人生記録が視える少女   作:魚料理最高!

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小さな名探偵との邂逅

「おい、大丈夫か? 優衣……」

 

「う、うん。ごめんなさい、美奈子姉さん」

 

 5つ年下の従妹が顔色を悪くして口元にハンカチを当てていた。

 泊まっていた旅館で事件が起きた。

 今は夏休みを利用して従妹の優衣と2泊3日の旅行に来ていた。

 その日の夜、2人で旅館を歩いていると何かが落ちる物音がして、駆けつけた時に頭から血を流して倒れている男性がいた。

 すぐに救急車に連絡して、今は警察も到着している。

 どうやら男性は殺害されたらしい。

 今は少し離れたところで気分を落ち着かせているところだった。

 具合が悪そうにしていた優衣も、自販機で買ったペットボトルの水をゆっくりと半分飲んだ辺りで大分落ち着いたようだ。

 美奈子自身、初めて遭遇した殺人事件に動揺していたが、従妹の方に意識を割いてどうにか平静を装っている。

 大きく息を吐いて淡い笑みを浮かべる優衣。

 

「ありがとう、美奈子姉さん。大分楽になったわ」

 

「いや、構わないさ。それにしても、旅行に来て殺害事件とは。まるでドラマだな」

 

 冗談めかして軽口を叩くが優衣は視線を下に向ける。

 

「あの人……」

 

「どうした?」

 

「ううん、ちょっと……」

 

 真っ青な顔で弱々しい笑みで首を振る優衣。

 もう少し休んだら部屋に戻ろうと話していると、小さな影が近づいて来た。

 

「ねぇねぇ。お姉さん達」

 

「?」

 

 話しかけて来たのは小学生に上がったくらいの大きな眼鏡をかけた少年だった。

 

「どうしたの? 君。もしかしてお父さんやお母さんとはぐれちゃった?」

 

 落ち着きを取り戻した優衣から話しかけると、少年の返答は予想外の物だった。

 

「ううん。そうじゃなくて。お姉さん達、殺されたあのおじさんの第一発見者だよね? その時の事を少し教えてほしいんだ!」

 

「え?」

 

 質問された事を理解するのが困難を極めた。

 正確には、目の前の少年の態度が不気味で理解出来なかった。

 まるで幼子が興味のある道具の使い方を訊くような気安さで事件の事を訊ねてくる。

 温和な気性の優衣にしては珍しく険しい表情で訊き返す。

 

「どうして、そんな事を訊くの?」

 

 その返しが予想の内だったのか、うん、と子供らしい返事で質問に答える。

 

「小五郎のおじさんに、事件の事を聞いてきてくれって頼まれたんだ!」

 

 その返答に子供に何て事を頼むんだ、という憤りと本当に頼まれたのかな? という疑問が板挟みになる。

 どちらにしろ質問に答える気はないが。

 

「ねぇ、君。事件は警察の人達が捜査してくれているから。あまり邪魔になるように動くのは駄目よ。私達も、後でちゃんと話せることは話すから」

 

「えー。でもぉ」

 

 納得してない様子の子供を諭そうとその肩に触れる。すると────。

 

「つっ……!?」

 

「お姉さん? どうしたの!?」

 

 自分に触れて急に痛みに耐えるように顔を歪めた優衣に子供が心配そうに触れてくる。だが、次に優衣が口にした名前に言葉を失った。

 

「くどう……新、いち……?」

 

「なっ!?」

 

 すると少年が警戒するようにバッと優衣から離れた。

 驚愕の表情で優衣を見ていると、3人以外の声が届く。

 

「コナン君! ダメじゃないまたうろうろしたら!」

 

「ら、蘭姉ちゃんっ!」

 

 高校生くらいの少女がこの場に近づいて来た。

 すると優衣と美奈子に頭を下げる。

 

「ごめんなさい。この子、目を離すとすぐにどっかいっちゃって」

 

「いや、構わない。それより彼女の気分が優れないようなので、このまま部屋に戻らせてくれ。行こう、優衣」

 

 腰に腕を回し、身体を支えて場を去ろうとする2人に、コナンと呼ばれた少年が動く。

 

「ま、待ってっ!」

 

「コラ、コナン君。こっち来なさい!」

 

 肩を捕まれて強制的に連れ去られるコナン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場を離れて優衣と美奈子は話をしていた。

 

「あの子について、何かに視えたのか?」

 

「う、うん……でも、ちょっと整理しきれなくて。それより」

 

「事件の方も、やはり視えていたのか」

 

「うん……」

 

 この少女。柳原優衣には子供の時から他者にはない不思議な力があった。

 それは、生者死者問わず、他人の記憶が断片的に垣間見てしまう力だった。

 いや、どちらかと言えば記録、だろうか? 

 頭の中で受信する映像はその人物を中心とした映画のように再生される。

 音声が付く事もあれば付かない時もある。

 発動条件も良く解らず、本当に突然記録が流れ込んで来るのだ。

 だだ、誰かに接触すると視えてしまう事は多い。

 今回は、被害者が殺害される場面が生々しく再生されてしまった為に精神的負担がデカかった。

 視える記録は1日内の事が再生されるか、対象に強く残った記憶が流れる事が多い。

 この力について知っているのは、優衣の唯一の肉親である父親と、美奈子だけだ。

 

「どうする? 黙っているか?」

 

 従姉の気遣いに小さく首を横に振った。

 

「あの格好から、たぶん犯人の人はこの旅館の従業員みたいだし。放っておくのは恐いよ」

 

「まぁ、そうだな」

 

 証言としては、たまたま被害者と従業員の人が揉めているのを見た、と言った感じで良いだろう。

 優衣の力云々は話せないし。後は警察の捜査で何とかなるだろう。

 部屋に戻る途中、聞き込みをしていた刑事を捕まえて証言する。

 その証言を基に捜査をしたところ、犯人の従業員は使った凶器を処分しようとしていたところを張られて逮捕される。

 

 犯行の動機は、犯人と被害者は学生時代からの知り合いで、謂わばいじめっ子といじめられっ子の関係だったらしい。

 被害者に今回の宿泊費をタダにしろと要求され、断れば、学生時代の虐められていた犯人の画像を旅館の従業員に晒すと言われてカッとなって殺害した衝動的な犯行だったらしい

 

 居合わせた眠りの小五郎の出番もなく、事件は1人の少女の証言を下に解決された。

 ちなみに、その眠りの小五郎が預かっている眼鏡の少年は、事件が自分の関与しないところでスピード解決したことに大層不満そうだったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、1泊だけして帰ることになってしまったな」

 

「仕方ないわ。あんな事件が遭ったら旅行なんて楽しめないもの」

 

「そうだが」

 

 運転する美奈子の不満そうな声に優衣は苦笑する。

 

「さっさと米花町に帰るとするか」

 

「うん」

 

 これを機に、優衣は何故か事件に捲き込まれ易くなり、事あるごとに顔を会わせる眼鏡の少年に疑いの目を向けれる事になることをまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




柳原優衣。
誰かの人生記録を映像で見てしまう少女。高校1年生。
父親は刑事で母は幼い頃に亡くなっている。
自身の力に関してはある程度折り合いを付けて生活している。
新一がコナンになる際の記録を垣間見るも、あまりの非現実的な事に確信を持てずにいるし、関わる必要もないと思って忘れる事にする。



江戸川コナン。
今回、優衣に工藤新一と呼ばれたことで組織の仲間なのでは?と疑っている。
これを機に顔合わる機会が増えて、その度に優衣の素性を探ろうと動くが、当然何も出てこず、本人にも避けられる。




続かない。
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