこう……悪役令嬢らしさを重視していきましょうかね。一見するとゆるふわ系だけど裏では暗躍してる系に軌道修正狙っていきますわ!
〇red moon もうここから入れる保険はないぞ
〇宇宙の起源 既に頭がゆるふわしてるから合格だな
殺しますわよ!
〇無敵 正体現したね。
しまった……!
軌道修正が一発目で頓挫し、わたくしは唇を噛んだ。
ぐぬぬ……そっちは気楽で良いですわよねえ、ロールとか特になくて……! 流石に神様と言うだけあって、何でもできそうですものねぇ!
〇火星 急にひがみ始めたな、ちなみに何でもできるワケじゃないぞ
〇苦行むり まあ誓約あるからな
〇101日目のワニ できることを制限するから、俺たちは権能を維持してるというか、なんというか。説明がめんどいんだよなこの辺
えー。なんか神様なんですし、もっと大仰に予言してもいいのですよ?
誰かがこっちに降りてきて、ルシファーをボコボコにするとかしてもいいじゃないですか!
自分で言っておきながらなんだけど、流石にナシだな。
どんな最低系だよ、とせせら笑われるだろうと思いながら、コメント欄を見て。
〇無敵 ああ、何? 神様が本気で万能だと思ってるクチだったか?
一瞬、言葉に詰まった。
コメントをくれる人、じゃない。そういう関係性や仮の名称が全部剥がれた、生の存在を感じた。ぞわりと背筋が粟立つ。
〇日本代表 やめろ
〇無敵 悪かった
明らかに踏み込んではいけない領域に話が片足突っ込んでいた。
掘り下げるのはまずそうだな、と配信画面から視線を逸らす。
「おや、マリアンヌ嬢か。一人とは珍しいな」
その時、顔見知りがあんまり来なさそうな場所だというのに、名前を呼ばれた。
低い声には聞き覚えがある。わたくしは緩慢な動きで背後に振り返った。
「ジークフリートさんですか──ウボァ」
変な声が出た。
わたくしの方へ歩いてくる彼は、実戦想定の軽装備でなく、普段のラフな私服でもなく。
白いシャツに簡素なベストを重ねた、好青年スタイルだったのだ。
「そ、その服装は?」
「ああ、これか。部下たちに、制服をビシッと着ている学生たちの中で生活するなら、オレたち騎士もそれなりに衣服を整えた方がいいんじゃないか、と提案されてな」
は、破壊力たっけー……!
〇無敵 スクショスクショスクショアンドスクショ
〇外から来ました そういやお前ジークフリートさんの女とか名乗ってたな
〇無敵 んほ~私服CGたまんね~~~
〇日本代表 きっしょ……
「どうだろうか。部下にこれがいいと押し切られてしまってな。オレのような無骨者に、似合うとは思えないが……」
「その部下の方に褒美を取らせましょう」
「突然貴族みたいなことを言い始めたな。あっ、貴族だったか……」
随分根本的なところを再確認しながら、ジークフリートさんがわたくしの隣に座る。
「何やら、張り詰めた表情だったが」
「……誤魔化せませんわね。情けない話、少し余裕がないと言いますか」
考えるべきことは山ほどある。
追放狙いで、現状現実的なルートは二つ。
一つは国王アーサーと約束した、全ての禁呪保有者を打倒した暁に、国の総力を挙げてわたくしと戦ってもらうというもの。
こいつは時間こそかかるが、最後の戦いで勝とうが負けようが追放確定できるので安定ではある。
もう一つは……ルシファーの因子をうまいこと使えないか、というもの。
ただ、大悪魔降臨のトリガーになれる状態ではどう考えても追放されないだろう。ならば自然な流れとしては、降臨させたルシファーごと、因子を消去されるしかない。
因子を取り除く方法さえ分かれば、それをユイさんたちに活用してもらい、ルシファーごとわたくしを打倒。責を取って追放……という流れが見えている。
「君が色々考えるタイプだというのは、知っているつもりだ」
考えを巡らせていると、隣でジークフリートさんが太陽を見上げて呟く。
「だが、少しは余裕を持っても良いんじゃないか、と思う」
「……余裕ですか。具体的に、どうやって?」
「所感だが。君は……少しは、負けておくことにも慣れておいた方がいいのかもしれないな」
「ふーん?」
「一瞬で顔が殺人鬼になったな」
〇火星 この人躊躇なく地雷踏むことあるよな……
〇無敵 タフだからね
「別段、戦いで負けろと言っているわけじゃない。例えばゲームなんかで負けてみて、そこから新しく見えるものもあるはずだ」
「ゲームは戦いですが」
「言葉が通じないのか?」
何も間違ったことは言ってないだろ。
「例えばじゃんけんなんてどうだ。負けてみるにはいいゲームだと思うが」
「分かりました。わたくしはパーを出すので、グーをお願いします」
「それは勝利と呼んで良いのか……?」
困惑しているジークフリートさん──甘いな。
どうせ裏をかいて、あえてグーを出してくるだろ? わたくしは有言実行の女、宣言通りに当然
〇無敵 お前は頭がパーだしそれでいいと思う
お前は後でグーで殴る。
「では始めようか」
「ええ。最初はマリアンヌ!」
「聞いてきた中でも一番ひどいかけ声だったな。君はグーというよりはパーだから不適切だろう」
「誰が頭がパーですか!?」
「即座に通じたあたり、自覚はあるようで安心したよ。かけ声に自分の名前を採用する人間はどう考えても頭がパーじゃないか」
しれっと凄い勢いでディスってくるじゃねえか。
「では普通に……最初はグーですわ。グーで行きましょう。最初はグー。で、始めます」
「タイミングをズラしてテンポを握ろうとするの止めてくれ。じゃんけんで小技をそこまで駆使しなくて良い」
「では……最初はグー」
「「じゃーんけんぽん」」
わたくしはパー。ジークフリートさんはチョキ。
彼はチョキを、蟹のはさみのようにくいくいと動かして悪戯っぽく笑った。
「オレの勝ちだな」
「もう一回ですわ」
「言うと思ったよ」
じゃーんけんぽん。負け。
じゃーんけんぽん。負け。
じゃーんけんぽん。負け。
負け。負け。負け。
負け負け負け負け負け負け負け負け負け!!!
負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負負!!!!!!
「はあああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!」
ブチギレてわたくしは立ち上がった。
「おかっ、おかしいでしょうこんなの!? じゃんけんは確率ゲームのハズですわよ!? メンタリズムですか!? わたくしが何を出すのか絶対分かっててやったでしょう!?」
「ああ。分かっているとも」
動きを止めて、騎士の顔を睨み付ける。
彼はクールに肩をすくめた。
「手の筋肉の動きから、何を出すのか分かるんだ」
「インチキですわ!」
堂々の反則じゃねえか!
〇無敵 んほ~!!たまんね~!ジークフリートさん、流石だ……!
〇TSに一家言 さっきからずっとんほってんなこいつ
〇みろっく 反射神経とかそういうのすら超えてるのさすがに笑うわ
〇無敵 その雑魚やっつけちゃってくださいよ!
雑魚? 雑魚っつったか?
あっっっったまきた。
「む。どうしたんだ、マリアンヌ嬢」
わたくしは立ち上がったまま、静かに右手を天へかざすと。
瞳を閉じ、唇を開いた。
────
「は???」
────
「おい……君、それはちょっと、いや正気か? あんまり正気なのを見たことはないが、正気か?」
────
「忘れてるかも知れないが、オレがここにいるのはユートの警護もそうだが、君という禁呪保有者を監視するためでもあるんだぞ」
────…………………………
「大分悩みはしたが結局止まらないのか!」
────
詠唱完了。
知るかよ。血の滲むような修練の果てに手に入れた力、どう使おうがわたくしの勝手だろーが!!
「
全身から流星の火花を散らし。
双眸に流星の瞬きを宿らせて。
わたくしは仁王立ちでジークフリートさんを睨み付ける。
「 も う 一 回 で す わ 」
「……そういうところだぞ」
ジークフリートさんも立ち上がり、真剣な表情で向き合う。
出力は現状維持できる最大値の12%。十二分だ、校舎から女子寮までひとっ飛びできるほどの出力。
「暴れ出すとかそういうのじゃなくて良かったよ。ならやろうか。実際……その状態の君と、渡り合えるかどうかは確認しておきたかったんだ」
「良い機会ですわね。差を思い知りなさい!」
「行くぞ──」
「最初は
「分かった! もうそこは自由にしてくれ!」
「「じゃーんけん──」」
刹那だった。
ジークフリートさんの筋肉の動きが分かる。なるほど。こちらがツッパリフォームでやっと認識できるものを、この人は常時認識できるのか。頭おかしいんじゃねえの。
見える。指へと伝わる、力の伝導が見える。五指全てへ力が伝わっていく。パーだ。
もらった。
「「──ぽんッッ!!」」
わたくしは──チョキ。
ジークフリートさんは──グー。
「は?」
「読めるだろうと信じていたぞ。指を開こうとする力を、指に伝達されてからねじ伏せた。なるほど……読み合いの勝負に持ち込めば、まだ勝機はあるということか」
「は?」
「ふっ……なるほどな。ああ、良い機会になった。まだオレも、捨てたものじゃないな」
「は?」
彼は決して勝ち誇らない。むしろ謙虚に、自分にできることを確認できて良かった、という表情を浮かべている。
分かるか? それが一番屈辱的なんだよ。
怒りの余り肩が震える。
「……もっと」
「?」
「もっとですわ、
「おい、上限があるんじゃ……!」
「あっ」
「あっ!? あっと言ったか!? 大丈夫なのか!?」
何か──ブチンと、線の切れる音がした。
解放された演算リソースが、今まで見えていなかったものを視認する。第六感じみた感覚的にしか感じ取ることしかできていなかった魔素の流れを、光の帯として認識できる。
「これは……なんと……!? 全身に力が湧き上がってきます……!」
出力は体感では20%程度。だが、数字の問題じゃない。何か根本的な、出力源が一つ上のランクに到達した。
見れば分かる。ジークフリートさんの体内を加護が循環していた。なるほど、他の騎士たちとは桁違いのパワーを発揮するのも頷ける、異常な活性具合だ。
「これなら勝てる……!」
「──ッ。まだ。まだ、高みへと至るというのか君は……だが。オレは──オレは、決して、負けるわけにはいかないッ!!」
ジークフリートさんが雄々しく叫ぶと同時。
彼を見て、知らない単語が脳裏をよぎった。
今、この騎士は擬似
「……ッ! これは……なんと……! 全身に力が湧き上がってくる……!」
「アナタも限界突破してどうするんですの!?」
収拾つかねーじゃねえか!
「行くぞ……最初は
「ぐっ、上等ですわ」
「「じゃーんけん──────!!」」
結局その日。
日が暮れるまでわたくしとジークフリートさんはじゃんけんを続け、互いに覚醒した後は五分五分の勝率で、第一次じゃんけん決戦は終わりを告げるのだった。
「イデデデデデデデデ~~~~~~~~~!! 全身が沸騰していますわ……!!」
「マリアンヌさん、湿布ここに置いておくので、自分で貼ってくださいね」
20%の代償で夜中ずっと全身が痛んでいたが。
事情を知ると、ユイさんはものすごい冷たい視線で看護を放棄するのだった。
マリアンヌ・ピースラウンドは夢を見る。
浅い眠りであっても、夢を見ている。
いつも通りの、自分の結末。いつか来る破滅。受け入れた終局。
それでも彼女は変わらない。
『いつか死ぬのなら』
『惨めに追放され、野垂れ死ぬことが決まっているのなら』
『せめて一瞬だけでも輝きたい』
『……宇宙を漂うゴミが、プラズマ化する際に放たれる発光現象に過ぎないとしても』
『それでも』
『あの美しい光をずっと、ずっと、追い求めている────』
本作はパワー・アントワネットとは無関係ですのでご了承ください