幻想郷の奇跡   作:海風 光

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 しばらくの間白玉楼で働く事になった琳、それでもトラブルは起こるようで…

 …トラブルが琳の下に行くのか?琳からトラブルのところにいくのか?

 オリキャラも登場の白玉楼編 第3幕、スタートです!


Ep9 お姫様の父

「ふぅ…」

 

 俺は今、幽々子の朝食を作り終え、縁側で休憩をとっていた。…すると、お手伝いの幽霊が来て

 

「お疲れ様、はいお茶」

 

「あ、ありがとう御座います…」

 

「どうだい琳君、姫様の食べっぷりは?」

 

「…聞いてた以上でした…特にカレーに関しては…」

 

 …まるで飲み物を飲んでるみたいだったぜ…

 

「…料理人達が成仏する訳ですねぇ…」

 

「ましになった方よ…姫様がお父様の桜を封印した直後なんか…」

 

「…その話、詳しく聞かせて貰って良いですか?」

 

 …要約するとこうだ、幽々子の父親はかつて、多くの人に慕われた歌聖で、死んだ後本人の要望通り白玉楼にある桜の下で眠りについた。

 

 だが、その桜が満開に咲くと、彼女の父同様、そこで死んでいく者が後を絶たなかった。その血を吸い続けた桜は、後に人を死に誘う妖怪桜となり、西行妖と呼ばれる様になった。今はもう幽々子の肉体が多くの人間と共に桜の木の下で眠り、西行妖を封印してるという…

 

「………。」

 

「…幽々子様が封印されてから、西行妖が満開に咲く事は一切なくなりました。同時に、桜の木の下で人が死ぬ事も無くなりました。」

 

 お手伝いさんの話が終わるや否や、俺はすぐさま立ち上がった。

 

「…その桜…何処にあります?」

 

「やはり…行かれるんですか?」

 

 お手伝いさんの問いに、俺は決意を込めて答えた。

 

「…えぇ…俺が行った所で何も出来ないかも知れない…でも、俺が行く事で何か出来たら儲けです!」

 

「…貴方の決意、見せてもらいました。…案内します。」

 

 そう言うとお手伝いさんは立ち上がり、「付いて来てください」と言って歩き出した。…因みに、このお手伝いさんの名は『加奈(かな)』というらしい。

 

「…此処です。」

 

 案内されたのは、屋敷から歩いてすぐの所だった。その西行妖は、遠くから見たときは、花弁も散り、緑の葉ばかりだったが、俺達が麓まで来た瞬間、突然ピンクの綺麗な花を満開に咲かせた。

 

「…やはり、力のある者同士は惹かれ合うのでしょうか?」

 

「…与える力…ってやつか?」

 

「…この場合はそうなるでしょうねぇ」

 

 そう、俺の霊力は他の霊能力と違い、相手を倒すだけでなく、自らの力を分け与える事ができるのだ。…最も、この力に気が付いたのは幽々子なんだが…

 

「…聞こえますか?この地に眠る者たちの声…」

 

「あぁ、嫌になる位聞こえるぜ…」

 

 この地に縛られた者達の嘆き、昇天出来ない悲しみが俺の心に伝わって来る。

 

「…此処の者達を昇らせてやる事は俺には出来ない…だが…怨み、憎しみを取り払い、安らぎを与える事は出来る…」

 

 そう言った直後、俺は懐から笛を取り出した。

 

「それでは…お願いします。」

 

 そういった加奈さんは、離れる準備をした。

 

「…何で離れるんだ?」

 

「いえ…お邪魔にならない様にする為です。…それに、貴方の笛の音は私のような者よりも、もっと大切な方に聞かせて欲しいですから…」

 

「…解った。」

 

 加奈さんが安全圏に行ったのを確認した俺は、笛を吹き始めた。…何故だか、笛を構える少し前から、頭の中には楽譜が広がっていた。

 

************

 

「―加奈さん!」

 

「おぉ、これは姫様…一体どうされたのですか?」

 

「…加奈さんと琳が西行妖の方に行くのが見えましたので、つけて来ました!」

 

「全く…相変わらずですねぇ…♪」

 

「うふふ♪。ところで…琳は一体何を?」

 

「何でも、西行妖に囚われた者達を慰めるとか…」

 

「!?…何で…そんな難しい事を…でも…彼なら…」

 

「姫様、琳様の演奏が始まったみたいですよ…」

 

「そのようですね…琳の笛は、幻想郷の住人の楽しみでもあるようですから…心して聞きましょう♪」

 

「かしこまりました。」

 

♪~♪~♪~

 

「おお、これはこれは…♪」

 

「…流石は琳です。…とても穏やかな気持ちになります。」

 

************

 

♪~♪~♪~

 

 俺は笛の音を奏でながら、心で西行妖に呼び掛けた。

 

「(…桜に集う者達よ…俺の声が聞こえるか?…俺は、あなた方の声を聞いた。だが、俺はあなた方を成仏させたり、転生させる事は出来ない…その代わりに…俺が、貴方達の怨み、憎しみを全て受ける。だから…俺の笛を聴いて欲しい。…みんな、一人も漏れずに笑顔になって欲しい。…どんなに辛くても…笑い、楽しむ事を忘れなければ、必ず何とかなる。だから―)」

 

「―よくぞ言ってくれた若者よ。」

 

 頭上から突然、とてもダンディな声が聞こえてきた。…俺が声の方を見るとそこには…幽々子と同じ色の髪をして、顎に立派な髭を生やし、緑の着物を着た、体格の良い男の人が降りてきた。

 

「(あ、貴方は…?)」

 

「申し遅れた。私は、西行寺 幽々子の父だ。…娘が世話になってるようで…」

 

「(いえいえ、お世話になってるのは俺の方です(汗))」

 

「まぁ、挨拶はこのぐらいにして…息、大丈夫か?」

 

「(その点ならご心配なさらずとも大丈夫です。会話のほうも、テレパシーで出来るので!)」

 

「そうか…では、本題に入る。君が奏でた曲だが、とてもいい曲だ。見て見なさい、桜の樹の者達も皆、感動している。」

 

 西行寺さんに言われて見てみると、桜の幽霊達が皆、笑顔になり、涙を流したり、俺に感謝する者までいる。

 

「(そ、そんなに感動しなくても…俺はただ、皆に笑顔になって貰いたいだけ―)」

 

「そう、その気持ちが大切なのだ。…私も君の様に、桜の樹の者達の魂に安らぎを与え様にも、天界からでは届かない。他の者に頼むと、『亡者に聞かせる曲は無ぇ!』と言う者ばかり…だが君は違う。

 

 君は、相手が誰であろうと差別等せず、笛の音を聞いた者、全てが幸せになって欲しいと願う。これは人として、とても大切な事なんだよ。…桜の樹の者達の怨み、憎しみについては、私が何とかする。だから、君が犠牲になる必要は無い。なに、素晴らしい曲を聞かせてくれたせめてものお礼さ。」

 

「(でも…この曲にはまだ、名前が無いんです)」

 

「なら、『桜の雫』と言うのはどうですか?」

 

『!?』

 

 突然、幽々子の声が聞こえ、俺と西行寺さんは、驚きを隠せなかった。俺に関しては、口が笛から離れてしまう程で。

 

「ゆ…幽々子…何時の間に…確か、屋敷にいた筈じゃあ…」

 

「つけて来ちゃった♪」

 

「全く…このおてんば娘は…」

 

 そんな俺達の事は無視して、幽々子は、さらに話し続けた。

 

「ねぇ琳、もっかい吹いてくれない?私が歌詞を付け加えるから!」

 

「別に…いいけど…」

 

 俺はもう一度笛を構え、吹き始めた。

 

♪~♪~♪~

 

「今宵~桜が~舞い落ちた~」

 

 俺の演奏に合わせ、幽々子は舞を始めた。すると、急に風が吹き、幽々子の周りを花吹雪が舞い、とても美しかった。

 

「…今夜は、夜桜の下で花見でもしませんか?お父様もいらっしゃいますし!」

 

 …という訳で、今夜は冥界に咲く桜の下で、白玉楼の皆と共に花見をしている。…さっきから、チラチラと黒い羽や、黒い三角帽子が見えるのは、俺の気のせいであって欲しい。

 

「…琳君、だったか?」

 

 幽々子の父が急に畏まって、俺の向かいに座った。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「こうゆうのは…幽々子本人に決めさせる方が良いのだが…君さえ良ければ、娘を…幽々子を宜しく頼む。」

 

 と言った幽々子の父は、俺に頭を下げた。俺は、少し悩んだ後、自分の正直な気持ちを伝えた。

 

「…気持ちは嬉しいのですが…俺は修行中の身。なので、お父様の期待に応える事は出来ません。…確かに、幽々子さんはとても可憐な女性です。…だからこそ、俺なんかより、もっと素敵な人が見つかると思うんです。」

 

「ふふふふふ…はーはっはっはっ!」

 

 俺の答えを聞いた幽々子の父は、豪快に笑い出した。

 

「琳君よ、やはり君は噂通りの男だ!うむ、ますます息子にしたくなったよ!」

 

「………。」

 

 俺が唖然としてる時、突然ほろ酔い状態の幽々子が俺の隣に座った。

 

「ねぇ、琳…」

 

「ん?どうした?」

 

「…さっきの言葉…本当?」

 

「?…さっきのって?」

 

「…私が…とても可憐…って…」

 

「あぁ、本当だ。さっき、幽々子が桜の下で舞ってる時も思わず見惚れちまったよ。」

 

「そ、そう…えへへ…」

 

 俺の正直な気持ちを聞いた幽々子は、顔を真っ赤にして何処かに歩いて行った。…酒の飲み過ぎか?

 

「―こんな所で何ですが琳さん、取材良いですか?」

 

 …今度は文か…

 

「別に、良いけど…話す事なんかあんま無いぞ?」

 

「それでも取材するのが私です!」

 

 やれやれ…

 

 …そんなやり取りが行われた宴は、夜中まで続いた。

 

翌日

 

「…本当に、行ってしまうのですね…」

 

「あぁ、…皆さん、お世話になりました。」

 

「そんな堅苦しくしなくても良いですよ。むしろ、お世話になったのはこちらなのに…」

 

「…やっぱりこういうのは、キッチリしておかないとって思ってしまって…」

 

「次に会う時にまた、練習相手になって欲しいです。」

 

「あぁ、それまでに強くなっておけよ!」

 

「琳こそ、私に後れをとられない様にね!」

 

「あ、琳…」

 

 幽々子は、俺を呼ぶや否や、俺の顔近くまで近付くと―

 

「ん?どうし―」

 

チュッ

 

 少し背伸びして、俺の頬にキスをした。

 

「○×▲□★◇?」

 

「…気をつけてね!」

 

「はわわ…」

 

「あらあら♪」

 

「………。…お、お世話になりました。そ、それでは…し、し、し…失礼します(汗)」

 

 俺は幽々子達に別れを告げ、白玉楼を後にした。

 

「…にしても幽々子様、本当に行かせても良かったのですか?」

 

「えぇ、これでいいのです。…後は、彼次第ですから…」

 

「でも…あれは、流石にやり過ぎでは…」

 

「うふふ、女は時として強引に行く時もあるのです♪」

 

「そういうものですか…?」

 

「えぇ、琳さんにしては特に…本人は気が付いてないようですが、彼に思いを寄せる人もこの幻想郷にはかなり多いようですし…何時会えるか解らないなら…強烈な印象を与える事も大事なのですよ♪」

 

 …などと言う会話が繰り広げられてる事等露知らず、俺は自分の中の気持ちを整理する為に、全力で走っていた。

 




 白玉楼編、遂に終了です。
 やりきった反面、少し寂しい気もします。

 今回も早めの裏話にしましょうか…

 加奈さん:白玉楼に住み込みで働くおばちゃんの幽霊で、家政婦的な感じで考えてもらったらいい。
  当初は名前もないキャラだったが、ストーリの進行上…名前があった方が色々と楽なので、即興で考えました。

 幽々子の父:正式な名前は考えていないです。今回のキーキャラクターを担う人物でもあります。
  声がダンディなのは、恐らく体が大きいだろうから(予想)、それに見合う声を考えた結果…「声がとてもダンディな人の方がしっくりくるな!」…っという事になりました。(苦笑)

 与える力:琳がもつ霊力の特徴で、怪我をした幽霊や妖怪を治療する事が出来る能力です。

 …さて、今回のラストシーンですが、ぶっちゃけると、私の願望です!(こんな展開に結構憧れてる。)
 そして…琳は、格好いいセリフを言う事が多いですが、実は結構女性に対する免疫が低いため、頬にキスをされたり、隣で女の子が寝ていたりすると、無茶苦茶テンパります!

 次回予告をすると…琳は走る、全力で走る、自分が魔法の森に入ってる事にも気づかず…

 っという訳で、次話の舞台は再び魔法の森です!誰が登場するかはお楽しみに!

 それでは次話で!
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