十刃たちが千年血戦篇まで生き残ったようです。   作:あたらんて

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第3話

 

そこは、地獄であった。地面は血で染まっていない所は無く、死体が山のように積み重なっている。死体は僅かの破面(アランカル)とそれを遥かに超える数の滅却師(クインシー)によって構成されている。合計したその数は百を下らないか。

 

その地獄の中心、積み重なった死体の山の上に座る男はまたやって来た滅却師(クインシー)に振り向かず声を掛ける。

 

 

「――なァ、お前がこいつ等の親玉か?」

 

「…親玉、という表現は正しくないね。確かにこの部隊を率いていたのは僕だが、所詮僕は陛下に仕えている大量の滅却師(クインシー)の内の一人に過ぎない」

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)の一人、蒼都(ツァン・トゥ)は驚愕していた。自身の部隊から「非常に強力な破面(アランカル)が現れた」との報告を聞き、駆けつけて目にしたものは全滅した部隊と、その中心に腰掛ける鎌を持った無傷の破面(アランカル)であったのだ。

 

 

「…まさか僕の部隊が無傷で全滅させられるとはね。報告にあった十刃(エスパーダ)というやつかな?名前を聞いておこうか」

 

「…いいぜ。どうせぶっ殺すだけだが名乗っといてやるよ」

 

 

十刃(エスパーダ)が立ち上がってこちらに振り向き、鎌を振りかぶって襲い掛かって来る。

 

 

第5十刃(クイント・エスパーダ) ノイトラ・ジルガだ!」

 

「『鋼鉄(ジ・アイアン)』の蒼都(ツァン・トゥ)だ。悪いけど、君を僕の手柄とさせてもらうよ」

 

 

また一つ戦いが、始まる。

 

 

 

 

蒼都(ツァン・トゥ)の主武装は手に装着された鉤爪。素早く懐へ潜り込み眼前のノイトラへと攻撃を仕掛ける。

 

 

「なんだ?滅却師(クインシー)ってのは弓しか使ってこねえと思ったら違う武器も使えるんじゃねえかよ!」

 

 

しかし相手は素早く身を躱し、鎌の間合いに調整される。自身の能力のことを考えれば大した傷にもならないだろうが、無駄に相手に情報を与えないために躱して距離を取る。

 

同じような近接戦を数度繰り返し、お互いに一撃も加えられず少しばかりの時間が過ぎる。

 

 

「…チョコマカとうざってぇなァ!」

 

 

遂に痺れを切らしたか、ノイトラが大振りの攻撃を仕掛けて来る。攻撃を喰らうこと覚悟の攻撃だ。

蒼都(ツァン・トゥ)は内心ほくそ笑む。自身の能力、鋼鉄(ジ・アイアン)は体を正に鋼鉄の硬度と化す能力。この捨て身の行動によってダメージを喰らうのは相手のみである。

 

動血装(ブルート・アルテリエ)を発動しその鉤爪を敵の腹部へと滑り込ませ――

 

 

「効かねえよ」

 

「なっ…!?」

 

 

ノイトラの鎌の一撃に蒼都(ツァン・トゥ)は大きく体を吹き飛ばされる。

 

 

「どういうことだ!?何故、僕の攻撃が効かない!」

 

「ああ?てめえも全く斬れて無えじゃねえか。おかしいな、かなり強く斬ったのによ…」

 

「ふざけるな!僕の能力は鋼鉄(ジ・アイアン)!陛下より頂いた能力によって鋼鉄と化した僕の体は貴様の攻撃など通さない…が、お前は何だ!?何故僕の攻撃を通さない!動血装(ブルート・アルテリエ)を用いた攻撃は死神の卍解をも超える力を発揮するのだぞ!」

 

 

焦ったように声を上げる蒼都(ツァン・トゥ)にノイトラは不思議そうな顔をする。まだお互いに無傷。自身も敵もお互いの力量を把握し始め、その能力に驚きはあれど全く焦る状況にはないのだ。

しかして蒼都(ツァン・トゥ)のこの焦りは当然の心理。自己同一性(アイデンティティ)として自己に何を当てはめるか。それは人の自由であるが絶対的存在によって己に与えられた自己同一性(アイデンティティ)が侵された時、人は何を思うのか。

 

蒼都(ツァン・トゥ)は眼前の敵が己の自己同一性(アイデンティティ)を崩し得る敵だと察し始めていた。それと同時に、その不安から脱却するためにはノイトラを殺すしかないとも気付いていた。

 

 

「答えろ!十刃(エスパーダ)!」

 

「…単純な話だ。俺の鋼皮(イエロ)は歴代全十刃(エスパーダ)の中でも最高硬度。てめえら如きの攻撃じゃ傷一つ付かねえよ」

 

「…っ!」

 

 

蒼都(ツァン・トゥ)は確信する。己の眼前にいる破面(アランカル)虚圏(ウェコムンド)の侵攻という目的以上に倒すべき敵であると。

 

 

「どうやらお前を倒しても最強は到底名乗れそうに無えが…まあとりあえずぶっ殺すか。どうやってその硬え皮を斬るか…」

 

蛇勁爪(シェジンツァオ)!!!

 

 

蒼都(ツァン・トゥ)が放つのは、霊子によって巨大な爪を形成し眼前に立ち塞がる敵を残らず滅ぼす技。これによって倒せなかった敵は今までいなかった。これからもいない筈であった。

 

 

「何遍言わせるんだ?てめえら如きの攻撃じゃ傷一つ付かねえってよ」

 

「!!」

 

 

最早声にならぬ叫びを上げ蒼都(ツァン・トゥ)はノイトラへと斬りかかる。それに対しノイトラは思案しながら対応する。

 

 

「…あァ、単純じゃねえか。斬れねえ敵は今までもこうしてきたんだったな」

 

「もう一度だ!!お前が、(ホロウ)如きが…僕の攻撃に耐えられる筈が無い!!蛇勁爪(シェジンツァオ)!!!

 

 

もう一度、蒼都(ツァン・トゥ)は己の技を放つ。どれ程堅牢な守りも、何度も攻撃を繰り返せば崩れる。皮肉にも己の能力によってその事はよくわかっていた。

そして同時に、どんな守りにも防げない攻撃はあると。わかっていた、つもりであった。

 

 

 

――王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)

 

 

 

十刃(エスパーダ)のみに許された最強の虚閃(セロ)。その閃光は放たれた攻撃ごと蒼都(ツァン・トゥ)を飲み込む。

 

 

「ガ、ハッ…」

 

「藍染のヤロウが消えた今、天蓋の下で王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を使うのも何の問題も無えな」

 

 

ボロボロになった蒼都(ツァン・トゥ)の前にノイトラは立つ。お互いに本領を隠したままとはいえ、最早決着は着いたかのように見えた。とどめを刺そうと鎌を振り上げると、突如立ち上がった蒼都(ツァン・トゥ)がノイトラに一撃を入れて吹き飛ばす。

 

 

「まだ、僕には、完聖体(フォルシュテンディッヒ)が、ある!舐め、るな!!」

 

「…ハハッ。良いぜ、まだまだ戦り合おうじゃねえか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイオイオイオイオイ!どうなってんだァ!?いくら水を出したってただただ湿度が上がっていくだけだぞオイ!」

 

「……」

 

 

ティア・ハリベルが相対するは『灼熱(ザ・ヒート)』のバズビー。炎を操るその能力によって、ハリベルの生み出す水は全て蒸発していた。

 

 

戦雫(ラ・ゴータ)

 

 

ハリベルの刀から水の刃が放たれる。

 

 

「無駄だ!」

 

 

しかし、バズビーの炎によって即座に蒸発する。

 

 

断瀑(カスケーダ)

 

 

今度は大量の水が激流となってバズビーに押し寄せる。

 

 

「だから、無駄だって言ってんだろ!」

 

 

バズビーが両手を激流に向けると爆発的な勢いで炎が生み出され、水流を消滅させていく。しかし流石のバズビーでも少し時間がかかる量の水であり、炎で水を消滅させるのに集中していた。

 

 

「…あ?どこ行った?」

 

波蒼砲(オーラ・アズール)

 

「!」

 

 

後ろからハリベルが一撃を放つ。直撃である。砂埃が晴れ、ボロボロのバズビーが現れ――

 

 

「随分チマチマと戦うんだなァ。見ろよ、星十字騎士団(シュテルンリッター)の一張羅がボロボロだぜ」

 

「…!」

 

「どうした?アンタの攻撃が何一つ俺に効かなくて驚いたか?安心しろよ。すぐに逃げることだけ考えるようになるぜ!」

 

 

バズビーの両手から爆炎が噴き出す。それは果たして、(ホロウ)を滅ぼすゴモラの火か、それとも――

 

 

バーナーフィンガー (ワン)

 

 

バズビーの人差し指から放たれる爆炎。それは咄嗟にハリベルが生成した水の壁など軽々と突き破り、ハリベルの体に穴を空ける。

 

 

「カ、ハッ…!」

 

 

ハリベルは流れ出る血を押し留めながら立っているが、今にも倒れ伏しそうな様子である。

そんなハリベルを見て、バズビーは勝利を確信し笑みを浮かべ、ハリベルへととどめを刺しに行く。

 

 

「それじゃあこれで終わりだなっと」

 

「――待っていた」

 

 

ハリベルが呟いた言葉に思わずバズビーは足を止める。

 

 

「あァ?」

 

 

眼前の敵はどう見ても満身創痍。生成される水が決定打にならない以上、ここからどうやっても逆転は不可能である。

 

 

「オイオイ、何を待っていたって言うんだ?こっからどうにかできるっていうなら何とかしてみろよ」

 

「貴様は私の水を全て消滅させたつもりかもしれないが、実際には全て気体となってこの大気中に存在している」

 

 

ティア・ハリベルが斬魄刀の切っ先を下に向けて構える。

 

 

「既に水気は満ちた」

 

「…だから、それがどうしたってんだよ!!バーナーフィンガー (ツー)!!!

 

 

バズビーの二本の指より爆炎が解き放たれる。その炎が焼き切るは目の前のティア・ハリベル。

(ワン)ですら対処できなかったハリベルに(ツー)をどうにかできる筈もない。バズビーの勝利への確信は変わらない。

 

 

 

―――討て 『皇鮫后(ティブロン)

 

 

 

激流。純粋に圧倒的で強大な質量によるその一撃はちっぽけな炎だと笑うようにバズビーを飲み込んで天を貫く。どれだけ蒸発しようと、それはまるで大海の如く水流は衰えを見せない。

 

 

「見事だったぞ、滅却師(クインシー)よ」

 

 

最早水流に飲み込まれたバズビーの姿も見えない。

帰刃(レスレクシオン)でこの戦闘によって負った傷すら完全に回復したハリベルは己の必殺の一撃によって打倒した戦士のことを褒めながら次なる戦場へと思いを馳せる。

とりあえずは、己の従属官(フラシオン)の所へ向かうか――

 

 

 

バーナーフィンガー (スリー)

 

「!!」

 

 

水流に飲み込まれたはずのバズビーが水の中より爆炎と共に姿を現す。

 

 

「だから無駄だって言っただろ?無限に湧いて来る訳じゃあ無えんだから無限のような水でも全部蒸発させちまえば良いだけの話だってなァ」

 

「ッ…!ならば、もう一度同じことを繰り返せば良いだけのことだ。私の意思は変わらない。早く貴様を倒して他の増援へ向かうだけのこと」

 

「抜かせ!」

 

 

炎と水、四大元素の二がぶつかり合う。果たして、軍配はどちらに上がるのか。

 

 

 

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