スピードの乗った巨体な鉄の塊がコーナーへ突っ込む。うまくブレーキングすることで少し車体を揺らし、タイヤの向きを変える。すると、車体は自然とコーナーの出口のほうを向いてくれる。揺らして不安定な車体をうまくコントロールしながら、コーナーを進む。そして、コーナー出口で一気にアクセル。これが峠のコーナーの攻め方なのだ。
雷は比較的落ち着いていた。自分の攻め方を信じる、それが出来ているのだ。六甲山を自分のものに出来ているとさえ感じていた。
それに対しての深雪…かなり不安定だ。
深雪(なぜ…なぜついていけない…?なんで…私だってここを走っているはず…なにが違う…!?)
感情とハンドルさばきはモロだ。素に出るタイプならなおさらだ。
バトルは表六甲最大の山場、二連続超ヘアピンカーブに入る。初心者ならばスピンからの事故は不可避。上級者ならばコース幅をうまく使ってドリフト。いわば、ここでコースの熟知度が一発で理解できてしまう。
まずは雷がコーナーに進入。ブレーキングで無難に対処して行く。ここは深雪も変わらない。
続いて二つ目。ここでは焦りが出る。
ここで雷ほあろうことかいつものクセでサイドブレーキを引いてしまう。そうしたことで、ハチロクはコーナー進入口でスピン状態。
雷「…!ヤバい!」
ストレート区間の差があるとはいえ、ここでのミスは最終セクションの連続コーナー群に大きく影響する。
そこで雷はバックにして対処した。
一方の深雪だが、ここも普通にクリアした。
ラスト最終セクション。
深雪(差は確実に狭まってる…いたっ!)
雷(っ!!)
ついにスターレットがハチロクを捉えた。ホイールベースが短い分、スターレットのほうが圧倒的に有利なのだ、ここでの追いつきは、雷にとってもかなりのプレッシャーになったはずだ。
深雪(行ける…勝てる!!)
雷(逃げて…ハチロクっ!!)
二人とも必死だった。コーナー群に並ぶ小型車二台は熾烈なデットヒートを繰り広げていた。それはギャラリーの目にも明らかだった。
ギャラリーA「おお!!スターレットが追いついてるぜ!!」
ギャラリーB「まさかあの差を縮めちまったのか…!?」
雷(とにかく…冷静に対処しなきゃ…!!対処しなきゃ…!!)
深雪(行ける…行けるんだ…!!あとちょっとなんだよぉ!!)
深雪は余計に焦っていた。速く勝ちたい。この緊張状態を速く解きたい。そのことで頭がいっぱいだったのだ。
最後セクションを抜けて、最後のトンネル。ここで深雪だが、燃えつきるようにスピードを落としていった。
ーーーーーーーー 六甲山 中腹駐車場 ーーーーーーーー
雷「バトルお疲れ様…大丈夫?」
深雪「え、えぇ…」
雷「バトルに勝敗はつきもの。それを理解して頑張って行くといいわ。とりあえず今日はゆっくり休みなさい。」
深雪「ありがとうござい…ました。」
深雪は沈んだ表情のまま、白雪にこう言った。
深雪「白雪ちゃん…強いよ、あの人。」
それを聞いた白雪は、こう深雪の耳元に囁いた。それを聞いた深雪は安心した表情を見せ、ポンと肩をとたたいた。
白雪「心配いらないよ…裏六甲は私の十八番(おはこ)だからね。」