わたしのポケモンになってくれない?   作:ガブマンダ

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 初めまして。
 ステイホームで時間があり余って困惑中です。
 今まで読む専だったのに……書こうかと思ってしまいました。
 初投稿の駄文な上、使い古されたネタかとは思いますが、よろしくお願いいたします。

 元ネタはピカブイですがあまり設定には沿っていません。


きみのポケモンになってあげよう

『ハナダのどうくつ』

 ハナダシティ北西部に位置する、知る人ぞ知る洞窟。

 ごく限られた者……ポケモンリーグに殿堂入りした者のみが中に入ることを許可されるこのダンジョンは、「凶暴な野生ポケモンが生息している」他には何も情報がなく、カントー地方では謎スポットとして一部で噂されている。

 

 その最深部に、二人の子供が立っていた。

 まだ幼さの残る顔立ちから、この二人がカントー最強クラスのトレーナーであることを想像するのは難しい。

 

「……終わった」

 

 そう呟く少年の名は「カケル」。

 11歳でセキエイリーグ制覇を果たした、現カントーチャンピオンである。

 

「もー、なんなの……」

 

 瀕死のポケモンをモンスターボールに戻し、怒った表情を見せる少女は「ブルー」。

 直前まで激しいバトルを繰り広げていたことを知るのは、彼らのみである。

 

「ブルーは、本当に強いね」

「あなたの名前は、なんていうの?」

「カケル」

「そっか、カケル……」

 

 カケルは目の前の少女が何者であるか、全く分からなかった。

 曲がりなりにもチャンピオンである。世界一とまでは思っていないが、バトルの腕にはそれなりに自信を持っていたし、実際殿堂入りしてからというもの、来る挑戦者はほぼ一方的に打ちのめしていた。このようなギリギリの戦いをしたのはいつぶりだろうか?

 大事な友人を否定するつもりはないが、元チャンピオンであるワタルやシンとの戦いですら、ここまでの苦戦は強いられなかった。

 攻防とも一流の強力なポケモン。直感で出される天才的な指示。そこから生み出されるコンビネーションに対応するのには時間がかかった。

 カケルは黙り込むブルーを見つめながら、バトルの余韻に浸る。

 すでに元来た目的など忘れており、興味の対象は彼女のことだけになっていた。

 

 洞窟内でブルーを見つけたのは、あくまでも偶然。

 ハナダのどうくつは、カケルが持つ最強のポケモン……ミュウツーをゲットした場所である。

 本来の目的は、ポケモンリーグとしての調査活動であった。洞窟内で野生ポケモンが凶暴化する理由。その手がかりを見つけるためにくまなく洞窟内を散策していたところ、まさにミュウツーと出会った場所にいたのがブルーだ。

 

 「ミュウツーを探している」と話すブルーに対し、カケルは使用したマスターボールを見せた。ミュウツーの存在は、その出自も含め可能な限り伏せるのがリーグとしての方針だが、ここまで来ることができるトレーナーならば教えてもよいかと考えたからだ。

 しかし、その行為が逆鱗に触れたのか、ブルーはいきなりボールからピクシーを出しカケルにトライアタックを放った。すかさずカケルの長年の相棒であるフシギバナが飛び出し反撃したところ、それが開戦の合図となり今へ至る。

 

「ねぇってば」

「わっ!」

 

 考え込むカケルに、鼻が触れるほど顔を近づけるブルー。

 顔が真っ赤になる。

 マサラを出てから今日まで、ポケモン一筋で過ごしてきたカケル。

 女性に対する免疫など獲得している暇はなかった。

 

「わたしのポケモンになってくれない?」

 

 可愛らしい容姿を持つ女の子に迫られたら、正常な判断ができなくなる。

 それが男の子というものである。

 

「い、いいよ!」

 

 直後、ブルーはカケルにモンスターボールをゼンリョクで投げつけた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『ハナダシティ』

 お月見山を東側へ下山した場所にある街。

 

 洞窟でのバトルの後、僕たちはポケモンセンターへ直行した。

 ブルーは6体、僕は5体のポケモンが瀕死になっている。

 ……改めてすごいバトルだった。自分の想像の上を行くトレーナーに対する恐怖。戦いの中で、あれほどまで負けを強く意識したのは初めてかもしれない。

 回復に時間もかかるので、話しながら待つことにした。

 

「ふふふっ、痛かったね〜」

 

 伝説の飛行ポケモンでも捕まえるかのような勢いで投げつけられたボールは、僕の頭に特大のタンコブを作った。本気で痛かった。

 それを楽しそうに触るブルー。悪びれた様子は感じられない。少しむっとするが、その純粋な笑顔があまりにも綺麗で怒るに怒れない。

 

「ねぇ、どうしてボールなんて投げてきたのさ?」

「えっ?そんなの、カケルを捕まえるために決まってるでしょ?」

 

 即答。言う人によってはジュンサーさんを呼ばれても仕方ないような発言でも、可愛ければ許されるから世界は不公平だと思う。

 

「……えっと、どうして僕を捕まえたくなったの?」

 

 問い直すと、ブルーはこくりと首を傾げる。

 

「ミュウツーはカケルが捕まえちゃったんでしょ?だったら、カケルがわたしのポケモンになれば、ミュウツーもわたしのものになる」

「ええ……」

 

 まず、ミュウツーは自分のものになって当然であるという態度を隠そうともしない。

 自分が求めれば手に入るのが当たり前だという思考。それは、過去に戦ったロケット団員ともまた少し違う……

 しかし、ある意味真っ直ぐで、強烈に自分を求めてくるブルーは、思春期真っ只中の僕にとってはひどく魅力的に感じてしまった。

 決して、洞窟を出てからずっと手を繋がれているせいではない。決して。

 

「ついに、ミュウツーがわたしのものに……」

「ねぇブルー、いつまで手をつないでるのかな?」

 

 周囲の生温かい視線が突き刺さる。過去「ラブラブカップル」とバトルした経験もある。奴らがバトルそっちのけでイチャイチャしている様子に、ダメな大人たちだと見下していたのだが、もはや馬鹿にできる権利はなくなってしまった。

 

「そんなの、ずっとに決まってるけど?」

「なんで」

「だって、ボールに入ってないもん。逃げるかもしれないでしょ?ケーシィみたいに。ビュン!っていなくなったら困っちゃうから」

「テレポートなんてしないよ!」

 

 この子は自分のことを本気でポケモンだと思っているのだろうか?

 他の人とあまりにも違う発想に戸惑う。

 

「さてと。これからどうしようかな〜。欲しいものはもう手に入ったし……」

 

 伸びをしてから、その場でくるくると回るブルー。

 

 少しずつ、ブルーのことがわかってきた。

 僕がマサラタウンを出てから五年、今まで多くのトレーナーたちと出会い切磋琢磨してきたつもりだけど、こんな人は見たことがなかった。

 とにかく、行動に迷いがない。自分の行動が善だとか悪だとか、そんな考え方はきっとブルーの中には一切存在しないんだろう。たとえ周りが悪いことだといっても、本人はやりたいようにやってるだけで、悪いという認識を持つことはないと思う。

 今後そんな彼女の味方をするとなれば、僕はリーグの人間としては間違いなく破滅する。でも、良くないと頭では理解していても、あのバトルの中で僕は完全にブルーのことを好きになってしまっていた。

 なんにせよ、あの時洞窟で頷いた時点で逃げられない。たとえ本当にテレポートしたとしても、この子は世界の果てまで捕まえにくるだろう。たった数時間の付き合いでも、ぶっ飛んだ人格と「自分のモノ」に対する執着心はすでに理解していた。

 

 ごめんなさい、ママ。と心の中で謝っておく。

 

「世界征服しよう!」

「やめときなよ……」

「むっ、カケル。わたしのポケモンなんだから言うこと聞かないとダメだよ」

「だって、それ失敗した人知ってるよ?」

 

 失敗させたのは僕だからね。

 

「わたしは知らない!えいっ」

 

 ブルーは僕の背中に乗った。思った以上に軽い。

 女の子って、こんなにいい匂いなんだ……

 

「ななな、なにしてるの?」

「早く進んでよ、今日はたくさん歩いて疲れたの。ポケモンたちはもう返してもらってるから。ふーっ」

 

 耳に息を吹きかけてくる。僕は照れと興奮でくらくらする頭をどうにかするのに精一杯だった。

 

「どこに行くかは決めたの?」

「んー、クチバかな」

「わかった、じゃあしばらく背負っていくね」

「嬉しい!カケル大好き!」

 

 ……大好きなんて、両親以外から言われたのは初めてじゃないかな。

 ブルーは、どんな時でも思ったことをそのまま口に出しているんだ。

 多くの人は、自分の行動や発言の結果何が起きるか?ということを考えるけど、ブルーにそれはない。そういう価値観は持ち合わせていない。

 でも、その純粋さは僕にとってどこか羨ましく思えた。

 

 南へ歩き始める。少しすると、背中から大きないびき。

 

「ぐー……」

(今の顔は、世界一可愛いな)

 

 僕は呑気なことを考えていた。

 




 可愛い女の子にあんなこと言われたらOKしちゃいますよね。
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