過去編の場合はタイトルの前に「-」が付きます。
実は本編中で小鷹さんしか喋ってなかったというあれ。
「…旅行に行きたい」
音合わせが終わった後、鴉の被り物を脱ぎ休憩をしているとリーダーがゲンドウポーズをしながら深刻そうな声を上げていた。
汗をタオルで拭きながら僕はあきれたような視線を向けた。というかみんなそんな視線を向けている。影山さんは口元がヒクヒクと動いていた、どうやら前回の着ぐるみダンスを思い出したようである。
「また唐突な提案。これで何回目ですか? リーダー」
「記憶の中では20回は超えてるな」
「…前回はんふっ、やばかったな」
「ふっ。全く無駄なことはしないほうが身のためだよ、ライオット君」
リーダーは時折唐突に何かをしようとする。前回は唐突に個性が欲しいと言うことだったので兎の着ぐるみを着てダンスをしていた。
一応ダンスが上手いことが分かったり着ぐるみを着て動けるスタミナがあることが発覚したり、一応色々見つかってはいるからやる意味はあるかもしれないけど。正直8割の確率で影山さんの腹筋が崩壊する事態になるからもういいと思う。
「それで今回は旅行ですか?」
「時期的に行くなら温泉かな」
「…すでに行く気満々か」
「だが我々はともかく黒野君は難しいのではないかな? 一人だけ高校生だろう?」
と言って今度のみんなの休みをみんなで確認する。平日をまたぐが他の四人は日曜と月曜日が開いていた。問題は僕だが…
「その日なら開いていますね」
「…その日って平日じゃないのか?」
「あー…えっとですね」
もちろんな指摘が飛んで来たので説明をする。うちの学校はやたらと学業の効率化が凄く勉学はすでに一年生分の内容はほぼ8割は終わっている。それであまりにも進み過ぎた場合振替休日として休みが入るのだ。もちろん成績上位者のみ、分かりやすく言うなら学年20位以内の生徒は公休としての休みがもらえるのである。
「それで黒野は大丈夫なのか?」
「毎回学年15位以内はキープしてますよ」
と言うことで日曜と月曜に温泉旅行に行くことになった。日曜だったので蘭達の誘いがあったのも困った。別の友人と小旅行に行くと言うと女の子と? とやたら勘繰られ怒涛の連絡。
仕方ないのでライブの時と普段の印象が全く違う小鷹さんをメインに5人の写真を送った。他の三人は顔はうつさないようにしたけどこれで男だけというのは分かったと思う。
返信は納得したようで楽しんできてやお土産よろしくと言ったラインが来た。
「というわけで来たぜ温泉!!!」
「元気ですねー」
「…人が少なくていいな」
海原さんの運転で少し離れた温泉旅館に付いた、少し冷えるので温泉はとても快適に入れそう。早速チェックインするために旅館に入って受付に向かう。
「この旅館大きいですね」
「結構有名人も泊まる旅館らしいな、予約も結構あるんだとなんでリ…祭さんが知ってるか疑問だけど」
本当に祭さんのそういう情報はどこから仕入れてくるのだろうか。
まぁリーダーというわけで予約していた部屋を聞こうと思ったのだけど。
「あ、あの…本当に同室でよろしいのでしょう…?」
受付で止められてしまった。僕達が予約したのは六人部屋で僕達は五人だから部屋の大きさ的には問題ないはずだけど。家族六人用だから狭いとかだろうか。
と受付の女性が僕の方を見る………あ
「あ、僕男です」
「えっ!? も、申し訳ありません!!」
「……」
「まぁ、元気出せよ。よくあることだし」
「でもさぁ…みんなと一緒にいるのにさぁ…」
部屋に荷物を置いて早速温泉へと向かってる最中、受付の人の驚愕した顔を思い出す。
みんなといれば僕も男に見られるかなと思ってたけどまさかの男4女1にみられるというあれ。でもまぁ仕方ないのかなぁ。
「それよりも黒野も入るのか…」
「…大丈夫だろ」
「うむ、気にはなっていたからな」
「はえ?」
小鷹さん達は僕の顔をじっと見る。何か変なところがあったのかとぺたぺた顔を触ってみるが特に何もない。
するとリーダーが僕の両肩にぽんっと手を置く
「……飛鳥、本当に男なんだよな?」
「長年一緒にやってきてて今頃っ!?」
悲しいことに僕は仲間からも男女曖昧判定を受けていたらしい。
リーダーを小突きながら温泉の暖簾をくぐる。硫黄の臭いに思わず頬が緩む、家の大浴場もいいけどやっぱり温泉だよね。
入ってみるとすでに中にいた人達が僕の顔を見てぎょっとした顔をする。もはやスルーしよう。そのまま雑談をしながら服を脱ごうとすると視線が急に倍になった気がする。なにみてんねん。
ちなみにだが僕はバンドをしているので実はちょっとは鍛えられていたりする。体だけだと男として見えたりする。上を脱いだ僕を見て困惑している空気を感じる。もうできれば見ないで欲しいのだけど。男だとしても恥ずかしいし。
「タオル思ったより大きいな」
「…飛鳥、タオルで前を隠すと本当に女のようにしか見えないな」
「なぜ胸元を隠す、視線の突き刺さりが凄いぞ」
「だってタオルが大きくて引きずりそうで…」
その浴場に入り、髪を洗ったりしていたのだが視線が本当にすごい。お爺さん三度見してたし。
浴槽は乳白色なようでこれなら入っててもじろじろ見られたりしないかもしれない。
早速浴槽に浸かり息を吐く、やっぱり温泉はいいなぁ……。
「やっぱり温泉はいいですね」
「ふっ、私の美しさがさらに洗練されてしまうな」
「温泉まんじゅう美味しいぃ~、やっぱりこういうところに来たら食べないと損ですよね」
「なんとなくで旅行に来たけど来てよかったかもな」
温泉から上がった後。浴衣に着替えて商店街のような所を歩いていた。真ん中に温泉が流れており少し湿気はあるが浴衣でも寒くない、色々な出店もあり色々と目が行ってしまう。
いつものように五人で出歩いていたわけだど…あれ?
「祭さんと影山さんと海原さんは?」
「あ? ……アァッ!?」
小鷹さんと周りを見渡すと三人の姿が消えていた。いや、影山さんは見つけた。人が多くなってきたからか壁でじっとしている。影山さんは人混みがあまり好きじゃないししばらくは出てこないだろう。
小鷹さんはプルプルと震えている、お怒りのようだ。
「黒野、俺は影山さんとあのバカ二人を捕まえてくる。ちょっと待っててくれ」
「あー、うん。分かりました。気を付けてくださいね」
小鷹さんが壁にいる影山さんを引きずって二人を探しに行った。
多分祭さんは出店ではしゃいでたらどんどん遠くに行ってしまったって感じで海原さんは多分ナンパしに行ったんだろうね。ナンパなのか女の子褒めてるだけなのかよく分からないけど。
そんな感じで近くのベンチに座って温泉まんじゅうを食べながらスマホで次どこ行こうかなと思案していると目の前に影が差した。視線を上げてみると少し年上ぐらいの男性がいた。
ニコニコと愛想のいい顔をしており手を挙げながら僕に声をかけてくる。
「ねぇねぇ、そこのお姉さん。暇? 俺と遊ばない?」
「…僕?」
「そうそう、キミ」
…まさかのナンパだよ、随分久し振りにされた気がする。
まぁ、服は浴衣だし顔はもうこれだし仕方のないことなのかもしれない。男と言ってもナンパを回避しようとしていると思われていしまうので無難な言葉で断ろう。
「すいません友人を待っていますので」
これで引くタイプと引かないタイプがいるけどどうだろう。
というと「あ、友達待ちならその子も一緒にさ」と言ってきた、何故友人が男である可能性を考慮しないのか。
はてさてどうやって穏便に事を済ませようかな、しつこいタイプみたいだし小鷹さん達が来るまで粘るしかないかなぁ。強気で断ると逆上されたりするかもしれないし。
と言った感じで柔らかに断っているんだけど相手も中々引かない。この世界男女比3‐7なのになぜ僕にナンパが飛んでくるのだろうか、顔立ち的には贔屓目に見て他の子と遜色ないと思うんだけど。
「あの…その…」
「ちょっとぐらいいいじゃん、ね? 友達には後で合流するとかいえb」
「おーい、黒野ー。遅くなって悪…ん? 知り合いか?」
曖昧に引き延ばしていると小鷹さんと影山さんが二人を引き連れて戻ってきた。
IGNITIONは男性バンドで人気があるのでもちろんみんな顔がいい、「俺はそんなに顔が良くない」と普段から言っている小鷹さんでさえ普通にモテる。バレンタインで普通に二桁もらえるぐらいだし。
そしてメンバーの中で一番顔のいい影山さんが珍しく前に出る。
「…黒野に何か用か?」
「あっ、いえっ! 何でもないです!」
ナンパ男性は影山さんの圧倒的顔面力を前に去っていった。影山さんは男性相手ならまともに喋れる。この世界だと生きにくそう。
「悪いな黒野、まさかナンパされていると思わなかった」
「うん、僕ってやっぱりそうなんだなぁって思いました」
その後は途中女性陣からの視線と僕に軽い嫉妬の視線が飛んでたぐらいで普通に終わった、帰った後のお土産は普通に喜ばれました。
これ以上伸ばすのはあれなので駆け足気味ですが無理やり終わらせました。
次からはまさかのバンドリキャラ一切出ないというキャラの掘り下げ回の予定だったけどあんまり掘り下げられなかった回。
次からは本気出す。