配信中です。 | 上位チャット▼ 〇鷲アンチ おいどうするんだよこれよおなあ! 〇適切な蟻地獄 知らない言葉しか出てこねえ!そういうゲームだったのコレ!? 〇外から来ました 死に設定の多いゲームとは聞いていたが!聞いていたが! 〇つっきー ルシ様と公然デートなんて、羨ましい……!だけど幸せになってほしい……!私は……私はどうすれば……!? 〇苦行むり この人ある意味ほんとブレねえな 〇無敵 ……ちょっと世界形成プロセス巻き戻して観測するか? 〇日本代表 それがロールバック弾かれてるんだよ 〇ミート便器 お前それ権能制限食らって……え? 〇火星 は?これまさか神域侵犯案件なのか? 〇日本代表 今も観測できてるのはマリアンヌと繋げたラインを必死に維持してるからで、そのラインも気を抜いたら一瞬で切られそうなんだよね 〇みろっく ちょっ、え?運営不全起きてるのに干渉できないって……え? 〇日本代表 はっはっは。もう何も考えたくない 〇無敵 お前……ちょっと休め……いや休むわけにはいかないのか…… |
【勝手にルートを】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【作るんじゃあない】 983,456 柱が視聴中 |
クソデカゴーレムが顕現し、その肩からユートがこちらを見下ろしている。
「それだけの巨体、制御も大変でしょうに」
「お気遣いどうもな。だが、実際そうでもねえんだわ」
へえ、と相づちを打ちながら、魔力の循環路を確認する。
分厚い装甲に覆われて詳細を視認することはできないが、やはり足下から魔力を吸い上げているのは分かった。
正面から砲撃を撃ち込んで、どこまでの痛手を負わせることができるか。やってみないと分からないが……まあ、六節とかじゃ焦すこともできないだろう。
〇火星 だろうな。アレ、モロに十三節詠唱からの正統派生だし
〇ミート便器 どっかの誰かのツッパリフォームとは違う正統進化じゃん
こっちも正統進化じゃい!
となるとやはりこちらも、ツッパリフォームを解除し、十三節詠唱の砲撃を叩き込むしかない。
ただなあ。禁呪の使用は許可されたけど、全力の撃ち合いまでやっていいかどうかは微妙なんだよな。ていうか単純に、禁呪の結界といえど禁呪同士の激突に耐えられるとは思えない。
まあ結界ぶち壊された国王の顔が見てみたくないと言えば嘘になるが。
〇トンボハンター 国王の胃をいじめるのはやめて差し上げろ
〇101日目のワニ 禁呪二個に禁呪一つで勝てるわけないだろ!
思えばリザード相手には、最後は無理矢理火力で突破していた。
あれは成功したから良いものの、格上相手にあんな自爆まがいの特攻しか選択肢がないままでは、命が幾つあっても足りない。
「さて、流星使い。お前の評価を聞きたいんだが……ハッ。いい目だねえ。どうやってぶち壊すかを考えてやがるな」
「端的に言えば凄まじいの一言に尽きますわね。これが戦場なら、ゴーレムは無視して迷わずアナタを直接狙います」
「だろうな。お前が戦士なら。あるいは俺が敵対する兵士ならそうする」
彼は悠々とゴーレムの頭部に手を当てて、不敵な笑みを浮かべる。
そして。
「んじゃあさ。命を懸けた戦場じゃなくって、互いの誇りをかけた戦いなら?」
「当然────そのオモチャを粉々に破壊して差し上げますわ!」
啖呵を切ると同時、わたくしは大きく横に回り込みつつ右手に魔法陣を展開。
「
ツッパリフォームと別枠で
狙うのは当然、大地と接続した両足!
「砕け散りなさい!」
隕石を象った魔力砲撃が魔法陣から飛び出し、レーザービームのように脚部を穿つ。
しかし。
「効かねえなあ!」
「チィ……!」
煙が晴れた先には、無傷の脚部。当然か。
ゴーレムがわたくしを見据えると、その右足を振り上げる。一挙一動で大気が爆砕され、余波に身体が吹き飛ばされそうになる。
ここまでスケールが違うと、攻防が成立しない。何せ羽虫を払うどころか、方向転換するだけで軍隊を蹴散らせる有様だ。
「踏み潰せ!」
主の命令に従い、ゴーレムが足の裏でわたくしをぺちゃんこにしようとする。
さっきから見下しやがって!
「おあいにく様! 待ってましたわよ!」
右手を
身体前方に計四つの魔法陣を横並びに展開させ、魔力を伝達。
「
「詠唱改変だと……!?」
「──
詠唱改変による時間差砲撃。
四つの魔法陣からコンマ数秒のラグを挟んで、次々と砲撃が放たれる。足裏の同一箇所に狙い過たず着弾。
〇火星 威力を落とさず並列化か!
〇適切な蟻地獄 こいつその辺の速度と精度も上がってるな……!
「時間差攻撃か! だが一つ工夫しただけで破れるほどヤワじゃ──」
「────お忘れですか?
煙を突き破ってわたくしが飛び込んだのを見て、ユートの顔色が変わる。
バチリと、右手が紫電を散らす。拳の先から肘にかけてを順に、流星の輝きが覆う。
「右腕限定上限解放! 25%悪役令嬢パァ────ンチッ!!」
まったく同一の部分に四連射。そこから本命を叩き込む、定石通りの波状攻撃。
叩きつけた拳を起点に、ゴーレムの全身へと衝撃が通っていく。
右足がバラバラに砕け散り──破片が、空中に静止した。
「な…………ッ!?」
「どうやら、再生力を甘く見ていたみてーだな」
大慌てで距離を取る。
空中の破片が巻き戻し再生のように脚部を復元し、わたくしがいた地点をずしりと踏み潰した。
「言ったはずだぜ? 『灼焔』最大のアドバンテージは持続性……一帯の魔力が尽きない限りは無尽蔵に戦い続けるタフネスこそが売りだ! そこをナメてもらっちゃ困るな?」
ちょっとこれ本気でどうしようもないのでは? このスピードで再生可能なら、連射で押し崩すんじゃなくて一発で勝負を決める必要がある。
間合いを計りつつも、冷や汗が止まらない。打開策が思いつかない。
十三節を叩き込むしか、なくね?
「さあさあ続きだ! 派手に踊ってくれよ!」
「チィィ──!」
豪腕の一振り。巨腕の薙ぎ払いは、広範囲攻撃として成立するスケールだった。
両足に出力を集中させ、大きく跳躍し後退する。
「その逃げ方はよくねーぜ、マリアンヌッ!」
「な……!?」
完全に読まれていた。左腕を振るいながら、ゴーレムは右腕を引き絞っている。
薙ぎ払いは次の一手への準備動作に過ぎなかったということか。
着地した瞬間をピンポイントに狙い澄ました、巨躯の右ストレート。緩慢さのない恐ろしいスピード。
「両腕限定上限解放! 20%悪役令嬢ガァァァァァドッ!!」
「そのかけ声本当に必要か!?」
巨大な拳を、両腕で受け止める。
接触しただけで強い衝撃が全身を叩く。上半身が消し飛んだかと思った。
「ふ、ぎぎぎ……!」
だが──拮抗できている。靴底で地面を削りながらも、なんとか耐えられている。
「ぎぎぎぎぎぎっ……!」
「お、おいおい……マジで受け止めるのかよ。やっぱスゲーなお前」
テッメェさっきから見下しまくり余裕出しまくりだな! クソムカつく!
「マジでお前は俺より先を行ってると、俺は思ってる。だから敬意を持って、お前に勝つ!」
「寝言は……寝て……いいなさい……ッ!」
「いいや──もう布石は打ってる」
その時だった。
後ろへじりじりと押し下げられていたわたくしの足が。
ずぷとイヤな音を立てて────
「は?」
大慌てで見渡すと、ぼこぼこと、アリーナの地面が泡立っていた。
……ッ!? 液状化している? いいやこれは!
「俺の『灼焔』は、地面を介して大量の魔素を取り込む禁呪。ならよお、考えるべきはこんなゴーレムを造り出すことじゃねえよな。戦略級だってことを考えれば、多分これが本来の使い方なんだろうよ。それは……一帯の地形を丸ごと掌握して、超高熱のマグマで満たすことだ!」
〇みろっく これって、そうなの?
〇鷲アンチ 最適解なのは確かだけど、できるだろうって考察されてたレベル。マジモンを見るのは初めてだな……
ツッパリフォームの紫電が激しく散る。
地面が人体を融解せしめるほどに高熱を持っていて、それを弾くために出力を自動で上げているのだ。
冗談じゃない! こんな不安定な足場で踏ん張れるかよ!
「禁呪以外の戦略級魔法、つまりは十二節詠唱魔法の研究をちょっとしてみたんだがな。あれは戦場を激変させるために、外見すら計算していた。人間の心理も組み込んだ見事な魔法だよ。同時に思ったんだ──その考え方、使えるよなぁ?」
ゴーレムの肩に乗って、ユートが厭らしく笑みを浮かべる。
「こいつを顕現させりゃ、こっちを見るよなあ! デカイから顔を上げちまう! 足下なんて気にしなかっただろ!? 当然だ、どう見てもこっちが本命なんだから! 強力な魔法であるほど外見は派手なんだからな!」
「……ッ!」
悔しいが彼の言うとおりだ。手のひらの上で踊らされていた。このわたくしが!
足下からマグマが迫り、右ストレートが変わらず両腕を封殺している。
どうにも身動きができない。出力の突破もできない。
呻きながらも必死に思考を回す。だめだ考えるのを止めたらマジの敗北だ! 考えろ考えろ考えろ!!
「ぐ、ぐ、ぎぎぎぎ……」
下手に気を抜くと拳に圧殺される。
このままではマグマに体力を削り殺される。
どのみち、いずれ力負けして、死ぬ。
一筋の光明を探して頭脳がフル回転するが、突破口が見つからない。
〇TSに一家言 これさあ……詰んでね?
〇つっきー ルシ様の隣に立つならこんなんで負けんな!
言われなくても分かってる!
何か、何かあるはずだ! 少なくとも片方さえ突破できればまだどうにかなるのに……!
「仕上げと行くぜ!
「えっちょっ、そのかっこいい名前はズル──」
言葉の途中で。
ゴーレムの右の拳が、内側から炸裂した。
構成する物質がマグマなら、それを至近距離で炸裂させ攻撃に転じさせるのは実に合理的だ。再生も超高速で行われる以上ノーデメリットに近い。
いやいや。
そうじゃなくって。
お前これ完全に殺す気じゃねえか──!
〇無敵 でもお前、半端にHP残したら第二形態移行して超火力で逆襲してきそうだし……
叫ぶ暇もなく、わたくしの視界が烈火に埋め尽くされた。
弾頭のように炸裂した拳が、一瞬で再生する。
マリアンヌがいた地点をどす黒い煙が覆うのを眺め。
「こ、これ……死んだんじゃ……」
安全地帯に避難していたユイは流石に頬を引きつらせながら指摘した。
見ればユートも『やっべえ……』みたいな顔をしている。
「ゆ、ユートッ! 君は加減というものを……!」
「す、すまねえ! だけどあいつ相手だと下手に手ェ抜いたら殺されそうだろ!?」
「それは! それは……あるが……!」
否定しきれずジークフリートは煩悶した。
「とにかく急いでゴーレムを消してくれ! 救護を──!」
ロイが超高速で、足下に雷電を走らせ。
黒煙の中に飛び込もうとした、その時。
「強くなりましたわね、ユート」
突き出した姿勢のままだった、ゴーレムの右腕が弾かれた。
ノックバックに巨体が数歩たたらを踏み、それだけでアリーナ全体が大きく震える。
「ええ。認めましょう。先ほどまでの戦術……良いでしょう。わたくしを一時的に、完全な劣勢に追い込んだと認めます」
ぞわりと、ユートの背筋を悪寒が走った。
煙が一気に吹き荒れ、円状に弾け飛ぶ。
「ですが、勝利を確信するには些か不足ですわね?」
そこに、いた。
全身から流星の輝きを放ち。
そして──両足の裏に、一際強く瞬く魔法陣を展開して。
「わたくしの心臓が動き続ける限り、
マリアンヌ・ピースラウンドが、腕を組んで空中に佇んでいた。
「……すげえな。流星は足場にもなるのか。とんでもねえ応用力だぜ」
「必要に迫られての工夫でしたが、なるほど。これはかなり使えますわね」
トントンと爪先で流星の足場を叩き、マリアンヌは嘆息する。
「体感として、出力の3%程度を割く必要があります。現状も15%を12%に引き下げて、余った3%を回していますわ」
「お前その辺、戦いながら計算してんの? マジで頭やべえな」
「褒め言葉として受け取っておきましょう。今わたくしが修練を重ねている方向性を考えると、悩ましいですが……飛行能力を持った敵への対抗手段、あるいは三次元戦闘の前提とするならば、大変に役立つ技巧ですわ」
マリアンヌが目指すべき極点は、遙か遠くに存在する。
即ち、常時100%のツッパリフォーム──
「……とはいっても、現状ではそもそも、ツッパリフォームは七割程度の出力で既にリソースを使い切ってしまいます。通常の十三節詠唱でも並列させられるのは六節程度。あらゆる方面において不足していると言っていいですわね」
「や、十三節詠唱と何かを並行させるって発想がそもそもおかしいんだけどな」
苦笑しながらもユートは心のどこかで確信していた。
先ほどまでの攻防で、仕留めきれなかった。
ならばこの戦い──天秤は逆に傾いただろう、と。
「ではお見せしましょう。流星を身体内部で循環させるのではなく、外部に固定することも可能だというのなら──宣言します!
「……ッ!」
親指を犬歯で切り、血を飛ばす。
同時、ツッパリフォームの出力を12%から10%に引き下げ。速度は落ちるが、支障はない。
そして10%なら並行して六節詠唱が可能だ。
「
右手を中心にして禁呪構築開始。
今まではただ拳に込めるだけだった威力を、腕全体を覆うようにして尖らせていく。
「
ただ鋭くするだけでは足りない。
必要なのは、破砕力。強固な壁を貫くのではなく、打ち砕くための螺旋!
「──
リザード戦ではツッパリフォームと詠唱は別個に操作していた。
だが今は違う。六節詠唱とツッパリフォームを噛み合わせる。相互に作用させ、一つの力へと昇華させる。
「何、を……ッ?」
「さあ刮目なさい! これがわたくしの新たなる力ッ!」
指を起点に飛び出した血流が腕に纏わりつく。
深紅の螺旋を描き、鮮血が明瞭に──ドリルを象っていく!
「なん、だそりゃァ……ッ!? 掘削用車両になったのかよ、マリアンヌ!?」
「ただでさえ最強の
「メテオメテオメテオ言い過ぎだろ!?」
慌ててゴーレムが右の拳を振りかぶる。
正面衝突を目前に。
マリアンヌはその双眸に焔を滾らせ叫んだ。
「必殺・悪役令嬢ロケットドリルパァ──────ンチッッ!!」
同時に突き出された右の拳が激突。だが拮抗は刹那にも満たない。
「ツァアアアアアアアア──────ッ!!」
ゴーレムの巨大な腕を、ドリルが片っ端から粉々に粉砕する。バラバラになった破片が巻き戻されるが、遅い。既に彼女はその先にいる。
己自身を弾丸に見立て、巨神を撃ち抜く。
まさしくそれは神話の如き光景。
「う、おおおおッ!?」
絶叫するユートの真下。
マリアンヌ(ドリル)は溶岩の巨兵の胸部へ到達し、勢いのまま向こう側への大穴を開け飛び出した。
ゴーレムの巨躯を貫通し、彼女はまさに流星の如く地面へ接触。
大地を削り砕きながらもブレーキをかけ、最後には白い煙を靴底から発しながらも静止。
颯爽と立ち上がり。
鮮血のドリルを解除して。
ビシイと天空を右手で指さし。
マリアンヌが雄々しく叫ぶ。
「
彼女の背後で、光が一瞬球状に溜め込まれ──『
「ぐわあああああああああああああああああああっ!?」
爆風によって天高く舞い上がるユートを背景に、マリアンヌは勝利の勝ち鬨を上げる。
「優れた禁呪とは? 強き禁呪とは? 答えは明瞭に示されましたわ! 最弱に非ず、最強! 始祖にして、頂点! あらゆる威光をかき消し、絶対の勝利を齎し、天をも切り裂く一筋の光! ならば大地如き恐るるに足らずッ! そう──このわたくし、マリアンヌ・ピースラウンドの『
ユートは訳が分からなかった。
確かに最後に見えた光景は、己のゴーレムが繰り出した豪腕を、真正面から粉砕・貫通した女の、歯をむき出しにした、それでいて怖いほどの美しい貌だった。
だが今は、アリーナの天井しか見えていない。明らかに記憶が数秒欠落している。
身体の浮遊感──横を見る。客席が遠く下にある。友人たちが、こちらを指さして叫んでいる。
(う、おぉっ!? 落ちてる!? 落ちてるのか!?)
ユートは一瞬目を白黒させてから、状況を理解して内心で絶叫した。
意識が一瞬飛んだせいか、溶岩の鎧は解けていた。
禁呪保有者とはいえ、生身のまま地面に叩きつけられては無事では済まない。
リンディが悲鳴を上げ、ジークフリートが踏み出そうとする。
(ちぃぃ! 間に合うか──!)
ユートはマリアンヌほど禁呪の詠唱短縮には長けていない。
そして絶戦の後という精神的に疲労もあり、練り上げようとした魔力が霧散してしまう。
(く、そ! おい、マジかよ、冗談じゃねえ……!)
地面が迫り来る。
瞬間、脳裏をいくつかの光景がよぎった。
灰色の世界。
透明になった自分。
存在の不確かさが、自己の根拠の曖昧さが、常に彼を苛んでいた。
しかし。
『わたくしを見ろと言っているのです、
今はもう違う。
世界は色彩を取り戻した。
自分はここにいると、確証を得られた。
その切っ掛けなんて、考えずとも分かる。
(これから、だってのに……!)
恥も外聞もなく、ぎゅっと瞳を閉じた。
ばさばさと制服がはためき、地面が近づいて。
ぽす、と軽い音。
止まった。
違う。受け止められた。
「──あら、無事ですか?」
目を開ければ、見知った少女の顔がでかでかと映り込んでいた。
「……ッ」
「ふふん。これにてわたくしの勝利ですわ! ですから──次はもっと強い新技を編み出しなさい。それすらも打倒して、わたくしは更なる高みへと至りましょう!」
自分を抱きかかえる彼女の瞳に、流星の輝きが宿っている。
夜空を切り裂き、果てしない宇宙の向こうからやって来る、可能性を秘めた光。
(……嗚呼。畜生、そういうことなのか?)
心臓が高鳴る。彼女の両眼に吸い込まれそうになる。
「ああ、言い忘れていました、ユート」
「……何だよ?」
「アナタ、わたくしの
いつかの焼き直しみたいな光景。
ユートは息を吸うと、彼女の両腕から降りて、振り向かずに言った。
「悪いな。言い出したのは俺だが……保留にさせてくれ」
「は??」
まさかの保留に、マリアンヌが真っ白になって硬直する。
(俺はまだ、お前の隣に並べるほど強くねえ。もっと、もっと強くなって、お前と対等の関係になりてえ)
己の拳を見つめて、ユートは強く、強く決意する。
(そして何よりも──
ぎらりとした焔が、ユートの両眼に宿る。
それを見て、走ってきていたロイとユイが、足を止めた。
不自然に見つめ合う三人に首を傾げながらも、リンディとジークフリートはマリアンヌの元に駆け寄っていった。
「……ユート君も、ですか」
「おう。よろしくな」
宣戦布告だった。
言葉にせずとも、意思は伝わった。
「忘れたか? こっちから求婚をしてる話は、なくなってはないんだ。引き続き話を進めさせてもらう」
「──婚約者は僕だよ。天地がひっくり返ろうともそこは変わらない」
「何度フラれようとも、諦めねえよ。タフネスが売りなんだからな」
空間が軋む。
「初めてだ。生まれて初めて──
瞳に業火を宿す者。
「それはおめでとう。祝福するよ。ただ、結末まで応援してあげる義理はない。君の望みは、僕が潰す」
全身から雷電を散らす者。
「むむ……私としては仲良い人が暫定的な婚約者なのは、むしろ変な虫が寄ってこなくて助かるのですが……ロイ君とユート君だと悩みますね……」
しれっと漁夫ろうとしている者。
『…………ッ!!』
三者三様。
まさしく今──恋のバトルも、佳境を迎えていた。
「……あんたいつか背中刺されるわよ」
わたくしの身体に回復魔法をかけながら、リンディは顔をビキバキに引きつらせながら言った。
隣ではジークフリートさんも腕を組み嘆息している。
「凄い話だな。ミリオンアーク家の嫡男と婚約しながらも、第三王子と、隣国の王子にも求婚されるとは」
「つまり──三国志ってことでしょうか」
「ちょっと何言ってるか分かんないわね」
確かに内二名は同じ国に所属してるから、どっちかっていうと内乱だな……
というか聞こえてきた会話的に、ユートが欲しがってるのってわたくしのことか? わたくし、モノではないのだが。
〇鷲アンチ フロートユニット獲得したのマジ?
〇外から来ました 自由飛行ではないけど、この世界って空飛べるの基本的に上位存在の特権みたいなとこあるんですけど……
成程。でしたら、実際大きな進捗だったようですわね。
〇日本代表 あ、ルシファーが言ってたことに関しては、こっちでも一応調べておく。まずはクソジジイを締め上げ直すところからだな……お前も何かヒントになりそうなことがあれば調べて教えて欲しい
〇苦行むり それより人間関係どうすんの?
初めてコメント欄との協力プレーを持ちかけられましたわね。分かりました。
人間関係は……考えたくないです(思考停止)
おかしい。おかしいだろ!
〇宇宙の起源 お前もうちょっとマジメに追放目指してくれや
〇第三の性別 逆だ。本人は真面目に追放目指してこれだから、いっそ追放の逆をいけ
追放の逆?
といいますと主人公として最強を目指す王道バトルストーリーにシフトチェンジでしょうか?
ならばまず他の禁呪保有者を叩きのめし、ルシファーと決着をつけて差し上げましょう!
〇火星 ……………………。
……………………今までと何も変わらないのでは?
〇日本代表 だめっぽいなこりゃ
〇外から来ました だめっぽいっすね……
こいつら、匙投げやがった!
何もかも上手くいかない。いやマジで、大筋では間違ってないはずなのに根底のズレで全部台無しになっている。
はがゆさと苛立たしさに心乱れてこのままだと膝小僧を抱え込んでしまう!
〇無敵 もう一度この手にチャンスをって再走じゃなくてバトルシーンで言うだろお前
うっせー!!!! その通りだよ!!!
トホホ~~~~!
RTAなんてもうこりごりですわ~~~~!!
これにて幕間(幕間……?)終了です
登場人物まとめを掲載した後、次のCHAPTERに進みます
マージであっという間にここすき機能実装されてて笑いました
作る人には本当に頭が上がりませんね
推し作品に爆速でここすきしまくって来ました、楽しい!
NEXT CHAPTER
悪姫窮闘アルカディウス