TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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CHAPTER3スタートです。


CHAPTER3 悪姫窮闘アルカディウス
PART1 黒銀降臨ガールミーツガール


配信は六時間後の予定です。
 
上位チャット▼


日本代表 出て来い

雷おじさん はい……お久しぶりです……

日本代表 全部吐け

雷おじさん えっ

日本代表 吐け

雷おじさん い、いやもう全部言いましたって!

火星 七聖使って何だよ

宇宙の起源 お前のせいで全部滅茶苦茶なんだよ

日本代表 具体的に言おうか?神域侵犯案件が発生してる

雷おじさん えええええ!?知らん知らん知らん!

外から来ました こっちの神域にもちょいちょいアクセス来てんの。マジで上限値取っ払っただけじゃなんねーんだよこんなの、はよゲロっちまえ

雷おじさん 本当に上限値取り払っただけなんです!本当にすみません!

無敵 だってさ

日本代表 ここまで言ってこれしか言わないなら、まあそういうことなんだろ

日本代表 上限値を突破したキャラクターの誰かが、こっちを認識した上で原作を改変してる

日本代表 こないだの脚本家って奴の、恐らく更に裏側にいる存在──それが世界の歪みの根源だ

タイトル未設定

7 柱が待機中

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞳を開いた瞬間に、夢だと分かった。

 一面の業火。惑星そのものが地獄と成り果て、生き残っている生命は自分一人しかない。

 緩慢な動きで、マリアンヌは背後に振り向く。

 

「いずれ来たる終末だ」

 

 地獄を統べる大悪魔、ルシファーがそこにいた。

 

「これは……?」

「おれが顕現した後の、お前たちが住む世界だ。何も残らない──お前を除けばな」

「……そうですか」

 

 人、だったもの。炭化してしまった元生命体たちが山のように積み上げられている。

 

「今更こんな光景を見せつけて、白々しい。だから何だというのですか」

「受け入れろ、とは言わん。お前は最後まで抵抗するだろう。だがその抵抗も俺の勝利という形で終わる。故に──慣れておけ。次の人生を過ごす煉獄だ」

「あら。わたくしの部屋は用意して下さらないんですの?」

「世界そのものがお前の庭になるからな」

 

 大悪魔は周囲を見渡し、つまらなさそうに鼻を鳴らす。

 

「まあいいさ。これは前準備に過ぎない。奴らが構築した光の世界をリセットし、支配の効力を根底から崩すためのな」

「……この世界を構築した存在に、反旗を翻すと?」

「詳細を教えるつもりはない。お前はただ、安らかに在れ」

 

 この野郎、既に亭主関白気取ってやがんのか。

 いいのか? わたくしの得意料理は炒飯だぞ? 中華鍋とか平気でねだるからな?

 

「本題に入るぞ、マリアンヌ……いや、流星(メテオ)使い」

「……ッ?」

 

 呼び名を禁呪保有者としてのそれに切り替えて。

 ルシファーは──どこからともなくとりだしたメガネをかけて、告げる。

 

 

「進捗いかがですか」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 絶叫をあげて、わたくしは全力で地団駄を踏んだ。

 うるせえよ! ユートと戦ったとき以来、進歩がないのはこっちが一番分かってんだよ!

 

「いや……その……上限を、伸ばしたいとは思っているのですが……」

「ふむ」

「今のところ、瞬間的な最大値は30~25%で……その……正直言って、上限行くと大体反動で負傷するので……そもそも上限を伸ばそうにも上限値の出力を出す機会がなさ過ぎるといいますか……」

「成程。ならばこうした夢の世界はもってこいだな」

 

 あ、確かに。

 わたくしはシャキッと気分を切り替えると、滔々と詠唱をスタートさせた。

 

 ────星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)
 
 ────星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)
                                         

 ────射貫け(shooting)暴け(exposing)照らせ(shining)光来せよ(coming)
 
 ────射貫け(shooting)暴け(exposing)照らせ(shining)光来せよ(coming)
                                     

 ────正義(justice)(white)断罪(execution)聖母(Panagia)
 
 ────正義(justice)(white)断罪(execution)聖母(Panagia)
                                          

 ────悪行は砕けた塵へと(sin break down)秩序はあるべき姿へと(judgement goes down)
 
 ────悪行は砕けた塵へと(sin break down)秩序はあるべき姿へと(judgement goes down)
                                     

 ────極光よ、今この手の中に(vengeance is mine)
 
 ────極光よ、この心臓を満たせ(vengeance is mine)

 

「迷わず二重詠唱したな……十三節の詠唱と、最後にコマンド実行を命令する起動言語。懐かしい代物だ。しかしその、詠唱の裏側に詠唱を貼り付けるのだったか。それは非常に興味深い現象だ。おれでさえもが原理を解析できないとは、やはりお前こそがこの世界のイレギュラー。特異点であることに異論はないな」

完全解号(ホールドオープン)──虚弓軍勢(マグナライズ)流星(メテオ)、ツッパリフォーム! シャオラァァァッ!」

「話を聞かずに殴りかかるのはやめろ」

 

 最速で右ストレートを繰り出したが、ルシファーの手のひらにパシイと受け止められた。

 数秒後、反動で全身が内側から吹っ飛びそうになる。

 

「ヒギィ……!?」

「やれやれ」

 

 右手をつうと虚空に走らせ、大悪魔は何やら魔法をわたくしにかけた。

 ぐちゃぐちゃになっていた内臓が一瞬で回復する。

 

「オッ……あ、ありがとうございます」

「構わない」

「ですがラストエリクサーだったのでは?」

「違うな。今のはザオリクではない。ザオラルだ」

「マジですか?」

 

 完全蘇生できたんだけど、ちょっとレベル高すぎませんかね……

 

「それにしても……今の発言といい、色々と学習されているようで。ちょっと知識チートするのやめていただけます?」

「案ずるな。化学兵器を生み出すなど、秩序に反するようなことはしない。あくまでおれがリーダーとして立ち回っていく上で必要な知識のみを身につけているつもりだ」

「なるほど、カスみたいな啓発書を読みあさっているのですか」

「言いがかりはやめろ。おれはあくまで文化的な成長を重視している。何時の時代でも、どんな世界でも、歌や文が人の心を癒やすからな」

 

 それっぽいことを言われた。

 異論はないが、大悪魔にその辺を諭されるとすげえムカつくな。

 

「言葉遣いだってバッチリだぞ。おれとアベックにならないか?」

「もうだめっぽいですわねこれ」

「ええと、何だったか。ラヴなホテルでズコバコ?」

「ナウなヤングにバカウケ!! 史上最悪の言い間違いやめてくださいます!?」

 

 ドのつくセクハラじゃねえか!

 

「人間の文化はウルトラ難しいな……それとも、お前を起点としているからか?」

「今しれっとわたくしをアンテナ扱いしましたわねアナタ」

「常に表出しているわけではない。だが、こうしてお前の意識の中に現れる度、ある程度なら記憶を読み取れる……見ろ。ラーニングは完了した」

 

 彼が右腕をかざす。

 全身から放出された漆黒の光が、腕に纏わり付き──螺旋を象る。

 

「ロケットドリルパンチとは、ロマンに溢れているじゃないか……またおれも一つ強くなったぞ、マリアンヌ」

「な……!? パクりやがったのですか!? このッ、顔の良い佐々木哲平!」

「パクりじゃないインスパイアだ! あと、その罵倒はかなり効くからやめろ!」

 

 子供みたいな言い合いに発展してしまった。

 ルシファーはロケットドリルパンチをしげしげと眺め、難しい表情になる。

 

「それにしても……これ、ドリルなのは分かるのだが。どこがロケットなんだ?」

「ああ、わたくしの場合は血流を擬似流星状態にできるので、常にアフターバーナーの要領で加速できるのですわ」

「ふむ、なるほど。こうか?」

「アッッッ! 音速でパクられた! 説明するんじゃありませんでしたわ!!」

「パクるも何も、成長を還元してもらっているのだがな……」

 

 ……今の言葉。

 ああそうだ。ずっと聞かなきゃいけなかったことがある。

 

「──流星について、ですが」

「ん?」

 

 居住まいを正すと、彼も何かを感じ取ったのか、右手から魔力の光を消し去って向き合ってくれた。

 

「アナタの意識でない、端末が言っていましたわ。流星の本質を、わたくしは違えていると」

「……そうだな」

「では問いましょう。この流星(ちから)は、何のためのものなのでしょうか」

 

 右の拳を胸の前に掲げる。

 十三節分の魔力を溜め込み、今にも暴発寸前の、荒れ狂うチカラの権化。

 ルシファーはしばしの沈黙を挟み、わたくしから視線を逸らした。

 

「教える義務は無い」

「……それはそうでしょうけど」

「ただ一点だけ、知っておけばいい。おれたちは世界に滅びを齎すもの。忘れるな、その流星(ちから)は誰かを守るためのものではない」

 

 ……まあ。

 特に否定はしない。これはあくまで、武力だ。相手を打ち倒すためのものだ。

 んなこと分かってんだよダボが。

 

「人間は繰り返す。愚かな破壊の歴史を、積み上げた憎悪の輪を、何度でも繰り返す。極論、流星(メテオ)もその中の一つに過ぎない」

「…………」

「だから滅ぼすべき、などと陳腐な絶望論者の肩を持つつもりはない。だが根底を間違えたのは事実だ。何度でもやり直せるという事実は、何度でも間違え得るという真理を担保する。分かるだろう、マリアンヌ」

 

 瞳に何かの、憂うような色合いを帯びて。

 ルシファーは至近距離で、わたくしの頬にそっと手を添える。

 は? 勝手に触んな。

 

 

「全然分かりませんわ────!」

 

 

 全身全霊の右ストレートを、ルシファーの頬に叩き込む。

 だが届かない。彼の手のひらがパシイと乾いた音と共に、拳を受け止める。

 

「さっきから小難しい話ばかりして! 精神攻撃ですか、アナタ程の者がなんて姑息な!」

「え……そんなに難しかったか……?」

 

 両足で流星を炸裂させ、一気に数十メートル距離を取る。

 燃え盛る地獄の焔の中。

 大悪魔の金色の瞳と、視線が重なる。

 

「このチカラはわたくしが掴み取ったもの! 他の全てが嘘であったとしても、この輝きは! あの日見た、空を裂く閃光は! それはわたくしだけのものです! それを否定するというのなら──!」

 

 右手に全魔力を装填。叩きつけるのではなく、解き放つための集中。

 一方のルシファーもまた、左手におぞましい闇を溜め込んでいた。

 

「誰が相手であろうとも、浄滅させて差し上げましょう!」

「面白い。少し、遊んでやろう」

 

 両足を地面に突き立て、反動に備える。

 わたくしは全身を使って右の拳を打ち出し、全てのパワーを解放した。

 

 

「悪役令嬢パンチ・バーストオオォォォオオオオッ!!」

 

 

 一方のルシファーは仁王立ちのまま。

 静かに左手をかざし、開いた掌をこちらに向ける。

 

 

無極閃(ロストレイ)破天葬流(ハザードスパーク)

 

 

 ほとんど同時に放たれた、白と黒の光の奔流。

 両者の中点で極光が激突し──拮抗は刹那。いいや。

 そもそも、()()()()()()()()()()()()

 一方的に白が穿たれ、貫かれ、踏みにじられ、跡形も残らず消し飛ばされる。

 

「これが今の、おれとお前の差だ」

 

 黒の奔流が世界を呑んだ。一帯の焔すら、射程範囲の楕円状に消失する。

 残ったのは、無。

 ただひたすらな無だけ。

 

「今のは必殺技ではない。強攻撃ぐらいだ。それでもお前は超えられない──存在の密度が違うんだ。恥ずべきことではない」

 

 ルシファーは静かに、子供に言い聞かせるような声色で語る。

 

「だから恐れるな。焔こそ残れど、痛みは一瞬すら存在しない。お前の愛する者たちもそうして、永久の眠りにつく。分かっただろう」

「ええ──打ち負けるなんて分かりきっていましてよ?」

「!」

 

 ルシファーの見ていた地点に、わたくしはもういない。

 放たれた黒の奔流を見て、本能的に理解した。

 あれは勝てない。あれは抗えない。あれはマトモに相手取れない。

 

 ──今はまだ、な。

 

 いつか正面から突破してやるさ。でも今は無理だ。今のわたくしでは余りに不足。

 故に、刹那で放出を切り上げて横へ逃れた。そこからは両足で駆け抜けて接近。

 

「マリアンヌ、お前は──!」

 

 振り向きざまにルシファーが腕を振るう。

 打ち込んだ右ストレートが無力化される。

 構わない。

 

「一矢は報いましたわ」

「……!」

 

 ルシファーの脇腹にめり込んでいる、()()()

 接触から数瞬遅れてインパクトが発生。

 空気の破裂する甲高い音を立て、ルシファーの身体が弾き飛ばされる。

 砂煙を上げてゆうに数十メートル転がっていく彼を見ながら、砂煙を被ったブラウスとスカートを手で叩いた。

 

「まったく、淑女の身だしなみには気を配りなさい」

 

 砂煙の向こう側で、大悪魔がゆっくりと立ち上がる。

 全身には傷一つない。ノックバックは発生するのにダメージ判定ないのかよ。やってらんねー。

 ただまあ、一つだけ言える。

 

「憎しみでわたくしを戦わせようとしたのなら、おあいにく様。今は勝てない相手でも、それは後々を考えれば、わたくしが強くなるための糧! ならばむしろ感謝いたしましょう──簡単に乗り越えられる壁でなくて良かったとッ!」

 

 天を右手で指さし、わたくしは声高らかに叫ぶ。

 それを聞いて──大悪魔は、その恐ろしいほどに美しい貌をニィとつり上げた。

 

 

()()()。それでいい、マリアンヌ。それでこそだ──」

 

 

 お前それしか言えないのか?

 

 

 

 

 

 

 

「っていうことがありましたの」

「アモン先生が泡吹いて倒れたぞ──!?」

 

 火属性魔法の講習中、ユイさんたちに今朝見た夢を語っていたら、先生がぶっ倒れた。

 担架で運ばれていく先生を見送って、自習となってしまったわたくしたちは中庭に座り込んで雑談を再開する。

 

「なるほど。夢の中で戦ってトレーニングですか……」

「ユイさん、良いこと聞いたみたいな顔してますけど、あれやろうと思ってやれるんですか……?」

 

 その戦闘マシーンっぷりで次期聖女は無理でしょ。

 

「夢の中にまで出てくるなんて、許せないね」

「ああ。マジでキレそうだぜ」

 

 一方でロイとユートは、剣呑な表情で低い声を出している。

 

「僕の夢の中にマリアンヌが出てきたらいいのに……夢の中なら何でも着てもらえるのに……」

「その中学生みたいな性欲本当になんとかしたほうがいいですわよ」

「う゛っ」

「即死かよ。ガラスのハート過ぎないか?」

 

 冷たい視線を向けると、ロイは胸を押さえて苦しみ始めた。

 

「現実で罵られて、夢で癒されるなんて……マリアンヌ、君は僕をどうするつもりなんだ!?」

「どうするも何も、どうかしてると思いますが」

「しれっと夢にマリアンヌが出てくる前提で話進めるのも大概ヤバイしな」

 

 にしても、着てもらえるってお前コスプレ趣味あんの?

 

「年頃の男子なので、そのあたりは多少大目に見てあげようとは思いますが。当人の前でそういったことを話すのはどうかと思いますわ」

「本当です。マリアンヌさんは大目に見ますけど、私は大目に見るつもりはありません」

 

 隣のユイさんが加護の力を滾らせながら言う。

 

「はいはい。ユイそこまで。自習中に乱闘騒ぎなんて、アモン先生に迷惑がかかるわよ」

「むぅ」

 

 リンディが手を叩きながら、ユイさんを諫める。

 何度でも言うけどお前ら決闘したとは思えないぐらい仲良くなったな……

 

「ならこういうのはどう? マリアンヌのことをちゃんと知れば、男子だって歪んだ性欲を持たないはずよ」

「つまり?」

「あんたの好みのタイプとか、私たちすら知らないじゃない」

 

 え、修学旅行の夜みたいになってきたな。

 好みかー…………

 

「まあ、そうですわね。物静かでミステリアスな方は好きですわね」

「へえ、クール男子ってやつか。いけすかねえけどな~」

「あ、女の子の話ですわね」

 

 やべっ意識ずれてた。

 好みの異性ね。そうかわたくしにとっての異性、男子だわ。

 男子の好み? ロイかな……

 

「……リンディさん。私、物静かでミステリアス、いけると思いますか」

「ん~、顔だけならギリ。でもあんた、最近すぐキレるからちょっと厳しいと思うわよ」

「な……!?」

「えっなんで驚いてんの!? 自覚ナシ!?」

 

 何やら女子が揉めていた。

 一方でロイが顎をさすりつつ思案顔になっている。

 

「成程。物静かでミステリアス……ちょうど昔のマリアンヌみたいな感じかな」

「来たわね、ミリオンアークの幼馴染マウンティング」

「といってもアナタともほとんど話してなかったと思いますが」

「カウンター飛んできましたよ」

「ああ。会話がなかったという思い出があるね」

「こいつ無敵か?」

 

 ユイさん、リンディ、ユートが戦慄した様子でロイを見る。

 無から有を生み出しやがった。等価交換の法則ぶち壊してんじゃねえよ。

 

「まあ、付き合いは長いので、後々にはちゃんと会話もするようになりましたが」

「その通り。つまり、マリアンヌの婚約者は僕だということだね」

「文脈凄いことになってますが……まあそうですわね。ですが、入学してからは今までより格段に刺激的な毎日ですわ。その点は皆さんに感謝してます」

「うんうん。僕もマリアンヌの婚約者として、一緒にお礼するよ」

婚約者面(あたりはんてい)デカいなお前!」

 

 繰り返されるマウンティングに耐えきれなかったのか、ユートが大声を上げて立ち上がる。

 

「上等だ! 殴り合おうぜ! 正面からお前と殴り合ってみたかったんだ!」

「いいね。僕もちょうど、君を懲らしめないとと思ってたんだ」

 

 火焔と雷がぶつかり合って、混ざり合って火花と散る。

 わー。綺麗な花火だなー。

 

「現実逃避してないでなんとかしなさいよ」

「そうですよ。あそこで潰し合ってもらうのはもっと後なんですから」

 

 ヤダ、この次期聖女、怖すぎ……?

 

 

 

 

 

 

 

 授業を終えて、わたくしは一人、街に繰り出していた。

 今日は魔法の研究論文がまとめて新しく発表される日だ。どんな出会いが待っているかと考えるだけで浮き足立つ。

 

 ……最近はちょっと配信サボりがちというか、やっても全然視聴者数が増えないんだよな。

 なんつーか、向こうは向こうで調べ物で忙しいっぽい。

 思えば単独で、なおかつ配信もやってないっていう、純粋な一人の時間は久々かもしれない。

 

「あら」

 

 そういうわけで自分の時間ってやつをエンジョイするべく。

 事前に申し込んでいた整理券片手に、ウッキウキで専門書店に向かっていると。

 わたくしの前方を歩いていた一人の少女が、スカートからハンカチを落とした。

 

「そこの、銀色の髪の方! 落としましたわよ」

 

 ハンカチを拾い上げてから、早足に近づき背中に声をかける。

 

 

 ──────ふわりと銀髪がなびいた。

 

 

 言葉を失った。

 腰まで届くほどに長い銀髪。

 鼻筋の通った、女神すら嫉妬するであろう美貌。

 氷のように凍てついて、けれど澄み渡った蒼い両眼。

 黒いドレスに身を包んだその少女は、恐ろしいほどに美しかった。

 

「ありがとう、助かったわ」

「い、いえ」

 

 思わず気圧されてしまう。

 

「あら。もしかして貴女も、論文を買いに?」

 

 わたくしが手に持つ整理券を見て、彼女は微かに目を見開いた。

 何だよ。買ってたら変かよ──じゃなくて。貴女も、って言ってたな。

 

「そ、そうですわね。ええ。ピースラウンド家の長女として、やはり目を通しておかなければと思いまして」

「ピースラウンドの……貴女が噂の、マリアンヌ・ピースラウンド?」

 

 目を数秒白黒させてから。

 彼女はわたくしをまじまじと見つめ、微かに微笑んだ。

 

「まあ、なんてこと。貴女と出会えるなんて……なんという幸運かしら」

「え、えぇ……? ファンの方ですか?」

「一度お会いしてみたかったのよ。優れた魔法使いだと、その、聞いていたのでね」

 

 恥ずかしくなってきたのか、彼女は頬に微かな朱を差して、ぷいと視線を逸らした。

 何だこの子滅茶苦茶可愛いな。

 

「でしたら是非、友人になりましょう。わたくしはマリアンヌ・ピースラウンド。アナタは?」

 

 わたくしの問いに。

 彼女はやや照れながらも、口を開き。

 

 

 

(わたくし)はカサンドラ──カサンドラ・ゼム・アルカディウスよ」

 

 

 

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