あと彼の技とかは刃牙のスペック見て思いつきました。
吸って吐く呼吸法があるなら、無呼吸があったっていいよね。
「それを吸っちゃ駄目っ!!」
カナエの絶叫を置き去りにして、吐き出した蒸気を伴って地面を蹴り飛ばす。鬼の目の前に躍り出る命は、息を止めた。
武の呼吸
命としのぶが1から生み出した呼吸。命が使用する武の呼吸は、従来の呼吸とは違う。武の呼吸のその特徴は、
そしてこの技、
『武の呼吸・蝶舞
完全なオリジナルの技であり、2人で鍛錬している時に偶然生まれた技。しのぶの独自の呼吸である『蟲の呼吸』にも同名の技が存在する。彼女の技は拾連の突き技なのだが。
一つに結んだ真っ黒な髪を靡かせ、蝶が舞うような歩法から一変、急激な直線運動より繰り出される無呼吸の拾連の斬撃。稲妻の如き速さの斬撃は、童磨の体を細切れにしていく。未だ完成していない体から繰り出される型は、ジリジリと体力を削っていく。視界が狭まり、徐々に意識が混濁していく。
それが何だ
これが最大のチャンス。この鬼を殺す最大のチャンスなのだ。
油断している、呆気に取られた一瞬。本来のこの鬼のポテンシャルならば防げただろう。だが、回復しない傷跡に状況が追いついていないのだ。
鉄扇が袈裟懸けに胴を切り裂く。叩き、斬り裂いた鉄扇の破片が、頬を抉った。貫き破壊した鉄扇の破片が腕に突き刺さる。
だからどうした。
血鬼術を出す暇は与えない。ただこの一瞬のみに命を賭けろ。
腕を抉り、脚を抉り落とした。目玉を切り裂き、あとは頸を斬り落とす。
ぐるりと回転し、速さを増した横一閃が、頸目掛けて振り抜かれる。
「とっととくたばれ糞野郎ッ!!」
「────これは、不味いかな?」
何も感じない瞳に、僅かな恐怖が写った。
絶叫する鬼に、最後の瞬間を感じた。刃が頸にくい込み、焼き切るように頸の半分程に刀身を埋めた。
────
べべんっ
頭に響く琵琶の音。鬼の真下、その空間に襖が訪れる。
夢で見た、上弦の肆の血鬼術。
逃げられる、逃げられる。
最後の抵抗をした童磨は、日輪刀を側面から殴り付ける。
日輪刀が、根元からへし折れ、鋒が宙を舞う。急速に刃の色が薄くなり、元の純白に戻る。
襖が開き、鬼が沈んでいく。手を伸ばしても届かない。
逃げられる、逃げられる、逃げられる
────逃がさない。
そこからは、まさに執念のみが命の体を突き動かした。
閉じかけた襖を破壊。そのまま中に飛び込む。
中は吹き抜けの様になっていて、鬼と命は落下していく。すぐさま追いついた命は、宙を舞っていた鋒を握り締める。手の平から滴る血を無視して、握り潰す。
赫刀を作り出し、鬼の頸に振るう。
「凄いなぁ、君は────あと一歩で俺を殺せるね。」
巫山戯たようにケラケラと笑う鬼を無視し、なおも頸を落とす為に、力を篭める。
刀身が進むと同時に、悟った。
(────────死ぬ)
敵の本拠地に飛び込み、この鬼を殺したところで、死ぬか、鬼にされるか。ここは鬼舞辻無惨の拠点で、自分は満身創痍。退路も上空にある。もう、引き返せない。
嗚呼、これで、彼女は
でも、これでいい筈だ。この鬼の頸を刈り取って、それで自分も腹を切る。鬼になって彼女に牙を向けるくらいなら、死んだ方がマシだ。
彼女の仏頂面が頭を掠め、静かに笑った。
そして、力を込める。
その数瞬の迷い、その数瞬の走馬燈が、命を死の淵から引き上げた。
「────────命ッ!!!」
「────」
見なくてもわかる、彼女があそこにいる。
でも、もうこの鬼を殺してからでは間に合わない。今すぐに離脱しなければ間に合わない。
命の脳裏に、過去の思い出が走馬灯によって巡る。花柱の仮継子として居候のような形で蝶屋敷に住むことになって2年。最初は自分以外にいなかった人員は徐々に増えた。今では随分賑やかで、彼女も寂しくはないだろう。最初は野良犬のような彼女だったけれど、段々と心を開いてくれた。
だから命は、笑った。彼女が笑わぬ世界を作れるのだと。己を誇った。そして、最後に彼女の顔を見上げた。
「お願いっ!掴んでっ!!!」
「────っ」
泣いていた。叫んでいた。夢で見た、彼女の姉が死んだ時のように。
未来が、見えた気がした。
彼女が、壊れる。
決断は、無意識だった。
反射レベルで動いた彼の体は、諦めた筈なのに呼吸をしていた。
「────残念、次の機会にまた会おうね。次は、殺してあげるから。」
深く吸い上げ、パンパンに膨れ上がった肺をそのままに、停滞。左右の壁を蹴り上がり、差し出される手に手を伸ばす。
彼女の小さな掌が、命の手首を掴む。
暖かい。
引っ張りあげられる。真ん丸の月が、夜を照らし、彼女の美しい顔を、良く照らした。
髪が珍しく下ろされている。
そんな関係のないことを考えながら、命は地面を転がりながらなんとか受け身を取り、大の字に寝転がった。
体が冷えている。しかし、今は自分よりも優先すべきことがある。
「しのぶ…!カナエさんを処置して────」
言おうとして、しのぶに遮られた。キッとキツい眼差しに、思わず口篭る。
「姉さんの治療は終わってる…凍傷だった。肺が極度に冷えてて、もう少し処置が遅かったら剣士としてはもうやって行けなかった。」
「そ、そう…流石…じゃあ早くここを離れて…」
「貴方の応急処置が、先。」
「は、はい…」
それからは、ずっと無言。視界の端に「あらあら〜…」なんてボロボロの状態で言ってるカナエを見て、命はこんな状況で良くあんな顔を緩められるなぁ、なんて、こっちもこっちで緩んだことを考えていた。
粗方の応急処置が終わり、唐突に実感した。
守れたのだと。
こうして目の前で彼女が、不機嫌そうに俯いているのだって。それが嬉しくて仕方がない。
それが、彼女は気に食わなかったようだが。
「…何嬉しそうにしてんのよっ…!なんで全部諦めた顔したのよっ…私、私っ…!」
「えっ」
ギョッとした。知り合ってから3年間。彼女の涙など、あの夢以外で見るのはほとんど初めてだった。
「し、しのぶ…?!」
「…もうっ…心配させないで…っ!」
綺麗に手当された傷跡が、妙に痛む。いや、それはもっと奥の痛みだった。心が痛かった。
命の隊服を握るしのぶの頭を撫で、自身の羽織をしのぶに被せた。
「……あの時、本当に諦めてた。死ぬつもりだった。でも、君の声が俺を引き上げてくれた。ありがとうしのぶ、心から感謝する。君がいなければ、こうして君の頭を撫でる事も、なかったかもしれなかった。」
「………うん……」
「…ほら、俺はもう平気だから。帰ろう。カナエさんの治療もある。」
殺り損ねたやつの事は、今は忘れる事にした。ただ次に会った時は、その決意だけを抱き、今の家とも呼べる蝶屋敷に帰る為に、しのぶの手を握った。
────この時、生死の境を彷徨った命の感覚神経は、極限まで研ぎ澄まされていた。故に
「────っ!?」
背後に迫る死を、間一髪で回避した。
しのぶの腕を掴み、カナエの元に放り投げ、背後の敵に蹴りを見舞い、自身もカナエの元に舞い降りる。
荒く吐き出す息、呼吸が乱される。それは、目の前の男の殺意故か。
自分が避けていなければ、自分が少しでも気を抜いていたなら、今のあの瞬間に、全員が死んでいた。
「いったぁ…なにすんのよ命!わた、し────」
「そんな…こんな事って…」
しのぶのカナエの瞳が、驚愕に見開かれる。カナエの頬に、冷や汗が流れた。
運命は、この姉妹を逃さない。
「────よく無傷で避けた、鬼殺の隊士。よもや柱だったか?」
桃色の髪、白い肌に走る黒い線の刺青。そして、瞳に刻まれる『上弦・参』の文字。
夢で見た、この鬼の強さ、技の完成度の高さを。正に、拳鬼。修羅そのものと言ってもいい気迫。
この鬼を、知っている。
「猗窩座…!!」
「ほぅ!俺を知っているのか。どこの一門だ、柱の一門となれば…水柱か?あれは強かった。」
乱れる呼吸を正し、命は正確に判断する。
カナエは今、全集中すら使えない。ただの剣士。しのぶに関しては、あの一撃に反応すら出来なかった。
戦えるのは自分1人。
そして、命は理解した。なぜ、今自分がこの場にいるのかを。
そこからの行動は早かった。
「鴉、夜明けまであと何分だ。」
「20分!ノコリ20分!」
「本部に戻って直ぐに柱を派遣してくれ。誰でもいい。なるべく強い人を連れてきてくれ。時間は稼ぐ!」
「了解ーッ!了解ーッ!」
呼吸を整える。
「…命君、貴方…」
「わかっているはずだ、カナエさん。呼吸も満足に使えない貴方が戦ったとしても、ただ無意味に死ぬだけ。逃げた俺たちも追いつかれる。」
「でもっ!」
「貴方は柱だ。こんな所で死んでいい人じゃない。俺の代わりは、いくらでもいる。」
「…待って、命…何言ってるの…?ね、ねぇ?逃げよう?」
「…刀を貰います、師範。返せそうにありませんので。」
笑えた。彼女の前で、2人の前で、上手く笑えた。
そして、伝えなければ。この赫刀を。
「いまから、ある物を見せます。覚えて、伝えてください。」
「……分かりました、しかと、見届けます。」
「姉さんッ…!なんでそんなこと言うの!?3人で逃げようよ!あと20分なら…!」
「しのぶッ!!…見ていなさい。彼の、覚悟を踏みにじるつもりですか…っ…お願いだからっ…何も、言わないで…っ!」
「────嫌…っ!イヤイヤ、イヤっ!なんで…っ、なんでよっ…!」
無力を噛み締め、厳しく叱責する姉に怯むしのぶは、それでも嫌だと泣いた。
命は、いつものしのぶを見るように、そっと微笑む。そして、肺に溜まった息を全て吐き出す。
「…正直、俺も偶然知りました。特別な事はいらない。ただ────」
花の鍔が罅割れる。桃色の線が走る刀身が、熱を帯びる。
「────万力の力で、柄を握る。」
一気に吸い上げ、息を止め、刀の柄を思い切り握り締める。一気に燃え上がる刀身。罅割れる柄。正に紅蓮に染る刀身は、どこか太陽を連想させた。
命の刀剣でないこの刀は、壊れるまで果たしてどれ程の猶予があるのかわからない。ただ、死ぬ迄時間を稼ぐだけだ。
「待たせたな、猗窩座。夜明けまで────付き合ってもらうぞ。」
ボロボロになった隊服を引き裂き、手当され丁寧に巻かれた包帯を破り捨てる。それすらも邪魔であると判断した。
ユラりと構えた命を見て、猗窩座は歓喜する。
「その歳でそれ程まで…いい闘気だ…!今まで屠ってきたどの柱よりも洗礼されている!
「…またそれか、断る。高みを目指すのは人故に。鬼になっては守りたい物も守れない。」
「…弱者を守って何になる?強さこそが全てだと言うのに、貴様も下らん義に絆されたか。」
「その弱者こそが俺の守りたい物だ。強ければ、なんだっていいのだろう?」
「…面白い男だ…この俺を前に、微塵も恐怖が感じられない。」
どっしりと構える猗窩座を見て、命は呼吸を深くする。
「あぁ、怖くないさ。死ぬつもりはないから────だが、この
この姉妹を生かす。それが、この命の使い道。
「そうか、それがお前の名か…行くぞ、命。」
「…しのぶ、師範、生きろ。生きてくれ。」
「────ぁっ」
拳と刃が交わったと同時に、カナエは暴れるしのぶを押さえ込み、その場を離れる。
「姉さんっ、お願い離して!お願いだから!彼を置いていかないでぇ!」
「ごめんね、しのぶ…っ、ごめんね…っ!」
背後から鳴る剣戟の音に、カナエは無力を改めて痛感した。今まで過ごして来た弟も同然の少年に、命を救われた。そこから逃げるように走り去った。殿となる彼を
流れる涙が、しのぶの頬に零れ落ちた。
そうして漸く、しのぶも悟ってしまった。彼の死を。
「────あ、ぁあ…嫌、嫌よ…みこ、と…命…っ」
彼の羽織を握りしめ、ボロボロと流れ溜め込んだダムが崩れたように流れる。霞む視界、遠のく背中に手を伸ばす。
首が切れない事を悩んでいた時に、励ましてくれたのは彼だった。
『大丈夫、君なら絶対できる。』
その遠のく背に、今まで感じていた、淡い感情が一気に発露した。大切で、ずっとそばに居て欲しい人だった。
ずっと傍に居てくれると、そう思っていた。今にも言葉にしたかった。
藤の花が綺麗だと微笑むと、彼は少し嫌そうに、それでも首を縦に振った。
『君にその花は似合ってるけど…俺は────』
羽織から香る、彼の匂い。未だ残る手の温もり。響く優しい低い音。全てが愛しくて、大好きだったのに。また、奪われる。
でも、その手を掴むには、その言葉を届けるには、もう
遠すぎた
はい、ここで自己解釈説明タイムです。
えー、原作において赫刀の説明がわからなすぎて、痣があるから出せるのか。それとも無くても出せるのかよく分からなかったのです。ネット漁ってもよくわかりませんでした。確かに痣を出した人が赫刀を出してましたが明確に『痣者しか出せない』という描写はなかったので。えーそこで、断熱圧縮の原理を勝手に当てはめました。
このお話の中では、痣がなくても赫刀は出せる。としました。間違ってるのかもうわからんです。
知ってる人いたら教えてください。純粋に疑問です。