世界は間違っている。歪めているのは、貴様ら喰種だ!!!
世界は間違っている。歪めているのは、この世界に存在する全てのものだ。
世界は間違ってなんか無い。ただそこにあるだけだ。
世界は、理不尽だ。そこにあるだけで、救いも赦しも無いのだから。
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世界がとろけて、ゆるゆるしてる。あやふやと確かの境界線がぐにゃぐにゃ。お馬さんと白菜のランデブー。いつかの日に食べたパンは乾いていて口の中を容赦なく蹂躙した。漣に攫われた僕の中の僕。結局、置いていくのだな。
「上手くいった⋯⋯嘉納式は成功率が低いが、その分の見返りが得られるはずだ⋯⋯もう一度、呼び出すのだ」
「あ、あう、け」
「意識が混濁しているようだな。問題ない、その内鮮明になる⋯⋯何、そんな、まさか!もう嗅ぎ付けられたのか!?和修、Vの生き残り?いや、奴らは完全に終わったはずだ。くそっ、仕方ない。置いていくしかない⋯⋯」
静寂が、辺りを包んでいた。横たわった体を動かす事は叶わず、喉はみずみずしさの全てを失って、音を発するのがやっと。記憶が繋がらない。自分が何であるか、何であったのか。それすら分からない。
「⋯⋯悲劇を繰り返すつもりなのか」
黒い天使様が俺の傍らで何かを呟く。すごく甘美な声で脳髄が溶け落ちる。
「はぁ⋯⋯一先ず、こいつを王様の所へ連れていくのが先か。わざわざ日本に戻るのも面倒だが、仕方ない。ほっといても面倒そうだ」
天使様の言うことは俺には分からない。難しいことを言ってる気がする。
「送り届けてやるよ⋯⋯弟、になるのかな」
意識消失。
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「す、すみません。クロさん。もうちょっとゆっくりッ!」
「のんびりしてる暇は無いぞ。右、鱗赫、左、羽赫。奥に人間の銃持ちだ⋯⋯気を抜くなよ」
「わかっ、てます!!!」
大きく息を吸い込んで腰の辺りに意識を集中させる。体の中を暴れ回る熱い脈動が形として腰から吹き出す。いつ見ても不気味だ。目玉をその体に幾つも貼り付けてうねうねと蠢いている尻尾のような物。
「惚けるな!!来てるぞ!」
クロさんの声で、一気に目の前に意識を戻す。右にいた、鱗赫の喰種の赫子が目の前まで迫りきていた。
「くっ、あぁああ!」
相手の赫子を自分の赫子で受けて流す。相手が体制を崩したので、顔を掴んで地面へと組み伏せる。
「クロさんっ!!⋯⋯てもう、終わってますよね」
「遅いぞ。グズグズしてたらその分、命を脅かされると思え。それと⋯⋯」
ぐじゅっ、と俺が地面に伏せていた喰種が赤い血だりと化した。クロさんの方へと視線を向けると、血にまみれた赫子を出して、俺の方を真っ直ぐ見ていた。
「自分のことを殺そうとした相手は殺せ。情けはかけるな⋯⋯行くぞ」
「は、はい⋯⋯」
立ち上がり、赫子を収める。赫子を使っていると、どうにも落ち着かない。当然と言えば当然だ。元々、自分には無いものだったのだから。
突然、だったのだ。気がついた時にはクロさんと共に居た。自分の存在を証明する物は持っておらず、それを裏付ける記憶も抜け落ちている。ただ、自分か喰種では無く、人間であったこと。其れしか分からない。いや、それすらもクロさんに言われたから、そう思っているだけだ。もしかしたら、俺は最初から喰種だったのかもしれない。
「また、ぼーっとしているな。お前が会いに行く王様も常にそんな顔をしている」
「そ、そうなんですか?」
クロさんは王様という人物の元へと、俺を送り届けようとしているらしい。曰く、その人物がこの体について詳しいそうだ。
「急ぐぞ⋯⋯寄り道しすぎた」
「はい」
「あ、あの!」
振り返ると土に塗れた女性が居た。この人は、俺たちが先程殺した喰種達に襲われていた。それをクロさんが見つけて、助けたのだ。
「お、お礼をさせてください!」
女性はクロさんへとそう大きな声で言う。喰種相手にわざわざお礼をしようなんてすごくいい人なのだろう。今まで基本的に喰種というだけで疎まれてきた。故に新鮮な気分だった。
「すまない、先を急いでいる。お礼は大丈夫だ」
クロさんはそう言うとそそくさと歩き出す。俺も急いでその後を追う。の、前に振り返って女性へとお辞儀をしておく。
「どこかへ行かれるのですか?それなら私は力になれます」
女性はそう力強く声に出す。それに何か感じたのか、クロさんは振り返り女性へと近付く。
「どういう意味だ?」
「喰種でも使える移動手段を知っています。国外へも出ることが出来ます」
「詳しく教えてくれ」
どうやら、運良く移動手段を手に入れることが出来そうだ。クロさんがずっと喋ってて、俺は置いてけぼりだけど。そうなると、ついに行く事になるのか。その、例の王様が居る日本、東京へと。そう考えると、不安と期待で胸が詰まるな。