短編集   作:むかいまや

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昔のアカウントで書いた短編小説。
カクヨムで行われた自主企画『同題異話 春はまだ青いか』参加作品。
上記企画は、同じ題名の元、各々がオリジナルストーリーを創作し、投稿する企画。


春はまだ青いか

 私には恋人が居ます。付き合い始めてから、そろそろ三ヶ月になります。

 だから、それを記念して私の思いを書こうかなって思ったんです。とは言っても、三ヶ月記念というのはちょっと気が早いかなって思いました……でも書きたくなったんです。誰かに読んでもらおうかななんて少しも思ってないんですけど、なんだか改まった感じになっちゃいますね。こんな風な文章を書くのも初めてだし、もしかしたら、人の目に着くかもしれませんし……なんだか気恥ずかしいです。

 

 彼は私の人生で初めての恋人で、多分今までの人生の中で初めて心を許せる人です。生まれてはじめての春って言うと……恥ずかしいですね。でも、そうなんです。気の置けないって言葉、あるじゃないですか、本当に、その通りなんだなって思いました。

 彼とは学校で知り合いました。私はその時入学したばかりの一年生で、彼はひとつ上の二年生でした。学校の課外活動のときに、彼は私に親切にしてくれて……それが切欠というほどではないんですけれど、でも、何というか……印象に残ったんです。

 私も彼も読書が趣味で、お互い印象に残っていたんですかね、図書館でよく会いました。私の通う学校は蔵書量が多くて、その時私は苦労しながら読む本を選んでいました。やあなんていいながら彼が近づいてきて、私もこんにちはって返しました。彼は笑いながら何してるの? なんて聞いてきたんです。つい、おかしくて笑っちゃいました。ごめんね、馬鹿にするつもりはないのって訂正したら、彼もそうだよねって笑ってくれて。なんだか可笑しくなってきちゃって、二人で笑っていた思い出があります。私は彼と話したり笑ったり、そうしていられる時間がとても嬉しくて、とても楽しかったです。

 

 彼と出会った課外授業は、私が入学してすぐのまだ桜が散りきらないぐらいの頃でした。なので、彼と図書館で出会ってから、学校の案内をしてもらったり、学校の近くで良いお店なんかも紹介してもらいました。私が知っていることもありましたし、知らないこともありました。例えば、学校から少し離れたところにあるお店の主人が実は彼の古い友人の家族で、時折彼はオマケをしてもらったりしてるなんてことだったり、私も良く行くお店が、彼と行くことで今まで知らなかったような面白さを発見できたり。公園でのんびりするのが楽しいって思えたのも、彼のお陰です。以前までの私は、どちらかといえば家にいることが多くて、外に出て楽しいって思えた経験ってあんまり無かったんです。この時はまだ付き合っている訳じゃなかったんですけど、多分私は彼に心惹かれていたんだと思います。

 

 彼も私も、お互いに取るべき距離感(っていうのかな……)が判りかけていた頃です。一緒に下校していると、不意に彼が家に来ない?と誘ってくれました。私はなんだか嬉しくなって、うん!なんて元気に答えちゃったんです。でも、何を着ていけばいいのかな、とか何か持っていったほうがいいものってあるのかな、とかどんどん不安になってきちゃって……彼に電話して、ごめん、今日行けなくなっちゃったって伝えました。彼はいいよ、また今度ねって言ってくれました。親から一緒に出かけようって言われたのもあったんですけど、なんだか申し訳なくなってきちゃって、ちょっとだけ涙が出ちゃいました。

 後日、きちんと謝ったんですけど、未だに少し、悪い事したなぁって思ってます。その時彼は、そんなに気にすること無いのにって笑ってくれました。私が考えすぎなのかもしれませんし、二つ返事で答えた私も悪いかもしれません。でも、彼もなんだか大胆すぎるんじゃないかなぁって思います。

 

 それから暫くして、夏休みに入りました。一学期の間は良く一緒に遊んだりしていました。どこかに遊びに行ったり(と言ってもそんなに遠くへは行ってませんが……)、放課後一緒に図書館で本を読んだりして過ごしていた覚えがあります。

 夏休みを目前にして、私はしばらくの間彼とは会えないのかなぁなんて寂しい思いをしていましたが、彼はなんだかニコニコ笑って、迫り来る夏休みに心を躍らせているようでした。とはいえ夏休みは私も楽しみです。そんな訳で、私は彼と会えない寂しさと、夏休みへの期待感で、今までに無い不思議な気分になっていました。不安と期待のない交ぜな気持ちって、こういうのを言うんでしょうね。

 そんなある日のことでした。彼が私に連絡してきたんです。家族で旅行に行くけど、一緒に行く?って。私は申し訳ないし、ごめんねって言ったんですけど、彼は親から許可貰ってるよって言ったんです。大胆だなぁって思っちゃいました。彼にはちょっと考えさせてって伝えました。私の両親にその話をしたら、いいよ、行って来なって気楽そうに言ってくれました。私の周りにはお気楽な人間しかいないのかな、なんて思いもしましたが、私も彼に会えるのは嬉しいですし、単純に旅行なんてあまり行かないので楽しみでした。ここはお言葉に甘えて、旅行に連れて行っていただきましょう。

 

 私たちは海に行くことになりました。私たちの住むところは海が無かったので、私にとって、はじめての海でした。車の中で、彼の父親が私に、なんだ、コイツも彼女を連れてくるとは成長したななんて話をしていて、彼も私も違うよって言ったんですけど、とても恥ずかしくて……私の顔、真っ赤だったんだろうなぁって思います。彼の顔を見ようと思って隣に座った彼をちらりと見やると、彼は窓の外を眺めていました。表情はわからなかったんですけど、今思い返してみると、彼の耳は心なしか赤かったような気がします。そう思うと、今更ながらなんだか胸がくすぐったくなってしまいますね。

 

 一泊二日の短い旅行でしたが、海で遊んだり、砂浜で遊んだり、海の家でのご飯も美味しかったです。夜に浜辺で花火をしたのは今でも強く印象に残っています。彼の両親はお酒を飲んで楽しげでしたし、私も彼も、場酔いっていうんですかね、凄い楽しくて……

 花火を一通り楽しんだ頃でしょうか、彼がごめん、トイレ行って来るといいました。皆ではーいと答え、彼を見送りました。そうしたらもう彼の両親から質問攻めです。どこであったの?とかいつから?とか……本当に色々でした。彼が帰ってくるまでの数分間、私は人生で初めてあんなに慌てたような気がします。今の学校の入学試験でもあの時ほど慌てなかった筈です。彼が戻ってきた時に、何の話してたの?と聞いてきましたが、私はもうしどろもどろで……彼の両親も面白がって答えなかったので、彼は不思議がっていました。その暫く後、浜辺で線香花火をしました。そのときの写真は、大事に写真入れに入れて、机に飾ってあります。大切な、大切な写真です。

 

 そうして夏休みが終わりました。彼は夏休みが終わったにもかかわらず夏休みの課題に追われているようでしたが、私は早め早めに済ませておいたので平気でした。どうにも彼はお気楽なようで――まぁそんなところも嫌いにはなれないですけれど――反省という物を真剣にしないようです。やっぱり、二学期になっても以前と同じように出かけたり、遊んだり、本を読んだり、楽しく過ごしていました。冬になって衣替えをしたり、学校の行事があったり、色々ありました。彼とは学年が違うのでそういったところで接点はあまりありませんでした。ですが、一緒に帰ったり出かけたり・・・そんなひとつひとつが大切な思い出です。

 

 時間がもうちょっと進んで、十二月二十四日になりました。そうですクリスマスイブです。クラスの女子達はなんだか妙に浮き足立っていたり、男子達は我関せずという具合の子やら積極的に色恋の話をしている子がいたり……色とりどり(っていうと失礼かな)な様相でした。私はなんだか興味が沸かず、のんびり本を読んでいました。

 今日は二学期最後の日だったので、午前中だけで学校が終わりました。私は母から帰ったら家族でパーティーすると聞いていたので、そのことをぼんやり考えていました。私はローストチキンが好きなので出てくるといいなぁとか、弟はまだ小さいので何か食べられるかなぁとか何か作ってあげようかなとか考えていました。

 閉業式が終わり、教室に戻り、帰る時間になりました。クラスの子達も何人かはクリスマスパーティーを催すらしく、そのことを話している子達がいたり、何か用事があるのか早く帰りたいといわんばかりの子達がいたり、めいめいに教室から出て行きました。私は帰り支度に手間がかかったので遅れて出ることになりました。遅くなっちゃったなぁと思いながら教室を出ると、彼がいました。どうしたの?と聞くと、彼は一緒に帰ろうかなって思ってと答えました。私は少し恥ずかしくなりました。どうしてって、誘われて嬉しかったのもありますが、教室に残った女子達がなんだかこっちを見てひそひそ言っているのを感じたからです。早くここから立ち去りたいと思って、私は早く帰ろといい、彼の手を引いて学校を出ました。言うのが遅れましたが、私たちは家が割合近く、帰り道が途中まで一緒なんです。

 

 何故だかお互い無言でしばらく道を歩くと、ふいに彼がねえと話しかけてきました。なに?と聞き返すと彼は俯き気味で、今日はクリスマスイブだよねと言いました。うんと答えて彼が何を言いたいのか考えていると、彼は何か決心したようにこちらを向いて、君のことが好き、僕と付き合って欲しいといいました。私は、なんだか緊張した面持ちの彼が面白くて、意地悪したくなりました。行こ、とだけ言って私は歩き始めました、ちらりと後ろを見ると彼は恥ずかしさからかこちらを見られないようで、その様子が私の嗜虐心をくすぐりました。彼は黙ったまま私の後ろについてきて、私はなんだかニコニコしちゃって(もちろん彼に見られないようにです)、そんな風にしながら、私たちが途中で分かれる交差点に到着しました。彼はもう我慢できなくなったのか、ねえと言ってきました。私はなあに?と含みを持たせた言い方をしちゃいました。彼はズルイやと言いました。少し間をおいて、

 

「私もね、好き」

「やっぱりズルイや」

 

 そうして私たちは付き合い始めました。と言っても何をする訳でもありません。前までと同じで、一緒にちょっと出かけたり、本を読んだり、今はお互いの家に上がったりもしています。キスもしました。と言っても、バレンタインデーのときに唇に、一回だけ。照れちゃいますね。そんな風に過ごして、もう三ヶ月経ちました。その記念です。もう少ししたら、私も二年生になります。彼は三年生。クラス替えがあるみたいで、なんだか楽しそうな彼を見ていると私も楽しくなってきます。私もついに後輩ができるんだなぁなんて思うと先輩らしくならなきゃって少しだけ不安な気持ちもあります。彼との関係が何時まで続くのかわかりません。でも、結構長続きするんじゃないかなって思います。女の勘ってヤツです。考えたくは無いですが、もし、彼と離れ離れになっても、彼との思い出は私に取っての大切な思い出で、私を大きく成長させてくれたのには変わりありません。

 小学二年生、これから頑張ります!

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