調子乗って書いちゃいます。
どうぞ
今日は、会議に参加する事になっている日。命は、憂鬱な気持ちを押さえ込んだ。
「姉さんはもう先に行ってるから、早く行きなさい。」
「わかってるよ…行ってくる。」
「はいはい…行ってらっしゃい。」
少し照れたように見送ったしのぶを見て、苦笑する。
歩き出すと、不意に袖口が引っ張られる。何かと視線を下に落とすと、無表情で袖を掴むカナヲがこちらを見ていた。
「どうした、カナヲ。なんかあったか?」
「……」
「カナヲ?何持ってるの?」
すると、無言で何かを差し出してくる。見ると、それは藤の花だった。裏山に咲く藤の花を取って来たのだろう。だが、意図が掴めない。
この子とも一年以上暮らして来たが、本当に気持ちが読めない。何よりも表情に変化が無さすぎる。蝶と戯れ、たまに一緒に野山を肩車して駆け回り、シャボン玉を吹いたりして遊んだこともある。だが、未だに全くわからない。楽しい、のだとはわかっている。少し喋る事もある。だがそれは酷く事務的なものが多く、日常会話はほとんど無い。最初の頃なんて、喋れないと思っていた程だ。
「お、鬼。」
「…………あっ、そういう事!」
「どういう事?」
ボソッ、と呟かれた一言で漸く合点がいったと、しのぶは1人納得した。
「多分だけど、鬼が来ないようにって事でしょ?この子、よく命が寝てるところを見に来てたのよ。多分、怖かったのよ…貴方がいなくなることが。」
「カナヲ……」
命は、少し感動した。今までなんとも思われてないと思っていたが、ちゃんとこうしてくれるくらいには、思われているのだと。正に、妹を見る兄の目線とはこの事なのだろう。
正直泣きそうだった。
「ありがとう!カナヲ。何よりもお守りだ…必ず帰ってくるよ。」
そう微笑むと、カナヲは少し目を見開いて袖口を手放し、スタスタとどこかに行ってしまった。
「驚いた…自分からあんな事するなんて…少しは、心を開いてくれてるのかな?」
「あぁ…きっとそうなんだろう。」
貰った藤の花を、胸ポケットに差し込んで荷物を持って向かう。
まぁ、憂鬱な事に変わりはないのだが。
「武布都命、ただいま到着致しました。」
隠に連れてこられた命は、大きな屋敷の庭に行き着いた。そこには、6人の男女が立っている。
「命、来たのね。ほら、こっちに来て!」
「は、はい師範…」
手招きをするカナエの元に行くと、一斉に見られる。その全員がやはり強者。会うのは初めてだし、勿論見るのも初めて。なるべく嫌な顔をしないように気を付けながら、頭を少し下げる。
「初めまして、柱の皆様。胡蝶カナエの継子、武布都命と申します。一時の邂逅でありましょうが、どうぞよろしくお願いします。」
そう声を出すと、ヌッ、と命に影が差す。目の前には、額に傷の入った大男が手を合わせながら、こちらを見ている。首には大型の数珠、岩のような巨躯、やはりこの人物だけは、別次元の場所にいることを理解させられた。
「…少し、いいだろうか。」
「…貴方は…」
「私は、岩柱。悲鳴嶼行冥と言う。まずは…ありがとう。心から感謝する。」
「…いえ、別に…」
胡蝶姉妹をこの鬼殺隊に連れてきた張本人。岩柱、悲鳴嶼行冥。よく話は聞いている。
しかし、命の悲鳴嶼への印象は、決して良くは無い。2人をこの道に引き入れたこと。優しく、頑固な2人が選んだ道とはいえ、もっと強く拒否をすればよかったのに。2人と知り合ってから、そう思ってしまう。無意識に、目線が睨むように変わる。
「…言いたい事は、分かる。私も、何度後悔してもし足りない。あの状況で、私はついぞ間に合わなかった。倒れる君を蝶屋敷に運ぶことしかできなんだ…不甲斐ないばかりだ…君がいてくれて、よかった。」
「……いえ、お気になさらず………失礼します…」
雰囲気から、命の心情を悟ったのか、悲鳴嶼は見えぬ瞳から涙を流す。ただ、命はこの言葉しか言わなかった。これ以上話せば、余計なことまで言ってしまいそうになったから。その場から、何も言わずに離れ、カナエの傍に控える。
「…あいつ、派手に喧嘩売ってたなぁ。悲鳴嶼さんに喧嘩売るやつなんざ初めて見たぜ。見た目の割にド派手な野郎だ。」
「宇髄…彼の気持ちは最もだ…あの姉妹は、優しすぎる…この世界には…命取りだ。」
音柱、宇髄天元が悲鳴嶼の隣に降り立ち、命を細めた目で見やる。
「感情を出しちゃいるが、抑える術も知っている。だが、奴からは何も感じねぇ。本当にアイツが上弦の参を倒したのか?」
「わかっているはずだ…彼の異様な気配を…隠すのが上手いのか…はたまた無意識にそうしているのかは分からないが…昔に見掛けた頃は、あれ程の剣気は無かった。」
長く人を見てきた2人は、命が纏う気配に気付く。猗窩座の様に正確に感じることは出来ないが、ある程度その人物の強さというのは、見てわかるものだ。しかし、命からは何も感じない。正に『無』。それと同時に計り知れぬ底を見た。
「事実、彼は単独で上弦の参を討伐した。実力はカナエ以上、既に我々と並ぶと考えても差支えは無いだろう。」
「まぁ…これから見てきゃいいかねぇ…」
「その藤の花どうしたの?」
「カナヲがくれたんです。帰ってきてくれますようにって…多分ですけどね。」
「えー!羨ましいわ!帰ったら私も強請ってみようかしら!」
「これが今まで遊んできた成果…!」
カナエの隣で談笑する命を眺めながら、宇髄は零した。
すると、丁度屋敷の中から3人の人物が出てくる。
『御館様のお成りです。』
少女2人と男が1人。手を引かれるように現れた男は、如何にもな格好をした優男と言う印象を受ける。真っ直ぐな黒髪を肩口で切りそろえた美丈夫。しかし、顔半分が紫色に腫れ上がり、爛れている。
それに見入っていると、柱の全員が頭を下げていることに気づき、隣のカナエに倣い、命も頭を下げる。
「おはよう皆、いい天気だね。こうして誰も欠けずに集まれたこと、嬉しく思うよ。」
「御館様に置かれましても御壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます。」
端にいる傷だらけの、目が血走った男────不死川実弥が、丁寧に語る。その様に普通に驚く命。正直、あの見た目でこんなことを言うと思わなかった。
「ありがとう、実弥────さて、早速今回の会議を始めよう。まず皆も気になっている命について…と言っても、この場に知らない子はいないだろう。初めまして、命。私は産屋敷耀哉、この鬼殺隊で頭目をやらせてもらっているものだよ。」
「よ、よろしくお願いします…」
「…驚くのも無理はない。これは一族の呪いで皮膚が爛れてしまっているんだ。怖がらせてしまったなら謝るよ。」
「い、いえ。決してそのような事は…」
焦る命に、輝哉は笑いかける。
命は、知らぬ父を連想させる様な低音の声に、少し心地よくなった。
輝哉は、本題に入る。
「さて、命。報告書は既に貰っているが、もう一度詳しく話して欲しい。君がわかったこと、感じたこと。なんでもいい。」
「…はい、では報告させていただきます。」
それからは、あの状況を詳しく報告した。猗窩座がどういう鬼だったのか。童磨の能力に、琵琶鬼の能力、赫刀の事まで細かに報告した。
赫刀については、1番の力を持つ悲鳴嶼でも変わらなかったことで、一旦その話は終わりとなった。
「以上になります。」
「ありがとう、命。それと…もう一度感謝を。君は、100年動かなかった均衡を破った。これはどの柱にもできなかったことだ。鬼殺隊を代表して、君に感謝する。 」
「…私は、私の守りたいものを守っただけです。それに、既に金という対価をもらっています。お気になさらないでください。」
「それでも、だ。ありがとう、命。」
「……有り難きお言葉。」
命は、あくまで御恩と奉公の関係を崩すつもりはなかった。生命を賭けるに見合う対価を貰っているのだ。それに、守りたいものも守れた。命は、それ以上何も求めるつもりはない。
それはそれとして、長きに渡り平行線だった戦況が、少しでもこちらに傾いたことに、輝哉が興奮していたのは確かだった。
コホンと咳払いをして、輝哉は心を落ち着かせる。
「さて…命、本題はここからなんだ。今現在、柱は6人。本来の規定人数より3人下回っている。そこでだ、上弦の参を倒した命に、新たな柱になってもらいたい。」
「…柱、ですか…」
予想していなかった訳では無いが、正直柱になる理由が今の所ない。将来的にはと考えてはいたが、今なる利益があるのかどうか。柱は自身の管轄を持ち、そこの地区を管理しなければならない為、必然的に蝶屋敷から離れる事になる。しかし、はたと思い出した。ある鬼の事を。
「質問、よろしいでしょうか。」
「構わないよ。」
「柱になった際の私の発言力は如何程になるでしょうか?」
「…そうだね、君は上弦を仕留めた。新参者とはいえ、高い物と思っていい。」
「…成程…師範、アオイの研修は終わってますよね、どれくらいできてますか?」
「え?え〜っと…確かほとんど1人でできるはずよ?まだ及ばない所もあるけど、彼女勤勉だから、すぐに覚えちゃうわ!有事の時は私かしのぶ、命君が居れば大丈夫よ。下働きの隠の方もいるし、すみ、なほ、きよ、もいるもの。」
命はそれを聞いて、少し考える素振りを見せた。実際、今頭に浮かんだ事を行うならば、柱になる必要がある。しかも、早期から取り組めば、薬の調合や新薬の開発だって目じゃない。毒が効くことがわかった今、強力な毒を開発すれば、上弦の鬼ですら倒せるようになるかもしれない。デメリットを見ても、非常に優秀だ。
しかし、命には懸念があった。
「…御館様、本当に私でよろしいのですか?私は師範の様に、名も知らぬ人の為に命を賭ける程お人好しでも、鬼によって何かを奪われ、強い恨みを持つわけでもありません。金の為にこの組織に入っただけです。」
「うん、私もそう聞いている。だが、理由などどうでもいいんだよ。事実、君は無辜の民を救っている。その事実さえあれば、私は満足だよ。」
「…」
黙りこくった命に、輝哉は尚微笑んだ。
「…絶対に失いたくない物があるんだね。瞳は口よりも余程雄弁だ。大切な者だけを守る…それは私には…いいや、私達にはできない選択なんだ。君は、強い子だ。」
「────なぜ、それを…!」
「その絶対の1を折ってはいけないよ。」
カナエ以外に話すことの無かった目指す世界。その見透かすような瞳が、命を包む様に細められた。
柱の面々が、心酔するのも頷ける。
命は、この男に敬意を払った。
「御館様…柱への提案、慎んで受けさせていただきます。不肖この命。身命を賭して、その1を守り抜きましょう。」
「瞳に更に力が籠ったね…命。」
微笑んだ輝哉は変わらずに、然れど荘厳に告げる。
「ここに新たなる柱を任命したい。みんな、異議は無いね?」
輝哉の声に、皆が反応する。
「ありません。命君の柱就任を歓迎します。」
花柱、胡蝶カナエ
「私も異論はございません…」
岩柱、悲鳴嶼行冥
「上弦の鬼を正面から始末する派手なヤツを柱にしない、は無いでしょう。異論はありませぬ。」
音柱、宇髄天元
「うむ!これほどの実力者を野放しにしておく手はないでしょう!私も異議はありません!」
炎柱、煉獄杏寿郎
「…御館様のご意志に従います。」
水柱、冨岡義勇
「実力が伴っているのは確か。私も異論はありませぬ。」
風柱、不死川実弥
現柱の承認をもって、新たな柱が誕生する。
「みんな、ありがとう。では、ここに新たなる柱を任命する。武布都命、君には…そうだね。君が編み出した呼吸の名前から取って────【
会議は今後の方針から動きまでを話し合って終了した。何とか蝶屋敷を離れる件については、カナエにより免れた。人手が足りないこと、戦場医療の優位性を示し、如何に命と言う薬師が必要かを力説していた。それについては、少し助かったが、風柱との喧嘩じみた言い合いはやめて欲しい。心臓に悪すぎる。ただでさえあの風柱は見た目が怖いのだ。普通に辞めて欲しい。
柱になってから2ヶ月が過ぎた。鬼の活動は以前よりも頻度は少なくなっている。雑魚鬼は別だが、強い鬼の出現は減った。猗窩座を倒したことが少しは効いたのだろうか。会議終了後、命はある研究をしていた。
ノートに描かれた血液成分のスケッチ。そして細々と書かれる実験の結果。
深い溜息を吐き出して、眉間を揉む。
命は、会議にてある事を進言していた。それは、鬼の研究への資材提供の申し出。最新の研究器具に、外つ国の資料や論文の提供。
ずっと疑問だった。元は同じ人間であるはずなのに、何故こうも化け物になってしまうのか。
鬼とは、なんなのか。
この猗窩座の血は、研究を大きく進めてくれた。
(保存処理すらしていないのに、半年以上新鮮なまま…死してなお、その生命力が桁外れだ。もう、ひとつの生物と言っても過言じゃない。)
鬼舞辻無惨の血がより濃い猗窩座の血だからなのだろう。
鬼の血には、人間の血漿、赤血球など、それら全てが見当たらない。代わりに、見たことも無い成分が見られた。この血液は一体何の役割を持っているのか。分かることはただ、この血液の成分が生き物の細胞に非常に近い事。持ち主が死したからなのか、分裂のような反応はしないが、この新鮮な状態が半永久的に保持されている。このことから、生きている鬼と比較し、検証。結果として、鬼は血を基点として再生することがわかった。
そして、この血液の細胞は藤の毒で腐敗させられることも結果として得られた。
それがわかってから、生きた鬼にあらゆる毒を試した。蛇の毒、蜘蛛の毒、黴や菌。人の身に害ある物を注入した。しかし、全てこの細胞のようなものに一瞬で飲み込まれる様にして消される。
この細胞のようなものが、独立した生物の様な反応を見せるのだ。
雑魚鬼では日輪刀で頸を斬り落とすと途端に消滅してしまう。太陽光でも同じ反応を示し、日輪刀を近づけるだけでも若干の拒絶反応を見せることがわかった。
その事からわかるのは、強い鬼ほどこの細胞が多く血中に含まれていること。
この細胞の量は、純粋な再生力と比例する事もわかっている。
猗窩座の再生速度からしても明らかだったが、首が弱点ではない鬼が出てくる可能性がある。赫刀で頸を斬ったにもかかわらず、僅かに再生の兆しを見せていた。猗窩座ですらあの再生速度だ、上弦の弐と壱はそれ以上と考えていい。
そして、その研究を初めてまず最初の到達点として定めた、この細胞の完全破壊方法を2つ見つけた。1つはしのぶが作り出した藤の花から抽出し、濃縮した毒。
そして、もう1つが
彼岸花である。
正確に言えば、この毒は鬼にとって毒ではない。逆に血液を活性化させてしまい、鬼を強くしてしまう。人で言うドーピングに近い。しかし、一定量を超えると、一気に血液が壊死し始めるのだ。鬼によって分量は違うようだが、普通の鬼であれば極わずかな量で体が崩壊し始める。
この発見に喜び、小躍りして気絶したのが、八徹目の正午だった。
起きたらしのぶに泣きながらビンタされるわ、カナエに結構本気の説教されるわ、仲良し3人組(なほ、きよ、すみ)とアオイには泣かれるわ、カナヲが手を握ったまま汗だくでこちらを見ていたりして、本気で反省した。
それからは、しのぶと共に配合を変えた毒を精製し、尚且つそれを戦闘中に即座に調合出来るように簡略化する。頸を斬れないしのぶにとって、これは非常に強い武器になる。しのぶには必ず命と組むか、
現在、その毒の抽出段階を行っている。自分ではなくてもこの毒を精製・調合出来るように。
「────そう、ここまで来たらほぼ完成。後は量と使い所かな。」
「…はぁ…これ本当に集中力必要じゃない…よく見つけたわね。」
「毒のある薬草や漢方を試し続けたんだ。あぁ、あと、この漢方とこの薬草…で、この薬なら血気術の中和剤が出来るはずなんだ。どう思う?」
「ん、ちょっと待って。ならこれじゃなくてこの薬草よ。反応的に中和剤はこっちね。」
「む、そっちか…なら明日はこれを試してみよう。治験用の鬼の毒は保存してあるし。」
「そうね、まだ命の刀も届いてないし…他に任務も入ってないから。終わりにしましょ。」
血の入った試験管を日の当たらない棚に保管して、鍵を厳重に閉める。今日の仕事はもう終わり、任務もない。
ぐぐっ、と伸びた命は深い欠伸をする。
作業の終わったしのぶは、襖を開けて外を確認する。誰もいないことを認識すると、命の膝に座り、こてんっ、と胸に頭を擦り付け、寄り掛かる。それを覆い隠すように、命が抱き寄せる。
歳の割には身長が高めの命に、しのぶの小柄な体躯は隠される。
「…あったかい。」
「そうだな…」
モゾモゾと身動ぎをして、命の胸に耳を当てる。心臓の拍動の音に、心底安心する。何度悪夢を見た事か。拍動が止まり、青白く変色する肌。二度と目を覚まさぬ幻想で、どれ程精神を削られたか。
その反動か、2人きりでこうする事が多くなった。
あの夜、互いの気持ちを確かめあった夜が、しばらく経った今も鮮明に思い出せる。
昔は羨ましくて、妬ましいだけだった命の大きな体が、こんなにも愛おしくて。家族以外に、これ程まで誰かを愛したことは無い。
「ねぇ…好きよ、命。大好き。」
「あぁ、俺も君がいっとう好きだ。」
そうして抱き合うと、無性に恥ずかしくなったしのぶは、体に熱が籠るのを実感して、理由をつけて離れる。
「そっ、そうだ!命、柱になったじゃない?だから、そのお祝いでボロボロになっちゃった羽織の代わりを作ってたの!」
「えっ、そうなの?」
「これ!」
袋から出されたのは、しのぶの真っ白な羽織とは対局の、黒。しかし、日に当てると光の当たり具合で濡れた羽のように、艶やかに輝く。左胸元から垂れる大きな藤の花と、それに留まる
早速羽織ると、少し大きめに作られているが、これから成長することを考えれば、恐らくピッタリになるだろう。
「凄い…ありがとう、しのぶ!」
「う、うん…気に入ってもらえて、よかった。似合ってるわよ。」
濡れた様に輝く黒髪に、日に輝く羽織がやけに映える。その様に、少し頬を染めるしのぶは、隠す事無く零した。
「藤の花…か…」
「うん、命はなんか…あんまり好きじゃないみたいだけど。その花言葉が、あなたにぴったりだから。」
「確か…優しさ、歓迎…だったか。」
「そっ、でもそれだけじゃないの。」
しのぶは命の手をそっと握って、ふわりと微笑む。
「────決して離れない…貴方があの夜に言ってくれた言葉よ。」
剣を握っているにしては、柔らかくて、しなやかな手先が、どうにもくすぐったい。
しのぶにとって、あの言葉は酷く心安らぐものだったのだ。
「あぁ…もう一度、誓う…決して離れない。」
「うん、私も…離れない。」
「指切りだ。」
「…貴方、たまーに子供っぽいわよねっ」
そうか?と不思議そうに返す命に笑いかけ、しのぶは差し出された小指に、自身の小さな小指を絡ませた。
「…嘘ついたら、酷いんだから。」
「────ははっ、善処する。」
「何よそれっ!」
にししっと笑ったしのぶの額に、軽くデコピンをする。そうして見蕩れていたことを誤魔化すのだ。そうしないと、赤くなっていた耳が見られそうだったから。
確かに、ここに誓おう。死が2人を引き裂こうとも
────心だけは、君の傍にあると。
日本でも、蝶は神の使いとして語られるそうです。
黒アゲハを見たら亡くなった方が挨拶に来てくれてると言う解釈をするそうです。面白いですね。