ハイスクールK×H   作:柏葉大樹

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第1話

 駒王町、日本にある地方の町。町の規模は至って普通で、今の日本であればそう珍しくはない町である。

 

 

 

 

 

 

 ピピピピピ!

 

 

 

 

 

 

 そこにあるとある家。その部屋の主がこの物語の主人公である。

 

 「ん~~~~ん。」

 

 目覚まし時計が鳴りながらも掛布団を頭まですっぽりと被っている。そこへ扉をドンドンと強くノックする音が響いてきた。

 

 「ん~~~~。もう少しだけ~。」

 

 布団の中から聞こえる声は高校生くらいの少年のものであった。その彼は布団から出ようとしなかった、微塵も出ようなんて気持ちは無かった。それを知ってかノックの主はノックを辞めるとそのまま扉を開けた。

 

 「もう、学校があるのに。」

 

 ノックの主は彼と同じくらいの年の少女だった。黒髪に琥珀色の瞳、その風貌は氷を思わせるものだがその表情は柔らかく困った色をしていた。

 

 「ねえ、昨日の夜も忙しかったのは分かるけど。良い加減に起きないとお姉ちゃんが来るよ。」

 「あと、5ふ~ん。」

 

 少女の声かけに少年はなおも惰眠を貪ろうとする。そこで少女は最終手段に出た。

 

 「あ、お姉ちゃんが来た。」

 「今、起きた!!」

 

 少年が頭が上がらない人物であるお姉ちゃんが来たかのように言葉を放ったのだ。それを聞いた少年は跳び起きて布団から完全に体を起こした。

 

 「待って!待って、姉ちゃん!起きたから!!」

 

 と大声で件の人物が来るのを身をこわばらせて待つ。だが、数秒が経過して分かったのはいつもの如く、同じ屋根の下で生活をしている彼女が常套手段として使っているはったりだということである。

 

 「おはよう、大樹。」

 「あ、またやられた。」

 「ほら、顔を洗って着替えて。朝ごはんが出来てるよ。」

 

 茶色がかった短髪に一見人懐っこい印象の表情を恨めしいものに変えて少女を見る少年=大樹はそのまま布団の上で頭をぼりぼりと掻く。

 

 「ねえ、忘れてるよ。」

 「え!?」

 

 少女は大樹にあることを忘れていると言う。それに対して大樹はそのまま不機嫌さを隠さない反応をする。

 少女はそのまま大樹の方へ顔を近付けてキスをした。

 

 「おはようのキス、忘れてる。」

 「ああ、うん。」

 

 それに毒気を抜かれたようで大樹はさっきまでの不機嫌な表情を虚を突かれた表情になった。

 

 「ねえ、大樹の方からして。」

 

 それを言われ、今度は大樹の方からキスをした。

 

 「ああ、おはよう、円香。」

 「おはよう、大樹。」

 

 少女=大地円香は笑顔を見せる。これが、この話の主人公である黒崎大樹にとっての日常である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もう、マーちゃんもだい君も遅いよ。朝ごはんが冷めちゃうよ。」

 

 あれから身支度を整えた大樹と円香を待っていたのはどことなくほんわかした雰囲気を醸し出す紫色の髪の女性だった。この家の大黒柱で二人にとって育ての親同然である大地束である。彼女こそ大樹が頭が上がらないお姉ちゃんである。

 

 「いや、もう。昨日も遅かったからもうちょっと寝ていたいんだけど。」

 「はいはい、良いから食べて食べて。お姉ちゃんはもう仕事に行くから後片付けと戸締りをお願いね。」

 

 そう言うと束はそのまま家を出た。残った大樹と円香は食卓を囲み、朝食を食べ初めた。二人は食べ終わった食器を下げるとそれぞれの鞄を持って家を出た。

 

 「ケル。お留守番、頼むな。」

 「ケルちゃん、行ってきます。」

 

 二人は家の小さな庭にある犬小屋で寝ている黒い犬=ケルに声を掛けた学校へ向かった。声を掛けられたケルはそのまま微睡に中で眠ったままだった。

 

 

 

 

 大樹と円香が通うのは駒王学園の高等部である。かつては女子高であった駒王学園だが今は合併により男子生徒も通うようになっている。

 

 「よう、黒崎!」

 「お、イッセー。おはようございます!」

 

 通学中に大樹に声を掛けたのは大樹の友人の一人である兵藤一誠である。学園内ではそれなりに有名もとい悪名が轟く男子生徒であるが大樹からすれば熱血漢の正義感の強い良き友人の一人である。

 

 「兵藤君、おはよう。」

 「円香ちゃんもおはよう。なあ、黒崎。昨日のテレビ、見たか?」

 「ごめん、バイトで忙しくて見れなかった。」

 

 そんな彼らは高校生らしく、直近の話題で盛り上がる。

 

 「イッセーさん、おはよう!」

 

 元気よく一誠の腕に抱き着いてきたのは大樹たちの一個下の後輩である塔城白音である。

 

 「おわ、白音ちゃん!」

 「塔城さん、おはよう。相変わらずのイッセーLOVEなようで。」

 「そういう黒崎さんと大地さんもラブラブですよ。」

 

 そう話す白音はその豊かな乳房をしっかりと一誠の腕に押し付けてその存在感を主張している。当の一誠もどこかほおが緩んでいる。

 

 「流石、筋金入りのおっぱい星人。」

 「うるせ。」

 「イッセーさん!今日の放課後は予定はありますか?良かったら、新しい甘味処が出来たのでご一緒に。」

 「良いのか、俺で?」

 「はい!」

 「白音ちゃんは本当に兵藤君のことが好きだよね。」

 「これでもまだ付き合ってないもんな。」

 

 そんなこんなで4人は駒王学園へと着いた。

 

 「お~い!」

 

 そんな4人に校門の前で手を振る坊主頭の少年、彼と同じように大樹たちに手を振る眼鏡の少年、そこに少女も加わっている。

 

 「よう、松田、元浜、桐生。」

 「おっす、イッセー!!」

 「今日もお熱いわね。」

 「黒崎も変わらずだな。」

 「おはよう、まっつん、はまやん、アイさん。」

 

 坊主頭の少年は松田、眼鏡の少年は元浜、彼らと共にいたのは桐生藍華である。彼らも大樹の友人であり、一誠とは中学のころからの友人たちである。

 

 「それでは、先輩方、イッセーさんをよろしくお願いします。」

 「まっかせとけ、白音ちゃん!」

 「まあ、特に大きなトラブルなんて起きないと思うけどな。」

 「それじゃあ、後でね。」

 

 ここで白音は自分の学年の教室に向かう。大樹たちも同じように自分の教室へ向かおうとしたところだった。周りの女子生徒たちが黄色い悲鳴を上げる。そこには一誠とよく似た風貌を有する男子生徒が群がる女子に気障なことをしていた。

 

 「おい、行こうぜ。あんな奴、ほっとこうぜ。」

 

 全員があまり良い表情をしなかった中で一誠は何も気にしていないように声を掛けた。それで松田たちは教室へ向かい始めたが大樹と円香はその男子生徒に警戒の眼差しでいた。

 

 「大樹、円香ちゃん。行こうぜ。」

 

 二人に声をかける一誠。それでも、大樹と円香はしばらくはその男子生徒を見たままだった。二人は一誠たちが校舎の中へ入ろうかというところでやっと校舎の方へ入っていった。それを例の男子生徒は女子たちと戯れる中で横目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 駒王町では他の町以上に行方不明者が出ている。その数は一週間で最低5人、多い時には10人を越えるときもあるのだ。当然ながら、町の人々は夜遅くの外出はなるべく控えている。

 

 「うぃ~。」

 

 それでも夜分遅くに動いている人物もいる。この男性はどうやら飲み会の帰りらしく、覚束ない足取りで家路へと着いていた。

 

 「んんん?なんだぁ?」

 

 そんな男性の前に何かが現れた。電柱の隣に佇んでいる謎の黒い存在。その異様な雰囲気は普段であれば男性も怪しいものとして警戒の色を示している。だが、この時は酒が入っていたこともあってまともな判断をするのに時間かがかかってしまった。その黒い何かはそのまま男性の方へと歩み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな夜遅くに一誠は日課であるランニングをしていた。色々と悪名が轟いているのだが実際の処はあまり見ない好青年である。その悪名もある人物が意図的に流したもので一誠自身もかなり苦しんできた。中学、高校と心から信じられる友人が出来たことで自殺などを考えることは幸いにも無かった。

 

 「うわあああああああ!!」

 

 そんな一誠の耳に男の悲鳴が聞こえた。一誠はそのまま声のした方向へ走り出した。

 

 「大丈夫ですか!?」

 

 一誠は倒れている男性に肩を貸す。

 

 「あ、あれ!!」

 

 男性が指を刺した方向を見た一誠。そこには漆黒のぼろ布を纏った身長が2メートルを超すほどの謎の存在を見た。見るとそれはそのまま一誠と男性のいる方向へゆっくりと歩いてくる。

 

 「立って!!」

 

 一誠は男性に肩を貸すとなんとか起こそうとする。だが、男性は腰が抜けてしまい、立ち上がりそうもなかった。

 一誠を見るその異形はぼろ布から鋭い爪を持った巨大な手を出し、その腕を一誠と男性に向かって振り下ろした。

 

 「ガウガウ!!」

 

 そこへ黒い犬が異形の腕にかみついた。異形はそのまま黒い犬を振り払う。

 犬はそのまま一誠の前に着地すると異形に威嚇する。その犬を見て一誠はその犬が自分の友人の家に居る犬ということに気が付いた。

 

 「ケル!?」

 

 さらに、ケルの隣に一誠にとっては見慣れた人物が現れた。

 

 「イッセー!大丈夫か!?」

 

 黒い薄手のロングコートを羽織っている大樹だった。

 

 「黒崎!どうして!」

 「うわあああああああ!!」

 

 一誠が大樹に声を掛けるが男性はすぐに立ち上がって逃げていった。それを見た大樹は異形へと視線を戻す。

 

 「イッセー、あいつから傷を受けてないか?」

 「いや、ケルのおかげで傷は大丈夫。でも、どうして?」

 「ああ、バイト。って言うよりも仕事だけど。」

 

 そう言った大樹はそのまま異形を睨む。一方の異形はそのまままたも巨大な爪を振るう。だが、ケルが体当たりをして牽制する。

 

 「ケル!深追いするなよ!!」

 「ガウ!!」

 

 大樹はケルにそう言うと一誠を連れて別の場所へ逃げる。

 

 「はあ、はあ、あれは何なんだよ!!」

 「あれは亡者。冥府から逃げてきた魂で現世の生き物に憑依して怪物になった存在だ。」

 「亡者!?冥府!?」

 「警察には話すなよ。言っても信じてもらえないから。」

 「なあ、もしかして町の行方不明者ってあいつの所為なのか?」

 「あいつ以外にもいるけどな。てか、なんで夜にランニングしてんだよ。」

 「誰も声を掛けないから良いって思ったんだ。それで、俺はどうすれば良い?」

 「このまま逃げてもらちが明かない。人気のないところに奴を誘う。」

 「何をするんだよ!?」

 

 逃げる途中で話す二人だがその物陰から何かが飛び出した。

 

 「ワンアン!!」

 「ケル!イッセーと一緒に円香の所に行け。」

 「ワン!!」

 

 その何かはケルで大樹はケルに一誠と一緒に行くように言った。それはケルもすぐに理解したらしく、一誠の前に移動すると着いてきて言わんばかりに一吠えした。

 

 「大樹はどうすんだよ。」

 「これがバイトだからなあ。」

 

 一誠は一人残る大樹の身を案じる。だが、大樹から出た言葉はそこまで重い色を持ってなかった。

 

 「大丈夫。また、明日、学校で。」

 

 そう言うと大樹はケルの方を向いて行くように身振りを示す。ケルはいっせいに一吠えすると走り出す。一誠は迷ったもののケルの後を追う。

 

 「必ず、戻って来いよ!!」

 

 そう言って一誠は暗がりへと姿を消した。それを聞いた大樹は少し声を出して笑った。

 

 「まあ、一誠が心配するほどじゃないんだけどな。」

 

 そう言った大樹の近くに異形が追い付き、その爪を振り下ろした。それを大樹は危なげなく躱し、あろうことかその異形に強烈なローキックを放ったのだ。

 いきなり反撃されたことでよろめく異形。そこへさらに大樹は異形の腕を掴み投げ飛ばした。異形はそのまま大樹が一誠と共に逃げる中で見つけた廃病院の壁へと激突した。大樹はそのまま廃病院の敷地へと入る。

 

 「グルルルル!!」

 

 異形は自身を投げ飛ばした大樹を見て巨大な両腕をぼろ布からあらわにした。それを見て大樹は左手を握り、右手を手刀の形にしてファイティングポーズを取った。

 異形が両腕を力任せに振るい、大樹をその爪で切り裂こうとする。大樹はそれをしっかりと見切りさらにパンチやキックを放ち、異形を攻撃する。その中で大樹はぼろ布を掴み、異形が振り下ろした腕を絡めとり、投げ飛ばした。

 異形は遂にぼろ布を捨て、その本来の姿を現した。醜悪なその見た目から憑依先となった動物の特徴がよく分かる。長く突き出た口からは鋭い2本の前歯が飛び出ており、腰から細く長い尻尾が自由自在に動いている。

 

 「なる程、ネズミを憑依先にしたのか。しかも、その様子だと既に魔獣化しているな。ほとんど理性も無いか。」

 

 ネズミ獣人にそういう大樹。そこへ、大樹のロングコートのポケットから音が鳴った。

 大樹はそのポケットからスマホを取り出して、スマホに着信したその内容を見た。すぐにスマホをしまうと、大樹はコートの内ポケットから黒色をプレートを取り出した。

 

 「ここからは俺も本気で相手をする。それと一度タルタロスから逃げてきた奴には情状酌量は一切しない。」

 

 そう言うと大樹はプレートを前に突き出した。すると、大樹の腰に鉄色のベルト=ミライドライバーが装着された。

 大樹はミライドライバーにプレートをセットする。

 

 ≪ハデス!!≫

 

 ミライドライバーはプレートと合体してハデスドライバーへと変化した。それと同時にロック調の音声が流れだす。それと同時に廃病院の景色が変わり荒涼とした大地が広がり、そこかしこに青白い炎が上がっている。

 

 「変身。」

 ≪ゴン!!神覚醒!ハデス!!ジャッジメンターオブハデス!!≫

 

 大樹はハデスドライバーのプレート部分の上部にあるスイッチを拳で押した。するとプレートは展開し、中から金と銀の装飾が目を引く狼の紋章が現れた。それと同時に大樹の周囲に漆黒に煌めく鎧が現れ、大樹に装着された。漆黒でありながら煌めきを有する鎧は金と銀の装飾で荘厳な威風を放っていた。そして最も目を引くのはオオカミを模したその仮面である。敵を威嚇し、その罪を見据える、獣の荒々しさに神が持つ厳かなものを感じる。

 

 「ギ、ギィ!」

 

 大樹が変身したことでその佇まいにネズミ獣人も怯えた声を上げた。

 仮面ライダーハデス、大樹が変身した姿であり、オリンポス神話の冥府神ハデスその人である。

 

 「現世に逃亡した亡者、真名ジャック・ザ・リッパーよ。裁きの時間だ。」

 

 ネズミ獣人、冥府から逃げてきた亡者であるジャック・ザ・リッパーはついに逃げ場がないことを悟った。

 仮面ライダーハデスはそのまま悠然とした歩みでジャック・ザ・リッパーに歩み寄る。それを見たジャック・ザ・リッパーは両腕の爪を振りかざすが仮面ライダーハデスの鎧に傷一つ着けることが出来なかった。

 怯えるジャック・ザ・リッパーに仮面ライダーハデスは青白い炎を右腕に宿し、ジャック・ザ・リッパーを殴り飛ばした。そのままジャック・ザ・リッパーは廃病院の壁に埋まってしまう。

 

 「ここまでに現世の生者を12人殺害した。前世も併せて16人、タルタロスを抜け出し魔獣へとなり下がったお前に閉じ込めるべき牢はない。今ここでその魂を虚無へと返す、それがお前に下す裁きだ。」

 ≪ジャッジメントハデス!≫

 

 仮面ライダーハデスはハデスドライバーを操作、右足に青白い炎を宿して壁に埋まったジャック・ザ・リッパーにそのまま右足でキックを放った。跳び蹴りではなくただの横蹴りの体勢ながらそのキックは廃病院ごとジャック・ザ・リッパーを粉砕、そこから青白い炎が上がり廃病院もジャック・ザ・リッパーも灰燼に帰した。




 遂に手掛けてしまいした、D×Dの二次創作。主人公は原作では敵側の冥府神ハデス。実際には冥府神ハデスを主人公として話を書こうと常々考えていました。このほかにも短編の話を出すので楽しみにしてください。

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