人生記録が視える少女 作:魚料理最高!
コナンの言動がなんかバカッぽいですが、それは作者の頭が悪いだけです。
まだ夏休みの暑い日射しが続く中、江戸川コナンは難しい顔をして前を歩いてお喋りしている歩美、光彦、元太の3人の方を見ている。もっとも、コナンの意識は3人に向いてはいないようだが。
そんなコナンに横を歩いていた灰原哀が話しかける
「なーに。不機嫌そうな顔して?」
「あぁ。やっぱり、旅館で会ったあの女が気にかかってよ」
先日毛利家と阿笠博士。そして少年探偵団の面々で旅行に行って起こった殺人事件。
その時に話した第一発見者の高校生くらいの少女。
自分を本当の名前で呼んだ彼女の事が気にかかっていた。
事件の後にもう一度会おうとしたが、早々に帰ってしまったらしい。
これなら、あの時に発信器でも付けて置けば良かったと後悔した。
そんなコナンに灰原が冷たい視線を送る。
「また、あなたが迂闊な行動を取ったんじゃないの?」
本来、江戸川コナンは世間からの注目を浴びることが許されない存在だ。それが事件と来れば首を突っ込み。メディア等にも知られた存在になっている。
その視線に気付いてコナンはバーロォ、と返した。
「本当に初対面で少し話をしただけでいきなり気付いたみたいに呼ばれたんだぜ? もしあの女が組織の一員だったら……」
組織の中で工藤新一の死亡が疑われており、子供になっている事に気付き始めているのなら。
もしそんなことになっていたら、自分や周りの人達にどれだけの危険に晒されるのかと焦りが生まれる。
「もしそうなったら、私達全員が殺されるでしょうね」
コナンの不安を口にする灰原。
その言葉にコナンが悔しそうに歯を鳴らす。
そんな事をさせる訳にはいかないと気を引き締める。
「……もし組織が米花町で動けば、FBIの方からも何らかの連絡がある筈だ。だからまだ、大丈夫だとは思うが」
「そうであることを祈ってるわ」
灰原も真面目な表情で頷く。すると前を歩いていた3人が2人を呼ぶ。
「コナンく~ん! 哀ちゃ~ん! 早く早くー!」
「遅いですよ、2人共!」
「また2人で内緒話なんてしてよー」
小さな3人の呼びかけに悪い悪いと言って追い付こうとする。
そこで、少しズラした視線の先に見覚えのある人物が歩いていた。
肩のところまで伸びた黒に近い茶髪。
少しタレ目の大人しそうな、女子高校生。
夏休みだというのに制服を着て歩いている彼女は、スマホをいじりながら道路を跨いだ建物の脇道に入って行く。
忘れる筈もない。それはまさしく自分を工藤新一と呼んだ少女だった。
「アイツッ!?」
弾かれるように奥へと消えていく少女を追うコナン。
「コナンくん!」
突然方向転換を始めたコナンを歩美が呼ぶ。
「悪い! ちょっとオレ、用事を思い出したっ!」
それだけ言うと、脇目も振らずに走っていく。
「どうしたんだ? コナンの奴……」
「彼がああいう態度を取る時は決まって事件の抜け駆けしてるときに決まってます!」
光彦推測に歩美と元太がズルい! と不満そうにする。
「コナンにばかり手柄を取られてたまるか! オレ達も追いかけようぜ!」
元太の意見に歩美と光彦が賛成する。
「ちょ、ちょっとあなた達────!?」
待ちなさいと止める前に歩美が灰原の腕を引く。
「ほら! 哀ちゃんも!」
そのままなし崩しにコナンの後を着いていく事となった。
「待てっ!?」
「え? 君は……」
学校の部活を終えて帰る途中だった優衣は、突然発せられた大声に足を止めて振り返った。
呼びかけてきた少年には見覚えがある。
従姉との旅行で事件の事を訊いてきた少年だ。
その子供は切羽詰まった顔で優衣に質問をする。
「お前、いったい何者だっ!」
「へ? なに?」
突然主体性のない訳の分からない質問をする子供に優衣はたじろぐ。
「とぼけるな! 組織の奴らは、オレの事に気付いてるのか! 答えろ!!」
履いているシューズに触れる子供。
大して知りもしない子供に問い詰められ、ただただ混乱する優衣。
そこで子供の後ろから声が聞こえてきた。
「コナンく~んっ!!」
「お前ら、なんでっ!?」
眼鏡の子供が動揺していた。
さっさとここから離れさせようとすると、優衣は上から降ってくるそれに気付いて眼鏡の子供のところに走る。
「危ない!?」
抱きかかえてその場から退かすと、横の五階建てのマンションから女の人が降ってきた。
「なっ!?」
眼鏡の子供が落ちてきたマンションを見る。
すると、ニット帽とサングラスにマスクを付けた長い茶髪の誰かが4階に居り、サッとその場から消えていく。
眼鏡の子供が一瞬優衣を見てくるが、クソッとマンション内へと入って行こうとする。
「待ちなさい、君!?」
止めようとするが、突然人が降ってくるという異常事態に足が竦んで動けなかった。
そんな優衣とは別に、後から来た4人の子供達は動揺こそ有るが、冷静に対処し始める。
「今、救急車に連絡したわ。警察の方もそっちから連絡が行く筈よ 」
「そ、そう……」
「コナンは犯人を追って行ったし、オレ達もいこうぜ!」
「ダメよ。警察が来るまで、私達はここで待機! いいわね!」
「でも……」
リーダーっぽい茶髪の女の子の指示に不満そうにするが、渋々と従う。
その、こういった現場に慣れているような子供達に優衣は混乱している。
(なんなの、この子たち……)
そこで茶髪の女の子が近づいてくる。
「大丈夫。あなた?」
「え、ええ……」
子供達にうすら寒いものを感じながらも壁を支えにどうにか立ち上がった。
落ちてきた人を視界に入れた。
すると、ひどい頭痛が起きる。
「ッ……ァ!?」
流れ込む。
この人が落とされる直前の記録映像が。
落とした犯人の顔も。落とされた女性の恐怖に引きつられた表情も。
今回はその会話まで聞こえてきた。
それが視えるときの特有の頭痛に呻き声を出し、頭を押さえ、膝を折る。
「お姉さん、大丈夫っ!?』
「しっかり、してください!』
「だい、丈夫よ……ちょっと、眩暈がしただけ」
呼吸を調えると、茶髪の女の子が優衣をジッと見ていた。
「あなた……」
「? な、に……?」
優衣の質問に少女は答えずに救急車と警察が到着した。
そこで現れた刑事に優衣が目を丸くして、誰にも聞こえない声量で呟いた。
「お父さん……?」
「優衣!? お前、どうして」
「たま、たま……それより、この人を落とした犯人を、子供が追っていって……」
マンションを指差して説明する優衣に父である柳原幸治は、すぐに部下に指示を出して追わせる。
優衣の様子から幸治は娘にだけ聞こえるように囁く。
「視えたのか?」
その質問に優衣はコクンと頷き、後で話す、とだけ答えた。
娘の様子を柳原幸治は痛ましげに見ていた。
幸いにしてマンションに入って行った眼鏡の子供は犯人と遭遇することなく警察に保護された。
パトカーで警察署まで乗せられた優衣達だが、そこで少々、困った事になっていた。
「ボク達は少年探偵団なんです! 犯人を捕まえるのにきっと役に立ちます!」
「歩美達も、何か役に立ちたいの!」
「そうだぞ! だからオレ達にも事件の事を教えろよ!」
少年探偵団と名乗る彼らが事件の情報開示を求めてきたのだ。
もちろん警察がそんな事を出来る筈もなく、困ったようになだめていた。
優衣も警察官の人と一緒に落ち着かせる。
「落ち着いて。あの人を落とした犯人は、刑事さん達がすぐに捕まえてくれるから」
「だってよー。オレ達が現場にいた方が、すぐに犯人を捕まえられるぜ」
子供達の中で1番大柄な少年が生意気な口を利くと、警察官の女性が口を引きつらせる。
これ以上、騒ぎになるのはゴメンだと思い、話を逸らすことにした。
「君たち、名前は? 私は、柳原優衣って言うの。よろしくね」
優衣がそう自己紹介すると、5人の子供達は順々に自己紹介をしてくれた。
眼鏡の少年と茶髪の女の子は警戒した様子だったが。
「歩美ちゃんに哀ちゃん。元太くんに光彦くん。それにコナンくんね。警察の人達がちゃんと解決してくれるわ。だから皆は大人しくここで待ってて。ね?」
諭すように言う優衣に子供達は不満そうだ。
そこで優衣に呼び出しがかかる。
「柳原さん! お願いします」
「あ、はい! じゃあ、大人しくしててね」
それだけを伝えると呼ばれた部屋に行く優衣。
その後ろ姿を見ていたコナンに灰原が話しかける。
「あなたが言ってた旅行で会った工藤新一を呼んだ人って彼女?」
「ああ。だが、どういう訳か、しらばっくれやがった。どうした、灰原?」
「……本当に彼女、組織の人間? 私には普通の女子高生にしか見えないけど」
組織の人間なら人が落ちてきただけであそこまで動揺するとは思えない。
あれが演技とは思えなかった。
「それに、組織の人間特有の気配は感じないわ」
「……」
灰原の言葉にコナンは考える。
だが、やはりどうして自分の正体を見破ったのか。その謎が解けない。
謎と言えば、あの犯人もだ。
「それに、あの女の人を突き落とした犯人は何処に消えたんだ?」
突き落とした犯人を追ったが、階段は一本道で、隠れられる場所もない。
元々あのマンションは住民が少なく、住んでいたのは落とされた4階の被害者と、1階の老夫婦だけらしい。
1階で2部屋しかないマンション。当然全て鍵がかかっていた。
目の前の謎に取りかかるコナンに灰原は呆れたような視線を向けた。
その犯人は、すぐに捕まることとなる。
「警視自ら取り調べ? お父さん」
「茶化すな。お前もその方が都合が良いだろう?」
「そうだけど」
優衣が席に座るとスケッチブックを取り出し、鉛筆を走らせる。
淀みなく、能力で見た犯人の顔を描き上げていく。
優衣は高校では美術部であり、特に人相画を得意としていた。
「私が視たあの女の人を突き落としたのはこの男の人。長い茶髪だったけど、それはカツラみたい。話からこの人は知り合いみたいな会話だったよ」
「声も聞こえたのか?」
「うん。被害者の交遊関係を調べて、証拠も固めれば逮捕出来るんじゃない?」
「お前が見たものが正しければな」
既に50半ばの幸治は、疲れた声を出す。
娘の力に関しては知っており、疑ってはいないが、それだけを頼りに捜査するのも危険だと思っている。
人相画を渡して優衣は話を変えた。
「今日のごはん、どうする?」
「悪いが、1人で食べてくれ」
「そう」
その短い会話だけで親子の会話を終えると部屋を出ようとする。
「優衣。警察として協力は嬉しいが、あまりそういうのを視ないほうがいい」
「うん。分かってる。私も、好きで見てる訳じゃないから」
「なら、いい」
そうして、優衣は部屋を今度こそ出た。
この後、犯人は警察に連行される。
優衣が描いた人相画通りで、被害者の部屋から指紋などが出てきた事を証拠に取り調べの最中も多くの質問から矛盾点を突き、犯行を自白させた。
取り調べを終えた優衣が戻るとコナンを先頭に少年探偵団が近づいてくる。
「お姉さんは、警察の人になんて話したの? あの刑事さんとも知り合いみたいだけど……」
以前と同じ、不躾な質問に疲れた表情で答えた。
「コナンくんは知らなくていいよ。それに犯人はすぐに捕まる筈だから」
「え? どういうこと」
「君も、あまり危ないことに関わらないの。自分や周りの人達が危険な事になるのはイヤでしょ?」
優衣の言葉にコナンが視線を鋭くさせた。
「それ、どういう意味?」
「? ……言葉通りよ? それじゃあね」
子供達は保護者が迎えに来るそうなので、先に帰ることにした。
警察署を出ると、夜になっている空に向かってあることに気付く。
「そういえば、なんであの子、私を追いかけてきたんだろ?」
考えたが、中に戻るのも億劫でそのまま念のため刑事の車に乗せてもらって帰る。
あの子とは、もう会うこともないだろうと思って。
「君も、あまり危ないことに関わらないの。自分や周りの人達が危険な事になるのはイヤでしょ?(事件の犯人に襲われるから危ないでしょ)」
「それ、どういう意味?(これ以上探ってくるなら、組織がオレ達を襲うって警告か?)」
2人の会話はこんな感じに齟齬があります。
灰原の言葉を聞いても疑いを晴らしてません。
優衣の父、柳原幸治さんは54歳。四十路近くで優衣が産まれた為。
親子仲は良いです。