TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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PART8 浸食侵犯フルクトゥス(前編)

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上位チャット▼


日本代表 お前が気をつけるべきは2つ

日本代表 1つはゼールの悪役令嬢。まあこいつは今のお前なら楽勝だと思う

火星 原作だと王国を滅ぼそうとしてくるんだけど、正直お嬢とアーサーに勝てる見込みはないわな

外から来ました てか現状悪役令嬢にリソース割く余裕がないよね

無敵 それな

日本代表 じゃあもう1つの脅威について、担当者

無敵 はい……

無敵 え、ああうん、そうね担当者よ俺

無敵 うるさいなあ真面目な話ぐらいできるっつーの

無敵 で、脅威っていうのは大邪竜ファフニールね

無敵 ……いや違うの。本当にいるの

宇宙の起源 お嬢ドン引きで草

日本代表 前にジークフリートさんと一緒に討伐した個体とは比べものにならないぐらい強力だから、気をつけて欲しい

無敵 7つぐらい先のCHAPTERの特殊イベント挟まないと勝てないから、もし遭遇したら逃げ一択な

無敵 え?なんで俺がファフニールの担当者?……色々あるんだよ

【悪竜退治は】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA PART3【お手のもの?】

981,988 柱が視聴中

 

 

 

 

 

 ──王都にて。

 夜の帳が降りた空を、煌々と赤い炎が照らし上げていた。

 あちこちに上がった火の手が、瓦礫の山の中を駆け抜けている。

 破壊された家屋群。あちこちに倒れている騎士や市民。

 王都の一区画は今、地獄と化していた。

 

「ぐ、ぶ」

 

 喉元からせり上がってきたのは、真っ赤な血の塊だった。

 路上に吐き捨てて、男はぼやけた視界の中で必死に顔を上げる。

 

(これほど、までとは)

 

 目の前に女が立っていた。

 美しい銀髪。

 こちらを見下ろす、温度のない碧眼。

 身に纏うは流麗な水のヴェール。あらゆる攻撃をいなし、転じては鋭く練り上げられこちらを切り裂く、攻防一体のそれ。

 

(万能という言葉では生ぬるい……全能と呼ばざるを得ないほど、やれることが多い。いいや、やれないことがないのでは、とすら思ってしまう)

 

 身体がいうことを聞かない。

 当然だ。内臓は弾け飛び、身体各部の筋も断ち切られている。そもそも生きているのが不思議なぐらい、全身をズタズタに裂かれているのだ。

 半死半生の男に歩み寄り、その女は冷たい声で問う。

 

(わたくし)の勝ちね……言い残すことはあるかしら」

 

 彼女の周囲を漂う水のヴェールが姿を変え、鋭い刃となって男の喉に突き付けられた。

 男は周囲を一瞥した。傷ついた騎士たち、逃げ惑う市民たち。

 だが女や、女の後ろで退屈そうにしている少年は、それらには目もくれない。

 

(なるほど。これは……私を誘い出すための罠だったということか)

 

 嘆息し、自分の命運が尽きたことを自覚する。

 顔を上げて、男は最後の意地として、女の目を真正面から睨み付けた。

 

「君たちは最後には敗北する。私を超えた自慢の娘が、必ずお前に勝つ」

「そう。覚えておくわ」

 

 銀色が迸る。

 一閃が狙い過たず、人体を両断する。

 

 

「さようなら──マクラーレン・ピースラウンド」

 

 

 その日。

 王都にて逃げ惑っていた衆目の目の前で、男の首が宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校二日目の朝。

 午前のレクリエーションを終えて昼の自由時間に入るも、生徒たちの様子は微妙に不自然だった。

 ユイさんたちと一緒に、旅館近くの観光地をぶらぶらと歩く。

 制服姿の生徒もちらほら見えるが、やはり覇気はなかった。

 

「……大丈夫かしら」

 

 リンディの心配そうな声が指すのは、特定の個人ではない。

 

「王都襲撃……しかも下手人は逃げおおせたとなると、対外的な印象も悪いね」

 

 沈痛な声色でロイが告げたのは、今朝一番に飛び込んできた衝撃のニュースだった。

 王都にて正体不明の軍勢が突如として出現、火を放ち都市部を破壊し始めたのだ。

 幸いにも市民の避難は迅速に済んだが、犠牲は少なくない。応戦に打って出た騎士にも死者が出た。被害は都市の極一部に留まったものの、人的被害は深刻だ。

 

 

みろっく こんなイベントあるの?

日本代表 もっと先ならって感じだけど……わっかんねー

 

 

「ジークフリート、大丈夫か?」

「あ、ああ……訓練兵時代の知り合いが負傷したり……亡くなった、とも聞いていてな……」

 

 ユートの護衛に来ている騎士たちの方が、意気消沈っぷりはひどかった。

 特にジークフリートさんは、ユートの気遣うような声にもうまく反応できていない。

 

「騎士団に被害が出た以上、教会も黙っているわけにはいきません。犯行グループを突き止めるために働いてもらっていますけど……既に王都は脱出した後のようで、足取りは不明です」

 

 ユイさんの補足を聞くと、改めて感心すらしてしまう。すっごい手際いいな。

 話を聞く感じ、王都にそこまでダメージを与えるのが目的って感じじゃないよなあ。

 まあ当事者でもないし、真剣に考えるだけ無駄なんだけど。

 

「どうにも情報がまだ錯綜している様子だからね。僕たちの知り合いが巻き込まれた、とは聞いていないけれど」

「臨海学校の短縮も検討されてるわよ、どーするんでしょうね」

「えぇ……短縮して何か意味があるのですか……? 休校措置にするにしても、むしろ王都から離れたこちらの方が安全な気もしますけれど」

「あんたこういう時凄い勢いで頭回るのね」

 

 リンディが呆れたような表情になっているが、事実だろう。

 王都を襲撃した、という行為は余りにも重大だ。重大であるが故に、成功したとしても下手人の意図が不明瞭になる。

 極端な話──成功失敗を問わず、はっきりいって襲撃先の選択が短慮に過ぎるのだ。

 

「本気で王国に戦争を仕掛けるのなら、王都ではなく王城を襲撃するべきでしょう。市民を虐殺したところで国家システムへのダメージは発生しませんわ。では王国の防衛力が低下していることを露呈させたかった? いいえ、それこそ国境を適当に破るだけで済みます。王都へ侵入、敵地で孤立する行為は、結果として成功していても恐らく相当のコストを支払ったはず……もっと費用対効果の良い選択肢があったでしょうに」

「……つまり、何が言いたいんだ?」

「この襲撃を計画した人間は、あまり頭がよろしくありませんわね」

 

 ジークフリートさんの問いに答えると、全員なんとも言えなさそうな表情になった。

 おい、顔に書いてあんぞ。『お前が人の頭の心配をするのか……』って極太油性ペンで書いてあんぞ。

 

「言い草に思うところはあるが、確かにマリアンヌの言う通りではあるな」

「あら、ハインツァラトスがまだ王国への干渉を諦めていなかった、という筋もありましてよ?」

「ハッ……もしそうなら俺が親父をぶっ飛ばすさ」

 

 しれっと怖いこと言ったなこの第三王子。

 観光街を歩き、土産店や露店を眺めながら足を進める。

 

「結構根本的な話なんですけど……今の王国に攻め込む理由って、何があるんでしょうか」

 

 ユイさんの言葉に、最初に声を上げたのはロイだった。

 

「大陸の統一ってところかな、大義名分として出てくるのは。建国以前の大戦争のせいで、国境線だって暫定的なものを結局そのまま使っている状態だ。言葉にしなくとも、それを狙っている国は多いと思う……それは例えば、僕たちの国だって例外じゃない」

「そう、ですよね。でも統一したいなら……」

「タガハラ嬢の言わんとすることは分かる。それならば侵略戦争を国策として徹底し、国力を高め、宣戦布告という手順を踏んで進めていく方が良い。邪道を経由した統一をしたところで、長くは続かないだろう」

 

 うわ、なんか難しい話になってきたな。

 ジークフリートさんの言葉に、みんな腕を組んで唸っている。

 え~? なんか前提が勝手に共有されてる気がするな……

 

「あの、皆さん」

『?』

 

 先頭を歩いていたわたくしが振り向いて足を止めれば、皆立ち止まってこちらの顔を見つめた。

 咳払いしてから、苦笑を浮かべる。

 

「本気でコレが国家間闘争だとお思いですか? わたくしはどちらかといえば……もっと小さな集団の存在しか感じ取れませんわ。例えばカルト集団であったり、例えばテロリストグループであったり」

「か、かると……? てろりすと……?」

 

 うげっこの辺ってこっちの世界にない言葉だったの!?

 わっかんねーよ、どういう基準で言葉があってないのかマジでわっかんねー。

 

「ま、まあ要するには反社会的グループもしくは犯罪者グループ、といったくくりですわね」

 

 

red moon 王都襲撃ってなると流石に後半チャプターのはずなんだけどな……

TSに一家言 単純な前倒しなのか、それとも純粋に発生した謎イベなのか判別できないんだよな

太郎 前倒しではないんじゃない?規定のフラグ満たしてないし

 

 

 コメント欄を眺めるも、有力な情報はない。

 ちょっとこれは考えるだけ仕方ないんじゃねえかな~と思っていたその時だった。

 

「むっ」

 

 ジークフリートさんの肩に小鳥が止まった。

 えっ何この絵面。森ガールだったのか?

 

「……って、使い魔ですか」

「ああ。どうやら王都の方から、緊急連絡のようだ……すまない、少し外す」

 

 声を低くして、ジークフリートさんが道ばたに駆けていく。

 じゃあ待とうか、と顔を見合わせ、その場に立ち止まり。

 

「────?」

 

 ふと。

 観光地の、土産店が建ち並ぶ通りの、ちょうど真っ直ぐ進んだ先。

 人々の波が途切れ、わたくしの真向かいに、二人の人影が佇んでいた。

 

「あっ……カサンドラさん!」

「え? 知り合い?」

 

 揺らぐ陽炎の中でも、彼女の美しさは損なわれない。

 腰に届くほど長い銀髪。大海のように透き通った碧眼。

 初めて出会ったときと同じ黒いドレスを着た彼女は、傍らに少年を携えて、こちらにゆっくり歩いてきていた。

 

「ええ。先日知り合った友人でして……お隣は……お連れ様でしょうかね?」

 

 数メートルほど前に出て、彼女に手を振る。

 ちょうどいい機会だ。みんなにも紹介しよう──と、思って。

 コメント欄が止まった。

 誰も、何も書き込まなくなった。

 なんだ? と訝しんでいると。

 

 

 

日本代表 お前、それが誰か、分かってんのか?

 

 

 

 え?

 どういうことだ、と眉根を寄せている間にも、カサンドラさんたちが、声の届く範囲まで来て足を止める。 

 

「あの、カサンドラさん。アナタは────」

()()()()()()、マリアンヌ・ピースラウンド」

 

 彼女が連れていた少年が、被っていたキャップを外し、唇をつり上げてわたくしに話しかける。

 

「え……?」

「おっと、顔を合わせるのは初めてかな? 僕だよ僕──コメントを書いたじゃないか」

 

 

脚本家 ほら、こういう感じで

宇宙の起源 ……! お嬢そこ離れろ!

無敵 悪逆令嬢と手を組んでたのか!?それでファフニール反応って──だめだお嬢逃げろ!!

 

 

 何が?

 何だ?

 何言ってんだ?

 

 おい、説明になってないんだけど。

 ジークフリートさんが慌てて駆け寄ってきている。軽装備に、加護を循環させ、大剣を召喚し、臨戦態勢に入っている。

 

 何で?

 何してんの?

 まるでそんな、敵がいるみたいなさ。

 

 

「その二人から離れろ!!」

 

 

 ジークフリートさんの絶叫。

 背後でユイさんたちが息を呑む音。

 カサンドラさんは何も言わないまま、悲しそうな顔で、ポケットに手を入れ、中に入ってたものをわたくしに見せるように差し出した。

 

 

「ゼールを脱走した皇女が、王国に侵入してきている!」

 

 

 ジークフリートさんの焦った声。

 それを聞きながらも、視線が離せない。

 だっておかしい。おかしいのだ。

 カサンドラさんがそれを持っているはずがない。

 

 

「昨晩、王都で騎士団と交戦したのはその皇女だ! 多くの国民や騎士が見た! 君の言う通りだ、軍によるものではなく、皇国を離反した特殊部隊単独による襲撃だった!」

 

 

 彼女は沈痛な面持ちで、わたくしに両手を差し出している。

 真っ白な手のひらの上で、血のこびり付いたシルバーと、ルビーが、陽光に照り返している。

 そんなはずがない。そんなはずがない。そんなはずがないのだ。ないのに。

 

 

「そして、衆目の、中で──殺害した。騎士団の援護に現れた……ピースラウンド家当主を殺害したと……!」

 

 

 何のために買ったのだろう。

 ただ見かけたときに、似合うと思ったのだ。

 シルバーは自分には似合わない。だが彼の鋭い雰囲気にはよく似合うだろうと思い、気づけば大枚をはたいて買っていたのだ。

 

 

「あれがゼールを脱走した皇女! カサンドラ・ゼム・アルカディウス……! クーデターを画策した皇族の子孫として、悪逆令嬢と名高い女だ!」

 

 

 名を呼ばれたというのに。

 わたくしの中で、その名と、彼女のことが、つながらない。

 狼狽えている間にも、彼女の隣に佇む少年が酷薄な笑みを浮かべ、唇を開く。

 

「分かるかい、カサンドラ。あれがマリアンヌ・ピースラウンド……君が打倒すべき、『流星(メテオ)』の禁呪保有者だ」

「……ッ。ええ。今この場に立てば、そうなのだろうと分かってはいたけれど……改めて言葉にされると、つらいわ」

 

 悲痛な表情で、彼女は手に持っていたネクタイピンをわたくしに投げてよこした。

 キャッチしようとして、身体がうまく動かなかった。ピンがわたくしの足下に転がり、ローファーにぶつかって軽い音を立てた。

 

「何の……冗談、ですか。さっきからもう、訳が分からない……」

 

 世界ががんがんと揺れていた。視線が真っ直ぐに定まらない。

 平衡感覚を失った身体が倒れ込みそうになる。

 

「──マリアンヌ、貴女、禁呪保有者だったのね」

「……ええ。ええ、そう、ですわ。だけど……だけど、だったら何だと言うのですか! わたくしとアナタは──!」

「殺し合う運命にあった、ということよ」

 

 続くはずの言葉が、続かない。

 カサンドラさんの背中から現出した、水。透き通るような水。それが刃の翼を象って、消えた。

 切っ先がわたくしの喉に殺到していると、視認したときにはもう遅い。

 がくんと視界が下がる。数秒遅れて、ユイさんがわたくしを後ろへ引っ張り、間一髪で攻撃をかわしたのだと分かった。

 

 死んでいた。

 今、ユイさんがいなかったら、死んでいた。

 

 

 カサンドラさんに、殺されるところだった。

 カサンドラさんは、わたくしを殺すつもりだった。

 

 

 

「──(わたくし)はカサンドラ・ゼム・アルカディウス。ゼール皇国を離反した、元皇女にして……ええ。現、悪逆令嬢。大陸に混沌を齎す、『禍浪(フルクトゥス)』の禁呪保有者よ」

 

 

 

 平和な観光地で。

 うだるような暑さと、級友たちと、新しく出会った友人が揃った場で。

 

 

 何の予兆もなく、絶死の戦場が幕を開けた。

 

 

 

 









今週のチェンソーマンのせいで今月はもうおしまいになりました
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