超黒トリガー   作:もりも

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構築と瓦解

「なぁ桜。ボーダーで野球部作るってマジ?」

 

朝のHRの後に同じクラスの小荒井に尋ねられた。

 

「そうなんやわ。意外に風間さんたちが意見出してくれたらしくてな。つっても人が集まるかどうかなんやけど。」

「試合とか出来んの?」

「まぁ言うて草野球チームみたいなもんやから近所の草野球チームとやるぐらいやろ。」

 

風間たちが忍田にこの話を持っていったところ案外あっさり承諾された。

しかしとりあえず人数を集めて真っ当に活動が認められてからということ、試合等は三門市の隣の市まででやることが条件として挙げられた。

 

「何が嬉しいてそういう労いをしてくれるって気遣いが嬉しいわぁ。ボーダー入ってから自由なくなった感じやもん。」

「ま〜な〜。俺らでもある程度の束縛はあるし、桜となればアレ(黒トリガー)だしな。」

「それもあるけど、他の悩みもあるんよ。」

「ん?なんかあるんなら聞くぜ?」

「いや人に言っても解決できる事やないから気にせんといて。」

 

女関係で悩んでる…なんて言える訳ないんよなぁ、と恋多郎はため息をつく。

 

(俺やって健全な男子高校生やで。彼女だって普通に欲しいし、そのまぁ…色々したい事もある。でも女子が俺に好意を持ってもそれは副作用のせいだってことやろ?つまりは俺そのものの魅力やないってことやん。…そう思ったら一線引いてまうわな。)

 

ボーダーには可愛い子が多い。このクラスの香取と志岐も性格上モテる訳では決してないが普通に可愛い。加古なんて街でもそうは見ないレベルだし、最近話すことが多くなった綾辻や照屋は写真に収めたいくらい美人である。

 

(なんかもう精神状態によくない!!)

 

贅沢なのか最早分からなくなってきた悩みに思わず顔突っ伏してしまう。

そんな恋多郎を少し離れたところに座る香取はいつものように見つめていた。

 

(…あんまり元気なさそう。でも学校で声かけるのは恥ずい……けど華が言ってたみたいに周りと差をつけるなら同じクラスっていうアドバンテージを生かさないと。)

 

グッと意を決して香取は恋多郎に話しかけた。

 

「ねぇ。その、さ。その野球部の話だけど、草野球なら私が入ってもいいんだよね?」

 

平静を装って恋多郎の席までやってきた香取に恋多郎と小荒井は少しギョッとする。

 

「え!?香取野球やってたのか!?」

「…あんたに聞いてないでしょ。」

「に、睨むなよ。」

 

ジロリと睨む香取に気圧される小荒井。

 

「お、おう。男女だとか上手い下手は関係ない感じにしようとは思ってる。…しかし意外やな。香取野球に興味あったんやな。」

「別にやった事ないし興味もないわよ。(あるのはアンタ。)」

「えぇ…。」

「それで?今で何人集まってるのよ。」

「いや、香取が1番目や。」

「ふ〜ん。(二人きりじゃん!!)」

「はいはい!俺も参加する!これで3人!」

「はぁ!!?」

「何でキレるんだよ!?」

「これで3人やな!紅白戦とかしたいし出来れば二チーム、あと15人来てくれれば最高なんやけど。」

 

9人集まればいい方と思っていたが幸先の良いスタートにより多い数を見込めるかも知れないと希望は持てそうだ。

とりあえず同じ高校の一年ズに声をかけてみたところ南沢笹森と佐鳥が参加してくれる様で、どこからともなく聞きつけてきた米屋と小佐野も参加したいと言ってきた。

 

「たまにはこういうのも悪くねぇじゃん?ボーダー活動は仕事みたいなもんだしな。でも来れない日とか普通にあると思うから勘弁な。」

「ウチも。」

「それは全員に言える事やから大丈夫すよ。防衛任務とかランク戦がみんなの場合あるやろうし。」

 

その日に来れるメンバーだけで集まれれば良いのでたまに来るくらいでも今は十分だ。そういう感じ何だったらと参加してくれそうな者は結構いる様で、後日になると中々の人数が声をかけてくた。

 

「え〜と、発案人の太刀川さんと風間さん、迅さんに、同じく年長組では加古さんイコさんザキさんも。んで熊谷先輩米屋先輩小佐野先輩仁礼先輩綾辻先輩。同いで香取コアラ佐鳥笹森雪丸歌川照屋。中学組で緑川と黒江か。…全員で俺含めて21人もか!しかも経験者じゃなくても上手そうな感じな人もいるし楽しみやなぁ〜!」

 

思った以上に集まってくれたことに教室でウキウキになる恋多郎を他所に香取は一人うなだれている。

 

(桜と二人きりになれる時間が……)

 

しかもこれに来る女性陣、絶対桜のこと狙ってる人達でしょ!とライバルの多さに勝手に頭を悩ませていた。

 

 

 

そんでもって早速その週末にメンバーを集めることにした。

 

「一応キャプテン兼監督は桜だけど、この中じゃ年下な方になるからこの野球部の顧問的な感じで部長は風間さん。マネージャーは俺こと迅が受け持つからよろしく。」

 

河川敷で集まったメンバーに恋多郎と風間、迅が前に出て挨拶する。今回は初回なので全員参加だ。

 

「本部長より人数分の道具は揃えてもらった。大切に使え。さて、キャプテン。今日の練習はどうするんだ?」

「ありがと風間さん。えーとりあえず基礎的なことから始めたいと思います。軽いアップと柔軟。キャッチボールまでをじっくりやっていきましょう。」

「「「はーい。」」」

 

流石ボーダー隊員、協調性が高いので皆何気無くやっててもテキパキ動いて全て滞りなく活動が進行していく。良い人達やなぁ、と改めて感心する恋多郎であった。

 

せっかくなので普段関わらないもの同士組んで練習をしていく最中、加古は周りの女性を分析しているのであった。

 

(双葉12点。ひかりちゃん28点。熊谷ちゃん19点。なるほど…、双葉は当然として全員が全員桜くん目当てではなさそうね。でも他は要注意ね。小佐野ちゃん69点。香取ちゃん84点。綾辻ちゃん82点。そして照屋ちゃん……95点。意外な伏兵がいたものね。)

 

加古が恋多郎好感度サーチを行ってみれば今まさに一緒にストレッチをしている相手、照屋文香こそが最も恋多郎に対して欲情していると出てきた。なぜそんなことができるのかは謎である。

ちなみに加古は自分を採点すると121点。最早会えば濡れるレベルである。何がとまでは言わないが…。

 

(95点にもなれば桜くんと話すだけで、それだけで興奮するはず。まさか知的な照屋ちゃんが心中ではとんでもなく淫乱なことを考えてるだなんて想像できないわ。)

「?」

 

一人考え込んでる加古に照屋は首をかしげる。

 

「加古さんどうしました?」

「ん?何もないわよ。でも意外ね。照屋ちゃんがこういう集まりに顔を出すなんて。」

「そうですね。でもそれを言ったら加古さんだってそうですよ。運動とか、ましてや野球だなんて。」

「たまにはこういうのも良いと思ってね。」

「へぇ〜。まぁ私は恋多郎が目的で来てるので野球はあまり興味ないですけど。」

 

さりげないジャブが照屋から放たれた。

 

「…あら?隠さないのね照屋ちゃん。」

「加古さん相手にはですけどね。加古さんの恋多郎に対する距離感考えたらあまりモタモタもできないので。」

「好戦的じゃない。それに彼のこと名前で呼んでるのかしら?」

「ちゃんと本人から了承は得てますよ?今のところ名前呼びは私だけみたいですけど。」

「やるじゃない。」

 

水面下で対抗心バチバチにする二人。

照屋はこれまで加古がいない時を見計らって恋多郎に接触していた。ちなみに恋多郎は副作用の事もあるのでなるべく素っ気ない対応をしていたのだが、軽く引くレベルで距離を詰めてきて名前呼びを強要されていたのだった。

ちなみに黒江は加古について来ただけ、仁礼は単純にイベント好き、熊谷は同じクラスの仁礼に誘われたのとスポーツ好きなので断る理由もなかったから。そもそも恋多郎との絡みもほぼ無い。

しかしこの活動が始まることによって皆の数値が上昇していくのは言うまでもない。

 

「あ〜らら。早速ピリついてきた。」

 

その様子を見る迅は未来視で女子たちの抗争が近々起きるのを予見した。

 

(やっぱ集めるにしても男だけでやるべきだったかねぇ。でも桜狙ってる主な女子を纏めておくのも悪くないか。)

 

問題が起きる前に歯止めをかけれる様にとマネージャーの位置についた迅。別に恋多郎と誰が恋仲になるかなんてどうでも良いのだが、それのイザコザで今後ボーダーの運営に問題が生じる可能性がある以上監視は必要であるし、恋多郎の副作用を知ってるのは自分だけなので仕方がない。

 

(でもまぁ、風間さんぐらいには伝えてた方がいいかもな。)

 

恋愛ごとに首を突っ込むのは精神的に疲れるのだ。

 

 

この野球部の活動は隔週から集まり次第では週一行われ、当初想像していたよりも皆真面目に取り組んでいた。

 

(最初はみんなでワイワイ野球楽しめればいいかなと思ってたけど、女子も含めて皆筋がいいな。)

 

やはりボーダーでも正隊員ともなればなんだかんだ運動に長けてる者も多く、素人集団にしては上々な実力を身につけていることに恋多郎は感心する。

 

(特に風間さん、ザキさん、米屋先輩、歌川、雪丸、緑川は普通に上手いし、ポテンシャル考えたら緑川なんて本格的に鍛えたら強豪高校に行けるんやないか?女子も香取熊谷先輩、照屋は力こそ劣るけどセンスあるし。これは試合組んでも成立するやろ?)

 

恋多郎はグラウンドで守備練習をする皆の動きをメモしながらそろそろ実戦を体験してもいい頃合いだなと思っている。

 

(現状組むなら…ピッチャーは俺、キャッチャーは理解度の高い歌川、ファーストは身長考えたら太刀川さん、セカンドは連携力の高い風間さん、同じくショートに緑川、サード米屋先輩、外野はザキさん、コアラ、雪丸ってとこか。これが無難に実力あるメンバーだけどどうせなら女子も入れてあげたいし、毎回皆揃うわけじゃないもんな。)

 

今まで一選手としてしか野球をやってなかった恋多郎は監督視点で考えてみるのも中々面白いなと存外満喫している。

そんなベンチで色んなラインナップのパターンを考えている恋多郎に小佐野が彼が手に持つメモを覗き込む様に隣に座り込む。

 

「おお〜、何やらすごい書き込んでるじゃん。何書いてるかわかんないけど。」

「皆のポジションやら考えたらおもろくなってきたんすよ。」

「ふ〜ん。あら?私の名前もあんじゃん。でも私下手っぴだからどこもできないよ〜。」

「そんなことあらへんですよ。確かに小佐野先輩守備は苦手だけどバッティングは結構当てれますし代打とかでの起用もアリですよ。それに練習も欠かさず来てくれますしいつも助かってるんですよ?」

「ふ、ふ〜ん。褒めたって何も出ないよぉ〜。」

「いや!本心っすから!」

 

褒めてくる恋多郎に小佐野は照れて思わず顔を逸らしてしまうが、本心からそう言う恋多郎はキッパリとおべっかではないと断言する。

そんな恋多郎に小佐野は自分でも胸をときめかしてるのを感じ自然と口角が上がってしまう。流石元ファッションモデルだけあって相当可愛いのか、恋多郎も小佐野のそんな表情を見て顔を赤くする。

始めは恋多郎を防衛任務で一回オペレイトしただけだったが、トリオン能力がオペレーターの中では高い彼女はその一回の時に聞いた声だけで彼の印象が強く残っていた。小佐野自身その時の自分の今の感情が何なのか理解していた。恋してしまったかも、と。まぁまぁアホだと自覚している彼女でも女子である以上そういったことに鈍くはない。これまでさほど興味のなかった恋愛、かつ相手が年下の男子なのでイマイチ距離感がわからなったものあって恋多郎を眺めはするものの直接話すことはなかった。

そこで耳に挟んだのは米屋が同じクラスの若村に知らせていた野球部の話だった。

基本メンドくさがりな彼女もいい加減このモヤモヤした感情を払拭したく米屋に便乗する形で恋多郎の元に入部を申し出た。(それに米屋が酷く驚いたのは言うまでもない。)

そして話すことが増えた今、彼女の恋多郎に対する好感度が増していっているのは当然の流れで、今や香取たちにも劣らぬ程に恋に溺れかけている。

 

(恋多郎。かわいい…好き。カッコいい……好き好き大好き。)

 

上がった口角を隠すように両手で口を覆うも小佐野はウットリとして恋多郎に目線で好きだと語りかける。そんな小佐野に恋多郎自身も今彼女がどんな感情にいるのか自ずと察してしまう。

 

(お、おお!?。…まさか小佐野先輩…??。マズイわ。この感じ今まで体験してきたアレか?!)

 

恋多郎の経験上、この視線は自分に好意があると確信できるものだった。それもあまりないレベルの。

 

(オペレーターだと思って油断してたけど、この人結構トリオン高いんか!?あかん副作用の効果かなり受けてるかも!?)

 

感情的には小佐野に魅力を感じてしまうものの、罪悪感もあってか凄く好意的な感情を向けられていても一線を引いたように我に返ってしまう恋多郎。マズイと思い席を離れようとしたのだが、小佐野とは反対側に座り込んだ少女にそれを阻止されてしまう。

 

「どうしたんですか?小佐野先輩。すっごい乙女な目をしちゃって。」

 

好感度95点の女、照屋文香である。

 

「て、照屋…。」

「んもう!文香って呼んでって言ってるじゃない。」

「ぇええ…。」

 

さりげに左手を恋多郎の太ももに置く。他の隊員とは違い強引さがある照屋にいつもたじろいでしまう恋多郎。

その意図的にボディタッチをする照屋に小佐野はあまり見せないムッとした顔をしてしまう。

 

「照屋っち。ちょっとその距離は過激じゃない?」

「小佐野先輩もしたらいいんじゃないですか?恋多郎も何でか我慢してる節がありますが、嫌いじゃないみたいですし。こういうの。」

 

少し挑発的な事を言いながら照屋は恋多郎の腹筋を撫でる。

思わずびくりと体を跳ねるも拒絶する事ができない恋多郎を見抜いている照屋は悪びれもせずサワサワし続ける。

堂々とした態度の照屋の様に小佐野は戦慄する。

最早95点の照屋に外聞がどうとかそういうモラルは薄くなってしまっていた。それこそ100点オーバーを自負している加古であっても未成年の年下の男子というフィルターがあるので万年発情はしていても表立ってこの様な行為には及ばない。これは年下という点で小佐野や綾辻にも多少言える事だ。香取に関しては本人の性格が天邪鬼で恋に臆病なところが邪魔しているのだけども照屋にはそれがない。普段から自分のしたいことはハッキリ言う自分に素直なタイプだし、精神も自立している。つまり歯止めをかける要因が他の者と比べても少ないのである。

 

(流石に股間に手を這わすのは憚れるけどね。)

 

内心恋多郎のアレを弄りたい衝動に駆られるもそれだけは自重する。

じゅるりと思わず舐めてる飴に関係なく涎が分泌してしまう小佐野。キスで涎を飲まし飲みたい欲求がじわじわと溢れてきてしまう。すると自然に指が恋多郎の唇を撫でてしまう。

女子二人は完全に自分の世界に入り込んでしまっていた。

 

「はいストップ!君達ここが公共の場だと言うことを忘れては無いかい?」

 

すると、監視役の迅が止めに入った。

 

「じ、迅さん。」

「公然でイチャイチャは控えような。」

「そ、そんなんじゃないですよ〜…。」

 

流石に我に返ったのか小佐野はすごすごと恋多郎を触っていた手を戻す。

 

「確かにあまり人前ですることじゃなかったですね。」

「照屋ちゃん、そう言うけど君いつもチョッカイ出してない?」

「…恋多郎が可愛くてつい。」

「わ〜肉食系女子。ともあれ過度なスキンシップは控えるようにね。まだ高校生なんだから。」

「「は〜い…。」」

 

目上らしく注意するとたち去り際に恋多郎が迅の後ろにそそくさと抜け出してきた。

 

「助かったっす。迅さん。」

「桜、もうちょい抵抗してよ。為すすべなくやられてるし。」

「してるでしょ!!頭の中で!!」

「……あ〜、脳内でせめぎ合ってたのね。」

 

健全な男子ならよく我慢できた方だ!と下唇を噛んで目を血走りさせる恋多郎に数多な葛藤を感じる迅。ある意味最も残酷な仕打ちを恋多郎に課してるかもと引き笑いしてしまう。

二人が男子組に近づくと恋多郎に被さるような勢いで生駒が肩を掛けてきた。

 

「っうお!?何スか!イコさん!!」

 

掛けてきた右腕を曲げて若干首を絞めてくる生駒に対し恋多郎は非難の目を向けると、生駒の目にはうっすら涙が溜まっているではないか。

 

「かわいい後輩が、知らん間に女子にモテモテ。説明…してもらおか?」

 

なぜか哀愁を感じさせる同郷の先輩にギョッとして、ふと恋多郎は周りの視線に気づく。

 

「皆さん、なぜにそんな殺意を孕んだ目をしてらっしゃるのでしょぅ…?」

「目の前であんなの見せつけられたら当然の反応じゃん?」と米屋。

「加古さんに加えて照屋に小佐野先輩だと!?ハーレム作る気かよ!!」と小荒井。

「不公平だ!不公平!!」と佐鳥。

「何だったら他にも疑惑がある女子もいるっぽいし。桜お前やるなぁ〜。」と歌川。

「桜先輩すげぇ〜。モテモテじゃん!」と緑川。

「流石に高一でそんな爛れた生活はダメだぞ。」と柿崎。

「ゴムはつけろよ。はっはっは!」と太刀川。

 

顔は笑っていても異性を侍らしている恋多郎にイラつきの感情がダダ漏れになっている一同に恋多郎は顔を青くする。例えその女子に恋愛感情がなくとも自分の周りで男がモテているのは見ていて気分が言い訳ないのだ。柿崎なんかはチームメイトであり可愛がる後輩の照屋をたぶらかしてる様に見えているので普通に好感度を下げてる。

 

(副作用の事は話せへんし、どう説明しても反感買う気しかせん……。)

 

男の友情が崩れるような気がしてきた恋多郎であった。

 

 

 

 

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