GW暇だったししょうがないね
さて、大事な大事なキャラメイク。
「悩みに悩んだが……これで」
種別:戦艦
艦種:長門型
艦番:三番艦
着任:ランダム
能力:標準
外見は会社を辞めた後に著名なデザイナーに頼み、二人三脚で練り上げた渾身の一品。まあ、長門と陸奥を足して二で割ったような感じなのだが。
そしてこのゲームはステータスをある程度いじることもできる、さすが神ゲー。とはいえ十周年記念で実装されて以降、余りに強すぎて逆に崇拝の対象になったレ級フラグシップみたいなぶっ壊れ性能のステータスは作れないのだが。おまけに上限値というか、総合計が決まっているため、例えば火力を上げたら何でもいいけど何かを下げなければならないし、速力や射程といった超重要能力は変えられない。だったらデフォでいいじゃん、考えるのめんどい。
「名前は――上総」
やっぱり戦艦は国名じゃないとね。そして最後に難易度の選択。
「ここは甲一択でしょJK」
甲乙丙丁とあるが各難易度がどの程度のものかというのが正直全くわからない。であるならばそこそこ歴戦の提督としては甲を選ばざるを得ない。
まあ、ダメだったらやり直せばいいだけだ。目の前に浮かんだ選択済み項目を再度確認し、隣に浮かんでいる鏡を見て前髪をちゃちゃっと直してオールクリア。
「いざ――抜錨!」
目の前に浮かんだ抜錨とやり直しのボタン。俺は迷うことなく抜錨のボタンをぶっ叩いた。
艦これVR
――建造が完了しました。排水を開始します――
無機質な音声とともに周囲を満たしていた水が引いていく。
――排水が完了しました。ドックを開放します――
ゴウン、という重い音とともに目の前の扉が開く。
深い海の底にずっと沈んでいたような感覚が抜けきらないまま、隙間より差し込んできた明かりに目を細める。
ガチリ、と体をドックに固定していたベルトが外れ、支えを外された体がガクッと揺れる。
「……っと」
膝から力が抜けて転びそうになり、支えるために一歩踏み出すと同時にドックの扉が開く。目が慣れきっていない中、どうやら出迎えが三人いるということだけは理解できた。
「……長門? 陸奥?」
「……すまない提督、確かに服装や艤装からも私と同型のようだが、やっぱりわからない」
「同じく。妹がいるなんて話、聞いたこと無いのよね……」
一足先に正常な機能を取り戻していた耳が三人の声を拾う。ああ、素晴らしきかなあやねる、素晴らしきかなお姉さま。どうやら、提督と姉二人がわざわざ俺を出迎えに来てくれたらしい。
遅れて明るさに慣れた視界には、なにやら難しい顔をしてこちらを見ている何度も何度も夢に見た長門と陸奥、そしてその後ろに真っ白い軍服を着た提督の姿――こっちは当たり障りない中肉中背の男――があった。
とりあえずは第一印象、ということでビシッと敬礼を決め、挨拶をする。もちろん笑顔も忘れない。
「長門型三番艦、上総。着任しました! どうぞよろしゅうお三方!」
「……と、言っているが?」
「すまない提督、何度聞かれても答えは否だ。知らんものは知らん」
だが、三人は俺の挨拶そっちのけで俺の存在について議論をしている。そりゃまあ、実際長門型三番艦なんてものは史実に存在しないわけで、いぶかしむ気持ちもわからんでもないのだが、とはいえこれはゲームだぞ? 普通ならスルーしちゃうようなところなのにどこまで作りこんでるんださすが神ゲー。
あーでもないこーでもないと相談している三人を尻目に、せっかくなんでステータス画面を開いてみる。キャラメイクはデフォルトで作ったが、もしかしたら隠しステとか新規ステとかがあるかもしれない、と開いてみたところ、旧版には無かったステータスが追加されているのが確認できた。
「……旧版のステは確か、耐久・火力・装甲・雷装・回避・対空・搭載・対潜・速力・索敵・射程・運の十個だったはず。なんじゃこの筋力・体力・精神って、RPGかよ」
およそ艦これらしくないステータスではあるが、艦娘のうち娘寄りのステータスと言われれば納得できなくもないか。もちろん燃料が最重要だろうが、体力切れたら動けなくなる、っていうのはありそうだし、疲労度の回復にも影響を及ぼしていたりするかもしれん。その辺はおいおい調べていくか。
そうこうしているうちに話が纏まったのか、三人のうち一人がこちらに向き直り口を開いた。
「……そうね。どれだけ考えたってわからないんだし、本人に聞きましょ。ねえ、上総って言ったわよね?」
「そうだよむっちゃん」
「むっちゃん……」
いきなりのむっちゃん呼ばわりに頭を押さえながら呻く、そんなむっちゃんもめっちゃ可愛い。
「……むっちゃん、って私たちのことわかるの?」
「そりゃまあ、姉二人を見間違えたりはしないでしょ。それよかむっちゃん、いっつも建造したときってわざわざ三人で出迎えるの?」
「……だいたい私か長門、あるいはその日の秘書艦が出迎えることが多いわね。基本提督はいないわ」
「じゃあなんで提督がいるの?」
「あなたの建造に際して本来ありえないはずの建造時間が出たからよ」
そういえば長門型は建造時間が独特だったっけ。だからおかしいと思ったということか?
「おかしいの?」
「おかしいわよ」
「なんで?」
「いや、私も長門もここにいるのに長門型の建造時間なのよ? おかしいじゃない」
ビス子は、と言いかけて条件を思い出す。秘書がレーベかマックスじゃないとダメだったっけ。じゃあ5時間だったら長門型一択だよな。
「むっちゃんがもう一人出るかも知れんやん?」
「そんなことあるわけないじゃないの」
ふむ、旧版は一つの鎮守府に同じ艦娘が何人もいたものだが、VR版は違うということか。まあ、実際自分の目で見るようになった際に同じ子がそこら中歩いてたら軽くホラーだもんな。よくハイパー北上様とかは何人も持つ提督が多かったから実際それができたら大井っちが鼻血出してぶっ倒れそうだけど。
「なるほど、おかしいのか……」
「だからエラーが起きたんじゃないか、ってことでとりあえず私たちと提督が見に来たのよ」
「理由は分かったけど、もし仮に本当にエラーで大爆発とかしたらどうしてたの。提督死んじゃうよ?」
「……考えなかったわ」
「おま」
マジかよ、と思って長門の方を見るとひきつった表情で冷や汗を流していた。こりゃ長門じゃなくてながもんだわ。
「ながもん、それでええんか」
「……呼び方の是非はともかく、だ。もちろん何かあったら身を挺して提督をかばっていたぞ?」
ながもん、目が泳いでいるぞ。それにそもそもここにいなけりゃかばう必要もないじゃん……。
とりあえず爆発はなかろうということで微妙になった空気を変えるべく執務室へ移動する。その際、ステータス画面に艤装格納とあったので押してみたらどこへとともなく艤装が消えた。すげえ機能だ、と感心しきりだったが、ながもんたちには当たり前の光景だったようで特にコメントはなかった。
前を行くながもんが今まで廊下で見た中では一番立派な扉を開け、正面にある机の裏に回って提督が座る。その後ろを二人が固めたので、俺は少しばかり考えて――とりあえずその後ろに回ることにした。面白そうだから。
「おい、なぜこっちへ来る」
「え、ながもんとむっちゃんが後ろってことは俺もでしょ?」
「そんなわけあるか! 机の前に立て!」
「そんなに怒るなって、軽い冗談じゃないか」
長門のこめかみに青筋が浮かんできたのでからかうのをやめて机の前に立ち、改めて敬礼する。選択肢が出るかの実験でもあったのだが、どうやら本当にこういった場面でも選択肢は出ないらしい。
「改めまして、長門型幻の三番艦、上総。着任しました、どうぞよろしゅーオナシャス!」
「……自分で言うのか」
ぼそりと呟かれた長門の突っ込みは無視し、提督の反応を待つ。自己紹介に関しても選択肢は一切出ず、こっちの思った行動がそのまま反映されている。
いわゆるゲンドウポーズをしている提督は俺のいい加減な挨拶にどうしたもんかと考えているようだったが、しばしの後にどうやら結論を出したようだ。盛大なため息とともに。
「……改めて、横須賀へようこそ、上総」
おお、割かしあっさり行ったか。まあゲームだし、と思っていたら神妙な顔をしたながもんが提督に声をかける。
「提督、いいんだな?」
「ああ。そもそも俺たちにえり好みなんぞしている余裕はない。そうだろう、長門」
「……是非もない、か」
「どこまで本当かわからんが実際に長門型だというならこんなに心強いことはない。上総、頼んだぞ」
「お任せあれ!」
「……不安だ」
「……不安ね」
提督は提督で早まったかなー、みたいな表情してるし、ながもんむっちゃんは肩落としてるし、どいつもこいつも失礼な。
憮然としているとゲンドウポーズに戻った提督が気を取り直し、眼光鋭く告げる。
「上総。我々にはあらゆるものが足りていない、そのことを努々忘れるな。陸奥、施設の案内と浮けるかどうかだけ確認、それから現状を軽く説明しておけ。本格的な教練は明日からだ。下がってよし」
「はっ! ……それじゃ、行くわよ」
「あいよー」
なんか随分ピリピリしてっけど大丈夫なんかねこれ。執務室を出て廊下を進む、その途中でむっちゃんに質問する。
「むっちゃん、色々足りてないってどゆこと?」
「色々は色々よ。時間も資源も艦娘も、ね」
「時間と資源は現状がわからんから何ともだけど、少なくともながもんとむっちゃんがいて艦娘足りてないの? マジ?」
「……一通り回ったら教えてあげる。ほら、まずここが食堂よ」
食堂、と書いてある扉をくぐるも、ちょうど昼と夜の間の時間のためか誰もいない。間宮さんが仕込みをしているかと思ったけどどうやら違うようだ。
「おー、ここがメシウマで噂の! あれむっちゃん、間宮さんは?」
「間宮? 彼女は食堂にはいないわよ?」
「……そいや、甘味処だったっけ。もちろん後で行くよな?」
「はいはい、分かったわ。とりあえず食堂は見ての通り、今は何もないわ。次行くわよ」
むっちゃんとの鎮守府デート。いやあ、チュートリアルの段階からこんなサービス全開とかほんと神ゲーっすわ。
次いでやってきたのは酒保。旧版だと課金アイテムが買える場所だったが、果たして今回はどうなっているだろうか。
「はぁい明石」
「おや、陸奥さん……と、どちら様で?」
「陸奥お姉ちゃんの妹上総でーす、よろしゅー!」
「……えーっと?」
明石に適当な挨拶をしながら品ぞろえを確認しようとしたらシステム画面が立ち上がる。スワイプしていくと結構色々な課金アイテムが確認できるが、やっぱりバランスをぶっ壊すようなアイテムや装備は昔同様実装されていないみたいだ。トマホークとかICBMとかあったらなー。
さらに右下にはクレカの連動ボタンと、使い過ぎに対する注意書き。こんなところは妙に現実的なんだな。
ちなみに、旧版に売ってなかったアイテムとしては服とか下着とかも売っていた。おいおいおいいろんな艦娘の制服も売ってるぞなんだこれやっぱり神ゲーじゃないか。
「一応そういうことらしいわ」
「えーっと……長門型に三番目がいた、なんて話は聞いたことがないんですが」
「安心して。私もよ」
「ええー……」
雑談している二人を尻目にとりあえず増設を買ってみようとしたが、どうもチュートリアル中は買えないらしい。課金アイテムとしては必須級なのは間違いないため、あとで必ず来ようと心にメモをする。
ついでに色々来てみたい他艦種の服装もあとで思い出しておこうと心にメモる。
「ま、提督がオッケーしたから大丈夫よ」
「いいのかなあ……」
「いいのいいの。ほら上総、次行くわよ!」
「あいよー。んじゃまたねー」
「あはは……」
というわけで次にやってきたのは工廠。イメージとしてはよくわからん機械が山積みになっている倉庫といったところか、勝手知ったるとばかりに奥へ歩いていくむっちゃんについていくと、何やらこっちに背を向けて溶接作業をやっている誰かがいた。タイミングよく作業が終わったか、フェイスマスクを外して一息ついているところに二人で近寄っていく。
「ふぅ……あれ、陸奥さん?」
「はぁい夕張。今度は何作ってるの?」
「いやまあ、提督の無茶振りがですね……と、初めまして?」
「どーもはっじめましてー。ながもんとむっちゃんの妹上総でーす。よろしゅー!」
「初めまして……え、妹?」
夕張の疑問を無視しながら周囲を眺めていると、酒保同様システム画面が立ち上がる。メニューは整備、修理、改修、魔改造の四つか、ていうか魔改造ってなんだ。選んでみようとしたけれど、チュートリアル中はどれも選べないようだ、残念。
某大丈夫な博士みたいなものだろうか、だとしたら博打してみるのも面白いかもしれないが、このゲームはオートセーブなんだよなあ……。
「気にしないで。ここでは使い方さえわかれば自分で装備の改修なんかもできるけど、とりあえずは夕張かさっきの明石に任せるといいわ。さ、次行きましょ」
「あいよー。んじゃーバリさんまったねー」
なんだったのかしら、なんていう夕張の呟きを背に受けながら次の場所へと向かう。工廠の外に出て暫し歩くと、切り立った海岸線の側にある建物が目についた。
「次はあそこ、弓道場よ」
「おー、弓道場。つまりあれか、空母勢がいると」
「ええ、今日は空母に出撃予定もなかったし、多分何人かはいるんじゃないかしら」
靴を脱いで弓道場へ上がる。ここまでくると、継続的に何かの音――おそらくは矢が的に当たっているものだとは思うが――が聞こえてきた。
「ああ、やってるやってる。はぁい、赤城さん、加賀さん」
「陸奥、珍しいわね。それと……新入りかしら」
「どーも初めまして、長門型三番艦の上総でーす、よろしゅー!」
「……三番艦?」
「気にしないで」
「ま、あなたがいいならいいけれど……一航戦、加賀よ。よろしく。それから、今弓を引いてるのが赤城さんよ」
加賀と軽く握手をして、そのままこちらの会話に全く反応せずに弓を引き続けている赤城を見る。矢筒から取り出し、構え、射かける、矢は当たり前のようにど真ん中に吸い込まれ、刺さっていた矢を真っ二つに断ち割って同じく真ん中に突き刺さる。いや、いくらゲームとはいえとんでもねーな。
「加賀っちはあれできるの?」
「……何、その呼び方」
「あり、気に入らん? いやいや軽い冗談じゃないですかそんな睨まんといてーな」
「……ま、いいけれど。できるかできないか、で言えばできるけど」
「おー、さすが一航戦。見せて見せて」
加賀は旧版と同じく割かし無表情で感情の起伏も薄いように見えたけど、やっぱり旧版と同じで実は結構ノリがよく煽ったりおだてたりに弱かった。
ちなみに、矢は三本射られて三本とも前の矢を真っ二つに断ち割ってど真ん中に突き刺さった。いや、一航戦怖すぎでしょ。さも、こんなの出来て当然という空気を醸し出しながらも地味にドヤ顔をしている加賀さんへ拍手をしつつ、隣にいるむっちゃんに質問する。
「たはー……ねえむっちゃん、あれって空母はみんなできるの?」
「いやー、そうだったらいいんだけどねえ。あの二人はちょっと別格なんだよね」
「あら、飛龍に蒼龍」
「どーも、二航戦飛龍でーっす。よろしく!」
「同じく、二航戦蒼龍でーっす。よろしくね!」
「長門型、上総でーっす。よろしゅー!」
「……長門型?」
「気にしないで」
説明を投げ捨てたむっちゃんはとりあえずスルーし、気になったことを聞いてみる。
「なあ飛龍、なんで向こうは半分で壁無くなってて海見えてんの? ながもんが砲撃でもしてぶっ壊したん?」
「ああ、あれ? あれはね――」
「あれは発着艦の練習をするための場所だからですよ」
飛龍を遮る形で後ろから声を掛けられる。振り返ってみると、先ほど完全に一人の世界に埋没していた赤城がいた。
「赤城さん、邪魔しちゃって悪いわね」
「いいえ、周囲に気を配れていなかった私が悪いんですからお気にせずに」
むっちゃんの謝罪に対し、わけのわからない回答が返ってくる。
「蒼龍、どゆこと?」
「私に聞かれてもわからないわよ。赤城さん、どういうことですか?」
「集中するのは大事ですが、それによって周囲の把握が疎かになってはいけません。違うところから砲弾が飛んで来たらどうするんですか?」
「え、どうするって……」
「我々空母は飛行甲板に一発でも貰えば途端にお荷物に成り下がります。そうならないよう、射る先とは別に周囲に気を配る必要があるということです」
もしも陸奥さんやあなたが害意を持っていた場合、私は大破してましたと。いやまあ、言いたいことはわかるけどその理屈はおかしい。蒼龍もなんかすげー微妙な表情してるし。
「……ま、そんときは俺やむっちゃんが庇うよ。な?」
「……そうね」
「というわけで改めまして、ながもんとむっちゃんの妹上総でーっす。よろしく!」
「一航戦、赤城です。こちらこそよろしくお願いしますね」
にっこり笑う赤城と握手し、ついで飛龍蒼龍とも握手、矢を射ていた加賀っちに一声かけて、次の場所へと向かう。
弓道場を出て少し歩くと運動場、体操服っぽい恰好をした集団がランニングをしている。ランニングというよりは木刀振り回した鬼教官から逃げるべく全力で走っているようにもみえるが……うん、見なかったことにしよう。
「見ての通りここが運動場よ」
「結構広いんだな」
「常識の範囲内で好きに使っていいわ。次行くわよ」
むっちゃんもきっと同じ結論を出したのだろう。ぽいいいいいという叫び声を完全スルーし、運動場を突っ切り隣にある建物へ入る。
「ここは道場よ。トレーニング室も併設してあるから、運動場と同じく常識の範囲内で好きに使いなさい」
畳の道場が一つ、隣にはむっちゃんの説明通り筋トレ器具やサンドバッグが吊るしてあるトレーニング室、中にはなんとボクシングのリングまである。
「設備すげーな。むっちゃんは筋トレとかすんの?」
「時々やってるわよ。長門はもっとやってるけどね」
「へぇ、ながもんはわかるけどなんか意外だな」
「失礼しちゃうわね」
「道場とかは誰か使ってんの?」
「時々誰かが使っていることはあるわね。私は使わないけど」
「ふーん」
そんな話をしながら一通り中を見回ってから外へ。あと残っているのは演習場と風呂と甘味処ぐらいだろうか。
しっかし、いくら横須賀とはいえ長門型が三隻に一航戦と二航戦に明石と夕張、さっき走ってたのが全員とも思えないけど駆逐やおそらく軽巡重巡もそこそこいるだろう。いくら何でも戦力揃いすぎじゃなかろうか。旧版は初期艦が駆逐一体だけだったのに。
だとすると俄然海域の攻略状況が気になってくる。これだけ揃っていれば鎮守府海域程度ならどうにでもなるはずだが、仮にもゲームなら開始時点からいきなり海域が攻略されているというのも考えにくい。
「うーん」
「どうしたの?」
「いんや、こっちの話。海域の話とかって後でしてくれるんでしょ、そんとき確認するわ」
「そ。それじゃ最後は演習場よ。とりあえず浮けるかだけ見とけって言われているし、それだけ確認しましょ」
「お、いよいよかー」
コンクリで固められた長い岸と、その先に色々浮いてるだだっ広い海域が演習場一円ということか。端っこの方では駆逐艦――ポーズしてシステム画面から確認してみたら吹雪だった――が障害物の間を走り抜ける機動訓練を行っている。
「さて……それじゃ、手を握って?」
「お、おう」
ためらいもなく岸から海面に飛び降りた陸奥の手を握る。
「沈まないとは思うけど一応ね。それじゃ、立ってみて」
その言葉と同時に視界が切り替わりシステム画面が出てくる。何々、チュートリアルその一、浮いてみよう。クリア条件、海面に浮く。ワンポイントアドバイス、バランスに気を付けよう。
「親切なのか不親切なのか……」
「?」
意を決して海面に片足を付ける。地面のように固い、なんてことは当然なく、表現としては柔らかいマットレスが近いだろうか。とりあえず沈まないことが分かったのでもう片方も付けてみる。うん、とりあえず浮かぶことはできそうだ。
システム画面上ではミッションクリアの表示。なんか報酬貰えるみたいだからあとで貰っておこう。
「とりあえずは大丈夫そうね」
「なんだか不思議な感覚だ」
「すぐ慣れるわよ」
「そうじゃないと困る」
むっちゃんの手を握ったままぐるりと周囲を見回してみる。それだけの事なのに足元が動き、バランスが崩れ転びそうになる。
「っとと、あぶね……ちょっと頭動かしただけでこれか。なあむっちゃん、射撃ってこの状態でやるんだよな?」
「そうね、というよりもこんな立ち止まった状態で撃てることはむしろ少ないわよ? 基本は動きながらが多いもの」
「マジかよ、ちょっと撃つ真似してみてくんない? 撃たなくていいから、動作だけ」
「……いいわ。ちょっと離すわよ」
むっちゃんが俺から少し離れたところでどこからか艤装を展開し、砲身を沖に向かって動かす。
「全砲門、開け! 撃てーっ!!」
右手を大きく振り、声を張る。その瞬間、砲身から爆音とともに砲弾が飛び出す幻想が見えた。
「……とまあこんな感じだけど」
「それって手は動かす必要あるの?」
「んー……人によるかしら。私は動かしたほうが撃ちやすいのよ」
「意味がなくはない、のか。どれ――全主砲、斉射! 食らいやがれ!!」
むっちゃんに倣って手を振ってみて、バランスが崩れてすっ転んだ。ばっしゃーん、と海面に叩きつけられ全身ずぶ濡れになった後、近くまで来たむっちゃんに引き上げてもらう。
「……マジかー」
「ちょっと、大丈夫?」
「……これは要練習だわ」
むっちゃんに支えられながらステータス画面を再度見る。これあれだな、最初に見た筋力とかもしっかり鍛えないとダメな気がしてきた。海の上でバランス取るには慣れもそうだけど並みの体幹じゃ効かんぞ。
装備の軽い駆逐とかならまだマシかも知れんが、大型戦艦とかの弊害はこんなところにも出てくるのか。いや、海上で弓を撃つ空母よりはマシか、正直できる気しないぞ。
「……ここまで作りこむかね、ほんと」
「何のこと?」
「こっちの話」
後でマニュアルをしっかり見るとして、とりあえずは某サクセス同様ランニングでスタミナ上げかねと内心嘆息した。
余りに強すぎて逆に崇拝の対象になった?
→勝率0.1%のオウガイさんさいっきょ
ステータス?
→整合性考えるのめんどいからネトゲ風ステータス数値紹介はやんない
ログアウトさん?
→いわゆる掲示板形式を含む現実世界ネタをやる予定が無いから消えてても消えてなくても一緒だよね