カクヨムで行われた自主企画『同題異話 薔薇香る憂鬱』参加作品。
上記企画は、同じ題名の元、各々がオリジナルストーリーを創作し、投稿する企画。
いくら私が魅力的だからって、困っちゃうわ。
何だって同じプレゼントを二つも貰わなくてはならないのかしら……どちらも私には嬉しい贈り物だったから、大事に使わせてもらうけれど、それでどちらか選べなんて……憂鬱だわ……窓辺の花瓶に刺された二輪の薔薇の香りだって、今の私の心を楽しませることが出来ないでしょうね……良い香りなのに、楽しませてくれないなんて、ズルいわ。
私だって良い歳だもの、独り身で居て良いとは思わないけれど、どうにも男性を好きになれないのよねぇ……不思議な話だと思うけれど、だってそうなんだもの。見ていて面白いし、飽きないとは思うわ。だって、女を求めてあれこれ苦労して、滑稽ったらないもの。
私、そういう必死そうな男をフるのって好きよ。不快に思ったらごめんなさいね。でもフった瞬間の男の顔ったら……何回か経験したけれど、今でもその時を思い出すと、ふふっ、愉快でつい、笑っちゃうの。
とはいっても、私が今まで生きてきて、男性に魅了された事だって無いわけじゃないわ。あの人はもう死んでしまったけれど……後にも先にも番おうかなんて(古臭い言い方よね、好きじゃないわ)考えたのはあの人だけ。
私を初めて抱いたのもあの人だったかしら、あんまり細かいところは覚えて無いけれど、一杯一杯だったのは覚えてる、あの頃はまだ若かったわ。今となっては恥ずかしいくらい。あの人に抱かれたのは一度きり。けれど、そこは重要じゃないの。話す気もないわ。下品だもの。
初めての日に彼が私の元から帰って、その途中で、彼は死んだわ。事故だったらしいけど、悲しいだなんて欠片も思わなかったし、彼に義理立てるつもりも無いわ。私って薄情なのかしらね……あの時から男性が好きだとか嫌いだとか、そういう考えが持てなくなってしまったの。男を愛することが無意味だとか、そういうことを思っているわけじゃないの。恋愛って、素敵だと思うわよ。出来るのなら、だけれどね。
そして、あの時以来、私には男性がどうにも魅力が無いように思えてしまっているだけなのよ。言い方が悪いかもしれないけれど、男という存在の『底』とか『限界』を見てしまったような気がするの。
愛の無い一生なんて命を謳歌していない、なんて大それたことは考えてはいないわ。繰り返しになるけど、愛って素敵だと思っているのは本当。でも、少し勿体無いような気もするのよね。我侭なんでしょうね。
そう考えると、やっぱり、この機会を逃しちゃいけないのかしらなんて思う。でも、どちらか選べというのは憂鬱よね、自分が優しい女だなんて少しも思って無いけれど、義理とか、選んだ人と家庭を持つかもしれないなんて考えると、遊んでもいられないわよね……面倒だわ……愛されているのは嬉しいのだけれど、私は贅沢で我侭だって言い張って、両方選んでしまえたらどれだけ楽かしら。
私にプレゼントを贈ってきたのはどちらも年下の男の子。『男の子』だなんて言い方は彼らに失礼かしら? 直接的な言い方は好きじゃないけれど、彼らだって子供が作れる歳なのだものね。でも私からしたら『男の子』って思っちゃうのよね。なんでかしら。私の方が少し年上なだけで経験豊富って事も無いと思うのだけれど……不思議。
片方の子は瞳の綺麗な子。透き通るような青い瞳で、私が最初に彼を見かけたとき、何となくだけれど、吸い込まれるような思いをしたわ。彼は不器用で、少し体が弱そうな印象があるけれど、私なんかよりもずっと賢いし、努力家みたい。独り身できちんと生計を立てているし、いざという時の為に貯蓄もしっかりしているみたい。彼なら安心できる、彼ならば生活に苦労は無い。確かにそうなんだけれども……私にもまだ若い女の無邪気で無謀な思いが残っているのかしらね……? 少し、物足りないわ。
彼と話をした事もあるけれど、現実的で真面目で……一緒に居てつまらないなんてことは無いのだけれど、これからずっととなるときっと退屈しちゃうと思う。私の理想が高すぎるのかしら? でも、一生の事よ? 夢を見たいというのもあるけれど、私が楽しくなくっちゃあダメじゃない。困ってしまうわ……
考え事をしているとどうしても体が強張ってしまってダメね……少し伸びをして、ベッドに寝転がるとしましょう。私はこのベッドの上が好き。マットレスが柔らかいというのもあるけれど、それよりも日差しが差し込んで暖かで、窓をあけていれば、心地よい風が吹き込んできて……私はここでのんびりしていると、どうしても眠くなってしまうの。ふああなんて欠伸をしたりなんかしちゃう。少し、下品だったかしらね。私の欠伸に誘われたのかしら。そよ風が吹き込んできて、窓辺の花瓶から甘い香りが漂って来る。この香り、私は好きよ。赤と白の薔薇が花瓶に一輪ずつ刺さっていて、本当に綺麗。見惚れていないで、もう片方の子のことも考えなくちゃ。
もう片方の子は、野生的な子。頑丈で、力が強くて、少し我侭。男性って本来彼のような存在を指すんじゃないかって思わせるような……そんな子。彼は享楽的で、以前、その日さえ生きていられれば良い、そう言っていたわ。少し無計画が過ぎるんじゃない? って私が聞いたら。将来のことは考えるだけ無駄だって、言っていたかしら。
彼と一緒に外を歩き回ったことがあるの。楽しかったわ。見た目と違って彼って意外と物知りで、色々穴場を教えて貰ったんだったかしら。でも、冗談だったのかもしれないけど、彼が言った言葉でひとつだけ気がかりなのがあるのよ。俺は女遊びが上手だ、なんて狙ってる女に普通言うかしら? デリカシーって物が無いわよねぇ……
彼と生きていくのはきっと楽しいわ。でも、そうね、やっぱり不安よ。その日その日を生きる生活なんて大変だし、経験したことが無いもの。不安だし、子供が出来たりなんて考えると、彼には荷が重過ぎるんじゃないかしら。子供が出来たら変わるとは思うけれど……結局それも、絶対じゃないもの。
私って結構我侭なのかしらね、でも一生にかかわることだもの、選り好みというよりも、大切な選択だと言って貰いたいわね。欲を言うなら彼らの両方を選びたいくらいなんだけれど……私ももういい歳だし、遊んでいるほどの余裕は無いわ……どうしようかしら、悩むわ……。
悩んでいる内に食事の時間になったみたい。召使の声が聞こえたわ。そろそろ行くとしましょう。
「ミケーご飯よーおいでー」
返事をしたけれど、彼女にわかるかしら。まったく、騒がしいったら無いわ。でも、どうしようかしら、憂鬱よねぇ……そもそもプレゼントの鼠を食べたから余りお腹は空いていないのだけれど……。