TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA   作:佐遊樹

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誕生日特別編:マリアンヌ・ピースラウンド(後編)

『絶海 人類未到達圏域

 新大陸歴151年 12/31 20:00』

 

 

 海で人間は釣れねえ。

 少なくとも生きた人間は釣れねえ。

 常識である。

 

「海域がかなり荒れてしまっていてね。カサンドラさんの『禍浪(フルクトゥス)』をもってしても正確な座標把握が難しいと来た。だから遅延発動で自動蘇生できる僕が、()()()()()()を前提として、生きたソナーとして射出されたわけさ」

「ワケのわからない状況でワケの分からない説明をされても困ります」

 

 マジで何言ってんだこいつ。

 ていうかカサンドラさん? 何? どういうこと?

 

「あーなるほどな。アンタは魔法でその、水中で仮死状態になっても自力で復帰できるってわけか。そりゃあそういう使い方もあるか」

「貴方は……どうやらマリアンヌがお世話になったようです。僕はロイ・ミリオンアークといいます、彼女が迷惑をかけていないでしょうか」

「迷惑半分、感謝半分ってとこだ。ワシもこの子がいるおかげで、出港する踏ん切りがついた」

 

 ゲンさんはなぜか理解を示していた。

 それからわたくしたちを交互に見やる。

 

「で、なんだ。雰囲気からしてあれかい? いい相手ってやつかね?」

「それは──」

「ええ、婚約者ですから」

 

 何か言う前に胸を張って説明しやがったなこいつ。

 ヒュゥ、とゲンさんは口笛を吹いてわたくしの耳に口を寄せた。

 

「おいおい、随分と良いとこのお坊ちゃんに見えるが……そういやアンタも魔法使いで、貴族なんだったか。愛想尽かされないように気ィつけろよ」

「いろいろと言いたいことはありますが、最後に関してはまずないですわよ。この男、今わたくしのために一度死んでますからね」

「…………確かに……そうだな………………重くね?」

「めっちゃ重いです…………」

 

 ロイを見る目が変わった。

 二人そろってうわぁとびしょ濡れの貴公子を遠巻きに見る。

 婚約者はどうやら空気の変化を敏感に察知したらしく、頭を振って水滴を落としながら(犬っぽい。こいつゴールデンレトリバーみたいなとこあるよな)口を開いた。

 

「ともかく。こちらで場所を知らせます」

 

 腰に結び付けていた剣を引き抜くと、それを天にかざす。

 発せられる魔力が救難信号のように空を伝っていった。発信源を内部に設置さえすれば、後はそれを手繰っていけば目的地を目指せるというわけか。

 

「間もなく迎えが到着するでしょう」

「迎え、か」

「手ぶらでは帰りませんわよ」

 

 わたくしが断言すると、ロイは頭を抱えた。

 

「そうはいっても、国内は大騒ぎだ! 君はもうすっかり重要人物なんだぞ! 第三王子殿下と第二王子殿下がパーティーにサプライズで来るつもりだったらしい! そんな中で突然いなくなって、僕らがどれだけ心配したか……!」

「それは悪いことをしましたね。特上のマグロをふるまって詫びるしかありませんわ」

「嬢ちゃんマジで精神的にタフだな。王子を待たせるって普通に首が飛びそうなんだが……」

 

 ゲンさんは静かに引いていた。

 

「そもそも君の居場所を特定するのも大変だったんだぞ! 馬車を借りたりしてくれていたらいいものを、馬でこんなところまで一人で走り続けるなんて……! 各国の関所に問い合わせる羽目になった! どうにか極北地帯へ向かったのは分かったけど、まさか絶海まで来ているなんて分かるはずないだろ!?」

「ですがたどり着いているじゃないですか。褒めて差し上げますわ」

 

 わたくしがぱちぱちと手を叩くと、ロイは深々と、もう鉛なんか目じゃないぐらい重い溜息をついた。

 

「……マクラーレンさんだ」

「! き、来ているのですか」

「ああ、僕らと一緒だったよ。君なら何かを探すにしろ、単純な気晴らしにしろ、必ず行けるところまでは行くだろうと言ったんだ」

「チッ」

「舌打ちした?」

 

 そりゃな。娘を理解できてる父親みたいな顔されても舌打ちしか出ねえだろ。

 あの人のやってること、聞いた感じだと身内だから分かるとかじゃなくてプロファイリングによる行動傾向分析だからな。

 これが即座に『マリアンヌなら極北まで向かう。僕の娘だからね』とかなら別に悪い気はしないんだが。

 

「マクラーレンさんは自信満々に、マリアンヌがいないと聞いた瞬間に『マリアンヌなら極北まで向かう。僕の娘だからね』って言ってたんだけど……」

「ふーん」

「嬢ちゃん声そっけないけど身体は踊ってるからな。今すげえリズミカルにダンサブルだぞ、逆に浮かれすぎてて心配になるレベルだぜ」

 

 しまった。身体が勝手に喜びを表現していた。

 咳払いをして、生温かい視線を送ってくる男二名を睨む。

 

「まあそんなのどうでもいいですわ! とにかくあのマグロを釣り上げ……釣り……釣り上げられませんわね。まあ釣りは海の狩りと言いますし、仕留めればOKでしょうか」

「外見からして重さもざっと量れるが、この豪鬼天覧丸だけでも十分牽引できるっちゃできるぜ。ある程度余裕をもって出力計算してるしな」

 

 わたくしとロイは顔を見合わせ、それからすっと視線を船に落とした。

 理論上だけど、この船一隻で小島を牽引できる計算になる。軍事転用されたら戦艦や空母(いや空母とか開発されてないけど)を使わずに別枠で戦力を移動させられることになるだろう。

 

「これ終わったら……どうしようか。船を壊した方がいい気もするけど」

「ちょっと相談しましょう。誰が来ますの?」

「知り合いは大体来るよ。ジークフリートさんあたりに相談してみようか」

 

 この小舟、マジで扱いに困るな。下手に放置して他国に接収されたりしたら超イヤ。

 

「おっ……海中を何かがこっちに向かってくるな。お仲間さんかい?」

 

 その時、ゲンさんが海面を指さして口を開いた。

 船ばっか言ってたけどこの人も明らかに聴覚が異常な精度なんだよな。

 

「おそらくは。潜水艦で移動しているので、聞きなれない音なら間違いなくそうです」

「センスイカン? そりゃ……おい待て嘘だろ。センスイカンって、潜水艦か!? 海底まで活動範囲に含む特殊船舶か!?」

「潜水艦!? ま、まさか『アーテナ』で移動してますの!? ゼール皇国に見つからないよう安全地帯に潜伏しておかなくてはまずいのでは!?」

 

 わたくしとゲンさんが同時に驚愕の声を上げ、それから、ん? と視線を重ねた。

 

「お嬢ちゃん知ってんのか」

「え、ええ。この目で二回ほど見ましたもの。ゲンさんこそどうして……?」

「そりゃまあ、あれだ。ワシらの村落は生活のために船造りもやっていたが、潜水艦は設計図だけなら仕上がってたんだよ。あとは予算さえあれば材料を仕入れて造れるが、そこまでする理由がないってことでお蔵入りになってたんだが……」

 

 あ、なんか点と点がつながった気がする。

 

 

みろっく 原作でも潜水艦ってあったんだよね? その辺ってどうなってんの?

第三の性別 一応は無国籍地帯由来の技術、とだけ資料集に書いてあったはず

 

 

 なんとなく推測が形になった瞬間。

 豪鬼天覧丸のすぐそばで、ざばあっと海中から浮かび上がる影があった。

 鋼鉄のボディ。水圧に耐えられる流麗にして機能的な設計。

 カサンドラさん一派によりゼール皇国から奪取された潜水艦、『アーテナ』だ。

 

「やっと見つけましたよマリアンヌさん!」

 

 ガポ、とハッチを開けて船体の上に姿を現すのはユイさんとリンディ、ジークフリートさん、ユート……それにお父様とカサンドラさん、顔見知りが勢ぞろいだ。

 いや約二名は、顔見知りという呼び方は不適切だが。

 

「お父様にカサンドラさん!? 本当に来ていらしたのですか……!?」

「だから言ったじゃないか」

 

 わたくしと同様、みんな防寒装備に身を包んでいる。

 ユイさんとリンディはもこもこのダウンコートを着込み、男性陣はそれぞれスタイルに合わせた上品な外套。だがその中でも、スーツに合わせて光沢を放つコートを着たお父様と、黒い生地に黒いファーを重ねた漆黒の装いに身を包むカサンドラさんは別格のオーラを放っていた。

 

「ふふっ……マリアンヌ。誕生日のお祝いを告げに来たわ」

 

 カサンドラさんは船体の上で椅子に座り、優雅に紅茶を飲み始めた。

 時と場所ぐらい選べよ。

 

「あら、あらあら。この間ぶりですわね。最近はお変わりなく?」

「ふふっ……よく貴女のことを考えていたわ。夢にまで出てくるほどよ。(わたくし)がこんなに誰かのことを考えるなんて初めてよ」

「それは良かったですわね。一マリアンヌ二マリアンヌ三マリアンヌと言われるように、わたくしは縁起物として有名ですから」

「初めて聞いたわね。絶対そんなことないわよ」

 

 通常航行モードに移行した潜水艦アーテナと豪鬼天覧丸が並走する。

 魔法によってつなげられた通信越しに、わたくしはカサンドラさんと久方ぶりの談笑に興じた。

 

「夢見というのは馬鹿にできないわよ、マリアンヌ。(わたくし)は占星術も修めているのだけれど、極めた者にとって夢占いは各宗教の巫女の託宣にも等しいわ」

「ではわたくしの夢も占えますか?」

「いいわよ」

「PS5の特売セールに並んでいたのですが」

「もう分からないわ」

「横から割り込まれてすごく不快な思いをしたのです」

「あ、ああ……列に割り込まれる、というのは、困難の訪れを予期しているという傾向にあるわね。この場合は誰に割り込まれたのか、というのが大事になるわ。貴女の知っている人だったかしら?」

「それが山崎まさよしでしたの」

「誰?」

 

 

日本代表 いつでも捜しているよ、どっかにPS5(きみ)の姿をってか。やかましいわボケ!!

 

 

「でしたらこちらの夢はどうでしょう?」

「言い方が服屋の店員! どちらかというと(わたくし)が店員側のはずなんですが! ……コホン。失礼、取り乱したわね。で、何かしら」

「夫の葬儀中、そこに来た夫の同僚に一目ぼれをした未亡人がいました」

「それ聞いたことあるやつね! どこかの国が異常犯罪者(サイコパス)の回答傾向をまとめた論文に載ってたわよ! ていうか貴女の夢よね!? 貴女はどこ!?」

「未亡人はその晩に息子を殺害してしまいました」

「もう知ってるわよ! これ夢占いよね? この後に『何故でしょうか』って(わたくし)が聞かれるわよね? 占いの意味知らないのかしら?」

「夫の同僚である女性はかつて遠目に一目ぼれし、しかし既婚者であったがゆえに恋破れた相手である未亡人の家を訪ね、その現場に遭遇してしまいます。DVにずっと耐えてきた未亡人は、息子に夫の面影を重ねてしまい、衝動的な殺意を抑えられなかったのです。事情を知った同僚の女性は、未亡人と一緒に、息子の死体を持って奥深い山へと向かっていきました」

「死体埋め系の百合小説!?」

 

 

無敵 百合の間に挟まる男を許さないオタクが死ぬときに見る夢かよ

 

 

「今の何だったのかしら!? もうこれ騒動が片付いたらマクラーレン氏に貴女の教育方針についてちょっと話し合う必要があるレベルよ」

 

 目視できる表情も通信越しの声もブチギレていた。

 頭痛をこらえるようにこめかみに指をあてながら、カサンドラさんは助けを求めるように視線を巡らせた。

 

「ふーーーーーん……私たちを無視して……この人とばっかり話すんですね……ライバルなのに……犯罪者なのに……」

「ユイ、もう身体が構えてるからなお前。コンマ数秒後に奥義撃てる構えしてるからな」

「だから何ですか、ユート君」

「やるなら思いっきりやれ」

「了解です」

「了解じゃないわよ!?」

 

 完全に目が据わっているユイさんとユートを、リンディが必死に止めていた。

 どうやら自分の生命が危機に瀕していると理解したらしく、カサンドラさんは頬をひきつらせて会話を打ち切ろうとする。

 

「そ、そろそろ接敵する頃合いかしら。マリアンヌ、もう切るわよ」

「でしたら最後に一つだけ! もう一つだけ占ってくださいますか!」

「いいけど……え、そんなに必死になることあるの? ……ええと、何かしら」

「王国から追放される夢を時々見るのですが、これは正夢でしょうか」

 

 カサンドラさんは十秒ぐらいたっぷりと黙って。

 それからめちゃくちゃデカい溜息をついた。

 

 

 

「禁呪保有者で政治の中枢に食い込む家の嫡男と婚約してて教会の次期聖女と懇ろで国王と直接面会できるパイプを持っていて自国と隣国の王子から求愛されてて現状国内最高クラスの戦力で大悪魔ルシファーの因子を持っている女が追放されるわけないでしょ」

「……………………………………………………」

 

 

 

火星 はい

つっきー はい

TSに一家言 はい

 

 

 うるっせぇバーカバーカ!! バーーーカ!!

 

 

宇宙の起源 残念でもないし当然

 

 

 クソッ……クソックソックソッ!

 全然反論できねえ。ここは引くしかないな。覚えてろよカス共……泥を啜ってでも這い上がってわたくしを煽ったことを後悔させてやるからな……

 

「それはそれとして、真面目な話もしなければならないので通信は切らないでくださいな」

「真面目な話、というと?」

 

 腕を組んでカサンドラさんが問うてくる。

 後ろでは通話を譲れよみたいな顔でユイさんがカサンドラさんの肩をがくがく揺さぶっているが、丁寧に『禍浪』のヴェールが受け流していた。

 

「あくまでその『アーテナ』は……ゼール皇国が、恐らくは他国との戦争を見越して建造した兵器のはず。対軍兵器があのマグロに太刀打ちできますか?」

 

 これは純粋な疑問だった。

 そもそもこの海域まで到達できた時点で、堅牢さに疑いはない。しかしマグロに接近していく過程で十分な働きができるかは議論の余地があるだろう。

 しかしわたくしの問いに対して、カサンドラさんは無言で、マイクをすぐそばに佇んでいた男性に譲った。

 

「……な、んで」

 

 その男性を見て、ゲンさんは呆然とした声を上げた。

 

「こちら『アーテナ』所属、整備班班長のリクです」

 

 リク。二文字。和名に近い。

 脳髄を電流が走り、ガバリとゲンさんに顔を向けた。

 

「ゲンさん、これは……!」

「……間違い、ねえ。面影がある。あいつはワシの息子だ……!」

 

 さすがに言葉を失った。

 ロイも驚愕に目を見開いている。

 

「……ッ!? 彼は『アーテナ』の建造に携わり、そしてゼールを裏切るにあたって、(わたくし)の勢力に参加してくれたクルーの一員よ。北国の出身だとは知っていたけど、まさかそんな縁があるなんて……」

 

 カサンドラさんも驚いた様子だ。

 そして彼女の目は、リクさんに向けて微妙な感情の色を宿している。

 ああそうだろうな。自分の手でお父さんを殺した人の前で再会劇なわけだ。わたくしが言えた義理ではないが、まあ、戸惑いもするだろうさ。

 

「問題ありません。『アーテナ』の設計コンセプトは海戦において突破口を開くこと。数だけでなく、大きさの面でもこちらより大きな存在を相手取ることは最初から織り込み済みです」

 

 ちら、とマグロのいる方向を見る。

 巨体の表面だけが海面に露になっているが、全体の大きさは計り知れない。

 

「しかしあれは……」

「いえ、ミス・ピースラウンド、ご心配なく。我々はそもそも、仮想敵としてマグロを想定してこの『アーテナ』を造ったのです」

「そうだったのか!?」

 

 ゲンさんがさすがに絶叫を上げた。

 

 

 そうだったのですか!?

 

 

外から来ました そうだったの!?

ロングランヒットおめでとう そうだったのかなぁこれは!?

 

 

 駄目だ! 全員同じことしか言えてねえ!

 ゾルタンですら困惑してやがる、せめてお前だけは威勢よく肯定してくれ!

 

「大本は村落にて死蔵されていた潜水艦の設計図を、記憶を頼りに復元したものですが……それをベースとして、対マグロ・ポンテンヴィウス戦闘用にいくらかのブラッシュアップを経て、『アーテナ』は海戦用決戦兵器としてロールアウトされました。まさしくこの日のための船です、後れを取ることはあり得ない。故に……」

 

 リクさんはそこで言葉を切ると。

 明らかに挑発的な声色で、通話越しに、わたくしではなくゲンさんに向かって告げる。

 

「少なくともそちらのボロ船よりは頑丈だと思っていただこう。乗り換えてはいかがでしょうか?」

「はああああああああああああああああああああ!?」

 

 ゲンさんはキレた。

 

「事情は大まかに把握した。少なくとも、ここで親子喧嘩をしている場合ではないようだがね」

 

 ちょうどマグロ周辺の、もっとも荒れている海域に差し掛かろうかというタイミング。

 お父様が通信に割って入って、両者を諫めた。

 は?

 

「ハーーーー!? 親子喧嘩、全然するべきでしょう! する暇もなかった家庭よりはマシだと思いますがーーーー!?」

「……………………」

 

 面白いぐらい顔を青ざめさせ、彼は顔に脂汗をにじませる。

 

「……いや、その、なんと詫びればいいのか、も……」

「……マリアンヌ嬢、そのあたりでなんとかここは収めてくれないか。もうそろそろで接敵するんだぞ」

 

 ふん。ジークフリートさんに言われちゃしょうがねえな。

 

「マクラーレン殿も、今日は君の誕生日を祝うために来てくれたんだ。そう無下にするものじゃないさ。それを踏まえても無下にするというのなら、仕方ないと思うが」

「無下にしたいのではなく、無下にされたお父様の顔が見たいだけですわ」

「アンビバレント過ぎて異常倫理みたいになってきたな……」

 

 紅髪の騎士が渋面を作っている間に。

 ゲンさんはあっさりと『アーテナ』を追い越して、マグロの頭部があると思しきポイントに船を停めた。

 

「よーし! あの若造に一泡吹かせるぞ嬢ちゃん! あっちの船のクルーは全員敵だと思え!」

「いや敵じゃないですから。僕が敵呼んだことになっちゃいますからそれ。マリアンヌもなんとか言ってくれ」

「ッシャァ! あの目障りな船を流星でブチ抜けばよろしくて!?」

「敵っていうか的として見てる!? 君の方が純度高い敵意を抱いてどうするんだ!」

 

 冗談だよ冗談。ゲンさんも相当に吹き上がってるからな、乗っかってやんないとガス抜きにならねえだろ。

 わたくしはマジックボックスから中型の魚を生きたまま引っ張り出すと、テグスの先端に取り付けた。

 

「一応テグスは流星で強化しておきますわ」

「おう、頼むぜ!」

「禁呪の汎用性には頭が下がるばかりだね」

 

 両腕で魚を抱え、ドボンと海中に投げ込んだ。

 本当は船も走らせてマグロの前に餌を垂らすのが一本釣りなのだが、マグロ・ポンテンヴィウスは鯨のように体表を海面に浮かべるだけで動くそぶりを見せない。

 

「これ食いつくのでしょうか」

「ものは試しってやつなのかな。反応を見ながらになるね……そうだ。『アーテナ』の最高速度ならものの一時間たらずでこっちまで来れるんだ、帰りはあれで帰ろうと思うんだけど」

「いいですわね。ヴァリアントを中に入れる許しさえもらえればギュオッ

 

 一瞬だった。

 わたくしの身体が船から超高速で引っ張り抜かれて、とっさにロイが足を掴んで、なんとか踏みとどまった。テグスとロイとに挟まれ、空中で大岡裁きの体勢である。

 手に握っていたテグスが、すさまじい勢いで引っ張られている。

 普通に身体が裂けたかと思った。

 

「マママママママリアンヌ!?」

ほほほ星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)! イダダ! 射貫け(shooting)暴け(exposing)ッ……、いぎっぎいっぎぎぎぎ! 照らせ(shining)光来せよ(coming)正義(justice)(white)断罪(execution)聖母(Panagia)! 悪行は砕けた塵へと(sin break down)秩序はあるべき姿へと(judgement goes down)! 極光よなるはやでこの心臓を(vengeance)満たしてくださいますか(is mine)!?」

 

 超高速十三節詠唱、ツッパリフォーム即時最大出力(40%)で起動!

 

「ふぎぎぎぎいいいいぎぎぎぎぎごいごぎおぎおぎごいごいごぎおっごごごごごごごおごごごごご!!!!!!」

 

 宙に浮かんだまま全身が流星のきらめきを纏う。

 が、しかし、メッチャ痛ぇ!

 

「いぢぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっぎ!」

「釣れたなァ! よーし引っ張りまわして消耗させるぞ!」

「ちょっ、マリアンヌの消耗の方が酷そうですが!?」

 

 ゲンさんはノリノリで船のエンジンを起動させ、最高速で豪鬼天覧丸を走らせ始めた。

 

「何!? どういう状況!?」

 

 追いついてきたアーテナの甲板で、状況を視認したカサンドラさんたちが絶句する。

 そりゃそうだろうな! わたくしとロイだけで見るに堪えない大きなカブ状態だ!

 

「助力する! 飛び移るぞ!」

『了解!』

 

 ジークフリートさんを筆頭に、並走していた『アーテナ』からみんなが飛び移って、順番につかみ合う。ジークフリートさんがロイの腰を抱え、ジークフリートさんをユートがつかみ、ユートをリンディがつかみ、リンディを加護全開のユイさんが繋ぎとめる。

 誰が本当に大きなカブしろつったよ!?

 

「マグロ・ポンテンヴィウスが……動いている……!?」

 

 誰かの言葉を聞いて、激痛の中目を凝らす。

 確かに、小島ほどの大きさを誇るマグロが、豪鬼天覧丸にけん引される形で動き出していた。

 ただ動くだけで波が割れ、海が荒れ狂う。

 『アーテナ』甲板に残っていたリクさんたちクルーが中に引っ込み、カサンドラさんとお父様だけが仁王立ちの姿勢で残るのが見えた。

 

「あら、あれだけ怒られたのに静観かしら」

「あいにく海の男ではないのでね」

 

 実の娘が宙づりでネオ大岡裁きされてる最中になーーーーにカッコつけてやがんだよオイ!!!

 

 

苦行むり 撮れ高すぎてだめ

red moon こんなに必死な顔のお嬢久々に見たかもしれん

 

 

「ふぎぎぎぎぎぎ……!」

「大丈夫かいマリアンヌ!?」

 

 もうロイとジークフリートさんまで宙に浮いていた。

 何なんすかねこれ。

 とはいえ、だ。

 

「ぎぎぎぎ……! なんか、なんか……!」

「なんか、何!? 何だい!?」

「なんか────コツが掴めてきました!

「は?」

 

 

トンボハンター トビー・マグワイアの気持ちでも理解したのか?

外から来ました どっちかっていうとドウェイン・ジョンソンじゃねえかな……

 

 

 わたくしの好きな俳優はステイサムなんだよ! できれば運転席に座らせてくれ!

 ロイがしがみつく足を起点に、身体の稼働を調整する。

 

「皆さん構えて! 一気に打ち上げますわよ!」

『……!』

 

 指示すると同時、全員腰を落として踏ん張りどころと構える。

 並走していた『アーテナ』も好機と見たらしく、反転し真っすぐマグロへと向かい、障壁を張ったままその巨体に体当たりを仕掛けた。

 下手すればバラバラになってもおかしくない──が、対マグロ想定というのは嘘ではなかったようだ。魔力障壁がすくい上げるように作動して、マグロの身体をわずかに浮かべたのを、見た。

 

「い、ま、で、す────!!」

 

 全員の力を連動させ、

 紡いできた絆を、一つに束ねて。

 いや束ねるっていうか直列つなぎしちゃってるけどそれはそれ。

 左手でロイの手を掴む。意図を読んでくれた彼は、足から瞬時に手へスイッチ。

 

 空中に流星の足場を展開。

 そこに両足をパイルのように打ち込んで固定。

 テグスを握るは右手。婚約者の支えを左手に。

 

 

「せーのォォォォッ!!」

 

 

 

 

無敵 でもそんなんじゃだーめ

 

 

 

 

 お前は本当に後で殺す。

 

 腹の底から叫びをあげて、わたくしは全身全霊でマグロを引っ張り上げた。

 海中で爆弾がいくつも同時に炸裂したような衝撃。奴も必死に抵抗する。大海原が地獄絵図となる。巻き込まれた魚たちが海の藻屑になっていく。

 

 あと一押し。

 

 間違いなく力が拮抗している。

 このマグロと、渡り合えている。

 ゲンさんが舵を捌く。何か叫んでいるが聞き取れない。

 極限の出力が聴覚を麻痺させていて、耳鳴りしかしない。

 

 意識が曖昧になる。

 視界がマーブル状に溶けていく。

 

 

 

「……まったく。見てられないわね」

 

 

 

 刹那。

 わたくしの右手に、()()()()()()()

 一帯海域から瞬時に結集したそれは、まぎれもなく『禍浪』の権能。

 パワーが跳ね上がる。

 右腕限定で耐久性が増した。ツッパリフォームを無意識のうちに最大限────70%近く引き上げる。

 

 

「チェェェェェエエエエエストオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 海が爆砕した。

 その巨体を、大きく、大きく、半ばまで海上に引きずり出した。

 

「よっしゃああああああ!」

 

 ゲンさんが喝さいを上げる。

 間違いなく力勝負で打ち勝った。向こうの体力も底をついた証拠だ。

 

 この勝負、わたくしたちの勝利────

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 同時、冷や水をぶっかけられたみたいに思考が止まった。

 直視して、やっとその本質を理解した。

 違う。違うんだ。

 やっと理解できた。ここにきてやっと理解が追いついた。

 

「……!!」

 

 ガバリと船体に連なる一同を見る。

 呆けたようにマグロの巨体を見上げる面々の中で、即座に察知できていたのはジークフリートさんだけ。

 

「マリアンヌ嬢! これはッ」

「ええ!」

 

 つり上げられたマグロが、数秒空中に半身を躍らせた後、ざばあと力なく海に落ちる。

 津波に等しいしぶきが上がり、豪鬼天覧丸がぐらぐらと揺れた。

 力なく海に落ちた? 当然だ。こいつが、いかにも魚らしい抵抗しかしない理由が分かった。

 

「嬢ちゃん、だいぶん弱らせたな! このまま陸近くまで牽引して仕留めるぞ!」

「待ってくれないか! 事情が変わった!」

 

 騎士のひっ迫した声に、ゲンさんが手を止める。

 

「どういうこった。ワシらが押し切ったはずだぞ」

「違うんです。全身に()()()()()()()()()()……! 抵抗していたわけじゃない! 何かの準備をしていて、そっちにかかりきりだったんです! こいつは!」

 

 ピンとこない様子で首をかしげるゲンさんはさておき。

 加護の力、と聞いてロイたちの顔色が変わった。

 

「まさか、上位存在ってことかい!? このマグロが!?」

「いや違うわよミリオンアーク! こいつから上位存在の気配はない……でも、上位存在じゃないはずなのに、存在の密度が上位存在並みになってる!」

 

 牽引を終えて、わたくしは船体の端にスタと着地する。

 力なく横たわっている、ように見えるマグロの巨体を眺め、ユイさんがあっと声を上げた。

 

「待ってください。この感じ知ってます。上位存在が……この世界に、存在を固定するための術式……!」

 

 顔を横に向ける。

 『アーテナ』甲板にて、カサンドラさんが『禍浪』を臨戦態勢に移行させ、お父様が魔剣を取り出すのが見えた。

 何度か戦ってきた面々だからこそ、事態のヤバさを即座に理解できる。

 

「術式が形を持つわけがねえ。だったらこいつは……ああそうかそういうことかよ! ()()()()()()()()殿()()()()!」

 

 ユートの結論に、各員少なからずの狼狽を見せた。

 

「そう考えりゃ全部辻褄が合っちまう……! この海で、こいつはずっと召喚の条件が整うのを待ってたんだ! それが今かみ合った……! 降臨を始めたからこそ、本気の抵抗をしなかった! つり上げられようとも神殿としての働きができりゃいいんだ!」

 

 そうか。

 ならば確かに、単純な攻防は成立しない。

 マグロ・ポンテンヴィウスは今この瞬間に限っては『生物』ではない。『神』を降ろすための、神聖な場なのだ。

 

『そんな……マグロは、神を降ろす場……?』

 

 呆然とした声が、ゲンさんが持つ魔導通信機からこぼれた。

 向こうの潜水艦で指揮を執っているであろうリクさんの声だ。

 

『そんなものを、相手に、僕たちは……』

「……どうした、リク。怖気づいたか」

『だ、だって父さん、魚じゃないってことだろ!? そんなの手に負えるわけがない!』

 

 リクさんの言い分はもっともだった。

 わたくしの左手を握っていたロイは、その手を離して息を一つ吐いた。

 

「マリアンヌ。どうするんだい? 戦力を立て直しつつ、応援を呼ぶ必要があるかもしれないよ」

「……そうですか」

 

 面々の顔を見た。突発的な事態に、まだ理解の及んでいない顔。危機を正確に把握し、唸る顔。

 フン。馬鹿共が。

 

「位相が違う、認めましょう。存在の規模が違う、事実でしょう。まさしく危機状況であり、厄災の予兆である。ならば逃げ出すことはあり得ません」

 

 わたくしは右手で天を指す。

 鉛色の雲に覆われた重苦しい空。

 だが知っている。その向こうには星々が煌めき、流星の駆ける夜空があることを、わたくしは知っている。

 

「馬鹿が。皇国でいい仕事をさせてもらってた割には、まだまだ本質はわかっちゃいねえようだな」

『……ッ?』

 

 ゲンさんもまた、舵から手を離さないまま、キッとわたくしを見た。

 視線が重なる。

 その目をわたくしは知っている。だって、きっと今、同じ目をしている。

 

 

 

「どんだけデカくても────」

「どれだけ遠くても────」

 

 

 

「「それは、諦める理由になりはしないッッ!!」」

 

 

 

 ああそうだ。

 うすうす分かっていたんだ。

 彼は、わたくしだ。ゴールの見えない道筋を、迷いなく歩き続ける旅人。空を走り、海を走り、遠い遠い/大きな大きな、見果てぬ野望を追い続けるランナー。

 

「嬢ちゃん! こいつが多分、最後の1ピースだ!」

 

 ゲンさんは操舵席の引き出しを開けると、そこから一振りの短刀を取り出して投げてきた。

 右手でパシイと受け取る。即座に異常事態に気づく。

 わたくしの身体を循環していた流星が、短刀に流れ込んでいったのだ。

 

「これは!?」

「代々伝わっていたモンだ。お嬢ちゃんなら使えるんじゃねえか!?」

 

 

日本代表 ん? なんか見覚えあるな

苦行むり これアレじゃない? 魔導器(アーティファクト)じゃない?

つっきー は?????????????

 

 

 いける。

 何故かは分からねえが……なんか、何でもできる気がする!

 わたくしは素早く鞘から刃を抜き放つと、マグロに身体を向けた。

 

 

 ────星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)

 

 

 柄を右手に握り。

 刃に左手をかざす。

 

 

 ────射貫け(shooting)暴け(exposing)照らせ(shining)光来せよ(coming)

 

 

 あふれ出す魔力が足元に魔法陣を描いた。

 マグロの身体が震えている。降臨の予兆だろう。

 

 

 ────正義(justice)(white)断罪(execution)聖母(Panagia)

 

 

 この世界は危機に満ちている。

 気を抜けばそこらで自然と上位存在が降ろされたりする。

 人為的に降臨させる野望もあるし、単純に混乱と憎悪を望む人間も大勢いる。

 とんだクソゲーだ。普通に考えて死に覚えゲーなんじゃないのこれ。

 

 

 ────悪行は砕けた塵へと(sin break down)秩序はあるべき姿へと(judgement goes down)

 

 

 そんな世界の中でも。

 きっと流星の輝きだけは変わらないと、信じているから。

 

 

 

 ────極光よ、因果すら断ち切る刃となれ(vengeance is mine)

 

 

 

 だからわたくしは、思うがままに戦おう。

 この世界という名の夜空に、誰もが見惚れる流星の軌跡を描いてみせよう。

 

 間違えるんじゃねえぞマグロ如きが。

 場を整えていい気になったか? 全然ダメ。お前は二流。トロをゴミ扱いされてた時代から何も進歩しちゃいねえな。

 

 神様なんかが主役のステージは飽き飽きなんだよ。

 お前という場をどう扱うかは、今日誕生日である以上、今日の主役(わたくし)が決める!

 

 

 

「マリアンヌ・ピースラウンド……ムラマサフォームッッ!!」

 

 

 

 直後、劇的に変化する。

 体内を循環していた流星が一気に短刀へ流れ込んでいく。

 オーバーフローした輝きが、巨大な刃となって天を衝いた。

 

 短刀の刃を起点、あるいは出力源として形を成した、超巨大なレーザーソード。

 一回やってみたかったんだよなあ、ライザーソードッ!

 

「は?」

 

 ジークフリートさんは事態を理解して、ぽかんと口を開けた。

 

「ちょっ……え? どういうこと? 何をしたのマリアンヌ!?」

 

 カサンドラさんもまた、愕然とした様子で叫んでいる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! まさか、降臨する権利を横取りしたの!?」

「いぐざくとりぃ、ですわ!」

 

 条件はそろったのだ。

 何を呼ぼうとしたのかは知らんが、神殿があって、依代がある。ならば神を降ろすことができる。

 軽く一振りしただけで、流星の刃が雲を吹き散らした。

 隠されていた夜空が露になる。星々の海の中に、丸いお月様が浮かんでいた。

 ふふん。こっちの海よか向こうの方が上等だな。

 

 

つっきー ……ッ!? タンマタンマタンマ

無敵 おいやめろ

つっきー アクセスされてる! 私の本体に、正規の手順でアクセスされてる! 駄目だちゃんと条件揃ってるから弾けない! うわマジで条件全部クリアされてるんだけど!?

日本代表 は?

 

 

 なるほど。呼ばれようとしてたのはアナタだったか。

 恐らくは上位存在として顕現されようとしていたリソース。

 それらすべてを、横からかすめ取らせてもらった。

 

「場を構築するだけ構築して、指向性を持たせないなんてお馬鹿さん! ほかに候補がなければ選ばれるなんて消極的な考え方では、神降ろしどころかオリンピックの開催権も獲得できなくってよ!」

 

 この厳しい絶海の中で、マグロの他に神を降ろせる場所などあるわけがない────と、マグロは考えていただろう。

 甘いんだよ。優先権を持たないから、()()()()()()()()()に横取りされる!

 

「聞いたことがあります。私の遠い遠い祖先が崇拝していた月の女神……陽を司る神と対になる、原初の神秘……!」

 

 ユイさんの驚愕の声を聴きながら。

 わたくしは船体を蹴って飛び上がる。

 

 

つっきー お前アクセス権後で放棄しろよ!? これ以上神座へ不法アクセスしたら、出るとこ出るからな!?

 

 

 ご心配なく! これは特番限定フォームでしてよ!

 

 

つっきー ますます不安になるわ!

 

 

 それは月すらひっくり返す超弩級の斬撃。

 剣技も何もありはしない。ただ一人の少女が、未来を切り拓くために振るう愚直の刃。

 高く高く飛び上がり、月を背負ってマグロを見下ろす。

 

 さあ、三枚に卸してやるよ!

 

 

 

「賀正・悪役令嬢謹賀新年スラァァァ────ッシュッッ!!」

 

 

 

 天高く掲げた光の刃を、真っすぐ振り下ろす。

 一切の抵抗なくそれはマグロの巨大な身体を、左右に分割する形で切り裂いた────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荒れ狂う海。

 二つの船舶が必死に姿勢制御して、なんとか転覆を免れた後。

 恐る恐る一同がそこを見た。

 身体の中半分ほどを蒸発させられたマグロ。

 

 その頭部に、彼女はいた。

 左手には光を失い、刃が溶け落ちるようにして柄だけとなった短刀を。

 右手は月が輝く夜空をビシイと指さして。

 

 マリアンヌ・ピースラウンドが、唇をつり上げて君臨していた。

 

 

 

「あけましておめでとうございます! 新春特番と言えば格付け? 二時間ドラマ? お笑い特番? どれもノゥ! ノゥですわ! 荒海に挑むことこそ新たな門出にふさわしい! そして荒事と言えば悪役令嬢たるこのわたくし! 新大陸歴152年の幕開けは『洋上の大激闘! マリアンヌ・ピースラウンドVSマグロ・ポンテンヴィウスVSダークライ』で決まりですわ! マグロ、ご期待くださいッッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ダークライって誰よ……」

 

 

 カサンドラの問いに対して、マリアンヌは説明がめんどうだなと思って無視することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『王国領 ピースラウンド家所有地 ピースラウンド邸宅

 新大陸歴152年 1/1 17:00』

 

 

「ということでマグロを釣ってきましたわよ!」

 

 いろいろあった。

 とりあえず年越しの瞬間は『アーテナ』内部で爆睡していて、わたくしは新年のカウントダウンも誕生日のカウントダウンも逃した。

 起こすのは忍びなかったらしく、ユイさんたちは船内でささやかにお祝いしてくれたらしい。わたくし抜きで。

 意味なくね?

 

「ワシらなんかがいていいのか、これは……」

「父さんは話してるからいいだろ。僕は本当に知らない人の誕生日会なんだ、どんな顔すればいいのか分からないよ」

 

 正装をレンタルしたゲンさんとリクさんは、居心地悪そうな表情で、わたくしの誕生日パーディーの片隅に立っていた。

 

「何をおっしゃいますか。アナタたちは誰もが認める立役者でしてよ」

 

 もちろんマグロに関して、わたくしたちが手に入れられたのは、パーティ用の一ブロック分だけだ。他は全部王城での研究用に持ってかれた。

 ただ、その分の報奨金、そしてマグロを仕留める前につり上げていた遊覧魚を王都で売りさばいた結果……ゲンさんは普通に小金持ちになっていた。

 

「まあ、これでカミさんに楽をさせられるって考えるべきだろうな」

 

 今回の一戦を経て、ゲンさんも踏ん切りがついたらしい。

 豪鬼天覧丸は手放し、『アーテナ』クルーと合流し、カサンドラさんの逃避行を手伝うことにしたのだとか。

 なんでも彼の奥方、すなわちリクさんのお母さんは、今は『アーテナ』が潜伏している海域の無人島にいるらしい。カサンドラさんたちはそこにアジトを構えて、海賊狩りなどで生活を立てているとかなんとか。貫禄が前作主人公かよ。あるいはスターフォックスコマンドのどうでもいいエンディング。

 

「母さんにまず怒られなよ。一人で残るって言い張って……出ていくとき、泣いてたんだ」

「……そうだな」

 

 二人は縮こまりながらも、ぽつぽつと会話していた。

 なんとなく、その光景が見られただけでも、マグロ釣りに行った甲斐があったのかなと思った。

 

「まあそれはそれですわね」

 

 わたくしは白を基調とした清潔な板前服に着替えると。

 会場中央に鎮座していた、わたくしたちにアーサー国王が『え、これ食べるの? 本気?』とドン引きしながら渡してくれたマグロのブロックの下へと向かった。

 

「ふふん。解体ショーの始まりですわ!」

「なんか悪そうなこと言ってるわね……」

 

 パーティードレス姿の面々がこちらに寄ってくる。

 

「マリアンヌ、その前に少しは反省してくれたかい? 婚約者としての贔屓目があっても、今回ばかりはおいたをし過ぎだったよ……婚約者じゃなかったら面倒見切れなかったかもしれない。だが僕は婚約者なのでしっかりついていけたね」

 

 白いタキシードを着たロイ。

 これがサマになるんだから恐れ入る。顔面上位存在がよ。

 

「説教するのかマウント取るのかはさすがに絞れよ。まあ結果オーライだったんだ、良しとしようぜ。なんとかなるもんだろ? 俺らが力を合わせれば」

 

 紅い燕尾服を着こなすのはユートだ。

 情熱的なカラーだが、どんなふざけたマジックなのか主役を横取りする下品さはない。お前も顔補正で生きてるクチか?

 

「ああ、ユートの言うとおりかもしれない。いい機会だったんだろうな。オレたちで一丸となって何かを成し遂げる……振り返ってみれば、彼女の誕生日を迎える出来事としてこれ以上のものはない」

 

 スリーピースのスーツに身を包んだジークフリートさん。ネイビーの生地に薄くチェック柄が入ったデザインは、お祝い事にもってこいだろう。

 もはや言葉は不要。この顔で国を傾けさせられるだろ。

 

「で、マグロってどうやって食べるんだい?」

 

 お父様は普段のスーツ姿だったが、シルバーのネクタイピンをつけていたので全部許した。

 フン。わたくしも甘いな。

 

「そのあたりは見当こそついていますが、ユイさんはご存じでしょうか?」

「えっ、私ですか?」

 

 男勢を見渡して乙女ゲーっぽいなこれ(ん? ぽいというか乙女ゲーだっけ?)と考えながら、わたくしは視線を女性陣にスライドさせた。

 

「一応、私の祖先は魚を食べる文化が日常的に根付いてたみたいですけど……知識としては知っているだけで、私はあんまり食べたことないですよ?」

 

 教会に用意されたのか、ユイさんはボレロとセットの紺色のドレスを着ていた。

 小動物的な可愛さを残しつつ可憐な印象を受ける。超王道の美少女だ。めっちゃ可愛いなこの人……エッロ……

 

「それもそうよね。メインとして魚が出てくることってあんまりないもの。あなたはどう?」

 

 ライムグリーンのドレスをつつましく着ているのはリンディだ。

 背丈やスタイルでは子供に見られるかもしれない彼女だが、こと礼儀作法に関しては一級品。フォークをテーブルに置く所作一つとっても、ため息が出るほど上品なレディになっている。いやー、エッロ……

 

「え、ええ。随分と普通に話しかけてくるのね……ちょっと浮かないか心配してたのは杞憂だったかしら……コホン。ゼールでは魚を燻す郷土料理があったわね。食感は独特だったけれど、おいしかったわ」

 

 見慣れたモデルとは微妙に違う黒いドレス姿のカサンドラさん。

 肩口なんかが透けててエッロ……胸もおっきいし……エッロ……

 

「こいつ一回しばかない?」

「マリアンヌさん、えっちなのはだめですよ」

「さっきから視線が本当にいやらしいわよ貴女」

 

 女性陣三人は半眼になってわたくしを見ていた。

 うーん。

 なんかこう、顔で負けてる気はしないんだけど、並びたいかって言われると並びたくねえんだよな。

 ていうか今板前服だし。ナニコレ。一人だけコント服じゃん。誕生日なのにおかしいだろ。

 

 

太郎 自分で着たんだよなあ

外から来ました いや真面目に四人並んでも一番視線集めるぐらいあるから自信は持っていい

日本代表 中身がね

宇宙の起源 中身が本質だろ、素人はこれだからダメ

日本代表 何だお前 ポッと出だろうが

宇宙の起源 やるか? はい開闢の加護ー!

日本代表 小学生!? やめろ! やめてくれ! これ以上加護を安売りされたらもう手に負えねえ!

 

 

 コメント欄も楽しんでくれているようだ。

 お父様はすげえ微妙な表情でこっちを見ているが、まあやばい呪詛食らってるわけじゃないんだ。

 日ごろお世話にもなってるしな、今ぐらいは見逃してやってくれ。

 

「というわけで! 板前令嬢、マリアンヌ・ピースラウンドッ!! へいらっしゃいですわぁッ!」

「何なんですかねこれ」

「何なんだろうね」

 

 またこいつ変なことしてるよみたいな顔で見てくる原作主人公と原作メインヒーロー。

 ハッ、目にもの見せてやるよ。

 

「では早速、まずはお刺身から」

 

 手早く身を切っていく。

 このためにレーベルバイト家に発注しておいた柳刃包丁が唸るぜ。

 まずはよくスーパーで売ってるサイズのブロック、つまりサクを切り出す。

 長い刃渡りを生かして、白い筋を断つような具合で、一回の引きで刺身をつくっていく。ノコギリみたいにぎこぎこすると断面が汚くなっちまうからな。

 

 

第三の性別 なんでこんな上手なの? やってた?

 

 

 昔、ちょっとね

 

 

ミート便器 説明しろよ

日本代表 お嬢が魚捌くのうまくて私も鼻が高いよ

 

 

 ツマを添えて綺麗に盛り付けると、一皿目完成。

 へいおまち! とテーブルに出すも、誰も取ろうとはしなかった。

 

「おや? もしかして遠慮されてます?」

「い、いや……え? これ食べるの?」

「はい。醤油モドキとわさびモドキも用意してますわよ」

 

 そのへんは気合で作った。

 

 

101日目のワニ おいしれっと流していいのかこれ

無敵 よくねえけど! よくはねえんだけど!

 

 

 なんかウケが悪いな。

 どうしたんだ。

 

「マリアンヌ。聞きたくはないんだけど」

「はい」

「生魚、ってことかい……?」

 

 ロイのわたくしを見る目は本当に知り合ってから今までの中で、一番どん底だった。未開人を見る目だった。

 は?

 

「むむ……食べろ、と言われると、難しいな。大丈夫なのか」

「分かんねえ。流星クッキングとかされた方がマシだったかもな」

 

 ジークフリートさんとユートも手が出ない様子だ。

 遠くでカサンドラさんとお父様が「ちょっと、貴方味覚の教育すら放棄したの?」「いや……さすがにわが娘ながら絶句してるよ……」とか会話している。

 舐めやがって。

 

「いただきます! ばぐばぐばぐばぐ! うーんおいしい!!!!!!」

 

 わたくしは作り立ての刺身をかっこむと、自分で親指を立てた。

 

「胃の中で流星発動してないわよね」

「リンディ、次は手が出ますわよ」

 

 身内が全然優しくねえ。

 ユイさんだけが頼みの綱だ。

 

「ほらユイさん! アナタの先祖が食べていた料理ですわよ! 酢飯で寿司も作れます! こっちのネギトロなんてどうです!? トロのたたきにネギを散らしてネギトロ!」

「あ、違いますよ。ネギとトロじゃなくて、骨に残った身をねぎとるからネギトロです」

「は? 知識マウントですか?」

「急にキレないでください。怖い人じゃないですか」

 

 食べもせずに好き勝手言われたらそりゃ沸点も下がるわ!

 ぐぬぬ、こいつらにどうにかして生鮮食品のすばらしさを叩き込みたい。しかし誰も手を付けないままではわたくしが異常者になっているだけだ。

 どうすれば……どうすれば……!

 

 

「ほう。馴染みはないが、うまそうに見えるな」

 

 

 ぬっ、と手が伸びた。

 刺身の横に置いていた大トロの握りを、直接手に取った男。

 

「それで、ピースラウンド。これはどうやって食べるんだ」

「……醤油皿の醤油に、横に寝かせるような具合でネタ……魚の切り身をつけて食べます」

「なるほど変わった食事だな。しかし国政に携わる者として、未知を相手に腰が引けるわけにはいくまい」

 

 周囲が制止する間もなく、ぱくっと寿司を口に入れた男。

 第二王子ルドガーは、それから目を見開いた。

 

「えっ、うまっ……」

「あ、出てますわよ素が。隠さなくて大丈夫ですか~?」

 

 ニヤニヤ笑いながら問うと、ルドガー王子はそっぽを向いた。

 

「もう食わん」

「冗談! 冗談ですって!」

「まったく……王子相手に冗談などお前ぐらいしかしないだろうな」

 

 いろいろあってこの人とも仲良くなっているが、まあなんだ、気を許してくれていてうれしいよ。

 さすがに王子自ら身体を張って──誕生日会に王子来てるの我ながら意味不明だな──美味を証明してくれたとだけあって、他の面々も恐る恐る刺身や寿司を食べ始め、同様に目を見開いた。

 

「兄上。随分と仲良くなられたようで」

「ああグレン。この寿司というのはいいぞ、ぜひ今度父上に……待て。いやそういうのはないんだ。本当にない。お前の恋路を邪魔する気はない。よせ、お前今兄を異端審問にかける準備を始めてるだろ!? 国が割れるから本当にやめてくれ!」

 

 今回は感謝だな。

 第二王子殿下、あざーす。

 

 

 

 

 

 

 

 調理を終えて、板前さんの服を脱ぎ、パーティードレスに一瞬で着替えてから椅子に座る。

 立食パーティーなのだが……ぶっちゃけ疲れた。

 

 

つっきー アクセスはもう、できない感じでいいんだよな?

 

 

 うわっびっくりした。

 急にコメント欄立ち上がったよ、焦るからやめてくれ。

 

 

 ええ。短刀は柄だけになりましたし、ゲンさんにお返ししました。

 何よりあれは、マグロが降臨の場として機能して、道を開けただけ。

 同じことをしようにもマグロはもうわたくしのおなかの中ですわ。

 

 

つっきー そっか。それならいいんだけど。でも真面目に……私たちの力を引き出すのには、相応のデメリットがある。お前もジークフリートさんもいざという時は即座にカードを切るだろうけど、それは本当にいざという時じゃないとだめだ

 

 

 ……随分と親身になってくれますわね

 

 

つっきー お前がいなくなったらルシ様の供給止まるからな。それは死に等しい

 

 

 そんなとこだろうと思ったよ。

 椅子に身体を預けてぐったりしていると、向こうのテーブルの会話が聞こえてきた。

 

「新年早々疲れましたね……」

「そうね。新年ではなかったけど、まあつかれまくったわ。あいつが意味分かんないのはいつものことだけど、今回は特段に密度が濃かったわね……」

 

 ユイさんとリンディ。

 振り回してしまったな、という自覚はある。

 

「だけど解決できてよかったですよね」

「さすがに死ぬかと思ったわよ」

「でもうまくいきました。『アーテナ』で合流して、みんなと一緒にどうするか考えて、うまく流れをつくれて……なんていうか、うれしかったです。私たち、マリアンヌさん抜きでも仲間になれてるんだなって」

「そうよね。なんていうか……あいつがいなくても、バチっとハマる感じはしたわよね」

 

 そんなの当たり前だ、と思った。

 だってわたくしは本来いないのだから。まったくもう。当然でしょうに──

 

 

 

 ──いやいや。

 

 

 

 わたくしは本来いないって、だけど、この世界だと最初からいたじゃん。

 

 何か、今、自分がひどく良くないことを考えようとしていることは分かった。

 だが、思考が、止まらない。止まってくれない。

 ユイさんを主軸に、ロイやユート、ジークフリートさん、リンディ、そしてカサンドラさんにも力を貸りて、絶海まで追いかけてきた。

 あるべき姿だ。

 

 つまり。

 それは、()()()()()()()()()()の姿ということだ。

 

 それは、本来、あるべき姿ということだ。

 

 

 それは────本来の在り方をわたくしが捻じ曲げている(どのツラ下げてここにいるんだよお前)ということで。

 

 

 

 

 

「だから、マリアンヌさんがいないとすごく寂しかったんですからね!」

 

 

 

 

 

 ぷんすこ、と怒った様子のユイさんが、気づけば目の前にいた。

 

「さっきからずっと会話聞いてたでしょあんた。散々振り回しといてなんかナーバスになってるけど、こっちは大変だったのよ」

 

 まったく、と肩をすくめるリンディさん。

 それだけではない。

 否定しようのない事実として、今この会場の因果の中心は、わたくしだ。

 

「ねえ聞いてるの?」

「マリアンヌさーん?」

 

 女子二人が心配そうに身をかがめた。

 わたくしはここにいる。

 うん、そうだな。

 

「もちろん聞いていますわよ」

 

 視界が不意に滲みそうになって、頭を振った。

 

「さあ! わたくしからの出し物は以上ですわ! 次は皆さんのプレゼント発表会といきましょう!」

「出し物扱いだったんですかこれ!?」

 

 椅子から立ち上がる。

 休んでいる暇はない。

 

 悪いなユイさん。

 今日は、今日だけは、わたくしが主役なんでな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────見慣れた業火の光景だった。

 

「祝いに向いた景色じゃないのを最初に詫びよう。だが、おれには生憎ここしかなくてな」

 

 ……ええ、そうでしょうね。

 終焉を司る大悪魔なら、パーティー会場なんてところには来れないでしょう。

 

「ハッピーバースデー、マリアンヌ」

 

 意外ですわね。

 正直、肝心の誕生日の0時を寝過ごしたと知った時……夢の中にアナタが出てきても不思議じゃないと思っていましたが。

 

「何。最初に祝いを告げるのは、譲っただけだ。今この瞬間を最も大事にしているお前にとって……彼ら彼女らとともに過ごす時間の方が、大事だろう」

 

 あら、随分としおらしいことを。

 

「純粋な気持ちだった。お前が一番喜ぶ日であり、そしておれもまたオイシイ思いをしたい。だから最後だけは譲らなかったというだけだ」

 

 ふーん。

 まあ悪い気はしませんわね。日付変わってますけど。

 

「手厳しいな。日付が変わっても皆を屋敷に引き留めて、夜遅くまでパーティーに興じたのはお前だろう。王子すら無理に泊めるとは思わなかったがな」

 

 アナタ、本当に何でも見てますのね。

 

「ああ。当然だろう、お前という存在はおれを照らす光だ。まばゆいからこそ、目を離すことはできない」

 

 ……ッ。ま、真顔でなんてこと言うのですか!?

 

「? 顔と声が取り柄だと言ったのはお前だろう。ならば取り柄を生かすまでだ」

 

 くっ、ラスボスのくせに成長性あるとかバグでは!? パッチを要求しますわ……!

 

「ふふっ。まあいいさ」

 

 はいはい。

 こうして呼びつけたということは、何かプレゼントがあるのでは?

 

「目ざといな。実はおれは既に一つ嘘をついている」

 

 え?

 

 

 

 ────────ぁ。

 

 

 

「業火の世界しかない。だがテクスチャを上書きすれば、外見だけならいくらでも変えられる」

 

 ………………

 

「本当は、お前の前世の光景を再現しようと思った。上野、新宿、中野、池袋、六本木……どれも再現はたやすかった。海外でもよかった。だがこれに勝るものはないと思った」

 

 ……ええ、本当に。

 

 

 

 

「好きに過ごせ。邪魔ならどく。この星空は、お前だけのものだ」

 

 

 

 

 

「ふふ」

「なんだ」

「お馬鹿さん。一緒に見ればいいですのに。ほら、隣空いてますわよ」

 

 

「……添い寝いけるか?」

「いけるわけないでしょお馬鹿」

 

 

 







●流星剣・孤月返し
 マリアンヌ本人は悪役令嬢謹賀新年スラッシュと呼称している。
 成立条件に神体一柱の直接顕現を想定するものの、厳しい条件に違わぬ威力を発揮するれっきとした超大規模儀式魔法。
 降ろした神を担い手に憑依させ、劣化させることなく神の出力をそのままぶつけるトンデモ技。
 そのため莫大な神秘に耐えうる(カタナ)と、その神秘を完璧に運用する演算装置(メテオ)と、人類には有り余る出力の刃を放つに耐えうる担い手(ランナー)が揃って初めて成立する神秘決戦術技である。
 文字通りに天体を切り裂く絶技であり、その剣筋は神の領域にすら到達する。



あけましておめでとうございました。
マグロが神降ろしを始めたのはマリアンヌが発動させた流星を合図と誤認したからなので全部この女のせいです。


前回投稿時に表記し忘れたので再掲いたします。

碑文つかさ様よりマリアンヌのイラストをいただきました!
https://twitter.com/Aitrust2517/status/1346273945742233600?s=19
本当にありがとうございます!なんとか寿司にたどり着けました…!

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