シャル姫に対抗する為に情報を集めることを決めた士狼はシャル姫の様子を遠目で見たり、尾行したりして情報を確実に集めていた
(シャル姫は頭脳明晰で運動神経抜群、才色兼備で猫被りも上手いから教師達からの評判も良い、まさに完璧王女というのが周りの評価だ。)
(だが本当のシャル姫はそんな完璧じゃない、本心の隠し方が上手い、王女としてパーティなどに参加した時とかで処世術として身につけたんだろう。)
(特にジュリエットといる時がより一層本心を隠しているように見える、つまり俺以外に誰もいない状況でなければシャル姫の本心を引き出すことは不可能)
士狼はシャル姫と二人きりで話す機会を伺うものの、シャル姫はいつもペルシアと行動を共にしていた為中々機会を得ることができなかった
(このままでは埒が明かないな…不法侵入はしたくないがこうなったら直接部屋に行って、1人で帰ってきた所で話すしかない)
(シャル姫の部屋の位置は特定できた、だがどうやって行くかが問題だな…正面から白猫寮に入るのはまず無理だ、見つかれば問答無用で追い出される)
(仮に上手く部屋にたどり着いたところでシャル姫が1人で帰ってくるという保証は無い)
(それにジュリエットとの相部屋だからジュリエットだけでなく他の奴に見つかる可能性だってある、かなり危険な賭けだがやるしかない!)
「これを使うか」
士狼は自作ワイヤーガンを部屋の窓の少し上を狙ってワイヤーを飛ばし、見事に窓の枠に引っ掛けることに成功した。
「よし、ちゃんと引っかかって動作も問題ない…大丈夫だな」
巻き戻しても問題ないことを確認してワイヤーを巻き戻して士狼は上に浮き上がっていき、窓の少し下で巻き戻しを止めて窓を覗き込み部屋の中を確認する
「誰もいないな」
誰もいない事を確認した士狼は窓を開けて部屋に忍び込むことに成功した。
(さてここからが本番だ、運が良ければ王女1人、悪ければジュリエット又は白猫の誰かと一緒に入ってくる、そうなった場合はすぐに退散するか、鏡の中にある隠し部屋で待機するかだ)
(隠し部屋の存在を知っているのは俺以外だとシャル姫本人のみだ、バレることは無い)
そしてしばらく部屋の扉をノックする音が聞こえた士狼は隠し部屋に隠れる
「さて…誰が来る」
「ペルシアいる?」
(良かった…どうやら気配からすると…シャル姫1人だけだ、運が良い)
「…居ないわね」
士狼はシャル姫を気づかせる為にわざとノックをする
「ッ!?」
シャル姫はその音を聞くと驚いて部屋に振り返ると士狼が隠し部屋から出て来てさらに驚く
「な、なんであなたがここに…!」
「勝手に入ってすまない、どうしても貴方に話しておかなければないことがあってここにきた」
「今すぐ先生に言って」
シャル姫が部屋から出ようとした時に士狼は鏡をノックしてシャル姫を止める。
「言いたければ好きにすれば良い…だが東和民を探してる件とこの鏡の中の秘密を全てバラすぞ…シャルトリュー・ウェスティア王女様」
「ッ!?」
士狼の言葉に動揺した後に、苦虫を噛み潰したような表情で部屋に入って扉を閉めた。
「何が目的よ…私に何をさせるつもり?」
シャル姫は睨みつけながら士狼に聞く
「そう警戒するな、ただ貴方と取引がしたいだけだ」
「取引?まさか私の身体目当て?」
「違う!ただこちらの話を聞いてもらいたいだけだ」
「それを聞くかどうかは私が決めるわ」
「なら貴方が探している東和民について話すとしたら…聞くか?」
「それは本当かしら!?早く話しなさい!」
「誓って本当だ、だが俺の話を聞いてからだ、聞いてくれるのなら話す。この取引に応じてくれるか?話はそれからだ」
「…いいわ、その取引を受け入れるわ」
「よし、ではまずこちらからだ、ジュリエット・ペルシアについて聞いて欲しいことがある」
「ペルシアについて?…早く言いなさい」
「ペルシアが言っていた。昔はお前とずっと一緒に居たって、ペルシアは貴方を1番の親友だって言っていた」
「ペルシアが…」
「そうだ…お前とペルシアがどう関わってたかは知らない…だが昔みたいにペルシアと関わって欲しい。俺の話はこれで終わりだ」
「そう、じゃあ今度はこっちが聞く番ね…なんで貴方が私の秘密を知ってるのかしら?貴方が知っている情報を教えなさい」
「お前が探している東和の男はこんな目をしている奴か?」
「なっ!」
シャル姫は士狼の目を見て固まった
「どうなんだ?」
「そ、そうよ確かに青い目…さっきまで黒い目だったのに」
「黒い目がなぜ青い目に変わったたのか気になっているだろうがこれは生まれつきだ」
(え…でも待ってそれだと私の好きな人達が付き合ってるって事に…)
「シャル姫いる?入るね」
ノックと同時にペルシアの声が聞こえた
「マズい!このままじゃ…うわっ」
「あれ?誰もいない…気のせいだったのかな?」
ペルシアが部屋に入る寸前にシャル姫が士狼を引っ張って隠し部屋に隠れ、二人はペルシアに見つからずに済んだ
「おかげで助かったが…何してんだよ」
「…」
「おい、黙ってないで何とか言ってくれ」
「私…ずっと前からあなたの事が好きだったの、誘拐された私を助けてくれたあの日からずっと…」
「はぁ?」
シャル姫の突然の告白に士狼は驚く
「お願い…ペルシアと別れて私と付き合ってよ…」
「…」
鏡の隙間を通して部屋の明かりが入っていた為、シャル姫の赤面し涙を流す顔を見て士狼は動揺した
「お願いよ…ずっとあなたを思って探してきたのに…こんなのって…」
「…悪いが無理だ」
「そう…でも今はこの空間に二人きりよ、部屋にいるペルシアにバレる訳にはいかないでしょ?」
「ちょっと待ってくれ、それは」
「だから私のしたいことをさせてもらうわ」
シャル姫は士狼の顔を両手で掴み自分の顔を近づける
「おい待て、何する気だ」
「…」
シャル姫は士狼の問いかけに答えない。それどころか徐々に顔を近づけてくる
「ん…!?」
シャル姫の唇が当たりそうになる寸前に士狼は手でシャル姫の口を押える
「頼む、落ち着いて俺の話を聞いてくれ…俺とペルシアは」
「シロー君無茶してないかな…私とシャルちゃんと仲直りできるように最近頑張ってるみたいだから…何かお礼してあげたいな…」
「え…?ペルシアに話してないの…?」
「…話す必要はないから話してないだけだ」
(なんで話さなかったの?あなたの彼女なのでしょう?話すとなにか都合の悪い事が…)
その時、シャル姫は何かに気付いたように目を見開く
「私の…為…?」
「…違う、そんなことはない」
「ごめんなさい…」
シャル姫は士狼から離れて頭を下げた
「なんだ、急に頭を下げて」
「自分の感情任せに2人に酷いことをしようとしてしまったじゃない…」
(どうして私は自分から私の大切な人二人を傷つけるようなことを…)
「…君はペルシアを大切に想っている、なら得体の知れない男から守ろうとするのは間違いではない」
「そんなんじゃ…ないけど…」
「とにかく聞聞いてくれ、俺とペルシアは付き合ってない」
「え?…」
「全部君の勘違いだ」
「ほ、本当?本当にペルちゃんと付き合ってないのね?」
「嘘じゃない本当だ」
「そう…じゃあ」
シャル姫は突然士狼を抱きしめて
「私は必ず君を手に入れるわ…諦めないから絶対に」
士狼の耳元で妖艶な声で囁いた
「い、いきなり何をする!」
囁かれた士狼は戸惑い赤面して、思わず少し大きな声を出してしまった
「今のはシロー君の声!外かしら!?」
士狼の声を聞いたペルシアが部屋から出て行ったことに気付いた士狼はその隙に部屋から脱出しようとしたが
「逃がさにゃいわよぉ…チュッ」
背中を見せた瞬間、襟を捕まれた士狼にシャル姫は頬にキスをする
「どう?貴方のことが本気で好きって証は」
誘惑するかのように甘い声で耳元でシャル姫はそう囁いた
「くっ!」
士狼は耳まで赤くして素早く隠し部屋から脱出する
「お、お前…なんて事を、うわっ」
士狼はキスされた頬を片手で抑えて後ろに下がろうとした瞬間、シャル姫に床に押し倒される
「フフフッなにがおかしいのかしらぁ?」
妖しく微笑みながら顔を近づけようとした時に、部屋の外から誰かがこの部屋まで走ってくる足音が聞こえた
「やっぱりこの部屋から!」
(この状態をジュリエットに目撃されるのはマズイ!)
すぐにシャル姫から逃げようとするが
「だから逃がさにゃい」
シャル姫に取り押さえられてしまった
「グッ」
「シャル姫!?」
「ペルちゃんおかえり〜♪」
「え…?」
「どうしたのよぉ?昔みたいに呼んでくれないのぉ?」
士狼は丁度ペルシアから見えない位置にいた為、ペルシアは士狼に気づかず、シャル姫との会話を続けた
「いいの…?」
「当たり前じゃない♪昔からの親友のペルちゃんだけ特別よぉ♡」
「分かった!ありがとシャルちゃん!」
「お礼なんていいのよぉ」
「ところでシャルちゃん…その体勢は何?」
「見る?面白いのを捕まえたの」
「面白いの?…え!?」
シャル姫は士狼の姿が見える位置までペルシアを誘導して士狼の姿を見たペルシアは目を見開いて驚く。
(終わった…)
「な、なんでシロー君がここに!?」
「そろそろ離してあげましょうか」
シャル姫が拘束を解いた瞬間に士狼は近くの壁に寄りかかる
「どうしてシロー君がここに居るのかしら?」
ペルシアはジト目で士狼の頬を引っ張る
「痛っ!それは」
「ペルちゃんと仲直りしてくれって頼まれたのよぉ」
「おい!」
「事実でしょ〜?」
事実の為、士狼は何も言い返せずに黙った
「え?」
「私が冷たい態度をとってしまってたから、彼が昔みたいに接してやってくれないかって頭を下げてきたのよぉ」
「私の為に…」
「別にそんなことは」
「ありがとう…シロー君」
ペルシアが座ってる俺に目線を合わせるために座って、微笑んで士狼にお礼を言った
「俺が勝手にしたことだ…礼を言われるようなことは」
「うんん、言わせて欲しいの。シャルちゃんと昔みたいな関係に戻れて本当に嬉しいから」
「ペルちゃん…」
(まぁ二人が仲良くなっただけでも良いか)
「あ!そうだペルちゃんにだけ私の秘密を1つ教えてあげる」
「え?シャルちゃんの秘密?」
(あ!マズイ!)
士狼は急いで窓から飛び出そうと動こうとしたが、シャル姫はそれを見越したように素早い動きで士狼の背後に抱きついた
「私、彼のことが好きなの異性としてね」
「え!?シャルちゃん!?どうしちゃったの!?」
「それだけは言えないわぁ」
シャル姫は猫のように士狼の背中に頬擦りをした
「やめろすりつくな」
「ムゥ!」
「「え?」」
ペルシアがその光景を見て頬を膨らませてむくれた
(ペルちゃんの反応可愛すぎないかしら?)
「ダメ!私だってソー君のことが好きなの!いくらシャルちゃんでもダメ!」
(ペルちゃん可愛い…でもぉ)
「いくらペルちゃんでも彼は譲れないわぁ。ずっと彼を探してきてやっと会えたんだもの今更諦めるつもりはないわぁ」
「ムゥーー!」
「もぉ〜ペルちゃんたら〜可愛い〜♡」
シャル姫の発言にさらに頬を膨らませたペルシアにシャル姫はうっとりした
「俺より別の男を好きになる事をオススメするが…」
「「嫌!」」
ペルシアとシャル姫は即答した
「…頼むからもう離れてくれ俺は長時間ここにいるのはマズイ」
「う〜…仕方ないから離れてあげる」
「そうねぇ〜」
「誰かに見つかる前に俺は帰らせてもらう」
「そういえばあなた、テスト期間の休みはどうするのかしらぁ?」
「黒犬は3日間合宿があるみたいだが、俺は参加するかどうかは決めてない」
「じゃあ、会えないの?」
「そもそも寮から出れるかも分からないからな」
「じゃ、じゃあさ…あれ着るから1日だけ…ダメ?」
「本気か?」
「会えないのはやだ…」
「…分かった確認してみる、じゃあな」
(今日はペルちゃんの新しい一面を沢山見れた気がするわぁ)
「うん、また明日」
「…また明日な、ジュリエット」
「うん!」
(仲いいわねぇ…羨ましい…)
「シャル姫もまたな」
「姫はいらないわ、シャルでいいわ」
「分かった、じゃあシャルまたな」
士狼は別れの言葉を言った後に窓から飛び降りて、誰にも見つからないように白猫寮を去った
そして士狼が去った後に残された二人は…
「ペルちゃん私達、同じ人を好きになっちゃったわね」
「うん、でもシャルちゃん私負けないから」
「私もよペルちゃん、本気で彼を落としに行くわ。でも私とペルちゃんで協力してっていうのもありね、彼かなり手強いし」
「確かに、シロー君は変に遠慮するというか自分からは動かなそうだからなぁ…あ、そうだ!シャルちゃん!こんなのはどう?」
ペルシアはシャルに耳打ちをする
「…へぇ〜面白そうねペルちゃんお願いね」
「うん!任せて!」
二人はいい笑顔で笑い、何かを約束した
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「はぁ…今日は疲れたな、色々ありすぎて」
「士狼〜!探したゾ〜!」
「ん?蓮季か、何か用か?」
「そろそろ中間テストだろ?それに向けて合宿するからな」
「あぁ…ちょうど良い、俺もその事で聞きたいことがある」
「そうなのか?」
「あぁ、その時にジュリ男を呼んでもいいか?一日だけでもいたいらしくてな」
「別にいいゾ!士狼の頼みだしな!」
「ありがとう、だが合宿は強制参加なのか?そうでないならそこまでしてもらう必要は無くなるがな」
「なんだぁ?もしかして本当は勉強出来ないことを隠すために参加しないつもりかぁ?」
「そうじゃない、だが合宿には参加する、何かやることあるか?」
「今度の中間テストに自信あるか?その答えによってだな」
「それなりにってところだ、大体全教科できるから」
「お〜!じゃあ中間テストは蓮季と勝負だな!」
「なら俺の負けだな」
「あ!今面倒だから手を抜こうとか考えたな!…ん?」
士狼に近寄って顔を覗いて怒る蓮季だったが、突然止まって匂いを嗅ぎだした
「どうした?」
「…女の匂いがするゾ」
(す、鋭いな…)
「ま、まさか彼女!?」
「そんな訳あるか!こんな俺に彼女ができると思うか?」
「蓮季はそうは思わないゾ!士狼は頼りがいのある男だからな!彼女ができたらきっと幸せだと思うゾ!蓮季が保証する!」
「プッ!なんだそれ」
(あ!士狼が笑ったゾ〜!)
士狼の吹き出し笑いを見た蓮季は
「士狼、なんだか雰囲気変わったな。何かいい事でもあったのか?」
「まあな、それに今でも起こってる」
「ん?何が起きてるんだ?」
「こうして気軽に蓮季と話せてることだ」
(こんな当たり前の出来事が、ささやかだが本当の幸せ…なんだろうな)
「なっ…なっ…そ、そんなこと急に言われたら照れるだろ!士狼のバカ!」
士狼の言葉に蓮季は赤面して狼狽える
「ん?何のことだ?」
「うっ…知らない!合宿は士狼にだけ難しい問題を用意しておくからな!」
蓮季は捨てセリフを言ってその場から走り去って行った
「理不尽だろ…」
(とりあえず合宿に行っても大丈夫だとジュリエットに言っておくか)