日本国召喚 フェン王国ニシノミヤコより日本人を奪還せよ   作:bellcheck

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第1話 「ぶっ飛んだ女」

 

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 

 

第1外務局からホテルに届いたパーパルディア皇国からの文書。

 

受け取った少しイケメンで黒縁眼鏡をかけたスリムな朝田とぽっちゃり体形でラノベ好きの篠原は,驚いた

 

そこには命令書と書かれている。内容を見ても、すぐ来るようにとしか書かれていない。

 

身支度をしてホテルを出る。ホテルの玄関では命令書を持ってきた使者と皇軍の馬車が待機している。

 

すぐさま乗り込む二人。

 

石畳はがたがたで平行は出ていないし サスペンションも無いため尻が痛い。

 

「この馬車の作りはなってませんね。 ばねを作る技術がまだないんだから。

 

この命令書と書いてあるのも、自分の国と相手国との違いも判らないということですからあまり対外交渉もしたことがない、実務経験のない社長のバカ息子のようですね。」

 

思いついたことをすぐに口から出してしまう篠原は外交官には向いていない。

 

朝田は何でこんなやつの面倒までみないといけないのかとため息を吐く。

「使者がなんと報告するかもわからないのに何を言っているんだ」と朝田は小声で注意する。

「ばねのことを日本では発条とも言うんですよ。日本発条株式会社が有名です。

略してNHKなんですが 後からできた日本放送協会も3文字のアルファベットでNHKとかぶったんですね。

すでにこちらの会社が使用していたので許可をもらったんですよ」

 

篠原の口は雑学で止まらない。「いいから黙っていろ」

だが確かに現場をしらないバカ息子ということには、朝田は心の中で同意する。

前回の担当だったカイオスさんは穏やかな印象だったけど 担当が変わったんだろうか?

 

カイオスのとなりで やたらと叫んでいた頭の悪そうな東部島国担当課長になったらうんざりだな。日本の国力を調べて、金儲けの匂いを嗅ぎつけた貴族がしゃしゃり出てきた可能性もあるな。

 

馬車は皇帝の住む皇宮の門へと到着した。

 

「日本では皇宮警察という警察の中でも別組織のようなものがありまして、警察官でなく警察職員なんですよ」

 

「いいから黙れ」

 

皇宮の敷地内の豪華な建物の前で馬車は止まる。

 

待ち受けた従者に案内されて、豪華そうな庭と豪華そうな廊下を通過して、重厚な黒色の扉の前に至る。

 

「どうぞ、お入りください」

 

使者の招きにより室内へ入る。

 

その先には豪勢な椅子に腰かけた20代前半くらいの美しい銀髪の女性が座っていた。

 

細身で頭には金色の環をかぶっている。

 

美しいが目が大きすぎる。なんかびっくりしてそのまま固まってしまったような感じ。

 

そして視線が強すぎる。 経験上、このぶっ飛んだ眼は今まで相手をしてきた人間の中でも5本の指に入る難物に入りそうな予感がする。

 

感想を口から出しかけた篠原を朝田は右手で制する。

 

女性は話し始める。

 

「パーパルディア皇国、第1外務局のレミールだ。おまえたち日本に対しての外交担当だと思って良い」

 

 

「日本国外務省の朝田です。こちらは篠原です。

 

 急な用件との事ですが、どのようなご用件でしょうか?」

 

沈黙。

 

 

「レミール様は皇帝陛下に連なる貴族様でしょうか?」篠原はまたしゃべりだした。

 

「おい」と止めようとする朝田。

 

「ほう わかるか?」

 

「もちろん。わずかな時間ではありますが、その立ち居振る舞いから高貴な身分の方であろうと愚考します」

 

やっぱり偉いさんのバカ娘だと篠原は考える。

 

レミールはパーパルディアの政策や皇族の情報を事前に、この男は仕入れてきたのだなと思った。

 

それなら、これからの展開も予想はつくかもしれんな。

 

「いや、今日はお前たちに面白いものを見せようと思ってな・・・皇帝陛下のご意思でもある」

 

 

「それはそれは、いったい何を見せていただけるのでしょうか?」朝田は答えた。

 

レミールは使いの者を見る。その者はすぐにドアを開けて100センチ×100センチのでかい水晶が前面についたブラウン管テレビのようなものを持ってくる。

 

「でかっ!」

 

篠原の声にレミールが眉をひそめる。篠原は続ける。

 

「我が家の43インチテレビの2倍の大きさですね。さすが皇国は違いますね」

 

「お前の自宅には、これと同じものがあるのか?」

 

「はい 3年ほど前に購入しました。今年は50インチを買おうと思っています。映画が好きなんで。」

 

レミールは驚く。この魔道通信機は貴族が使用するような豪邸が数件買えるような代物だ。

 

これが自宅にあって、それを3年で買い替えるだと? このとぼけた男は日本国を代表するような貴族なのか?

 

そして映画とはいったいなんだ?インチとは長さの単位か? レミールの目が細められる。

 

今は勉強のために外務省の職員として貴族の息子が雇われているだけなのかもしれない。

 

なにか使い道があるかもな。 人質としてもいいかもしれん。

 

篠原を観察する。背は高くない。顔は平たい。足も短い。年齢は25歳くらいか?

 

おしゃべりなようだから情報源としてもちょうどいい。

 

横の朝田という眼鏡の上司は・・・ やはり平民上がりのようだな。

 

無駄なことは口にしない・・というより重要な情報は持たせてもらっていないように見える。

 

レミールは言葉を続ける。

 

「これは、魔導通信を進化させたものだ。この映像付き魔導通信を実用化しているのは神聖ミリシアル帝国と我が国くらいのものだ」

 

「はぁ・・」

 

 朝田は間の抜けた声を出す。

 

やはり、この男は映像付きの魔道通信の意味すら理解していないようだ。

 

レミールは篠原に向かって言った。

 

「これを起動する前に、お前たちにチャンスをやろう」

 

「えっ!ひょっとしてレミール様とお近づきになれるのでしょうか? もしそれなら倍の大きさのモニターを100台くらいプレゼントしますよ」

 

レミールは面食らった。ここで日本への要求を突き付けて フェン王国の日本人の人質を殺処分するところを見せる予定がなかなか進まない。

 

この男はとんでもない財力を持っている。やはりこの男は利用できそうだ。

 

もちろん篠原が言った100台は冗談だ。貯金をすべて使ってもまだ足りない。

 

突っ込み待ちの状態で篠原はにまにましている。

 

レミールはコホンと咳ばらいをすると従者が質の悪い紙を朝田と篠原に配布する。

 

 

そこには以下の内容があった。

 

○ 日本国の王は、皇国人とし、皇国から派遣された者を置くこと。

 

○ 日本国内の法を皇国が監査し、皇国が必要に応じ、改正できるものとする。

 

○ 日本国軍は皇国の求めに応じ、必要数を指定箇所に投入できることとすること。

 

○ 日本国は皇国の求めに応じ、毎年指定数の奴隷を差し出すこと。

 

○ 日本国は今後外交において、皇国の許可無くしてあたらな国と国交を結ぶことを禁ず。

 

○ 日本国は現在把握している資源の全てを皇国に開示し、皇国の求めに応じてその資源を差し出すこと。

 

○ 日本国は現在知りえている魔法技術のすべてを皇国に開示すること。

 

○ パーパルディア皇国の民は皇帝陛下の名において、日本国民の生殺与奪権利を有する事とする。

 

○ 日本国民は・・・・・・・

 

朝田は大声で抗議する。

 

「何ですかっ! これは!」

 

こんな条件が飲める訳がない。

 

激高する朝田の横で篠原が発言する。

 

「まるでインカ帝国を統治したスペインのようですね。皇帝の身代金に大部屋1杯分の黄金と2杯分の銀 そして各家族から一人を銀山で働く奴隷として徴用した例がありますね。

 

彼らは近代化した射程距離50mのマスケット銃に手も足も出なかったのです。」

 

「ほお 篠原と言ったか。インカ帝国とやらは知らんが、マスケット銃といいお前は少しはわかっているようだな」

 

「では問おう。日本の外交担当者よ。その命令書に従うのか、それとも国滅びるのか」

 

いきなり開戦や降伏を決定するような権限は朝田にはない。

 

「我々は、国交を開くために来た外交担当者です。この内容は、とても日本国政府が飲むとは思えませんが、本国に報告し、対応を検討いたします」

 

朝田は答えた。

 

レミールは朝田を見る。「お前に言ったつもりはなかったが やはり蛮族には教育が必要なようだな。

 

皇帝陛下のおっしゃったとおりだ。」

 

「これを見るがいい!」レミールは従者を見る。

 

従者は映像式魔道通信機のスイッチを入れる。 ぼわーんとゆっくりと明るくなる。

 

まだ映像は何も映っていない。

 

「時間がかかりそうですね。昔のブラウン管は真空管などが温まるまでに時間がかかるんですよ。 今のタイプも地デジになってからパソコンみたいに読み込みにちょっと時間がかかりますけどね。」

 

またも篠原がしゃべりだす。 朝田はイラっとした。

 

「お前の家の通信機は立ち上げがもっと早いのか?」レミールが問う。

 

「そりゃ 技術が違いますからね」

 

時間をおいて映し出された白黒映像を見て朝田と篠原は絶句する。

 

多くの日本人が首に縄をつけられて1列に並べられている。

 

カメラが全体を映すように俯瞰すると200人ぐらいはいる。

 

その後ろにはパーパルディアの鎧をきた多数の軍人が抜き身の剣を持っている。

 

「フェン王国のニシノミヤコから直接魔道通信で繋いでいる映像だ。

 

スパイ容疑で拘束している」

 

やばい!やばい!やばい!これは良くない状況だ。 篠原の額と背中と脇と股間から汗が噴き出る。

 

とりあえず時間稼ぎだ。

 

「この魔道映像通信機は白黒映像なんですね? カラー、いや 総天然色の通信機はまだ無いんですか?」

 

エミールは篠原の能天気なセリフに驚く。自国民が捕らえられていることに興味がない?

 

捕らえられているのが平民だから興味がないのか?

 

しかし、総天然色の映像通信機は神聖ミリシアル帝国にしか無いはずだ。

 

技術提携のレベルがミリシアルに許可されていないし 価格もまだ跳ね上がる。

 

「お近づきの印に献上させていただけますでしょうか?」篠原は畳みかける。

 

総天然色の魔道映像通信機を献上するだと?日本はミリシアルからの技術開示レベルに達しているのか?

 

「ほお なかなか殊勝な心掛けだな」レミールは動揺を抑えて答える。

 

「実は私の縁者達もフェン王国に観光に出かけておりまして、スパイ活動なんかとは無縁の者たちですのでなんとか開放をお願いできませんか?」

もちろん親戚はフェン王国の観光なんて行ってない。

 

親戚みんな同じようなインドアの趣味なので休みの日に、家から出ることはない。

 

朝田は叫ぶ。

 

「に・・・日本人!!・・・彼らはフェン王国に観光に来ていただけで、何の罪も無い人々だ。首に縄を・・・・即刻釈放を! もがもが!」朝田の口を篠原がふさぐ。

 

「うちの上司が失礼いたしました」 朝田に目配せする。

 

「要求は理解できました。 ただし、日本は議員内閣制です。

 

パーパルディア皇国は王政なので、法律上の該当する用語のすり合わせが必要だと考えます」

 

「どういうことだ?」拒否するようなら日本人を殺処分して話に勢いをつけようとしていたレミールは話の展開についていけない。

 

「パーパルディア皇国での法律の専門家と日本の法律の専門家 および政治家たちとの用語の理解に齟齬がないかの確認が必要です。政治制度には議員内閣制 大統領制 連邦議会 社会主義国の権力集中制 開発独裁制など・・ 」

 

「いや、わかった。必ずそちらの王に伝えよ。期限は1か月。往復にはそれくらいかかろう。

 

それまでフェン王国の日本人はこちらで管理する。約束を違えた場合にはわかっているな?」

 

「もちろんでございます」

 

 

朝田は抵抗を止めた。なんとなく最悪の状態は脱したらしい。

 

二人で戻ったらすぐにでも外務省からSATか自衛隊の特殊部隊にでも人質奪還作戦を依頼しなければ。

 

「私の縁者も含まれておりますので、なにとぞよろしくお願いいたします」

 

「うむ、手荒い扱いはしないように連絡しておく。 それとシノハラは約束が違えぬようにこちらに残ってもらう。」

 

朝田の頬を汗が伝う。それは不味い! 奪還作戦を2か所同時になんて難易度が跳ね上がる。

 

「篠原はこれでもなかなか優秀でして、彼がいないと仕事が回らないのですよ」

 

「それはそうだろうな」 レミールは朝田を仕事のできない男と思っているようだ。

 

「かといってお前が残っても価値がなさそうだ。シノハラは日本でも有数の貴族なのであろう」

 

おそらく日本国は朝田が残った場合には約束を反故にするだろう。1か月後に仕切り直しなど面倒だ。

 

「用事は済んだ。お帰りだ」 篠原に何か言いたそうな素振りの朝田だけを従者は外へ連れ出す。

 

 

「シノハラは日本の財産目録。 そうだな 農業 鉱物 主要産業 軍の装備 政治制度などをまとめてくれ。

 

アサダが持ってくる財産目録と齟齬があってはいかんからな」

 

「宿泊施設はこちらで用意するが勝手に出歩くのは禁止する。ホテルの荷物は引き取りに人をやるので安心しろ。

 

1か月あればそれなりの資料ができるだろう」

 

 

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