鬼は酒を求む   作:テリーヌ

5 / 6
五話

 

 

「ほい、今回もよろしくー」

 

「……はい、承りました」

 

ダンジョンから帰還した萃香はモンスターの素材を持ってギルドへときていた

素材を受け取ったのは萃香を担当している受付嬢、金髪のツンツン頭が特徴的なつり目をしたエルフ族、リアである

 

「………………」

 

「ん?どうした?」

 

「いえ、……あなたがこんなに真面目にダンジョンに行きモンスターを狩っているとは、……初めてお会いした頃には想像していなかったので」

 

「失礼だなー。私はいつだって真面目さ」

 

「だったらギルドに酒を持ってこないでください!!!!」

 

もうお馴染みの相棒と化している酒瓶はいつものごとく萃香にお供していた

 

「よー!萃香ー!今日もいい酒持ってんじゃねーか

ちょっと分けてくれよー!」

 

知らず知らずのうちに酒友達として仲良くなった男(モブ)が萃香に話しかけてくる

 

「しょうがないねー。ちょっとだけだよ」

 

「ギルドで酒盛りをしないでください!!!!!!」

 

萃香の周りにはいつしか酒好きが集まり所構わず酒を飲んでいるのが日常茶飯事となっていた

以前にギルド内で宴会騒ぎになったことがあり、その時にはギルド長であるロイマンが茹でたこのように真っ赤に怒りながら止めに入っていた

当然、主犯である萃香の担当受付嬢リアも怒られた

 

「そんな方が真面目にダンジョンに行っているのが不思議でかないませんよ」

 

「あっはっはっはっは」

 

こっちも気も知らずに笑い飛ばす萃香の様子を見てリアは諦めたかのように深いため息をつく

素材を鑑定しながらリアは萃香に話しかけてくる

 

「……萃香さん、知ってますか?

最近、武器も持たずにダンジョンに行く冒険者がいるそうです」

 

「へーーー」

 

「その冒険者はいつも酒を持ってほろ酔い状態なんだとか」

 

「へー」

 

「小さな容姿で頭に特徴的な角があるんだとか」

 

「……………」

 

「……………」

 

萃香とリアが見つめ合い一瞬の静寂が生まれる

 

「……あなたですか?」

 

「私だね」

 

「やっぱりですか!!!!!!!!」

 

半信半疑だった噂が確信へと変わったリアは持っていた書類を思いっきり机へと叩きつける

 

「正気ですか!?

いったいどうやってモンスターを……」

 

「殴って?」

 

「殴っっ!??

………………………」

 

リアは俯き全身をわなつかせる

 

「まあ問題ないって。

んじゃーなー」

 

鑑定を終えヴァリスを受け取った萃香はギルドをさろうと立ち上がる

 

「…………………めです」

 

「ん?」

 

「…………ダメです……

我々ギルドの仕事は冒険者を良好な状態でダンジョンに送り出し無事帰還できるようにするのが我々の仕事………

こんなの私は認めません…………

 

 

 

 

萃香さん!!!!!!」

 

 

「え、あ、はい!?」

 

「このあとご予定は??」

 

「な…い……です」

 

リアの気迫に押され気が引けてしまう

そんな萃香を無視して散らばっている資料を手早く片付けると裏口に走り出す

 

「すみません!!今日は上がります!!」

 

「え、リアくん。まだ業務時間が……」

 

「有給を使います!!!」

 

何か抗議しようとする上司に話しかけられる前に私服へと着替えたリアはおもてで呆然となっている萃香を駆け寄り角を思いっきり掴むとギルドを走り去っていく

 

「……………」

 

「どうしたのエイナ?」

 

「い、いえ、リア先輩は私情を挟まない方だと思っていたので」

 

「あー、あの人ああ見えて世話焼きだからねー

ほっとけなかったんじゃないのー」

 

「へー、そうなんですね」

 

リアに萃香が連れ去られて行く姿をハーフエルフのギルド職員が微笑ましく眺めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萃香たちはオラリオで最も有名な鍛治ファミリア、ヘファイストス・ファミリアの店があるバベルへと訪れていた

 

「私と違って真面目なギルドの職員リアさんが仕事を放り出してこんなことしていいんですかー」

 

「とうとう自分が不真面目であることを認めましたね

………本日分の仕事は終わっているので問題はないです

ほら、着きましたよ」

 

数多くの店が並ぶ中で木造の造りが特徴的な少しこじんまりとした店の前で止まる

 

「同郷の知り合いがしている店です」

 

「同郷?ってことはエルフってことかい?

へぇ、エルフの鍛治師とは珍しいね」

 

鍛治といえばドワーフのイメージが強いが、エルフと鍛治はあまり聞かなかった

 

「はい。しかし、腕は立ちますよ。

ヘファイストス様からも一目おかれてますよ」

 

それはそれは、どんな奴がやっているのか気になってきたね

リアは店の扉を勢いよく開けるとそこには大量の武器が飾られておりいかにも鍛治師が好みそうな内装になっていた

だが、肝心の店主が見当たらない

 

「留守みたいだね」

 

「いいえ、います」

 

何かを確信しているのかリアは店内に入ると大きく息を吸う 

 

「フィー!!!出てきなさい!!」

 

突然の大声は小さな店を響き渡る

すると、奥の物陰から一人の人物がビクビクしながら姿を現した

 

「リ、リ、リアかい

……と、突然、お、大声を出さないでおくれ」

 

「あなたがいつもそんなんだからこうするしかないでしょう」

 

現れた人物はエルフ族特有の尖った耳に目を覆い被さるほど伸びた黒髪

をした小柄な人物、根暗そうなショタが現れた

 

「ありゃまあ、予想外も予想外でおさまらないよ

鍛治師の要素が全く見当たらない奴だな」

 

「あ、はは。よ、よく言わ、れます

は、はじめまして。フィロです 」

 

「私はフィーと呼んでます

腕は確かに立つのですが、こんな性格なので知名度は全くと言ってない状態なのです」

 

「ど、努力は、ししてるつもりだんだけど」

 

「ふー、まったく。

今回はこちらの萃香さんに武器を見繕って欲しいの」

 

「伊吹萃香だ。よろしく頼むよフィー」

 

「は、はい。

そ、そうですね。あ、案内します」

 

萃香はフィロについて行く

フィロは萃香の小柄な体型から考えて扱いやすそうな短剣をオススメしてくる

だが、素材や切れ味、種類を説明されても萃香にとっては何が良くて何が悪いのか分からず持っては離してを繰り返しているとフィロから助言がとんでくる

 

「い、いろいろ説明しましたが、……や、やっぱり武器はか、直感できめたら、いいと思います

ど、どれも良い悪いが、ありますし、

………わ、悪いだけな武器なんて、……ここにはありませんから」

 

おどおどとしているがそんなことを断言するあたりやはり自分の仕事には誇りを持っているようだ

 

「………なー、フィー」

 

「ど、どうされましたか?」

 

「あんたってなんで鍛治師やってるんだ?」

 

萃香はフィロが鍛治師の要素が全く見当たらないというのにフィロはこの仕事を選びヘファイストス・ファミリアにいるのか疑問に思っていた

 

「え、えっと、………ぼ、ぼく、昔から槌が鉄に打ち付けられて武器が作られていく音がす、好きだったんです

ま、毎日、毎日、聞いていて、そ、そうしているうちに、僕も、僕だけの音を出したくなって

 

しゅ、種族とかお前には向いてないって言われたけど、………で、でもやりたくなったんだ」

 

とても簡潔な答えだった。複雑な事情があるわけでもなくただただやりたいからやっているという

簡単に言ってはいるが何者にも負けずに今日までその自我を貫いてこれたのはフィロが鍛治師に向いていた証明だ

 

「………悪かった。今の質問は無しにしてくれ。愚問だったよ」

 

そんなフィロをエルフだから、貧弱そうだからという理由でフィロが鍛治師であることに疑問に思ってしまった

 

「い、いえ。き、気にしてないので、だ、大丈夫ですよ」

 

「……はは。私はあんたが気に入ったよ!!

よし、私はここで武器を買うよ」

 

「は、はい。あ、ありがとう、ございます

で、では、一緒に見つけましょう」

 

気を良くしたフィロは棚から大量の武器を取り出し次々と説明していったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………それでよかったのですか?」

 

「んあー、……これが一番しっくりきたんでな」

 

そう言って萃香は腕を上げる。ジャラリという音を立てながら持ち上がったそれは手首に巻き付けられた鉄の鎖がありその先端には球の分銅が吊されていた

他には反対の腕、そして腰にも円錐形、正方形の分銅が垂れ下がっていた

 

分銅鎖は近距離、遠距離と対応が可能であり万能であるが決定打にすこし不安が残るような代物である

 

「サブ武器程度が私にはお似合いだよ

やっぱこれだな」

 

拳を突き出しこれからも素手で挑む宣言をされたリアは腕を組みながら悩み不安は残るが武器を持ってくれただけでも良しとすることに無理矢理考えることにした

 

「そ、れ、よ、り、も!リアはもう休みだろ

飲みにいくぞー。今日のお礼に奢ってやんよ」

 

時刻は夕刻を迎えちょうど夕飯にはぴったりの時間帯である

 

「………そうですね。たまにはいいですね」

 

「いいねー。んじゃ行くか!

朝まで返さんぞー」

 

「え、ちょっと待ってください

私、明日も仕事なのですが……ちょ、まって、あーー!」

 

そうして萃香に引きずられ連れて行かれたリアは宣言通り朝まで帰ってこなかったという

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。