牽制しあう少女達   作:黒巛清流

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これは息抜き…これは息抜きだから…
ちゃんと他の作品も投稿するから…


第一話 牽制しあう少女達

ある日、僕は死んで転生した。

突然の事だった、気が付いたら変な空間のような場所にいて僕は光の塊と対話をした。

その光が話すことはよく分からなかったけど要約すると若くして死んだので魂が経験を積んでおらず、そのままあの世に行ったら消滅してしまうかもしれない。だから別の世界へと転生させる...ということだった。

 

前世のことは正直あまり覚えていない。

でもギターがとても好きだったことは覚えていた。だから僕はギターを楽しめる世界に行きたいなと呟いた気がする。

少女のような青年のような老人のような声の光の塊が微笑んだように感じ、視界が白で塗り潰され...

 

 

 

...この世界に新たな生を得た。

 

生後一年頃だろうか、意識がちょっと覚醒し。視界が僅かに開き、口からも声のような音も出る頃。

目の前に恐らく父の物らしきギターがあった…なかなかいいギターではないか…!

そのままギターへと一直線に向かったら母親に抱き留められた。

くっ、危ないからかな。その後もギターの方へと手を伸ばしていたら二人はうふふと笑っていた。

 

ある時、誕生日プレゼントに何が欲しいと聞かれたのでギターと言ってみた。流石にまだ小さかったので貰えたのはウクレレとおもちゃのギターだった。と言ってもギターには変わりないのでひたすら弾いていた。

中身が歳を取っているとはまだまだ子供、外で遊びギターを弾いてまた遊びを繰り返していた。

 

ある時、友人が五人出来た。

それも全員女の子だ、母さんにからかわれたのを覚えている。

そしてこの世界のことも分かった。気づいたのは五人に会ってからだけど。

彼女達はじきに『Afterglow(アフターグロウ)』というバンドを立ち上げる少女達である。

つまりこの世界は『BanG Dream!(バンドリ!)』の世界であるようだった。と、いったところで少し問題がある。そもそも僕があまりバンドリに詳しくないということだ。メンバーや簡単な性格は把握しているがストーリーやどのような関係か全く知らない。ゲームも少ししただけだしアニメの記憶はない。

彼女達がどのようにしてバンドを組んだかも知らず、ストーリーでどのようなことをしていたかもさっぱりだ。まぁ、そこは深く考えてもドツボにはまるだけな気がするし。気軽に過ごそう。

 

中学の時、彼女達がバンドを組んだ。

どうやら五人でいる時間が減り、それを懸念して組んだようである。文化祭の様子を聞かせて貰ったがとても楽しそうだ。え? 僕? 羽丘は女子校なんだから僕は入学できないよ。僕は羽丘と花咲川の対角線辺りにある共学に通っている。最初は五人もこちらに来ると言っていたがなんとか説得し羽丘に行ってもらった。流石に原作はよく知らないと言えどそこを変えるのは不味いと思った。

 

そして高校一年生の時、僕はみんなに内緒でバンドを組んだ。

20歳の社会人三人と大学生一人、そして僕という男五人の年齢ちょっと高めのバンドである。バンド名は『IGNITION(イグニッション)』なんでも例え一瞬でも誰かに火を点けられるような存在でいたいとかなんとか言ってた気がする。

そしてまぁそのバンドが物凄い受けた。ガールズバンド全盛期なのにも関わらずめちゃくちゃ受けた。リーダーのRIOT(ライオット)さんが高校生の僕に配慮してくれて僕一切喋ってないのに人気でた。出待ちとか大量の差し入れとか貰って本当に驚いたし観客の中に幼馴染がいた時はもっとビックリした。幸い顔も隠せる格好をしていたから気付いてはいないみたいだったけど。

 

そんな中、RIOTさんからIGNITION(イグニッション)を解散するという話が飛び出した。

なんでもリーダーでボーカルのRIOTさんとベースのSHADOW(シャドウ)さんが海外にスカウトされたのである。もう一人の社会人でキーボードのOCEAN(オーシャン)さんも実家の仕事の手伝いをしなくてはならなくなった。

正直、かなり悲しかったがそれならば仕方ないと学生組の僕とドラムのHAWK(ホーク)さんは納得した。

ライブハウスにいる時に発表すると混乱と混雑で危ないということから外に出てからリーダーがTwitterで報告するようである。

そして帰る方向が同じなHAWK…小鷹さんと一緒に帰路についていた。

 

「小鷹さんはどうするんですか?」

「俺か? そうだなぁ…バンドにかまけて大学のことをおろそかにしていたからそれに専念してみるか。もちろんドラムもやめないけどな。CROW(クロウ)…じゃねぇ、黒野はどうする?」

 

ちなみに僕のバンド名はCROW《クロウ》、本名は黒野飛鳥である。他の人もそんな感じの名前にしている。リーダーは祭って名字だけどフェスティバルだとカッコよくないからRIOTにしたらしい。

小鷹さんの言葉に大分伸びた黒髪を指でもてあそびながら呟く。

 

「そう...ですね。特に何も決めてません。元々ギターが好きなだけでしたし」

「そういえば黒野は元々リーダーがスカウトしたんだっけ」

「そうですね。元々バンドを組む気はなかったので他にバンドを組むことはないと思います。しばらくはギターを弾いたりふらふらしてますよ」

「ま、お前は顔も声も隠してたしギターの弾き方も毎回変えていたからな。そうそうバレることはないだろ...おっと、お前はあっちじゃねえの?」

 

小鷹さんに声をかけられると方向を間違えそうになっていることに気付いた。今日は寄るところがあったのだ。

 

「あ、そうですね。ではここで、また何かあったら連絡してください」

「おう、元気でな」

 

そう軽い挨拶をして別れる。

別に今生の別れというわけではないしまたどこかで会えるだろう。軽く手をあげてから背を向ける。

 

 

 

 

 

「いらっしゃ…あ、飛鳥くん! いらっしゃい!」

「こんばんは、つぐみ。みんなも」

 

僕が扉を開けると僕の幼馴染の一人、羽沢つぐみが笑顔で応対してくれる。その近くでは他の四人の幼馴染もいて会話に花を咲かせていたようだ。

開いている席に着くとつぐみに珈琲を注文し、隣でパンをもそもそ食べているモカを微笑ましく思いながら一息つく。

 

「今日も練習?」

「うん、今日もたくさん弾いたよ」

「本当に飛鳥くんはギター好きだね!」

 

隣に座っている赤メッシュが特徴的な少女、蘭が頬杖をつきながら僕へと問いかけそれに追随するようにひまりが僕へと声を飛ばす。

 

「まぁ僕が好きなことだからね。気が付くとつい弾いたりしてるよ」

「飛鳥は本当に「えぇぇぇぇっ!?」…どうしんだひまり」

 

巴の声を遮る様にひまりが叫ぶ、目を向けるとどうやらスマホを見ているようでなんだなんだと様子を見てみるとひまりはスマホをこちらへ向けて声を上げる。

 

「IGNITIONが解散するんだって!」

「え」

「嘘!?」

 

ひまりの声にみんな思い思いにひまりのスマホを確認する。そこにはRIOTさんのツイートがあり諸々の諸事情により解散する旨が書かれていた。ライブに来てくれていたしかなり残念だったのだろう、悲しそうな顔をしている。僕もその話題に入り怪しまれないように会話を繋げ、ひまりが語るIGNITIONの魅力に口元が緩みそうになる。

そんなこんなで会話をしているとそろそろいい時間、今日はライブもあって疲れたしそろそろお暇しよう。

 

「…と、僕はそろそろ帰ろうかな。はいつぐみ」

「あ、お預かりしま…って5000円!? 多いよ飛鳥くん!」

「いいよ、僕のおごり。多かったらつぐみが預かっていてね」

 

無理やりつぐみにお金を渡し、ギターケースを担ぎなおして扉へと向かう。ぶっちゃけバンドのあれこれでお金には余裕があるのだ。…あ、そうだ。

とあることを思い出して僕は扉を開けながら皆へと声をかける。

 

「夜になっても明るくなってきたとはいえ皆も早く帰るんだよ。恋人さんが悲しむからね」

 

そういってちょっと変な表情をした5人を見ながらクスリと笑う。

 

「言ってくれていたら協力したのに…僕も恋人が欲しくなってきたなぁ…じゃあね」

 

バイバイといって扉を閉める。そう、少し前に知ってしまったのだが彼女達には彼氏がいるらしい。

というのも詳しくは知らないのだが女友達と話している時に「彼氏ぐらいいるし!」と言っていた所を聞いてしまったのだ。正直、泣きそうになったというかちょっと泣いたかもしれない。一番悲しいのはそれを教えられていなかったことである。ある程度信頼されていると思っていたんだけどなぁ…と息を吐く。

ここは現実だ、ゲームや漫画とは違う。

ゲーム自体では恋人はいなかったのだろうがそれはあくまでゲームだからだ、普通に考えてあんなに可愛い子達に恋人がいないなんてことはないのだろう。あーダメだ、涙がバンドの解散と一緒に来た。だが僕が彼女達の邪魔をしたりはしない、大切な幼馴染だ。彼女達の恋路は全力で応援しよう、それが僕に出来ることだ。

ふとショーウィンドウにうつる自分の姿を見る。

 

肩ほどまである青みがかった黒髪に碧眼、蘭達と比べても遜色ないほど白い肌に華奢な体躯。パッと見女の子にすら見える容姿を確認し、再度溜息を吐く。

 

もう少し…男らしかったら誰かと付き合えたりしたのだろうか…

 

そんな付き合えるなら誰でもいいみたいな思考を頭を振って正し、少しばかり出てきた涙をぬぐいながら僕は帰路についた。

 

 

 

 

 

飛鳥退店後

 

「…ねぇ」

「…どうしたの蘭」

 

飛鳥が帰った後の店内は恐ろしいほどの静寂に包まれていた。真っ先に声を上げた蘭とモカも顔色が悪く、声が僅かに震えている。

 

「…この前さ、彼氏いるいないの話になって思わずいるって嘘ついたよね」

「…あぁ、確かについムキになって言ったな」

「…その時さ、近くに飛鳥いたよね」

「…うん、最後に蘭ちゃんが叫んだちょっと後に合流したよね」

「…も、もしかして飛鳥くんにき、聞かれて…た?」

「…しかもみんなのことを言ってたからー…トモちんの時から聞かれてた…よねー」

 

そうモカが言った瞬間、蘭は勢いよく机に突っ伏した。目元からは涙が流れているように見える。

 

「あたしって、ほんとバカ」

 

そう、誰も! 恋人なんていないのである!

女友達の前で見栄を張っただけなのである!

なんならここにいる全員飛鳥のことが好きなのである!

その飛鳥からある意味応援しているよとほぼ脈なし宣告されたようなものなのである!

全員深いダメージを受けていたのである!

 

「…あの」

 

その時、同じく顔を青ざめさせていたつぐみから思わずと言った声が漏れる。

 

「さっき…飛鳥くんも恋人欲しいって言っていたけど…もしかしたら…誤解を解いたら…」

 

そこまで言った瞬間、ひまりがすぐさまスマホを取り出す。そして近くにいた蘭とモカがすぐさまその手を押さえた。

 

「…抜け駆け」

「それはダメだよひーちゃん」

「うぐっ…」

 

この日、抜け駆け禁止令が敷かれた。誤解を解くなら全員で

しかし全員歳が近く距離的にも近しい異性は飛鳥ぐらいしかおらず、女子校育ちである。恋愛ごとには全員クソ雑魚であった。しかも飛鳥は嘘があまり好きではなく嘘をついていたと知られるとあまりいい顔はされないことを全員が分かっており口が出せなかった。

喧嘩になるほどではなかったが互いに互いを牽制しあうようになった。

この物語はそんな少女達がやきもきしながら飛鳥との距離をどうにか縮めようとするお話である。




主人公の呼び方 

蘭 飛鳥 
モカ あっすー
ひまり 飛鳥くん
巴 飛鳥
つぐみ 飛鳥くん
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