鬼は酒を求む   作:テリーヌ

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四話

 

 

 

……ソーマ・ファミリア、酒の神がやってるっていうファミリアだ、酒が楽しく飲めるファミリアだと思っていた……いや、実際ソーマとかいう神酒に出会うことはできたのだが

 

「……愉快なところだねぇ……」

 

萃香はファミリアの拠点の広間で椅子に座りながら自分と同じソーマ・ファミリアの眷族たちを見ていた

 

飢えたかのように目を血走りながら神酒を求めて駆け巡っている

まともにモンスター狩ることや商売をして金を稼ぐ者などいないに等しく皆が非人道的な犯罪じみた方法で金を稼ぎ神酒を手に入れようとしていた

 

萃香とて酒はだいすきだ

正直これがなければやっていけない自信だってある

ただ、あれは酒が好きなものの行動ではなく酒に操られる哀れな行動に見えて気に食わなかった

 

「酒は飲んでも飲まれるなとはよく言ったものだよ」

 

そんなことを呟きながら萃香は酒を煽っていると奇妙な者を見た。

いや、奇妙なのではない。この空間では場違いなのだ

その者はフードを深く被って顔は見えないが体型からして女性だろう

女性だから不自然なのではなくその女性はとても幼い容姿であったのだ

 

活気盛んな眷族の中にあれは目立つ

それだけで萃香は興味を表し、ちょうど暇をしていたので椅子から立ち上がりその少女に駆け寄り肩に腕を乗せ話しかける

 

「よっ!子供がこんなとこで何してんだ?」

 

「わっ!?だ、誰ですかあなたは!」

 

「わたしかぁ、わたしは伊吹の萃香だよ

最近入ったここの新人さ」

 

「………リリルカ・アーデです

……リリは子供じゃありません。小人族(パルゥム)です」

 

ぱるぅむ……ああ、そういえばボリスがオラリオにはさまざまな種族がいるという説明の時に言ってたっけ?

たしか、成人しても身長が小さいままの姿をもつ種族だっただろうか

 

「それはすまないねえ」

 

「……伊吹様だってわたしと同じ身長じゃないですか

あなたも小人……いえ違いますね」

 

萃香もリリと同じ小人族(パルゥム)かと考えたが、頭から生える角を見て否定する

 

「ん〜、わたし自身も自分が何の種族か知らないんだよ」

 

「そうなのですか。

失礼ですがリリは急いでいるのでこれで」

 

リリは焦っているのか辺りをキョロキョロしながら慌ただしくこの場を去ろうと小走りに出口に向かおうとする

 

「こんなところにいやがったのか!!

リリルカ・アーデ!!!」

 

が、そんなリリを呼びかける声に足が止まる

振り返るとそこには三人組の男達が立っていた

 

「帰ってきてるって聞いたんだが、最近見かけねえから心配してたんだぜ。

今からダンジョンに行くんだがついてこい」

 

「……い、いえ、リリは……」

 

「口答えしてんじゃねぇ!!」

 

男は断ろうとするリリの顔に問答無用で殴りつける

立ち上がろうと悶絶するリリの髪の毛を無理矢理掴むと男は呟くように

 

「使えねえお前をわざわざ俺らが使ってやってるんだぜ?

そんな手前は俺たちに誠意を見せねえとおかしくねえか。ええ?」

 

「………」

 

返事をしないリリに舌打ちするともう一発入れようと拳を振り上げる。すると一人の少女、萃香がこちらに近づき二人の前で止まった

萃香はリリを掴んでいる男の腕をそっと掴む

 

「いってぇぇ!!」

 

突然の痛みに男はリリの掴んでいた手を離し腕をおさえる

何が起きたのかと腕を見てみるとそこには小さいながらもくっきりと手で掴まれた痕が赤く残っていた

 

「今リリと話してるのはわたしなんだから邪魔しないでくれるかな」

 

「て、てめえ!……………その角……ああ、てめえが団長の言ってた新入りか

……ちょうどいい。てめえも一緒に来てもらおうか」

 

「はぁ?なんでわたしが」

 

「新入りは先輩の言うことを聞く者だぜ

それがファミリアにいるルールってもんだ」

 

「ちっ」

 

「んじゃあ、支度でもしてるんだな」

 

そう吐き捨てると男たちはダンジョンの方へと向かっていった

 

神の恩恵(ファルナ)を授かってからダンジョンには行こうとしていたがこんな形でダンジョンに行くことに不満を抱いた萃香はイライラしながら酒を飲む

隣には立ち上がりついた埃を払ったリリは

 

「………どうしてリリを助けたのですか?」

 

「ぷはっ!……ん?さっき言ったろ?邪魔してきたからだよ」

 

なにか深いわけがあったわけではなくあの時、萃香は自身を無視して邪魔してきたあの男に無性に腹が立ったのでこういった行動を起こしたのであった

 

「…………一応感謝はしておきます

萃香様もダンジョンの用意をしておくべきかと。では」

 

それだけ言うとリリはこの場を後にする

萃香もダンジョンの支度をすべくその場を離れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで萃香たちはダンジョンに潜入し、今は4階層目に突入しようとしている

前衛はあの時の男三人、後衛にリリと萃香がと言う配置になっている

ゴブリンなどが出てくるが、その程度前衛だけで事足りるため後衛は暇な状態である

 

「お前さん、見た目に似合わずよくそんな物持っていられるな」

 

萃香の目にはリリが自分以上の大きさがあるリュックを見ながら話しかけてくる

 

「……慣れていますから

………萃香様は随分と軽装ですね」

 

大量の荷物を持つリリに対し萃香は何かを装備していたり、アイテムを持っているように見えなかった

 

「ダンジョン初めてだからさぁ……いや二回目か……

何持ってきていいかわかんないからそのまま来ちまったからな」

 

「え?………ちょっと待ってください

ポーションすら持ってきてないのですか!?

いえ、それ以前に初めて!?」

 

「来やがったぞ」

 

リリの驚きは前衛の呼びかけにより遮られる

前方を見るとそこにはモンスターが集まってきており、ゴブリンだけでなく人間のように二足歩行で歩く獣、コボルトの姿もある

 

「おい、新入り。

てめえ一人でやりな」

 

「はぁっ!?」

 

リリが驚嘆の声をあげすぐに否定する

 

「無茶です。

萃香様は初ダンジョンでポーションすらお持ちでないのですよ!?

あのような数、無謀です」

 

「新入りの実力を見るためにはうってつけじゃねえか

安心しな。死にそうになったら助けてやんよ」

 

嘘だ

確実に見捨てるようなにやけ顔をしていては何の説得力もない

この男、萃香に怪我を負わされたことを根に持っているようだ

 

そんなリリの心配をよそに萃香は酒を飲みながら悠々とモンスターの前へと躍り出る

 

「緑人間以外のモンスターを見るのは初めてだな」

 

「は?緑人間?何を言っているのですか?!

そんなことより逃げ『ベチャッ!!』………へ?」

 

何かが潰れたような生々しい音が響く

音の方を見ると萃香の腕が横に伸びておりその先にはぺちゃんこになったゴブリンの姿があった

どうやらゴブリンを腕で横になぎ払ったようだ

 

「……へ?今何を?

…素手で?」

 

ゴブリンはダンジョン内でも弱く初めての冒険者にとっては良い練習台なのだが殴って倒せるような軟弱な体はしていない

それを萃香はまるで紙風船を割るかのようにどんどん拳で潰していく

もしかして男たちは萃香の実力を知ってあのようなことを言ったのかと思い男たちを見るが、男たちも予想外だったのか空いた口が塞がらず茫然とその光景を見つめていた

 

ゴブリンをあらかた片付けた萃香はつぎの獲物コボルトへと標的をかえる

コボルトはゴブリンと違い多少抵抗するが、抵抗虚しく次々と殴り殺されていく

 

だが、ここで問題が発生する

もともと第7階層のモンスター、新米殺しという別名を持つ巨大な蟻、キラーアントが姿をあらわす

 

「なっ!

萃香様!!まずいです。そのモンスターは……」

 

「邪魔!!」

 

襲い掛かってくるキラーアントの顎門を真っ向から殴りつける

硬さで定評があるはずのキラーアントの攻殻にヒビが入る

 

「もういっちょ!」

 

同じ箇所をもう一度殴りつけるとヒビが広がり砕け散る

 

「はっはっは、興がのってきたぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、そこからは伊吹の独擅場で暴れるだけ暴れて帰ってきたと」

 

「「「はい」」」

 

前衛にいた男たちは団長であるザニスに今回の成果を報告していた

男たちは萃香を偶然いたから誘ったことになっているが、そんな偶然はなく、ザニスが男たちに萃香をダンジョンに連れていくように命令していたのであった

理由は単純であり、初期スキル持ちがどのような実力を持つのか気になり、まず調査したという理由だった

 

「はぁ、まあ、戦力は把握できた。下がって良いぞ」

 

ザニスの退出命令を聞くや否や男たちは部屋からそそくさと退出していった

男たちがいなくなったことを確認したザニスは一枚の紙を取り出してため息をつく

 

「………さすがにこれは予想外だ。

やはり早めに処理しておくべきか」

 

 

 

 

【伊吹 萃香】

 

 レベル1

 力 C 612

 耐久 G 212

 器用 I 51

 敏捷 I 65

 魔力 I 20

 

 スキル

 

【鬼の境地】

・戦闘時、力が上昇

・窮地に立たされるほど上昇値向上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリは今日の出来事を振り返る

破天荒で常に酔っていた変わったお方でした

やはり、あの方も神酒に魅入られてこのファミリアにいるのでしょうか

だとしたら………………でも……………萃香様は殴られた私を助けてくださった

 

小人族(パルゥム)だから助けたという感じではなかった

 

 

 

 

……………もしかしたら、あの方だったら私を………

 

 

そんな考えがよぎったリリはすぐに頭を振り考え直す

 

「……………リリは冒険者が嫌いです

冒険者大嫌いです………」

 

何度も何度も何度も何度も、呪詛のように何度呟く

 

 

 

 

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