『5!4!3!2!1!GO!!』
夕張の合図で前輪と後輪が煙を吹いた。
最初の直線。ストレートと呼べるほどではないが、ある程度道幅の狭い表六甲では勝敗を左右すると言っても過言ではない。
雷のハチロク先行で始まったこのバトル。どちらもNAだが、単純な性能は当然スターレットよりもハチロクの方が上。ストレートでどんどんと離す。
深雪「さすがにやりますね…だけど、六甲(ここ)はそんなに甘くないってことはあなただってわかっているはずです…!!」
すかさずキツい右カーブ…左カーブ…と連続でコーナーが続く。最初の折り返しまではこれが永遠と続いている。
全開アクセルからの急ブレーキ。ハチロクには相当な負担が掛かっている。もちろん雷は承知の上だった。
雷「ハチロク(この子)には悪いけど…スターレット如きにつきあう暇はないからね…一気に終わらせるっ!!」
雷は適切にハンドルを左右し、コーナーを抜ける。
雷「こっちがストレートなら向こうはコーナー…絶対詰めてくるはず!!」
深雪「インに…そこだっ!!」
深雪のスターレットが一瞬の隙に逃さず入る。
雷「抜かれ…ない!」
1車線の急な連続コーナーを並んで曲がる。むろんどちらもぶつかる覚悟だ。
深雪「…っ!!」
ふとしたとたんにスターレットが外へ。隙に素早く入ったためかオーバースピードだった。
雷「よし…!」
一度目の折り返し。サイドは使わずにブレーキングで270ターンしてみせる。
一方の深雪は一足遅れ、サイドを使ってのターン。大きな減速となるが、やむを得なかった。
深雪「ここから向こうのターン…頼むよスターレット!!」
アクセルを踏み込む深雪。だがハチロクはどんどんと離れていく。
雷「最後の連続の前になるべくちぎっておかないとね!!」
雷は躊躇せず踏み込む。完璧にタイムを出しに行くときの走りだ。
深雪「こっちはこっちのペースで行くよっ!」
ーーーー某ギャラリーコーナーーーーー
???「さて…特に関心のない峠に来たわけだけど…バトルやってんのかしら?妙に人が多いわね…」
グォォォォン
???「来たわね。」
まず来たのはハチロク。
ストレートからコーナーに思いっきり突っ込んでみせる。リズムの難しい複合コーナーでは部外者はまず出来ない。
???「地元物だからこそ出来る技…か。お、後ろも来たわね。」
後ろはスターレット。
性能的にもそうだが、やはり全体的に鈍い。素直にグリップで行けばいいものをドリフトもどきをさせてもぞもぞとコーナーを抜けてみせる。
???「なんぞあれ…カッコ悪っ。でも…最初のハチロクは良かったねぇ…。」
そういうと、車に向かって歩き始める。
黄色く、まとめたロングヘアーが特徴的すぎるのかそこらにいる数人がその存在に気づきざわめき始める。それでも彼女は気にせず自身の車に乗り込み、峠の静けさと少々のギャラリーのざわめきに浸りながら仮眠を始めた。