夕張「それじゃあ、カウント行くわよ!!」
『5!4!3!2!1!GO!!』
夕張は、ゼロカウントで腕をおろすと共に、両手に持ったストップウォッチの片方をスタートさせた。
ハチロク先行、スターレット後攻の変則裏六甲バトル。変則というのは、まずはハチロクを先行させ、10秒後にスターレットがスタートするというもの。白雪曰わく、これは互いに干渉しあわないため、ドライバー同士の真の力が発揮出来るのだそうだ。当然先行は追いつかれれば負けは確定する。後攻は離されすぎれば負けなのだ。空間内でのバトルは、プレッシャーとの勝負でもあり、それに対する自分との勝負なのだ。
勢いよくスタートしていったハチロクを見て白雪は冷静に、
「深雪の分もあわせて、倍にして返しますよ。」
そう呟いてスタートしていった。
雷(さぁ、裏六甲ね…。おそらく道幅の関係で前のバトルのようにはいかなそうね…どう耐えるか…)
まずは最初の直線。ここは当然ハチロクの十八番だけど…その後が辛い。ヘアピンを曲がったところから、道幅は狭く、さらに複雑に入り組んだコーナーがだらだらと続く。ここはスターレットの十八番。なにより今回は後者の顔(姿)が見えない。余計にプレッシャーがかかる。どう攻めるかとかそういう問題じゃなくて、ここはとにかく自分を信じて目の前のコーナーと戦う。アクセルも踏めるところで踏む。それしか方法はない。
白雪(ここは、私の十八番でもあり、スターレット(この子)の十八番でもある。あとは自分の能力を使い切ってくれれば、自然と車はついてくる。)
雷も白雪も、至って冷静だった。しかし内心はヒヤヒヤものだ。
ーーーーーーー 六甲山 中腹 ーーーーーーー
深雪「大丈夫かな…白雪。」
夕張「大丈夫なんじゃないの?あんたも内心そう思ってるんでしょ?」
深雪「お姉ちゃん…そうだね。」
夕張「あんたが信じるなら、自ずと結果もそうなるものよ。」
深雪「う、うん…。」
バトルは、すでに半ばまできていた。
頂上では十秒差あったのが、ここでは八秒差。白雪がじわりじわりと雷を追いつめていた。
ひしひしと伝わる感覚に、雷は、まだ気づいていないようだった。なぜなら、自分の走りに集中していたからだ。
雷(まだ…もっといける…スピードに乗れば…)
ズルルルッ
雷(…!?)
タイヤが滑った。思わずカウンターを当て、そのまま乗りきろうとする。アクセルはちょん踏み。
打角をもとに戻してさらにコーナーを行く。
雷の座るシートには、汗がべったりだった。とにかくあいつから逃げる。その一心でハンドルを当て続けてきたからだ。しかし、それももう終わる。
雷(…!!来たっ!!)
フルアクセルで裏六甲の山を駆け下りれるところまで来たのだ。