シャルとペルシアの和解から翌日、士狼はペルシアとシャルに一緒に学園の散歩に誘われ、人気のない場所で待ち合わせ時間より早く着いた士狼は二人を待っていた
「お待たせ!シロー君!」
「よう、合宿来てもいいって」
「本当!?良かった!ほらシャルちゃんも」
「ちょ、ちょっと待って!ペルちゃん!心の準備がッ!」
物陰に隠れていたシャルはペルシアに士狼の目の前まで引っ張られ、士狼の姿を見て固まった
「ようシャル」
「え、ええ」
「さ、行こ!2人とも!」
「分かったよ、まずどこに行くんだ?」
「そうね…あ!だったらあそこに行こ!」
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「メェェェ」
ペルシアが目指した場所は羊がいる厩舎だった
「そう!今なら誰もいなさそうだから!」
「久しぶりに触るな羊は」
早速士狼は近くにいた羊を触る
「…」
ふわふわの羊の毛に夢中になって無言で触り続ける
「あ、見てシャルちゃん…シロー君が」
「羊に取られてしまったわね」
二人は少し離れた場所で士狼が羊に夢中になっている所を見つめていると、その近くにいた一匹の羊が士狼に近づいて自分にもかまえと言わんばかりに士狼の背中に頭で軽くつついた。
「おっと、なんだよ君も触れって?」
後ろから小突いてきた羊に士狼は振り向いて触り始めたら今度は二匹の羊が近づいて士狼を左右からつつく
「痛てて…みんな触れって?」
「メェェェ」
そうだというように二匹の羊が鳴く
「ちょっと待っててくれ、俺の手は2つしかないから…」
うるさい早く構えというように士狼をつつく
「ちょっ…本当にちょっと待ってくれ、分かったから」
「羊に翻弄されてるわね…」
「でもシロー君嬉しそう」
「確かに彼、嫌そうに見えないわぁ…ねぇペルちゃん」
「うん、私達のところに一匹も来ないわね、みんなシロー君の所へ行ってるし…」
「エサ出してみる?」
「シャルちゃん…実はもう出してるんだ」
「そっそう」
「なんで俺ばっかりなんだ?」
士狼は集まってくる羊達から離れようとすると
「あ、羊がシロー君を追いかけて行った」
「うわっすごい追いかけてきた!?」
「メェェェ!」
逃げる士狼を追いかけて行く羊はどんどん増えていく
「ジュリエット!エサを渡して!」
「わ、分かった!」
ジュリエットが投げてきた餌をキャッチしてた士狼は
「ほらエサだぞ!」
エサを遠くに投げてばら撒いて羊の気を引いている隙に士狼は何とか厩舎から脱出した
「はぁ…大変だった」
「フフッよかったじゃない…モテモテねぇ」
「喜んでいいのかそれ…」
「嫌われるよりはいいんじゃないかしら?」
「確かにそうだが限度があるだろ」
「まあ気を取り直して行こ」
「そうだな」
ペルシアはシャルに近づいて士狼に聞こえないように小声で話しかける
「シャルちゃんこうなったら確かめてみない?」
「何を?」
「シロー君がどれだけ動物に好かれるのかどうか」
「…面白そうね」
ペルシアの提案にシャルは面白そうに笑ってその提案に乗っかる
「ねぇシロー君、次は馬小屋に行ってみましょ?」
「この学園って馬もいるのか?」
「いるわよぉ〜」
「そうか、見てみたいな」
(馬はどんな反応を見せるのかな)
(馬は彼に何するのかしら)
ペルシア達が馬小屋に到着すると中にいた馬達が一斉に士狼を見る
「なんか馬達が急にこっちに振り向いて来たぞっておい、なんで俺から離れる」
「私達に見向きもしないわね…ねぇ少し動いてみて?」
「ん?分かった」
士狼は試しに左右に少し動いてみる
「みんな目で追ってる」
「すっごい見てくるなこの馬達」
「近づいて撫でてみたら?」
「大丈夫なのか?」
士狼は恐る恐る近くの馬に近づく
「シロー君が近づくとどんどん馬の鼻が伸びてるわね」
「あら本当」
そして馬の頭に手を当てた
「ん?目を細めたな」
士狼が撫で始めると馬は心地良さそうにしていた
「なんかシロー君に擦り寄ってない?首も上下にゆっくり動いてるし…」
「わっ」
隣にいた馬が士狼の服の襟を噛んで自分の方へ引っ張る
「あ、襟を食われたわね、しかも引っ張られてるわぁ」
「分かったよ、よしよし」
士狼は引っ張られた馬を撫でると馬が満足そうに目を細めた
「あ、最初に撫でた馬が」
「うわぁ、またか?」
最初に撫でた馬が士狼の服の襟を噛んで引っ張って自分の方へ戻そうとしていた
「もうなんだかわかった気がするわ」
「うん、シロー君は動物に好かれるみたいだね」
「も、もういいだろう?」
士狼はその場を逃げるようにペルシア達の元に戻ろうとした時
「…」
一頭の馬と目が合う、その馬は灰色でたてがみが長い美しい馬だった
「ん?シロー君どうしたの?」
立ち止まった士狼を不思議に思ったペルシアが声をかける
「あの馬は?」
「ん?あぁこの子は仲良し夫婦から生まれた子だよ」
「夫婦?」
「うん私達が入学する前から生きてる東和国から来た黒い馬とウエスト公国から来た白い馬がいるの、その夫婦の間で産まれたのがこの子なの」
「そうなのか」
「なにか気になったの?」
「まあな、でもまずはどこかで休憩しないか?」
「そうね」
「じゃあ行きましょ」
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人目のつかない場所を見つけた三人はそこで休憩することにした
「しかし貴方の動物達への好かれっぷりは凄かったわぁ」
「シロー君はここで休んでて?飲み物買ってくるから」
「いや別にそこまでしなくても」
「私がしたいからいいの!」
「そ、そうかならこれで買ってきてくれ」
士狼は財布からお金を出した
「お金はいいわよ」
「運んできてもらうお礼だ、頼む」
「分かったそこまで言うなら貰っておくわ、じゃあゆっくりしててね?」
考えを変える気が無いと感じたペルシアは士狼からお金を受け取った
「そうさせてもらう」
「私も行くわぁ」
「俺はゆっくり休ませてもらう」
「本当にお疲れのようねぇ」
「まぁな」
ペルシアとシャルが飲み物を買いに行って姿が見えなくなった時、近くの茂みに音が聞こえた
「ん?」
士狼はその茂みを見ると黒猫が茂みから出てきて士狼の前に座った
「野良猫か?」
「ニャー」
黒猫は返事をするように鳴いた
「おいで」
「ニャー」
士狼の声に反応するように黒猫が士郎の足元に近づく
「可愛いなこの猫」
「ゴロゴロ」
黒猫は士狼に警戒心を出さず擦り寄って甘えている
「フンス…ニャーオ!」
「ん?どうした?」
士狼は黒猫の喉元を撫でてみる
「ゴロゴロ」
「よしよし」
「ニャウン」
「はは、可愛いなこの子」
甘えん坊の黒猫に士狼は夢中になって撫で続けた
「ペ、ペルちゃん」
「なに?」
「あ、あれ見て」
「し、シロー君が猫と戯れてる!?」
シャルとペルシアは飲み物を買い終えて戻って来て黒猫と戯れている士狼を見て驚き、物陰に隠れて様子を見始めた
「フフッよしよし」
「ニャーオ!ニャーオ!」
「ん?どうした?急に叫び始めて?」
黒猫の鳴き声に反応したかのように近くの茂みから物音が聞こえてきた
「仲間がいるのか?」
「フンス!」
黒猫は士狼の膝の上に座ってそうだと言うように息を吐き出した
「ニャー」
「ニャー」
「ニャー」
「ニャオ」
「ブニャーオ」
「ナーオー」
そして茂みから数匹の猫たちが出てきて士狼の周りを取り囲んだ
「おお〜こんなにたくさんの猫に囲まれたのは初めてだ」
「見てみてシャルちゃん、猫があんなに!」
「もはや尊敬に価するわね」
「そろそろジュリエットとシャルが帰ってきそうだからさ退いてくれる?」
黒猫はイヤと言うようにそっぽをむいた
「退いてってば」
「ゴロゴロ」
乱暴に撫で回して黒猫を退いてもらおうとするが構ってくれると思った黒猫は嬉しそうに喉を鳴らした
「いや構うために撫でたんじゃないって、しかも他の猫達が乗ってきたし、そろそろ足が痺れてきた」
士狼が体制を変える為に横になった瞬間に他の猫も次々に士狼の体に乗っかってきた
「おいおい、これじゃ本格的に動けないんだけど…なんか…眠くなってきたな」
猫達の程よく暖かい体温で眠くなった士狼はそのまま寝始めた
「あ、シロー君寝ちゃった」
「寝たわね」
「まさか野良猫まで集めるなんてね」
「全くよぉ〜」
二人は士狼の好かれっぷりに
(それにしてもシロー君って)
(それにしても彼って)
「可愛い寝顔ね」
「可愛い寝顔ねぇ〜」
ペルシアとシャルが同じことを思い、同じことを同時に言ったことに驚いてお互いの顔を見る
「フフッまさか同じ事思うなんてね」
「そうねぇ〜でもそう思って当然よねぇ〜」
「ね、ねぇシャルちゃん」
もじもじしながら何か言いたげなペルシアを見て、シャルは何をしたいのかを察した
「いいわよぉ一旦持っててあげる」
「ありがとう!」
(幸せそうねぇ〜)
「よいしょ…できた!」
「フフッよかったわね」
シャルはペルシアが士狼に膝枕をして喜んでいる様子に、微笑ましいと思うと同時にペルシアに膝枕してもらえてる事と、士狼を膝枕している事に(少し羨ましいわ…)と複雑な思いで二人を見つめていた
それからしばらくして士狼が目を覚ました
「ん?」
「あ、起きた?」
(何か…柔らかいし、いい匂いがするような…ジュリエットの顔?何…これ?柔らかい…)
士狼は情報量の多さに混乱して、ペルシアの太ももを触った
「ん!ちょっとシロー君、くすぐったいよ」
(え?何これ?どうゆう状況?)
「どぉ?ペルちゃんの膝枕」
(膝枕?じゃ、じゃあこの柔らかいのって!?)
士狼はペルシアの太ももを触っていた事と膝枕をされていた事に恥ずかしい気持ちでいっぱいになって赤面した
「どうしたの?シロー君耳真っ赤だよ?」
「もしかして…ふふっ貴方照れてるのかしら」
「なっ!ちっ違う!あっ」
士狼は猫達がいたことを忘れていて起き上がれず、シャルの方に顔を向けることしかできなかった
「そんなに顔を赤くしてる人に言われてもねぇ〜」
「なっ!?くっ!」
赤面している事を指摘されて士狼は顔を背ける
「ふふっ貴方、案外可愛い所あるのね」
「ふ〜んシロー君って可愛い」
「う、うるさい!見るな!」
「あらあら…ふふっ」
「拗ねちゃった?ふふっ」
「勘弁してくれ…」
二人に笑われて士狼は羞恥に悶える
(頼む…猫達早く退いてくれ)
それからしばらくして門限近くになったことを知らせる鐘が鳴った
「あ…」
「そろそろ帰りましょうか」
「そうだな」
(今日は動物に振り回されてばっかりだな)
「この学園に住み着いてたり飼われてる動物達はみんな元気だな」
「そうねぇ〜」
「…別々で帰った方がいいわよね?」
「それは仕方ないだろ」
「ニャーン…」
膝の上に乗ってた猫を無理やり下ろすと悲しそうに猫達が鳴く
「ごめんな、また来るから…なっ?」
「ニャン!」
猫達は返事を返すように鳴いて草むらの中に消えていった
「本当に動物に好かれるのね貴方は」
「小さい頃に動物の世話をしたことがあるから、たぶんそれかもな」
「それでもあんなに好かれるかな?」
「もしかしたらの話だよ」
「今日はシロー君の知らない色んな所が見れたね」
「動物に好かれるのもそうだけど、膝枕であんなに顔を赤くするなんて…結構ウブだったのね貴方」
「それは忘れてくれ!」
「イヤよ」
「イヤ」
「ああそうかよ…じゃあ次はテスト期間の時にな」
「うん!じゃあまたね!」
「じゃあなジュリエット」
「今日はありがと…楽しかったわ」
「それは何よりだ…まぁ俺も楽しかった」
「ッ!…ふふっじゃあ誘った甲斐があったわ…それじゃまたね」
「ああ…またなシャル」
こうして士狼は黒犬寮に、ペルシアとシャルは白猫寮に帰っていった
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「ふぅ、もうクタクタだ」
「ワン!ワン!」
「ん?犬の鳴き声?」
「よしよし与太郎〜今日も元気だな〜」
寮に入ろうとした時、士狼は犬の鳴き声が聞こえ、鳴き声がした方角に行くと蓮季が黒い柴犬と戯れていた
「この寮って犬を飼ってたのか」
「ん?お〜!士狼!そうだゾ〜黒犬寮の番犬の与太郎だゾ!」
「ヘッヘッ…ワン!」
「おっと」
「ペロペロ」
与太郎と呼ばれた犬が駆け寄って士狼の顔を舐め始めた
「うわ、ちょっと」
「ワン!」
「み、耳まで」
「クゥクゥ…」
「遊んで欲しそうだゾ」
「えぇ…」
「士狼ってもしかして犬苦手か?」
「いやそうじゃない、今日は動物達に振り回されて疲れてるだけだ」
(羊から逃げるように走り回って、馬には交互に二匹の馬を撫でらさせられて、猫には身体中を占拠されたからな)
「この犬には何されるか」
「よし、与太郎いけ!」
「ワン!」
「いや行けじゃ…ん?」
与太郎は士狼の前まで来ると大人しく座って士狼を見上げていた
「結構大人しいんだな…与太郎は」
「ヘッヘッ」
「よしよし、大人しくて良い子だ、ほら」
士狼は与太郎の耳の付け根や色んな所を撫でていった
「ペロペロ」
「あはは、くすぐったいよ与太郎」
(士狼が動物とじゃれあってる、こ、これがギャップ萌えってやつなのか?)
蓮季は与太郎とじゃれ合う様子に少しときめいていた
「クゥーン」
士狼が撫でるのをやめると寂しそうに鳴いて引き止めようとする
「そんな寂しそうな声出さないでくれ、俺はそろそろ帰らないと」
「クゥクゥ」
「ああもう分かったよ、よしよし」
「ワン!ワン!」
士狼が与太郎の頭を撫でると嬉しそうな鳴き声をあげた
「ふふっ負けたな」
「う、うるさいほっとけ」
その様子を蓮希は微笑ましく見ていた