桃鳥の親鳥   作:後生さん

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貴方は選んだじゃない

 

 

 

 

香しい紅茶のカップを手に取り、その香りを楽しむ。

一口啜った所で扉がノックされた。

 

 

「ローザ様。緊急の御電話が御座います」

 

「……あらぁ?それは、何かしら」

 

 

奴隷から昇格した(わたし)の召使いが、一本の電伝虫をその手に持ち、私の視線に頷いた。

 

 

「貴女様の待ち望んでいたものに御座います」

 

「──それを此方にお寄越しなさいな」

 

 

ああ、心が痛む。やっと、彼等が私を呼んだ。

この三年で、準備はとっくに出来ているから。

 

 

「──此方、ドンキホーテ・ローザですわ」

 

 

待っていましたわ、愛する人達。

 

 

『……っ、すま、ぬ…ローザ…ローザ…っ!!』

 

 

ああ……なんて可哀想な声なの。

きっと涙を溢れさせているだろう愛しい夫に、私は瞳を潤わせて優しい声で語り掛けた。

 

 

「謝る事などありませんわ。貴方も、ドフィも、生き延びた。それだけで(わたくし)は嬉しいの」

 

『ぁあ…っ、ああ…!!此処は、地獄だった…!』

 

「すぐに行きます、貴方の元へ。

お辛かったでしょう、苦しかったでしょう。私が行くまで耐えて、堪えて。もう貴方を、地獄に落としませんから」

 

 

グスグスと鼻水の啜る音に苦笑しながら、きっと傍に居るだろうドフィに呼び掛けた。

 

 

「ドフィ…ドフラミンゴ。私の愛する息子」

 

『────……………はは、ぅえ』 

 

 

ああ、なんて小さな声なの。

 

 

「ドフィ。よく耐えたわ。頑張ったわね、良い子ね。すぐに貴方に逢いに行くわ。抱き締めに行くわ。私の子だと呼びに行くわ。ドフィ、愛しているわ」

 

『ッ、!ゥ゛、…ぅ゛ん゛…ッ!!』

 

 

悲しみで、痛みで、胸が張り裂けそうになる。

ああ、あんなにも小さな子供に私は地獄を見せてしまった。知っていたのに、留める事もせずに地獄に行かせてしまった。

 

なんて、なんて悪女かしら。

 

 

「──下界に降ります。準備なさい」

 

「はっ。既に整っております」

 

「流石ね。ならば海軍に連絡なさい」

 

「それにも及びません。既に手配しております」

 

「素敵だわ。そうね…なら、ロシーは何処かしら」

 

「ロシナンテ様は既に船にお乗りとの事です」

 

「まぁ。この三年で随分と優秀になったこと」

 

 

口許に指を当て微笑むと、勿体無きお言葉だと敬服して頭を下げた。私の笑みは更に深くなる。

 

 

「そうね……ならば後は、この身一つで充分ね」

 

 

さぁ、参りましょう。

私の幸せを取り戻しに行きましょう。

天国へと還しに行きましょう。

 

 

「私の家族よ。手出しは赦さないわ」

 

 

然るべき処置の為に、この三年生きてきたのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手配しておいた海軍船に彼等は身を委ねていた。

そこには仏のセンゴクや英雄ガープも存在しており、私の登場にずらりと海兵を並ばせていた。

 

 

「──ホーミング様。ドフィ」

 

「!!ローザ…ッ!!」

 

「母上っ!!」

 

 

とっくに天竜人では無いというのに、海軍は私に走り寄って来た二人に何もしない。私がそう圧を掛けているせいかしら?

…十中八九そうでしょうね。

 

 

「ああ、こんなにも痩せてしまわれて…」

 

「ローザ、ローザ…!!」

 

「そんなに力を込められると痛いですわ」

 

「母上ぇ…っ!!」

 

「なぁに?ドフィ。貴方もおいでなさいな」

 

 

二人に抱き締められ、二人を抱き締め返して、私は微笑み二人は泣いていた。ロシーも遠慮がちにドフィに抱き着いていたのは少し微笑ましかった。

 

暫くそうしていたけれど、海軍の視線もあってか私は惜しみながら彼等の体を離す。

 

 

「どうでしたか、下界での暮らしは」

 

「……私が、間違っていたよ……」 

 

 

私からの忠告は勿論聞き入れていたけれど、実際に受けた差別が思った以上に酷かったらしい。

次いでドフィを見据えると、……思っていた通りに、サングラスに隠された瞳は憎悪に満ちていた。

 

 

「……ドフィ、」

 

「母上」

 

 

怒りに震えた声に、私は眉を顰める。

ああ、彼はもう、決断してしまったのだろう。

 

 

「……貴方は、どうしたいの?ドフィ」

 

 

その答えをとうに知っているというのに、海軍の前で言わせる私の行動をなんと言うのかしら。

 

 

「──赦さない。絶対に、赦さないえ」

 

 

その憎悪の塊に、思わず海兵達が動いた。

それをセンゴク達が制すのを横目で見ながら、私は復讐心に燃える我が子に苦笑した。

 

 

「具体的にどうするのかしら?」

 

「一人ずつ殺してやるえ。俺を痛めつけた奴等全員探し出して、殺して殺して殺して殺して……嫌だと言っても止めてやらないえ。たかが人間の分際で俺を殺そうとしたんだえ。当然の報いだえ」

 

「そうねぇ…けれど、ドフィ。貴方も同じ立場を選んだ筈よ。貴方も、ただの人間なのよ」

 

「違うえ!!俺は天竜人だえ!!!あんな奴等は全員死んだって構わない存在なんだえ!!俺は違うえ!!だって!!母上は俺を認めてるえ!!?」

 

 

絶弾するドフィに、私は肩を竦めた。

 

 

「そうね。貴方は私の息子。可愛い愛しい私の息子。…けれどね。貴方は選んだじゃない」

 

 

人間としての、自分を。

 

 

「──ッッ……!!」

 

 

私の服装に、ドフィは唇を噛み締めた。

そんなドフィに、私は優しく微笑んだ。

 

 

「私の家族よ。紛うことなき私がそれを認めるわ。けれど貴方も夫も、もう天竜人ではないの。私と住む世界が違うのです。けれど私は貴方達を愛しているから、私の世界に戻してあげましょう。

 

──…けれどね、ドフィ。貴方がその殺意(想い)を抱くのなら、貴方を聖地へと赴かせる訳にはいけません」

 

 

そう。決して貴方を連れて行きたくない訳ではないの。ただ一つ懸念する点が、その心なのよ。

 

 

「貴方が天竜人に戻ったとすれば、その権力によって様々な波乱の波が産まれてしまう事は明白だわ。折角私の理想が現実になろうとしているのに、台無しにされて貰ったら困ってしまいますのよ」

 

「…母上の…理想…?」

 

 

困惑の瞳に、にっこりと口許に指を当てた。

 

 

「内緒です。けれどきっと、世界にとって良いものだと思っているわ。だからね、ドフィ」

 

 

復讐を望むのならば、私の手元には戻ってこれないわ。

けれどその代わり、貴方の邪魔はしない。

 

 

「例え貴方が海賊になったとしても、私は止めません。子供はいつか親の元から巣立っていくものよ、ですから私は貴方を縛ったりしないわ。けれどその代わり、貴方が天竜人と名乗る事を禁じます。私は貴方のする事に何も口出しも手も貸さないけれど、その行為を咎めたりもしないわ。けれど安心して?私は黒く染まった貴方を、心から愛せるから」

 

 

歪な関係が始まろうとしている。

 

私の言葉に、海軍は可笑しいと、異常だと顔を顰めるだろう。だってそれは、ドフィが殺人を犯したって私が黙認している事になってしまうもの。

天竜人ではないけれど、天竜人に認められている存在。

それがとても厄介だと、私でも解っている。

 

 

「ドフィ。もう一度問うわ。──どうするの?」

 

 

 

 

 

 

 

 







どうするんだい、ミンゴよ。

これ完結するにはとても長い時間が必要ですね。むしろ完結しないかも。望まれるなら、頑張るかもしれない。稼いでないですよ。

今日は次くらいで終わりですかね…明日が来なければ良いのに。
ではでは!

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