異界食らいし蛇 作:お料理研究家サー・ザウザー・ハンバーグ
メイン:アステロイド(突撃銃)空き シールド 空き
サブ:拳銃(アステロイド) スコーピオン シールド バッグワーム
に修正しました。バッグワームをサブに変更。
普通バッグワームで隠れているときは突撃銃メインだろう馬鹿じゃないの馬鹿でした。頭オーケストラな筆者を許して。
「.....」
トリオンというエネルギーは未知の塊だ。
人間の中にある肉眼では見えない器官から生み出されるそのエネルギーは、抽出すれば肉体を作る事も武器のエネルギーともなる。電力にもなれば建造物にもなる。そして――世界そのものを作り出せるだけの力を内包している。現在、地球においてもこれほど安定し、応用力のあるエネルギーはないだろう。石油で肉体を作れないし原子力で建物を作ることはできない。更にトリオンは無限の応用性を内包しながらも、他の物質からの非干渉性も持っている。トリオンはトリオン以外の物質からの干渉は受けない。それ故に、トリオンに対抗する為にはトリオンを用いなければならない。――そのエネルギーを持っていなければ一方的に虐げられる構図を作りやすく、それ故に持つ者が持たざる者へ搾取する構図もまた作りやすい。
成程。
兵器産業が欲しがるわけだ。
このエネルギーを独占すれば。
現在存在するあらゆるエネルギー問題が解決する。その上でこの技術を持つ者が、完全なる支配を敷くことも夢ではない。
――まあ。
――そんな事には絶対にさせないが。
「唐沢さん」
「どうしたのかな、迅君」
ふぅ、と息を吸って、吐いて。
唐沢克己は――声をかけてきた男を見た。
「HCLI社って、唐沢さんが引っ張ってきたスポンサーですか?」
「全世界で何千万の屍を作っている兵器運送会社のツテなんて流石の私にもないよ。スポンサーの公募にしれっと応募して、しれっと莫大な金額を投げただけだ」
「ちなみにその金額は?」
「億で、ドルだ」
「.....」
「とんでもないだろう?この金額をわざわざHCLI本社ではなくて支社の支社のこれまた支社の、複数の企業体に分散して送ってきたんだ。こちらの体裁まで完全に考慮した投げ銭だ。兵器産業からの寄付は嫌だろう。一社から莫大なスポンサー料を貰うのも怪しまれて嫌だろう。そういう配慮のこもったありがたい金な訳だ。――ま、どれだけ配慮をされたところで武器商人の金をこちらの懐に入れているという事実は変わらんがね」
「.....」
唐沢は煙草に火をつけ、フッと吐き出す。
「.....そして現れたのが、少年兵のヨナ君という訳だ。少年兵なんて、本来ならば門前払いだが.....こちらとしては実に都合がいい。そう私が城戸司令に説得した」
「そうみたいですね」
「.....君の力で、ヨナ君を通したHCLIの動向を探ることが出来る」
ボーダー側も。
HCLIが純粋な善意で少年兵を送ったとは全く思っていない。
何らかの意図をもっていることは解り切っている。
だが。
その意図は.....送ってきた人材の動向を見ることで、こちらには丸解りなのだ。
――迅悠一。
彼は、他者を通した未来を見ることが出来る。
それはまた。
トリオンというエネルギーを豊富に持つ人間が会得する――副作用という名の現象によって。
「今まではヨナ君という人事に関する事柄だっただけに本部長が対応をしてくれていたみたいだが。ああいう交渉事を彼にやらせるのは気が引ける。彼は指揮官だ。――餅は餅屋。こちらが対処しよう」
「よろしくお願いします。――忍田本部長、ずっと頭を抱えていましたもんね」
「こちらも頭を抱えているよ。――まあ金を出してもらっている分、面倒ごとに文句は言わんさ。だが、トリガーを連中にやるわけにはいかん。絶対に奴等だけには」
「....それは武器商人だから、ですか」
「ただの武器商人ならまあよかったがね。――奴らは、奴らの都合で戦争を起こす。心の底から儲けの為に人が死ねばいいと考えている。億を稼ぐために億が死ぬ必要があるなら、迷わず殺しにかかる。そういう連中だ」
そんな奴らに。
トリオンも、トリガーも、何も渡しはしない。そう唐沢は――確かな意思をもって、言った。
「――ヨナ君の動向。しっかり見ていてくれ」
「了解」
※
ヨナの戦闘方法は実に解りやすい。
建造物を盾にしながら制圧射撃をかけ、距離に応じて拳銃と使い分ける。
――いいねぇ。
銃手の基本をどこまでも煮詰めたかのような戦闘スタイルだ。
市街地に設定して行われている米屋陽介とヨナの個人戦。
構図としては――建物に立てこもるヨナを米屋が襲撃をかける形となる。
ヨナは基本的にシールドを用いず、バッグワームで身を隠している。
レーダー上に自分の位置が映ることをとにかく嫌っているのだろう。
仕留めにかかる時以外はバッグワームを手放さない。
――狙撃手の動きをする銃手、って感じかね。動きとしては。
現在。
十本勝負の二本目。
一本目、米屋は至極あっさりと敗北した。
というのも。およそ五十メートルほどの相対距離から至極当然のように射撃を浴びせかけ、付近の建物に潜伏しながら距離を詰めていくと――先回りされ壁越しに弾丸を放たれたからである。
――こっちの動きを先回りするのが抜群にうまい。ずっとバッグワームをつけているから動きそのものも観測できないのもかなり痛い。
シールドを前提とした動きがみられない。
近付かれたら終わりであると本人は認識しているのだろう。
基本は建物の中に潜伏し、索敵が終わると同時に襲撃をかける。
襲撃をかけシールドを盾に向かうなら削り殺す。隠れて動くならば隠れながら先回りする。
「――だが。今回はそうはいかねぇぞ」
前方45メートル先。
高層マンションのバルコニーに身を倒し、米屋に銃撃を浴びせる。
「そら来た」
瞬間。
米屋は建造物の間を飛び回る。
壁を蹴り、建物から建物へ間断なく飛び回り、ぐるり円状の軌道を巡りながらヨナとの距離を詰めていく。
その動きを補足し、その軌道をなぞりながら弾丸を掃射する。
仕留める、ではなく、削る動きに変化をかける。
「.....いいね。ここでしっかり足を狙う辺り解っているじゃん」
頭部、胸部近くの急所にはシールドで真っ先に反応される事を理解してか。弾丸の向かう先は視認しにくく意識も行きにくい足先に向かう。
米屋は――自らの得物である槍を壁に突き刺し、体勢を器用に変えて弾丸を避ける。
「――ほい」
そして。
体制を変える一瞬、足が止まる瞬間を見逃さずヘッドショットを狙った弾丸をシールドで防ぐ。
「――いや。いいな。この油断も隙もない感じ」
相対距離が二十メートル程になった時。
ヨナは即座にバルコニーを放棄しその場を去る。
マンションの裏手に回り、飛び降りる。
「逃がさねぇぞ」
米屋陽介は”攻撃手”
A級特権で改造した近接攻撃トリガーである”弧月”を、刀剣型から槍型に改造した得物を手に戦う隊員だ。
彼の大いなる強みは――その機動力。
壁から壁へ。障害物を盾にしながら立体軌道をもって相手に肉薄する手段を持つ彼は、――これまで山岳兵として生きてきたヨナにとっては、信じがたい挙動であった。
――今までの戦場とは、ちょっと戦い方が違うな。
そうヨナは感じた。
何が違うかと言えば、――銃という武器の絶対性が薄れている。
これまで。防弾性能の高い部隊と戦う事も多々あったヨナであったが――”自在に空間に出し入れが出来て”なおかつ”掃射に耐えうる”防弾装備は見たことがない。
こちらが視認し適正範囲内で一方的に銃撃を仕掛けても、一方的に倒すことが出来ない。
シールドに防がれるし。当たったところで急所でない限り身体が削れるだけ。負傷してもメディックがいらないし出血死もない。弾丸に当たる事は、それすなわち死に直結しにくい。
もう一押しが必要となる。
この条件で銃手が勝つ条件は――シールドを張らせない状況下で弾丸を浴びせる事となる。
相手と適正距離で戦う事よりも
相手に認識されずに確実に弾丸を叩き込むことが、個人での戦いでは重要となる。
――でも。隠れることの重要性は変わらない。
先程の米屋の動きの意図は理解できる。
素早く距離を詰める事。そして素早くこちらの射線を切る事。この二つを両立する為に――建物の裏手側を高速で移動しながら円状にこちらに向かってきているのだろう。
円状に動けば、より多角的にこちらの動きを見れる。
――そして。近接での戦いの絶対性が大いに増している。
今までの戦いであっても。
ナイフで喉元を斬れば確実に死ぬ。
でも――トリガーでの戦いだと、近接攻撃は”シールドを容易く斬り裂ける手段”として存在している。
この相対性。
射撃は防がれる手段が存在して、近接にはない。
この条件下で、相対的に近接攻撃の価値が高まっている。
――僕の位置はばれたか。
円状に動き続けていた米屋が、こちらを認識し真っすぐに向かってくる。
ならばバッグワームはもう必要ない。
迫りくる米屋に向けハンドガンにて応撃。
それを体捌きで避け、シールドで防ぎ――槍が届く範囲に至る。
ヨナは――あえて一歩を踏み出し、刺突の効果範囲内に身を乗り出し拳銃を向ける。
上体を反らし、刃から逃れ、引金に指をかける。
が。
槍はうねるようにその姿を変え――反らしたヨナの首にその刃を突き立てた。
「――幻踊」
そう。
米屋は口にしていた。
※
結果として。
7本を取られ、ヨナは敗北した。
「.....負けた」
槍一本で戦う男に、突撃銃を武装した兵が負ける。
この構図が――ここでは当たり前に存在しているのだ。
「いやー。緊張感ヤベェな。――お、おチビ君。マジでお前強いじゃん」
「.....でも、負けた」
「実際のところさ。攻撃手と銃手だと、タイマンじゃ銃手じゃ不利なんだよなー。それでも俺から三本取れたんだ。――お前は部隊で運用してこそ力を発揮するタイプとみた」
ばしばし背中をたたきながら、米屋は惜しみない賛辞を告げる。
「何というか、――新人らしからぬ強さだな。新人で強い奴って、とにかく動きが速かったり攻撃のキレがヤバかったりってタイプが多いのに。お前はなんか修羅場慣れしている強さなんだよな。なー、なんかお前なんかやっていたの?」
確か。
元少年兵だという過去は絶対に言ってはならないと、ここの司令に言われていた――とヨナは思い出し。
用意していた言い訳を告げる。
「ぼくが住んでいたところは凄く治安が悪い所で。子供のころから銃の使い方や山道での隠れ方とかを教えられるんだ」
「へー。マジかぁ」
そりゃあんな風に慣れた動きが出来る訳だ、と米屋は言う。
「お。そうだ。――俺の名前は米屋陽介ってんだ。お前は?」
「ジョナサン・マル。ヨナって呼ばれてる」
「おっけ。――お前はじゃあヨナ坊だ。俺のことも好きに呼べ」
「好きに呼んでいいの?じゃあ――ヨースケ」
「お、呼び捨てか。――いい度胸じゃねえか。今度もまた個人戦付き合ってもらうぜ。というか、マジで銃手でやってほしくない動き全部やってくれるからいい訓練になる。定期的に個人戦付き合ってくれたら助かる」
よっしゃ、と米屋はヨナの首に腕を回して
「せっかくだ。ここで俺と一緒にてきとーにブース回って挨拶回りしようぜ。ここにゃ、ボーダーのトップクラスの化物がうようよしているからな」
「化物...?」
「そ。化物。――まあ見りゃ解るさ」
という訳で。
ヨナは言われるまま――米屋陽介に付いていくこととなった。
ジョナサン・マル
トリオン7
攻撃8
援護・防御8
機動7
技術9
射程4
指揮3
特殊戦術2
total48