鬼は酒を求む   作:テリーヌ

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一話

頭が痛い、喉が酷く乾く

激しい頭痛が駆け巡り思わず目が覚める。立ち上がろうと起き上がるも足元がおぼつかず壁に寄りかかる

壁はひんやりと冷えており少し心地よさを覚えるがよくよく見ると壁は家のようでもなければ人工物で作られたものでなく岩石でできた自然物である

違和感を覚え周りを見渡す

 

「どこだ、ここ?」

 

そこは巨大な洞窟が存在していた

もちろんこんなところで寝た覚えなどない

昨日は家できちんと……

 

「……?家?」

 

不思議なことに昨日のことが思い出せない。いや、それ以前に自分が何者かわからない

自分がどのような人生を歩んできたのか全く思い出せない、自分は何者なのだ

 

視線も低く感じる

自分の体を見てみると白のノースリーブに紫色のロングスカートを履いた幼女体型が見える

 

「………」

 

おかしい。いや、自分が何者なのかわからない状態なのだからこの姿が正しいはずなのだが違和感しかない

 

「……どうなってんだよこれ」

 

何もわからずむしゃくしゃして無意識に頭を掻き毟ろうと手を伸ばすと髪以外の硬い何かに手が当たる

 

「なにこれ……つの?

はー、なんなんだよ私って」

 

なんとか立ち直りここがどこだか考えようとしたがそんなことより今は喉が渇いて仕方がなかった

 

「どこで水を………」

 

いや、求めるのは水ではない。

喉が乾いているのは事実だが体は水を欲しているわけではないと感覚的にわかる

私が本当に欲しいのは………

 

「ーーーー!ーーーーー!」

 

洞窟内に咆哮がこだます

考えが打ち切られ真っ暗な洞窟を見渡す

暗くて見えないが何かがこちらに近づくのがわかった

逃げようにも出口がわからずどうすれば良いのか立ちすくんでいると暗闇から何かの正体が現れる

 

二足歩行の身長は私と同じくらいだろうか、共通点といえばそのくらいだろうか

全身の肌は緑色の醜悪な見た目が特徴的である

 

「あー、……………どうも」

 

どんな見た目でもコミュニケーションは取れるのではと一応挨拶を交わしてみるが、相手はそんなことお構いなしにこちらに駆け出し右手に持っていた石斧を振りかぶる

何をされるのか瞬発的に理解した。いや、これしかない

こいつはこの斧を振り下ろし私を殺そうとしている

 

「うおっっ!?」

 

思わず両腕を前に突き出し石斧を防ぐ

腕に刺さり血が滴り落ちる

 

「ああああらあ!」

 

腕に痛みを感じ斧を振り払う

腕を見ると皮膚が切れ血がぽたりぽたりと洞窟に落ちる

ゴブリンは再度斧を振りかぶり襲いかかってくる

何が起きなのかわからない状態から少し時間が経ったことにより頭にあることがよぎる

 

 

 

 

 

死ぬ

このままでは死ぬ

私が死ぬ

戦意がない私にあいつはにやけ始める

何もしていないのに死ぬ

訳もわからず死ぬ

死…………

 

 

「死ねるかー!!ー!ーーーーー!!」

 

何かが弾け襲いかかってくるモンスターに対し右手で思いっきり殴る

反撃が来ると思っていなかったのか懐のど真ん中に直撃する

突き飛ばされればいいと思って出した拳は予想とは大きく外れる

 

肉が軋むミシミシとした音など生温かった

いくつもの骨が折れ、内臓が潰れるよう音とともにモンスターは何メートルと洞窟内をバウンドしながら吹き飛ばされていく

 

「…………はえ?」

 

何が起きたのかわからず自分の腕をまじまじとみる

見た目はあんなに吹き飛ばされるような力があるような腕には見えない

そもそも斧を真正面から受ければ切断とまではいかずとも骨が見えるほどにまで切断はされそうなものだが、私が受けたのは皮一枚切れた程度だ

 

襲い掛かられるよりも自分の体に困惑していると、先ほどあいつが現れた方向から足跡が聞こえる

ひとつじゃない

二つ三つ、多数の足跡が聞こえる

 

とうとう暗闇から現れる

見た目は先程殴り飛ばしたモンスターそのものだが数が異常であった

数えるのがめんどくさくなるほどのモンスターがこちらに向かってくる

 

状況は最悪であるが私は先ほどとは違う感情を抱いていた

恐怖?恐れ?違う

高鳴るのは闘争の高揚感

自分でもなぜこのような気持ちになるのかわからないが今は感情に身を任せ

 

「かかってきな!!!全身緑人間!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ある一団がオラリオからダンジョンに潜りはじめた

目指すは第二階層

新人を連れて教育を図ろうと初ダンジョンに連れ出しているところである

一人の先輩と新人の三人で構成されたチームである

新人は緊張しているのかビクビクしながら歩いているが

第二階層などゴブリンかコボルト等の雑魚しか生息しておらず何事もなく終わるだろう

だがここで違和感を感じる

先輩は何度もここにきているがこんなにも静かなのは初めてである

今頃ゴブリンが2〜3匹が現れても良い頃合いなのだが気配のひとつもしない

何かがおかしいと感づきはじめた時、奥の方からペタペタと足音が聞こえる

普段ならゴブリンだろうと気を抜くところであるがこの静寂から緊張が走る

五人の前に現れたのは異様な存在であった

頭には二本の角が生えており目は血走りこちらを睨みつける

何より異様だったのが全身が真っ赤に染まっていた

体色が赤いのでは無い

血だ

全身が血を纏い手にゴブリンの頭を鷲掴みにしていた。体が存在せず頭だけの

 

「………っ!」

 

こんなモンスター見たことがない

あの眼光に睨み付けられるだけで身動ぎしてしまう

新人は口をパックさせるもの、腰を抜かし尻餅をつくもの、戦意を失うもの

まずいと感じた先輩は声を荒げる

 

「立て!!!!!

モンスターを目の前に怯えるな!!!!!!!

構えろ!!」

 

「誰がモンスターだ!!!!!!!!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「あーもう、汚いったらありゃしない」

 

声からして女性、いや少女だろう

少女は顔についた血を手で拭うとそこには幼い少女の顔立ちが現れる

モンスターでないと安心したが、ということはこの血は…………

 

「おい大丈夫か君!?」

 

「え?………ああ、これ?

これ全部こいつらの血だよ

たっく、この緑人間野郎弱いくせに数だけは多いんだよねー」

 

「返り血?これ全部………?

緑人間?ゴブリンのことか

………………っつ!?」

 

不審に思いふと少女の後方を見て驚愕する

ほとんどが魔石化しているがそれでも見ればわかるほどのおびただしい数の死体が転がっていた

いくら弱いからと言ってもこの数が同時に襲い掛かられ場合自分達とてどうなっていたかわからない

それをこの幼い少女が全てやったのか

 

「………きみ、一体どこのファミリアのものだ?」

 

「ファミリア?

何だそれ?」

 

「なっ!?」

 

ファミリアを知らない

オラリオのダンジョンにいるということはそんな常識的なこと知らなくてはおかしいがそのことは置いておいて、ということはこの子は恩恵をいただいていないということになる

恩恵なしでこれを………この子はいったい……

 

「うおっと」

 

考えを張り巡らせていると少女は立ちくらみよろける

 

「おっと、大丈夫か!?やはりどこか怪我を!?

ポーションはあるが他に何か欲しいものはあるか?」

 

「‥…欲しいもの」

 

欲しいもの、あった

ずっと求めていた、体が欲している喉の乾かしを潤すあの

 

 

「酒!!!!」

 

 

 

 

 

 

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