十刃たちが千年血戦篇まで生き残ったようです。   作:あたらんて

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第2話

 

スタークとバンビエッタの戦いにおいて先に仕掛けたのは、スタークであった。

 

 

虚弾(バラ)

 

 

それは虚閃(セロ)の20倍ものスピードで霊圧を打ち出す技。スピードに特化しているため虚閃(セロ)と比べ威力は落ちるものの繰り出すのは十刃(エスパーダ)の序列1位、第1十刃(プリメーラ・エスパーダ) コヨーテ・スターク。その力はかの大帝バラガン・ルイゼンバーンすら凌ぎ、一度に数人の隊長を相手取る程のものを誇る。

 

並みの死神程度ならそれだけで屠れる一撃をバンビエッタは――

 

 

「何よ今の、早いだけじゃない!全然効かないわよ!」

 

 

無傷。それはひとえに滅却師(クインシー)の技能の一つ、静血脈(ブルート・ヴェーネ)によるものである。血管に霊子を流し込むことによって、死神の卍解にすら対応できる程の防御力を得る技能。

流石にそれは予想外か、スタークも驚きを見せる。

 

 

「お返しね!てやああっ!」

 

 

今度はバンビエッタ・バスターバインが動き出す。霊子によって刀を生成し、スタークへと斬りかかる。スタークも腰の刀を抜いて応戦する。

 

刃を打ち合うこと数合。バンビエッタは白兵戦では自身が不利であることを悟る。思っていたより己の相手は強いらしい。パワー・スピード両方で劣っている以上このまま斧で斬りかかっていても勝てはしない。

 

そのため一度距離を取って自身の能力を発動することを決める。その能力の名は『爆撃(ジ・エクスプロード)

霊子を打ち込んだものを爆弾と化す能力。能力が相手に露見していないこの状況において、この一手で勝負が決するということも有り得るだろう。

バンビエッタは斧を捨て、スタークから距離を取る。

 

 

「もういいわ!あたしの爆撃(ジ・エクスプロード)でブッ殺してやるわよ!」

 

 

バンビエッタが霊子の弾をバラ撒く。その弾数実に五十。弾幕となって襲い掛かるその攻撃を回避するのは幾ら十刃(エスパーダ)といえど至難の業。正面から弾幕を見つめるスタークは呆然と立ちつくし――

 

 

「残念、後ろだ。虚閃(セロ)

 

「なっ…!」

 

 

スタークの虚閃(セロ)がバンビエッタを飲み込む。コヨーテ・スタークは#1(プリメーラ)響転(ソニード)の速さも一級品。その余りのスピードに生み出された残像に対してバンビエッタは攻撃を放っていたのである。

 

 

「これで終わってくれると嬉しいんだがな…」

 

 

自身の虚閃(セロ)によって生み出された煙幕を眺めながらスタークは呟く。しかし頭の中では理解している。今度の敵は前の敵とは一線を画すのだと。

 

その予想通り、煙幕の中で霊圧が高まって、巨大な光の柱が立つ。正確に言うのなら周囲から霊子を集めているのか。

 

「ああああっ!!!ふざけんじゃないわよ!全部、まとめて、ブッ壊す!」

 

「!」

 

 

煙の中からバンビエッタが姿を現すより早く、ドーム状の衝撃波が中から広がっていく。その衝撃波は触れるもの全てを爆破させていく死の領域を生み出す。

辺り一帯を壊滅させた後、出て来たバンビエッタの背からは1対の羽が生えていた。

 

 

「おいおいおい…何だよその姿は」

 

「『滅却師(クインシー)完聖体(フォルシュテンディッヒ)』 あたしたちの最強の形態よ」

 

 

その姿を形容するならば天使が相応しいか。周囲の霊子を従えたその姿は目にした者を自身は断罪を受ける罪人であると錯覚させる程の威容を誇っていた。

 

 

「ちょっと待てよ。もうちょっと前の形態でやり合ってても良かったんじゃねえか?」

 

「悪いわね。これを使ってあたしの前で原型を保ててた奴はいないわ」

 

 

バンビエッタの周囲に先程とは比べものにならないほどの密度と数の霊子の弾が浮かび上がる。

 

 

「冗談じゃねえな!」

 

「これでさよならねっ!」

 

 

全てを灰に帰す天使が、その力を振るい始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ゾマリ・ルルーは初めての経験に困惑していた。

 

外敵を排除しようと敵の前に現れ、十刃(エスパーダ)の中でも最速を誇る自慢の響転(ソニード)にて敵の後ろを取り続けた。敵はそこまで強いとは感じず、何度も「愛」がどうのとよくわからないビームを放って来たが大した脅威では無かった。

 

ここまではよい。「愛」というフレーズには気になるところがあるがこのまま倒せると感じていた。

 

ある程度敵に傷を負わせてきた頃、敵もこのままでは敗北することを悟ったか、逃げ出し始めた。当然追ったが、破面(アランカル)が複数いる地点に着くと、他の破面(アランカル)に狙いをつけ始めた。そしてそのビームが当たった者がなんと敵に味方し始めたのだ。

これでは、まるで()()()()()()()ではないか。

 

 

「ゾマリ様、何故抵抗するのですか!?我々はペペ様のた――ぐぼぇっ」

 

 

自身に斬りかかってきた破面を斬り捨てる。元より仲間意識など無いにも等しい集団だ。特に何も感じないが、腐っても破面(アランカル)。少し鬱陶しい。

 

 

「おやおやおや?仲間をそんな簡単に斬るなんて愛が無いのかなあ~?ミーへの愛に溢れた良い子ちゃんばかりなのに~♡えい!え~い♡」

 

 

次々と放たれるビームによって続々と敵が増える。ゾマリは一転、自身が不利になったと認識を変える。

 

 

「なるほど…あなたの能力はそのビームに当たった者にあなたへの愛を植え付ける…そんなところですか」

 

「うん♡ミーの能力の名前は『(ザ・ラブ)』だヨ♡キミもミーの下僕になっちゃえ~♡」

 

 

斬っても斬っても敵が湧いてくる。終いには敵の滅却師(クインシー)の増援まで来た。

 

 

「…では、アナタは何故愛を説くのに私たちを襲うのです?」

 

「んっん~?違うよ。戦いはいつだって愛のために起こるんだヨネッ♡だからこそ戦いは哀しく、だからこそ戦いは美しいんだヨネッ♡」

 

 

その言葉にゾマリは目を見開いて足を止める。

 

 

「なるほど…驕りが過ぎますね。そしてそれ以上に湧いて来る嫌悪感。これは…同属嫌悪、というものですか」

 

「ん~?足を止めちゃって良いのかい?ミーの下僕たちがキミを囲んじゃったよ♡これでミーの愛を躱せないね♡ らあ~ゔ キッス!」

 

 

破面(アランカル)滅却師(クインシー)に囲まれたゾマリにペペの愛が一直線に襲い掛かる。

 

 

 

鎮まれ 『呪眼僧伽(ブルヘリア)

 

 

 

刀剣解放(レスレクシオン)――それは、斬魄刀に封じ込めた(ホロウ)本来の力の解放。それと同時に全ての傷は癒え、霊圧は爆発的に上昇し、刀剣解放(レスレクシオン)を行った破面(アランカル)の強さはそれまでのものとは一線を画す。

 

 

刀剣解放(レスレクシオン)を行ったゾマリの姿は全身に五十の眼が付いているという異様なもの。

思わずペペの動きも止まる。

 

 

「……あれ?何でミーの下僕たちまで動きを止めてるのかな?」

 

「――全てのものには、『支配権』があります

 

「!!」

 

 

今までゾマリを襲っていた破面(アランカル)滅却師(クインシー)たちが一斉にペペの方を振り向く。その頭には、黒い太陽の紋章が浮かび上がっていた。

 

 

「部下は上官の支配下にあり、民衆は王の支配下にあり、雲は風の支配下にあり、月光は太陽の支配下にある」

 

 

紋章を浮かべたものたちはまた一斉に武器を構える。今度は、ペペに向かって。

 

 

「我が『呪眼僧伽(ブルヘリア)』の能力はその『支配権』を奪う能力。今回は、アナタの『愛』の『支配権』を奪わせて頂きました」

 

 

常に浮かべていたペペの笑顔が消えていく。

 

 

「私はこの力を『(アモール)』と呼んでいます」

 

 

遂に完全にペペの顔から表情が消える。

 

 

「――(アモール)、ね」

 

 

同時に上空にて巨大な光の柱が立つ。

 

 

「…どうやらバンビちゃんが完聖体(フォルシュテンディッヒ)を使ったみたいだネ。それじゃあミーも…本気を出さなくっちゃいけないかなあ…」

 

 

そう呟くと、ペペの周囲から霊子が集まって来る。

それを黙って眺めているゾマリでは無く、(アモール)の力を用いてペペへの支配を試みる。

 

 

 

神の情愛(グドエロ)

 

 

 

光の柱が消えた後に現れたペペは1対の羽根を生やし、生まれたての赤子の如く純真無垢な姿であった。

これこそがペペの滅却師(クインシー)完聖体(フォルシュテンディッヒ)神の情愛(グドエロ)である。

 

 

「どうだいこの姿!思わず、愛したくなっちゃうダロ~?」

 

「……醜いですね」

 

「良いのかい、そんなことを言っていて。君の(アモール)とやらで支配した周りを見てご覧よ」

 

「!!」

 

 

その言葉を言うか言わぬかの間に(アモール)で支配した筈の者たちがゾマリにまた襲い掛かり始める。

 

 

「…何故っ!完全に私が支配した筈…!」

 

「良いことを教えてあげようか?いつの時代だって王様の支配を乗り越える愛の物語があるように、愛っていうのは、支配なんかで抑えられないものなんだヨネッ♡」

 

「なん……ですって……」

 

 

自身の支配を上回って動く敵にゾマリは愕然とする。

 

 

支配を越える愛を司る天使が、愛を使って支配を行う悪魔の下へ現れた。

 

 

 

 

 

 

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