日本国召喚 フェン王国ニシノミヤコより日本人を奪還せよ 作:bellcheck
日本との国力差を見せつけて、フェン王国の日本人観光客200人を助け出すことはできるのか?
篠原は奥の部屋へ連れていかれた。
大きなベッドに机もある。 皇宮の中だし謁見する貴族が宿泊するような部屋かもしれない。
資料をまとめるにもノートパソコンはあるが電源がないのでホテルからの引き取りを待つしかない。
あそこには予備バッテリーと小型ソーラー充電器がある。満充電になるのに約3日。 3日に1回くらいしかノートパソコンは使用できないな。
ベッドに腰かけてそのまま倒れこむ。
「あぶなかったー・・・・」 人質が首輪で繋がっているところを見たとき あのまま斬首するのではないかと思った。対馬で朝鮮軍に捕虜になった住人は手に穴をあけられてロープで繋がれていたという話を思い出して焦った。
あそこで下手な対応をしたら、あのぶっ飛んだ女はおそらく全員を殺害する命令を出しただろう。
あれは人の言うことには耳を貸さないタイプだ。 自分で考えて答えを出すように誘導してやらないといけない人種だ。最初の直感は正しかった。
整理しよう
あいつは俺を仕事ができると思っている。朝田さんの思慮深いところはまったく伝わっていない。
俺のことを貴族とも思っている。モニターの話をしたときに眼がさらに開いていた。
また、日本の国力をかなり下に思っていることは間違いないようだ。
こちらの国力と日本の国力の違いを一か月以内に分かってもらう必要がある。
政治家と役人 政治学者という者がいるのか不明だが手配してもらおう。情報収集にもなる。
会談場所は日本にできれば最良だが、だめなら仕方がない。
夕食はメイドが部屋に運んで来てくれた。ホテルからキャリーケースも届いた。
煮込んだ肉と塩漬けの野菜とワイン 大味だが海外に行ったらこんなもんかな?
生野菜が出ないのは衛生状況が悪いのだろう。
以前インドネシアに仕事で行った時には初日に食べた生野菜で1週間おなかを壊した。
そういえば、一緒に行った朝田さんや日本人メンバーは全員が出てきた取り皿をナプキンで拭いてから使ってたなー。
現地の人が見てる前でするから失礼だろうと思っていたら俺だけ被害を受けた。
食べ終わってから お風呂に入れるかメイドさんに聞いたが部屋の端っこにある排水のある小さな部屋を教えられた。
後でお湯を持ってきてくれるとのこと。ここでは、お風呂に入る習慣はなさそうだ。
歯磨きをして とりあえずベッドに入って寝た。
朝、起きて電動歯ブラシを使っているところにメイドがやってきてびっくりしていた。
ぶるぶる震える棒を口の中に突っ込んでよだれをたらす平たい顔の男。怪しすぎる。
朝食を置いてそそくさと出て行った。
中世ヨーロッパでも18世紀ごろには歯磨き粉があったらしいので歯磨きの習慣はあると思うのだが。
篠原は持参したノートに思い出す限りの日本の産業について書きだす。
自動車産業 船 飛行機 家電 産業機械 そして軍事施設 教育制度
ある程度 まとまってからエクセルに入力しよう。
インターネットは使えないので数値はすべていい加減だ。
朝田さんに調べてきてもらう必要があるが、それだと口裏を合わせているとか言いがかりをつけられるかもしれない。
これだけのデータを個人か暗記しているはずないと思うんだが。こちらではそういう能力を持つ者だけが外務職員になるのか?
レミールやカイオス、叫ぶ東部島国担当課長などを思い出してそれはないと思いなおす。
ノックの音が聞こえる。
「第一外務局のニソールだ。お前の手伝いをするように言われてきた」
中へ招き入れると珍しそうにきょろきょろしている。
「この窓側に立てかけている黒い板はなんだ?」
「ソーラー充電器です。 太陽光を受けて電気を作り出します。それをこのバッテリーに充電します。
機器によって電圧が違うのですが、このUSBという規格ではすべて5Vなので便利です。
「???」
「こちらでは電気の概念はないのですか?」
「いや 魔道通信では・・・使用したと・・思う」
「あー 通信だとやっぱり使用するんですね」
「この板に移っている魔写は・・動いている?」
「これはノートパソコンです。 しばらくキーを叩かなかったので写真のスクリーンセーバーが動いているのです」
「???」
皇都 エストシラント 皇帝ルディアスの私室
「そういえば、レミール、フェン王国と日本についてはどうなっている?そなたの口からも聞きたい」
「はい、皇軍については、フェン王国のニシノミヤコを落としました。その時に、200名ほどの日本人を捕らえて捕虜にいたしました。」
話は続く。
「我が国の要求を伝えたところ、日本の外交官は条件を全面的に飲むことになりました。
要求項目に政治制度などが一部違うところがあるためすり合わせに時間がほしいというので 1か月後に締結するということで了承しました。
念のため200名の捕虜はアマノキで接収した建物に収容。 2名いた外交官の一人はこちらで預かっております。
日本国で提供する財産目録の作成をさせております」
皇帝は薄ら笑いを浮かべる。
「ほう・・抵抗することなく受け入れたか。教育の機会も必要はなかったか」
「かなり、あわててはおりましたね。
陛下、気になることがございました。外交官のシノハラという者が魔道映像通信機を自宅に持っているようなのです」
「あれを自宅にか?! 冗談だろう」
「それが総天然色の型だといっていました。かなり資産を持っている日本の大貴族のようです。
お近づきの印に100台ほど献上したいとのことです」
「ありえん。ミリシアルが日本に許可を出したのか? それほどの国家だとするとまずいことになる。
・・・再調査が必要だ。」
「解りました。陛下、第一外務局を通してミリシアルやムーなど各国にいる諜報部に依頼します。フェン王国の首都アマノキを落とす予定はそれまで保留にします」
篠原の部屋
「うわー また失敗した!」ニソールが叫ぶ。
「はまってますね。テトリスに」
質問が多すぎて仕事にならないので タブレットのゲームをやらせてみたら夢中になっている。
これで最新のゲームなんか紹介したらどうなるんだろう。
「あっ 何か文字が表示されてる 画面が真っ黒になったぞ!」
「バッテリーが切れたんですよ。また充電しないといけません」
「そ そうか それでその充電というのはいつ完了するんだ?」
「たぶん晴れの日が続けば3日後です」
「また3日後に手伝いに来る」そういってニソールは部屋を出て行った。
いや、何も手伝ってないぞ。あいつ 何しに来たんだ?
フェン王国 首都 アマノキ郊外
陸上自衛隊フェン王国邦人救出隊で第1陣として派遣された西部方面普通科連隊 天野は部下からの報告を分析していた。
ニシノミヤコからはパーパルディア皇国陸戦隊の約3000名は動いていない。
捕らえられた日本人観光客達は徴収した建物に集められているが、危害は加えられていないようだ。
篠原という名の一族を探しているとの情報。理由は不明。
別動隊はアマノキにいる日本人観光客を保護することを優先とする。
本隊はニシノミヤコに近い場所へ移動
斥候部隊に夜間にナイトスコープを使用して索敵させてみるか。
パーパルディア皇国 皇都エストシラント
第一外務局長 エルトは再度 日本国について調査するようにレミールから指示を受けた。
一度は廃棄した簡易報告書がまた彼女の机の上にある。
監査軍敗北の直接的原因は日本という国家にあるもの。
パーパルディア皇国国家戦略局でロウリア王国と日本のロデニウス沖大海戦に参加していた観戦武官のヴァルハルなる人物から、外務局宛に送られた文章。
ロデニウス沖大海戦の戦果報告が偽りの無いものであるにも関わらず、その戦果が全く国家戦略局に信じてもらえない事が必死に記されていた。
何度読んでも、あまりに荒唐無稽なため、彼を医師に診断させたところ、精神の病を患っていたとのことであり、この報告書は信用に値しないと判断した。
皇国監査軍東洋艦隊 22隻の軍艦中11隻のマストが折れた事故のポクトアールも精神の病で入院中だ。
しかし、再度の調査命令を無視するわけにいかない。
エルトは、ニソールに尋ねる。
「あの日本人についてはどうだった? 持参品になにか技術レベルのわかるようなものはあったか?
長時間部屋にいたようだったが、何か重要な情報でも入手できたのか?」
矢継ぎ早に質問するエルトにニソールは緊張する。
長時間テトリスをやっていただけのニソールは慌てる。
「は はい! ブロックを動かして1列に並べると消えるというパズルを超小型魔道映像通信機で見ました」
「なんのことかわからんが、超小型魔道映像通信機?それはどのくらいの大きさだ。ホテルから引き取った荷物の中にそんな箱はなかったと聞いている。」
エルトは超小型と聞いたので50センチ四方くらいの大きさを想像する。
「いえ、左手で持って 右手で操作する 縦30センチ横20センチ 厚みが10ミリもありません。」
「なにっ?そんな大きさ 聞いたこともない。本ではないのか?」
「いえ、間違いなく映像でした。またその画面を指で触ると画面内のブロックが反応して動くのです」
エルトはニソールの顔を凝視する。汗を垂らしている。視線も落ち着かない。そのうち体も震えだしてきた。
ここ最近、忙しくしすぎたか。自分はもちろん 部下たちも疲れがたまっているのかもしれない。
観戦武官のヴァルハルのことを思い出す。
「今日は午後から帰っていい 私もムー大使館の訪問が終わったら、そのまま直帰する。
お前は疲れているようだ」
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第2文明圏列強、ムー大使館
ムー大使館には、エルトが訪れていた。
ムー国大使、ムーゲが対応する。
「それでは自動車の輸入はまだ時期が早いと」
「ええ 自動車はガソリンで作動します。 そのためにはガソリンを入れるためのガソリンスタンドが複数箇所に必要です。
またガソリンスタンドへガソリンを運ぶためのタンクローリー車。 そしてガソリンを保管するためのコンビナート。 これは港に近いところに建設する必要がありますね。原油を輸入するのであれば精製所も必要です。何より、まず道路をアスファルトで舗装しなければなりません。 まあ その前に都市計画なんですが。ナゴヤの100m道路というのが理想ですね。」
実は日本の外交官 アサダからパーパルディア皇国から軍事物資にかかわる案件が来たら日本のことを話してやってほしいとの依頼があったのだ。
今後の技術指導も便宜を図るようにすると言われているので断る選択肢はなかった。
ついでにムーのモータリゼーションの理想を日本からすでに導入されたもののように語っているだけだ。先に道路を作ってそのあとから街ができると修正は難しい。
「そんなに大げさになるとは思いませんでした・・・」
「そういえば、転移国家 日本国には電気自動車というものがありますよ」
「電気自動車?」思いがけず日本の話題がでたことに顔がほころぶ。
「ええ、 ガソリンではなく電気で動きます。なんでも大型のソーラー電池や風力発電装置というものを家や庭に据え付けて
発電、車のバッテリーに電気をため込むのです。晴天が続くという条件付きですがスタンドも不要になりますね。
日本の電気自動車の航続距離は200Kmもあるんですよ。
しかし、日本には先端技術流出防止法がありますので輸入は無理なんです。
再三、頼んでいるところですが、認可は当分先だと思います」
自動車は軍事情報の兵站を担う重要項目だがどうせパーパルディア皇国には輸入も運用も無理だろうと包み隠さず話してやる。
「ムー国ほどの技術ならすぐに作れるのではないのですか?」
「いやいや、我が国でも電気自動車で最近 時速105kmを出した記録はありますが航続距離が数kmでバッテリーの充電に時間がかかりすぎるのでとても実用レベルではありません。
実験用なので荷物を載せるスペースもありません。モーターの出力 バッテリーの容量など性能が桁違いなんです。
高出力モーターにはネオジム磁石という超強力な磁石が必要なのですが作り方もわかりません。
材料のネオジムもレアアースと言って珍しい鉱物なんです。
日本でも40年ほど前に発明されたばかりなんですよ。
充電池もリチウムイオン電池という高性能タイプが主流なのですが作成も非常に難しくほんの少し異物が混入しただけで発火する危険性があるということです。
なんとか、生活用品などを当たり障りのないものから輸入を始めて、技術流出防止法を段階的に下げてもらおうというのが現実です」
「日本とは、そんなに隔絶した技術を持っているのですか?」
「悔しいですが、我が国とは約100年の開きがあるとのことです」
「そ そんな・・・それではパーパルディア皇国とはいったいどのくらいの差が・・」
エルトは愕然とする。レミールのことを思い出した。
フェン王国 ニシノミヤコを強襲、日本人を殺処分する計画があるとか、数日前に同じ第一外務局の局員が言っていた。
その後はどうなったか聞いていない。まったく貴族は報告もできないくせに命令ばかりしてくる。
背中に冷や汗が噴き出る。
「どうされました。 顔色が悪いですよ」
「用事を思い出しました! 失礼いたします」
たくさんの方に読んでいただきありがとうございます。
感想もありがとうございます。
戦闘場面がなくて申し訳ないです。次回もありません。