銀色に懐いた最強の白   作:マリユリ

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前回の投稿が、6月・・・だと・・・!?

さーせ((殴
えー、大変申し訳ありません。




第五訓 ジジイになってもあだ名で呼び合える友達を作れ──あだ名か・・・二つ名は何個か持ってた。え、それじゃ二つ名じゃない?個数の問題なの?

いつものように仕事が入らず、銀の隣でお茶を飲んでいた時のこと。

 

「俺が以前から買いだめていた大量のチョコが姿を消した。食べた奴は正直に手ェ挙げろ。今なら3/4殺しで許してやる」

 

3/4殺し・・・それは許されているのだろうか・・・というか、生きていれるのだろうか。甘味に関しては本当に容赦ないからな、銀は。

 

「3/4って・・・ほとんど死んでんじゃないスか」

 

「銀、いつそんなにチョコ買った?」

 

私は、そこまで銀を甘やかした覚えはない。まして、"チョコの買いだめ"という糖尿病を後押しする行為など。

 

「えっ・・・・とぉ〜・・・・」

 

「・・・銀・・糖尿・・・」

 

「美桜さんの言う通りですよ。ホント、いい加減にしてください」

 

できるだけ冷めた目で銀を見つめて追い詰めていく。私と同じ意見の新八は呆れた様子でお茶を啜っている。銀の甘味病は一生治らないだろう。

 

「またも狙われた大使館、連続爆破テロ凶行続く・・・」

 

新八の隣から声がして、私たちの耳に届いた・・・血の匂いと共に。

紙のこすれる音がするから、新聞を読み上げているのだろう。何故今新聞を読んだのだろうか。というか神楽、それ鼻血?

 

「物騒な世の中アルな〜。私恐いヨ、パピー、マミー」

 

「恐いのはオメーだよ。幸せそーに鼻血たらしやがって。うまかったか俺のチョコは?」

 

「チョコ食べて鼻血なんて、そんなベタな〜」

 

神楽の顔をガッと掴んで、チョコの恨みを語りかける。銀、チョコぐらいでそんな・・・。というか、本当にいつ買ったの。

 

「新八、チョコ食べたら鼻血出る?」

 

「そうですね。一般的に食べすぎると出るって言われますね。僕も詳しいことは分からないんですけど」

 

「へぇ」

 

懐かしや。銀に初めてチョコを買ってもらった時、媚薬だと勘違いしたのだったか。前に遊郭で食べたのと味が少し似てたから、てっきりそういう薬のようなものだと思ったのだ。アレも食べすぎると鼻血が出ると言われていたから、原材料が同じなのかもしれない。

 

そんなことを考えてる間に銀と神楽の喧嘩が(銀が一方的に)過激になりつつあったので、新八が止めに入った。まあ、結局ツッコんだだけだったのだけれど。

 

 

──ドガンッ──

 

 

大きな音に自然と意識が引かれた。

 

「なんだなんだオイ」

 

「大きい音・・・」

 

銀たちと玄関に出てみると、いつもより人の気配が多く、ザワザワ音も大きかった。その中の一人が地面に倒れて動かない。土の匂いもするから、事故のようだ。銀も「事故か・・・」と言っていたから、乗り物の運転ミスだろう。血の匂いはしないから、人身事故ではなさそうだ。

ひとまず、巻き込まれた人がいないようなのでホッとする。

 

「くらあああああ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

下からお登勢さんの怒声が。どうやらホッとするのは早かったらしい。倒れていた人に容赦なく掴みかかっている。

え、動かして大丈夫?

 

「ワレェェェェェ!!人の店に何してくれとんじゃアア!!死ぬ覚悟できてんだろーな!!」

 

「ス・・・スンマセン。昨日からあんまり寝てなかったもんで」

 

「よっしゃ!!今永遠に眠らしたらァァ!!」

 

「お登勢さん!怪我人相手にそんな!!」

 

お登勢さんお登勢さん。その人怪我人です。揺らしては駄目です。離してあげ・・・え、殴る気ですか。

下に降りてみれば、その時にはお登勢さんの堪忍袋の緒が悲鳴をあげてちぎれかけていることが分かった。そんな中、新八がお登勢さんを止めに入る。

 

「・・・こりゃひどいや。神楽ちゃん救急車呼んで」

 

「救急車ャャァアア!!」

 

「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったよ」

 

新八は的確に神楽に指示をだすが、神楽は叫んだだけ。一瞬、それで来る救急車凄いと思ったのは内緒。

それにしても・・・

 

「フフッ」

 

「あ!美桜姉が笑ったネ!」

 

「はぁ・・・マジで天使・・・」

 

「言ってる場合ですか!!もう・・・・って、あなた、飛脚なんですね」

 

いつものように二人へツッコんだ新八が、倒れている人へ話しかけた。ちょ、銀、ここ外だから抱きつかないで。

 

「これを・・・俺の代わりに届けてください・・・・・・お願い。なんか大事な届け物らしくて。届け損なったら俺・・・クビになっちゃうかも・・・・お願いしまっ・・・」

 

「オイっ!」

 

飛脚の男が新八に何かを手渡し、直後体の力が抜けた。どうやら気絶してしまったらしい。まあ、交通事故にあったのだから致し方ない。

頼まれてしまったからにはやらなくてはないだろう。私たち四人は飛脚の代行をすべく、足を進めた。

 

 

 

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「ここであってんだよな」

 

「うん」

 

「どこ?」

 

「大使館・・・これ戌威星の大使館ですよ。戌威族っていったら、地球に最初に来た天人ですよね」

 

「ああ。江戸城に大砲ブチ込んで無理矢理開国しちまった、おっかねー奴らだよ。嫌なトコ来ちゃったなオイ。美桜、手ェ離すなよ」

 

「ん」

 

目の前の大きな建物に驚きながら、私は銀の手を握り直した。

 

「オイ。こんな所で何やってんだ、てめーら。食われてーのか、あぁ?」

 

大きな体をした人・・・改めて天人が近寄ってきた。人間に比べて明らかに体が大きく、体格も大きい。でもまあ、倒せないほどでは無さそうだ。

 

「いや・・・僕ら届け物頼まれただけで」

 

「オラ、神楽早く渡・・・」

 

「チッチッチ。おいでワンちゃん、酢昆布あげるヨ」

 

─スパァンッ─

 

銀がいきなり神楽の頭を叩いた。いい音。でも、手、離れた。話すなって言ったの、銀なのに。

というか、

 

「犬?」

 

「違うからね、美桜ちゃん。こんなにデカい犬がいるわけないでしょ」

 

それもそうか。

私は頷いて、離れてしまった銀の手を握り直した。

 

「届け物が来るなんて話聞いてねーな。最近はただでさえ爆弾テロ警戒して厳戒態勢なんだ。帰れ」

 

どうやら、この人は大使館の門番らしい。爆弾テロとは、今朝神楽が読んでいた新聞の記事だろうか。新聞で騒ぎ立てるくらいなのだから、厳戒態勢まで警戒していても、何らおかしくはない。飛脚の人には申し訳ないけど、ここは帰った方が・・・

 

「ドッグフードかもしんねーぞ。もらっとけって」

 

銀?だから何でわざわざ煽る?帰ろう。何か嫌な予感がする、帰ろう。

 

「そんなもん食うか」

 

パシッ銀が差し出した小包を門番がはじき飛ばした。少し力が強かったのだろう。門の向こう側へ入ってしまった。その次の瞬間である。

 

 

 

─ドガンッ─

 

 

 

「っ!?」

 

とてつもない爆音が辺りを包んだ。耳をつんざくような音に、肩が跳ね上がった。

 

「・・・なんか、よくわかんねーけど。するべきことはよくわかるよ。よっ、美桜ちゃん手ェ離すなよ?」

 

「・・・ん」

 

私の手をしっかり握り直して、後ろを向く銀。うん、ごめんなさい門番さん。私に頭を整理させてください。

 

「じゃ・・・・逃げろォォ!!」

 

銀の一言で時間が一気に進み出した。いきなりの出来事に固まっていた全員が、放たれたように動き出す。

 

「待てェェテロリストォォ!!」

 

「!!」

 

「!!」

 

「っ!」

 

「!!」

 

銀と手を繋いでいた方の腕がいきなり引っ張られ、後ろに体勢が崩れる。背中を打つ覚悟をしたが、反対の手を小さな手に引かれて持ち直した。でも、両方の腕を限界までに反対に引かれると、ちょっと・・・・いや結構痛い。

 

「新八ィィィ!!てめっどーゆーつもりだ離しやがれっ」

 

「嫌だ!!一人で捕まるのは!!」

 

「俺のことは構わず行け・・・・とか言えねーのかお前!!神楽!!お前も美桜を引っ張んな!!」

 

「私と美桜姉に構わず逝って二人とも」

 

「ふざけんな、俺と美桜は離れらんねーの!!ついでにお前も道連れだ!!」

 

声の大きさと方向から考えるに、門番か新八を、新八が銀を、銀が私を、私の前にいる神楽が私を、それぞれ腕を掴んでいるらしい。道連れ世は情けとはこのことか。

 

「・・・・痛い」

 

前後に引っ張られているので体が避けそうだ。手を振りほどいて捕まりたくもない。

どうしようかと思った矢先、殺気立った気配が数多く近づいてくるのを感じた。

 

「ぬわぁぁぁ!!ワン公いっぱい来たァァ!!」

 

ひしゃげた柵を乗り越えて、戌威族がわらわらと出てくる。手に武器を持っている者もいるようだ。状況からして、戌威族は爆発物を投げ入れられた被害者で、私たちは投げ入れた加害者。向こうは警戒していただけなのだから、何ら悪くはないわけだ。

 

(謝って説明しないと・・・)

 

手っ取り早く事を済ませるなら、これが一番だ。そう思い、銀に声をかけようと口を開いた。

が──

 

「手間のかかる奴だ」

 

──壁に寄りかかって座っていた人が戌威族を踏みつけて渡り、最後には新八の腕を掴んでいるものも踏みつけて側に降り立った。

 

「逃げるぞ、銀時」

 

声と動きからして男性らしい。加えて銀時の名前を呼んでいる。運動能力の高さからも考えて、おそらく戦争で銀と一緒に戦っていた戦友だろう。

 

「おまっ・・・ヅラ小太郎か!?」

 

「え、づら・・・?」

 

そのような苗字は初めて聞いたのだが・・・本当にあるのだろうか。

 

「ヅラじゃない、桂だァァ!!」

 

やはり違かったらしい。これは銀が悪い。

でも、暴力はダメなので銀の顎を狙ってきた桂さんの拳を、上から抑えるようにして止める。

 

「なっ」

 

「美桜っ!」

 

「暴力は、ダメ。それにそんなことをしている場合ではない」

 

私は、おそらく戌威族がいるであろう方向へ、視線を流す。予想通り、倒れていた者たちが起き上がり始めているようだった。

 

「話は後だ、銀時。行くぞ!!」

 

「チッ。美桜!」

 

銀は私の腕を引いて抱き上げ、走り出した。てっきり手を繋ぐのだと思っていたのだが、大丈夫だろうか。

 

 

───────────────────

 

 

男三人と女二人が、戌威族から逃げる。その様子を望遠鏡で眺める者が一人。黒い髪と黒い制服に身を包んだその男は、煙草をくわえた口の口角をニヤリとあげた。

 

「とうとう尻尾出しやがった。山崎、何としても奴らの拠点おさえてこい」

 

「はいよっ」

 

同じく黒いしかし少し地味な制服に身を包んだ者が、返事をして駆けて行った。それを見送り、煙草の煙を吐く。片手には煙草、もう片方にはある人物の指名手配書が握られていた。黒い長髪が特徴のその男の写真を眺め、先程逃げて行った者共のことを考える。

 

「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様の今の世の中じゃただの反乱分子か。この御時世に天人追い払おうなんざ、たいした夢想家だよ」

 

今自分たちが追っているのは、かつては英雄と謳われた者であり、今となっては国に仇なす者として見なされてしまった人物だ。

哀れだと思わないことはない。が、仕事は仕事だ。

手元の紙をグシャグシャに握り、側でスヤスヤと腹が立つほどに寝ている男に投げつけた。

 

「オイ、沖田起きろ。お前、よくあの爆音の中寝てられるな」

 

「爆音って・・・またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ土方さん、真面目に働けよ」

 

「もう一回眠るかコラ」

 

これまた腹の立つアイマスクを下ろしながら、ムクリと起き上がる。少なくともコイツよりは働いていると言えるだろう。

腰にある刀に手を伸ばし、ゆっくりと抜く。

 

「天人の館がいくらフッ飛ぼうが知ったこっちゃねェよ。連中泳がして雁首揃った所をまとめて叩き斬ってやる。真選組の晴れ舞台だぜ。楽しい喧嘩になりそうだ」

 

 

────────────────────

 

 

どこかに案内され(連れ込まれ)て、入れられた部屋でテレビを四人で眺める。私は見えないけど、音声だけで何とか情報を得ようとしている状態だ。

 

「バッチリ映っちゃってますよ。どーしよ姉上に殺される」

 

「テレビ出演。実家に電話しなきゃ」

 

「銀、映ってる?私と銀も?」

 

「しっかり映ってるなァ。画面越しでもやっぱり美桜ちゃんは可愛いね〜」

 

私は銀の膝の上兼腕の中だ。さっきからひっきりなしに頭を撫でられるが、悪くは無いので黙っている。

 

「何言うアルか銀ちゃん。実物が一番綺麗に決まってんダロ」

 

「そんな世界の常識知ってますぅ〜」

 

「恥ずかしい会話は他所(よそ)でしてください。それどころじゃないでしょ」

 

新八の言う通りだ。

テレビの画質どーのこーの言っている場合では無い。私の推測が正しければ・・・

 

「何かの陰謀ですかね、こりゃ。なんで僕らがこんな目に。唯一桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ」

 

「・・・はぁ」

 

素直すぎる新八に、思わずため息をついてしまった。悪いことではないが、少しは疑うことを教えた方がいいかもしれない。将来が心配だ。

私の心を読んだのか、銀がまた頭を撫でてくれた。

 

「美桜さん?」

 

「美桜姉?どうしたネ?」

 

「よく考えてみて、新八」

 

「何をですか?」

 

「本当の犯人(テロリスト)

 

「そんな言い方は()してもらおう」

 

スーと襖を開いて先程の人物──桂さんが入ってきた。その後ろからは複数の気配。かなりの大所帯のようだ。その中には、嗅いだことのある匂いも混じっている。予想は外れていなかったらしい。

 

「この国を汚す害虫"天人"を打ち払い、もう一度侍の国を立て直す。我々が行うは国を護るための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にしないでもらいたい」

 

「攘夷志士だって!?」

 

「なんじゃそらヨ」

 

「・・・・・」

 

この世界(こちら)にも攘夷志士がいたのか、というのが私の素直な感想だ。もっとも私のいた世界では、とっくに国に暗殺やら何やらで残っていなかったはずだが。

 

「まだ残ってたなんて」

 

「・・・銀」

 

「あぁ。・・・どうやら俺達ァ踊らされたらしいな」

 

「?」

 

私は感覚だけで、その人物に視線を送る。今朝ほど血の匂いは強くないし、消毒の匂いもする。手当は完璧に行われたようだ。

 

「飛脚のお兄さん。怪我は大丈夫?」

 

「あっほんとネ!!あのゲジゲジ眉デジャヴ」

 

「ちょっ・・・どーゆー事っスか、ゲジゲジさん!!」

 

・・・切実にどんな顔なのか気になってきた。

ともあれ、自分で歩けるなら大丈夫だろう。お登勢さんに殺されなかったようで何よりだ。危うくお登勢さんの手が汚れるところだったのだから。

銀が私の手を引いて立ち上がった。私を後ろに庇うように、桂さんと向かい合うように立つ。

 

「全部てめーの仕業か、桂。最近世を騒がすテロも、今回のことも」

 

「たとえ汚い手を使おうとも手に入れたいものがあったのさ・・・・・・銀時、この腐った国を立て直すため再び俺と共に剣をとらんか。白夜叉と恐れられたお前の力、再び貸してくれ」

 

 

─白夜叉─

 

 

「天人との戦において鬼神の如き働きをやってのけ、敵はおろか味方からも恐れられた武神・・・坂田銀時。我等と共に再び天人と戦おうではないか」

 

「・・・・・・銀さん、アンタ、攘夷戦争に参加してたんですか」

 

「・・・・」

 

私は、戦ってほしくない。だが、戦争に参加していたのは事実で、もし・・・もしも・・・

自然と私の手には力が入った。それは銀と繋いでいる手も例外ではなかったようで。

 

「・・・大丈夫だ」

 

力強く握り返してくれた。

 

「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考えることは昔からよく分からん」

 

「俺ァ、派手な喧嘩は好きだがテロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの。俺達の戦はもう終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ・・・京都の女かお前は!」

 

「バカか貴様は!京女だけでなく女子(おなご)はみんなネチネチしている。そういう全てを含めて包みこむ度量がないから貴様はもてないんだ」

 

「バカヤロー、俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ多分。つーか俺には美桜ちゃんがいるからいいんですぅ〜。それに美桜ちゃんはこの髪好きって言ってくれるしな」

 

「ん、好き」

 

紛れもない事実である。

 

「ちょっ、アンタらいい加減にしてくださいよ!人前で!」

 

「俺達の戦は終わってなどいない。貴様の中にとて、まだ残っていよう銀時・・・国を憂い共に戦った仲間たちの命を奪っていった、幕府と天人に対する怨嗟の念が・・・。天人を掃討し、この腐った国を立て直す。我等生き残った者が死んでいった奴等にしてやれるのは、それぐらいだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私たちがしてあげられるのは、託された願いを、紡がれた光を、ただ繋いでいくことくらいですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=side:銀時=

 

 

「・・・・()めておけ」

 

「「「!!」」」

 

「美桜?」

 

新八も神楽もヅラも、声を発信源に驚いた。もちろん、俺も。いつもと違う美桜の話し方。一言の重み、纏う空気、全てが変わっていた。

美桜は手を離して、俺の前に歩みでる。その背中はとても大きなものを背負っているように見えた。

 

「たとえどんな理由があろうと、殺しは時間の無駄だ。まして、幕府ともなれば同族だろう。馬鹿馬鹿しい」

 

「なっ・・・貴様のような女子に何が・・・!」

 

「分かるさ。少なくともお前や銀より殺した数は上だと思うぞ。もっとも人でも天人でもないがな。それに、私が所属していた組織の犠牲は、たかが一つの戦争と比べ物にならない程いる。私とて失った者は少なくない。・・・だから言える。止めておけ。たとえ国を立て直せても、やり方を変えねばお前に残るのは虚しさのみだ」

 

「美桜・・・」

 

言いたいことを言い終えたのか、纏っていた空気がいつもと同じものに戻った。見たことの無い姿に、声に、話し方に、目を離すことが出来なかった。

こちらを向こうとしない美桜に、もう一度声をかけようとした時だ。突然、美桜が木刀を抜いて右の襖に向かって構えた。一切の躊躇もない行動に、その場の全員が襖に視線を移す。

 

「・・・多い・・」

 

その言葉と同時に聞いたことのある呼吸音が耳をかすめる。

その直後だ。

 

─バンッ─

 

襖が吹っ飛び、見たことのあるような無いような制服を着た男共がゾロゾロと入ってきた。

 

「御用改めである!神妙にしろ、テロリストども!」

 

「しっ・・・真選組だァっ!!」

 

「イカン、逃げろォ!!」

 

ヅラの一言で、弾かれたように反対側の襖へ逃げ出す。俺もすぐに美桜を抱き上げて走り出した。

 

 

 

 

 

❀side:美桜❀

 

 

「なななな、なんですか!あの人ら!?」

 

「武装警察『真選組』反乱分子を即時処分する対テロ用特殊部隊だ。厄介なのにつかまったな。どうしますボス?」

 

「だーれがボスだ!!お前が一番厄介なんだよ!!」

 

「ヅラ、ボスなら私日任せるヨロシ。善行でも悪行でも、やるからには大将やるのが私のモットーよ」

 

「オメーは黙ってろ!!何その戦国大名みてーなモットー!」

 

三人がボケてツッコんでいる間に、私は追ってきている真選組の気配を探っていた。

 

さっきの部屋にいた時点で、建物内の様子がおかしなことに気づいた。異様に静かで、それなのに殺気や闘気に溢れていたのだ。すぐさま呼吸(空間色覚)を使い、建物内の様子を伺ったところ、大勢の帯刀者がこの部屋に真っ直ぐに向かってくるのが分かった。

 

それで今に至るのだが、私が感じた気配の内、二名ほど真選組の中でも別格であろう者がいた。あくまでも、()()()()()()()()()()()の話だが。

それでも刀の扱いに慣れていることに変わりはない。それに、この場にいるのは私だけではないのだ。新八や神楽、銀もいる。

 

(・・・もしもの時は──)

 

木刀を持つ右手に力が入る。

そして、その瞬間はすぐに訪れた。

 

「オイ」

 

「ふっ!」

 

右側から勢いよく近づく殺気。私は銀の腕から抜け出して、木刀を左手に持ち替えてから右手で銀の肩を突き放した。左手に持った木刀を殺気源に突き出して、刀の切っ先を止める。何の変哲もない、ただの突き。距離をとるため、すぐに刀を引いて下から顎めがけて回し蹴りをする。予想通り、相手は後ろに後退して避けた。

 

「ほぉ〜、なかなかやるなお前」

 

「美桜!!」

 

すぐに銀が起き上がって駆け寄ってきた。思ったよりも強く突き飛ばしてしまったらしい。呼吸を使った状態だから、加減を間違えたのか。

 

「怪我は!?」

 

「してない」

 

「せっかくの喧嘩だ。楽しもうや」

 

「オイオイ、おめーホントに役人か?よく面接通ったな。瞳孔が開いてんぞ。美桜、俺の後ろにいろ」

 

「ん」

 

「人のこと言えた義理かてめー!死んだ魚のような()ェしやがって」

 

「いいんだよ。いざという時はキラめくから」

 

し、死んだ魚のような目・・・。銀、そんな目してるの?

 

「土方さん、危ないですぜ」

 

「「!」」

 

「っ!」

 

初めて聞く声。その直後、体を抱え込まれて衝撃が走る。爆風とパラパラと壁や床だった物が音を立てて落ちる。嗅ぎなれた甘い匂い、これは銀だろう。どうやら、庇ってくれたらしい。

そのまま私を抱えて立ち上がり、またどこかの部屋に避難した。入ってすぐに入口を塞いだようで、出てくるように要請する声が外から聞こえてくる。

 

「美桜、ありがとな」

 

「ん・・・・?・・・焦げ臭い」

 

「銀さん、髪、増えてない?」

 

「髪?」

 

銀の髪が増えたとはどういうことだろうか。この焦げ臭い匂いと関係が・・・?

私は銀の頭に手を伸ばして髪を触る。

 

「・・・ぎ、銀の髪が・・・・・フワフワが・・・」

 

さっきの爆発で頭がチリチリになってしまっていたのだ。私の癒しの一つが・・・なんということだ。私は少なからずショックを受けた。

銀の髪──フワフワという癒しが消え失せたことに気を落としていると、後ろにいる桂さんからガサゴソと懐を探る音が聞こえてきた。

 

「?そりゃ何のまねだ」

 

「時限爆弾だ。ターミナル爆破のために用意していたんだが、仕方あるまい。コイツを奴等におみまいする・・・そのスキに皆逃げろ」

 

どうやら、まだ分からないらしい。

銀もさすがに我慢できなくなったのか、私から離れて桂さんの胸ぐらを掴んだ。その反動でゴトッと爆弾が手から落ちる。桂さんの説得は銀に任せて大丈夫だろう。

迷惑にならないように、じっとしておこうと思った時だ。

 

「美桜姉・・・」

 

神楽が申し訳なさそうな声で話しかけてきた。

 

「何?」

 

「コレ・・・」

 

「?」

 

手渡されたものは球体の何かで、ピッピッと機械音のような音もする。鉄でできているようで、ひんやりと冷たい。

 

「え?ちょ、美桜ちゃん?何で爆弾持ってんの!?」

 

銀が焦りだした。え、コレが爆弾?

 

「ゴメンヨ銀ちゃん・・・コレ・・・いじくってたら、スイッチ押しちゃったヨ」

 

神楽の一言で空気と時間が凍りついた。

 

 

 

─────────────────────

 

 

「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」

 

「やべェ、ビデオ予約すんの忘れてた。さっさと済まそう、発射用意!!」

 

外からなんとも不吉な言葉が聞こえた瞬間に、銀と新八と神楽が襖を蹴破った。私は銀に手を引かれながら三人について行く。

 

「なっ・・・何やってんだ止めろォォ!!」

 

分かる。仕事してる、貴方たち。でもね・・・

 

「止めるならこの爆弾止めてくれェ!!」

 

全くもってその通りである。止めるなら爆弾止めてほしいのである。本当にお願いだから。

切実に心の中でお願いする。警察なのだから何とかしてくれるだろう。そう思っていたのだが。

 

「おわァァァ!!爆弾持ってんぞコイツ!!」

 

全員がとてつもない反射で逃げ出した。爆弾と犯罪者(仮)を目の前にして、見事な職務放棄である。

そんなこんなしているうちに・・・

 

「げっ!!あと6秒しかねェ!!」

 

「銀さん、窓、窓!!」

 

 

 

 

条件反射だ。

 

私は木刀を握り、銀の手から爆弾を強引に奪い取った。後ろからの制止の声を無視して、窓まで全力で走る。勢いに乗ったまま呼吸の型を整えた。

 

「【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃】」

 

足と腰に力を集中させ、勢いよくガラス窓まで突っ込む。木刀を前に突き出して勢いのままにガラスを突き破り、外へ飛び出す。そして、今度は力任せに体をひねり、神経を腕に集中させる。

 

(被害は出さない・・・絶対に!!)

 

できるだけ高く、何も爆発に巻き込まれぬようにしなければ。

呼吸を限界まで高めて腕を振り抜く。爆弾は手を離れて上へ上へと上がって行く。

 

「っ──」

 

爆弾はこれで大丈夫だろう。今度は自分をどうにかしなければ。

幸い、まだ手元に木刀がある。呼吸も持続できているため、着地の時に技を出せば、衝撃を少しは和らげられるだろう。地面に甚大な被害は行くだろうが、こればかりは仕方ない。

型の形を整えようとした時だ。

 

「わっ!!」

 

腕を掴まれて、ブラブラと宙吊り状態になった。

私は、この手を知っている。優しくて、大きくて、いつも頭を撫でてくれる手。

 

「なっ・・・にしてんだァ!!大怪我どころじゃすまねェぞ!!」

 

「ご・・・めんなさい?」

 

「何で疑問形!?あァ!くそっ!今回は!マジで説教だからな!!」

 

「・・・・・・」

 

とても、かなり、それはもう「はい」とは言いたくないが、決定事項の様だ。

何をそんなに怒っているのだ。ただ、爆弾処理のためにガラスを突き破って飛び降りただけだろうに。

頭のはるか上では、爆発音が鳴り響いた。

 

 

 

それからは色々と大変だった。

どうやら銀は、私のように飛び降りたようで、近くにぶら下げてあった宣伝の幕にしがみついて私の手を掴んだらしいのだ。私は分からなかったが、それなりに高さがあったらしく、伝って降りるのは危ないと銀が判断。私を抱えて幕を登ろうとする銀を、私が止めた。片腕で登るなど危険すぎる。

ではどうしたか。簡単である。近くのガラス窓を、私が木刀を投げつけて割ったのだ。それなりに強固だったようだが、腐ってもガラス。簡単に割れた。

が、何故か銀に説教を増やされた。解せぬ。

そして現在。私は何かを背中に構えているであろう銀の前で正座させられている。場所はガラスを割って入った廊下から少し離れた場所。その傍ではガラスがあるからと横抱き移動させられたのだ。救いになったかもしれない可愛い従業員二人も気配はあれど、かなりの距離を保ち、近づいてこないらしい。何を言いたいのかというと、

 

(逃げ場がない・・・・)

 

そうでなくとも、説教を軽減する手段が全て手から離れてしまった。もはや、足のしびれからは逃れられないのである。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・美桜」

 

「・・・・はい」

 

「俺、危ねェことはすんなって言ったよな」

 

確かに言われたので、頷く。

 

「何で、あんなことした」

 

いつもより低い声。今までにないくらい怒っているようだ。何で、と言われても、特に理由は無いのだから仕方ない。

 

「・・・私は・・・鬼殺隊、だから」

 

「っそれは、鬼を殺すための組織だろォが!!今回のこととは──」

 

「関係なくなどない」

 

どうやら銀は鬼殺隊のことを誤認しているようだ。少なくとも私の解釈とは違う。

 

「確かに、鬼殺隊は鬼を狩る。だが、それは全て人を守るためにすることだ。鬼殺隊は鬼を狩り"人を守る"ために存在する組織。例え鬼が原因でなくとも、人が困っているのであれば、増して命の危険があるのなら、この身と引き換えにでも守り通す。だから、関係なくなどない」

 

「・・・・・・・」

 

銀が黙ってしまった・・・・。い、威圧してしまったのだろうか。いやでも、銀は戦争に出ていたのだから、これくらいで怯えたりはしないはずだ。

 

「ぎ、銀・・・?」

 

立ち上がって、銀の顔を覗き込む。見えないけれど、顔に触れれば表情くらいは分かる。

 

「・・・っ」

 

そっと両手で頬に触れようとすると、私が銀に触れる前に抱きしめられた。

 

「銀?」

 

「・・・もう、いい」

 

「?」

 

「一人で守ろうとするな。一人で行くな。頼むから・・・・っ」

 

腕に力がこもって、肩に顔が埋められる。もしかしたら、"一人にされてしまった"あるいは、"守られて死なれてしまった"ということがあったのかもしれない。戦争に参加していたのだから、当たり前だ。戦いの場に身を置くと、親しくなくとも自然と仲間意識が強くなる。先程の桂さんの話からするに、銀は二つ名を付けられるほどの力があった。要するに戦争における者たちの中では希望であり、驚異であったのだ。敵からすれば真っ先に倒したいだろうし、味方からすれば生き残ってもらわなければならない。大抵の攻撃は自分で防げたのだろう。が、どれほど強くても体力と気力は有限。必ず隙はできてしまう。敵はそれを見逃さず、味方は敵の行動を見逃さない。

 

少しでも勝機を、希望を、光を。

未来へ繋ぐために、と。

味方が目の前で倒れたことは少なくないはずだ。

私とて、何度経験したか知れないのだから。

 

「・・・ん。次は一緒に」

 

守らないという約束はできない。それは、お館様(あの方)との誓いに背くから。何より、私の魂が許さない。人は守らなければならないのだから。

 

───だから

 

「・・・あァ。俺と美桜で守るんだ」

 

二人で守ろう──

 

あの子たちの未来が輝けるように。

あの子たちが笑えるように。

何事も無かったかのように終われるように。

 

 

 

 

「「二人で一緒に」」

 

 

 

 

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