「こ…ここまでくれば…」
気が付くと俺は大きな竹林の中にいた。
「…狼の声が聞こえるが、さっきよりはましだろ…」
俺が安心しようとしたその時
「貴方は誰?見ない顔ね…」
俺の前には、赤と青の服を着た女の人が、手に弓を持って立っていた。
「お…俺に…」
「俺に?」
「俺に近づくなぁぁぁぁぁ!」
さっきの戦いで体力が限界の上、精神的に追詰められていた俺にとって出来る事は、叫ぶ事位だった。
「な…何これ!?…く…空間が…」
正直何が起きてるのか全く解らなかった。ただ解るのは、目の前にいる女性が慌てふためいている事位だった。
「…この力…貴方は一体…」
―バタッ
俺の体力はもう底を尽き、その場に倒れこんだ。
「…って貴方、すごい怪我!早く治療しないと。…鈴仙!」
「―どうかされましたか、お師匠様?…って、誰ですかその人?それに…ひどい怪我…」
「…えぇ、ここのままにしておくと確実に死んでしまうわ。…診療所まで運ぶの手伝って」
「わ…解りました!」
…と言う会話が薄れ行く意識の中で聞こえた…助かるんだな…俺―
―翌朝
…目が覚めて最初に飛び込んで来たのは太い木の梁だった。
「…ここが…昨日言ってた診療所…か…?」
「あら、目が覚めたようね?」
昨日竹林で会った人の声が聞こえてきた。…怪我のお礼もしたかったので、起き上がることにした。
「…昨日は迷惑を掛けました…」
「そんな事気にしなくても良いのよ?…それより貴方が昨日使った力…」
「…俺が…使った…力…?」
一体何のことだ?…昨日はただ叫んだだけなのだが…
「うふふ…その様子だと無意識のようですね♪」
弓の人の後ろからピンクの着物(?)を着た人が縫い直してくれたローブを持って現れた。
「はいこれ、貴方のでしょ?」
そう言うとピンクの人は俺にローブを渡してくれた。
「あ、ありがとうございます…」
「それにしても…一体何があったのかしら?素材はとても丈夫な物なのに…かなり破れていたみたいだけど?」
「…それに君の回復力にも驚いたよ…内臓まで見事に引き裂かれていたのに、薬を使う前に殆ど回復していたからねぇ」
二人同時に話しかけられて、俺は少し混乱気味だった。
「…そういえば自己紹介がまだだったな…私の名は『八意 永琳』この永遠亭で医者をやってるわ」
永琳が言い終わると間髪いれずにピンクの人が自己紹介を始めた。
「私は『蓬莱山 輝夜』宜しくね♪」
「それで、君の名は?」
「…解りません。」
俺の返事に永琳はとても驚いた顔をしていた。
「名前が解らない?…それじゃぁ、君が何処から来たとかも?」
「…はぃ…気が付いたら、この格好で『紅魔館』って言う屋敷を背に立ってたので…其の直後にナイフを持ったメイドさんに襲われて…なんとか逃げて。…この竹林に来た後は…」
「成程…という事は…君は外の世界から来たんだね。」
「でも不思議ですねぇ永琳、大抵はこの迷いの竹林に現れるんですが…」
…永琳達の話を聞くには、俺が迷い込んだのは幻想郷って言う所で、俺がいた世界はここでは外の世界と呼ばれてるらしい。
「―それにしても琳(リン)君よ!」
「誰ですかそれ…」
俺には永琳の言葉の意味が理解できなかった。
「君の名前だよ、記憶も名前も全て失っているみたいだからねぇ」
「でも…何で…琳…なんですか?」
「うむ、だから私が君の名付け親になってやろうと思ってな。…だから、私の名前『永琳』から取って君の名前は琳だ!」
…おいおい…勝手に話を進めやがって…でもまぁ、名前も解らなかったらこの先大変だからな…琳か…うん。良い名だ!
「ところで、琳君はこれからどうするのですか?」
「そうですね…まぁ、帰りたい気持ちもありますが、この幻想郷も少し気になるので、色々見て回ろうかと思います。」
「…やっぱり、家に帰りたいですか?」
そう言うと輝夜は少し寂しそうな顔をした。
「…輝夜…患者には手出すなよ…」
「解っていますよ~♪…でも最近、少し刺激が足りなくて~」
そう言いながら輝夜はチラチラと俺の方を見てきた…
…俺の答えか?勿論「No!」だ。
「…あの~お師匠様~」
気が付くと、兎の女の子が二人入ってきた。…え?…兎?…兎…だよな…?
「…まぁ、初めて見たら驚くわよね…」
「…でも慣れるしか無いですね…幻想郷では普通ですので…」
マジか…
「あ、怪我は無事に治ったみたいですね!さすがお師匠様♪」
「いいえ…お師匠様の薬は少しだけ…殆どこの人の回復力…」
…小さい方の兎、永琳と同じ事言ってる…
「てゐ、良く解ったわね」
永琳の言葉にてゐと呼ばれた兎(小)は答えた。
「…何でか解らないけど…私と同じ匂いがした…」
…この二人(兎)…似てるけど何かが決定的に違う……………………!
「…あ、胸か…」
メメタァ!
あ…ありのままに今起きた事を話すぜ…俺が小さな声で呟いた直後に兎(小)の拳が俺の顔にめり込んできた。…な…何を言ってるのかと思うだろうが、俺自身何を言ってるのか全く解らない…頭がおかしくなりそうだ…
「…何か今、とーっても失礼なこと言ったでしょ?」
「………」
「…ちょっと?聞いてるの?」
「………」
「返事くらいしなさいよ!」
「…てゐ、返事が聞きたいのならまず拳を抜きなさい…」
ズボッ
…やっと拳から開放された。俺が安心していると兎(大)が話し始めた。
「そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は、『鈴仙・優雲華院・イナバ』」
「…長いな…」
「だから、気軽にイナバって呼んで!」
「私は『因幡 てゐ』…兎達とよく一緒にいるからすぐ解ると思う!」
「…俺の名は琳。宜しく。」
「…それで、何かあったの鈴仙?」
「…あ、はい、実は…新聞記者の人が―」
「―もう来てたりしてるのですよ!」
「うぉ?」
…気が付くと、俺が座ってるベッドの右側(俺から見て)に、短髪の黒髪で、頭よりも小さな帽子(?)を被り、一本足の下駄を履いた女の子がペンとメモ帳を持って俺の方を見ていた。
「毎度お馴染み、文々。(ぶんぶんまる)新聞です!…おぉ、貴方が噂に聞く外の世界から来た方ですか!早速ですが私の質問に答えてもらいますよ!」
「あの…永琳…この人は?」
俺が永琳に助け舟を求めると、輝夜が言ってくれた。
「文、琳君に会うのは初めてですから、せめて…自己紹介でも…」
「…おっと、これは失礼…私の名は、『射命丸 文』新聞記者の天狗です!」
天狗…には見えないが…ん?…窓の外に…烏…あぁ、烏天狗か!
「…俺の名は琳、それ以上は知らない。宜しく…射命丸…さん?」
「堅苦しいから、文(あや)でいいですよ!それで、私の質問には?」
「…覚えてる範囲でなら…」
「ありがとうございます!それでは…」
数時間後
「よし、これで記事が書ける!琳君、ありがとうございます、それではまたどこかで!」
そう言うや否や文は診療所の窓から烏たちと一緒に飛び立って行った。
…玄関からでろよ…
「…それで、琳はもう行くのかい?」
文が去った後、永琳が俺に聞いてきた。
「えぇ、お世話になりました…お代は?」
「今回はいいよ、…私の薬、殆ど意味無かったしね…」
そう言いながら永琳は苦笑した。
「そうですか…それでは、永琳に輝夜、イナバにてゐ、お世話になりました。」
お辞儀をした俺にてゐは言った
「迷いの竹林を抜けるまで案内するよ!」
「それもそうね、お願いできるかしら?」
『なら私も!』
「駄目よ、鈴仙と輝夜にはやって貰いたい事があるからここに残って」
『えー』
「『えー』じゃない!(怒)」
「ぶー」
「シュン…」
輝夜は文句だらだらで、イナバは少し落ち込み気味に、部屋の奥に行った。
「…それじゃぁてゐ、案内頼む!」
「あたしについて来れるかな?」
え?…それってどういう―
ビュッ
そう言うや否やてゐは走り出した。いやはや…なんてスピードだ…
「…少し…見づらいかな?」
「嘘…見切られてる…」
「…位置さえ解ればこっちのもんだ!」
ビュンッ
「なかなか…やるわね…」
「お前こそ!」
十分後
「ハァ…ハァ…ハァ…ちょっ…ちょっと…たんま…」
「おいおい…(汗)」
俺とてゐはいま、月明りが射す岩の上にいる。…理由は簡単、てゐがスタミナ切れになった。…てゐの奴、どんだけ体力無いんだ…(汗)
「…なぁてゐ、隣…いいか?」
「いいよ…」
俺はてゐの横に座った
「…一つお前に聞いておきたい事がある…」
「ん?なに?」
俺はずっと思っていたことを口にした。
「…俺と初めて会った時、俺はお前と同じ匂いがするって言ってたが、どういう事なんだ?」
「あぁそれ?う~ん…何でかは私にも解らないんだけどね、私と琳は違うけど同じ…生まれとか、育ちとか、種族とか、全然違うけど…でも何か同じ…何だろうね…初対面なのに、昔何処かで会った事があるみたいな感じ…」
「成程…」
その感じなら俺にもあった…だけど今はそれがはっきりするまで黙っておく事にしよう…
「それじゃぁ…行こ!」
「…もう、大丈夫なのか?」
「うん、平気!」
「よし、それじゃぁ、行こう!」
…なんて事を話しながら俺達は竹林を進んだ。
「…ここが、一番解り易い竹林の出入り口…」
「ここから麓に繋がるのか…てゐ、案内してくれてありがとな!」
「…べ…別に私は私の出来る事をしただけだし…」
そう言いながらてゐはモジモジしながら真っ赤になった…熱でもあんのか?
「また竹林に来る事があったら会いに来て欲しい…かな…(小声)」
「ん?何か言ったか?」
「な…なんでもない…またね…琳」
「あぁ、またなてゐ!」
こうして、てゐと分かれた俺は再び歩き出した。
…はい、先ほど投稿した後、すぐに投稿しました。
ついに主人公の名前が決定~!!(祝)
ここからは裏話をしたいと思います。
主人公の名前を決める時、色々と悩んだ結果…「あ、そう言えばあいつ、今永遠亭にいるよな…あの中で名づけ親に相応しい人物→永琳からとって、琳にしよう!」っていう感じの事を頭の中で考えたのはいい思い出です。
軽く予告しておくと…次話で、主人公(琳)の能力が明らかになります。
それでは次回も、気が向いたら更新します!