彼の人は   作:後生さん

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彼が鬼卿となるまでのお話。



四人

 

昔、死んでみようと思ったことがある。

 

それは本当に、ふと頭の中で浮かんだことだった。

 

そもそも最初は、自分が不老だなんて思いもしてなかったからさ。

それこそ普通に歳をとり、普通に仕事をし、普通に家庭を持ち、普通に時の流れるままに、普通に死んでいく。俺はそう生きていくのだと、当然の様に思っていた。

 

けどある程度の歳まで生きてくると、俺ははたと気付く。

それは周囲の人間も不審に感じるほどの、明確な問題だった。

 

 

俺の姿が、全く変わらないのだ。

 

 

一時期、ただ童顔なだけだと思い込んだ。少し若く見られるだけだと。少しばかり、成長が遅いだけだと。

でもそれが、50になってからはもう誤魔化せなかった。

 

 

──「不老」。

 

歳をとらず、老衰で死ぬことはない。

 

 

 

俺は人間だ。

 

怪我もするし、人間と同じ早さで治るのだから。

 

俺は人間だ。

 

それ以外に、なにも可笑しな点はないのだから。

 

 

 

 

……俺は、人間なのだろうか。

 

不老な人間が、存在するのだろうか。

 

 

 

 

 

昔、死んでみようと思ったことがある。

 

それは歳が150を越えたあたりから、自然と思うようになったことだった。本当に、ふと思いついたことだった。

 

……………でも、止めた。

 

 

 

「だって俺は、人間だから」

 

 

 

今更、死ぬのが怖かった。

他人が死んでいく様を看取ってから、尚更怖くなった。

とてつもなく、怖かったんだ。

 

 

それからというもの、俺はただ生きた。時代を滑るように、周りの変化を楽しみながら、ただただ生きてきた。

だってそれが、俺にとって何よりも安心出来ることだったから……

 

そして、それは新たな出逢いをもたらしてくれた。

 

 

 

「──お前」

 

「うん?…おや、これは面白いな」

 

 

一目で人間では無いと感じた。幾世紀を見てきた俺にとって、人間か人間じゃないかなんて容易なものだったから。

人ならざる鬼の無惨様は、変わることのない俺に興味が沸いたらしく、そしてそれは、永いこと類を知り得なかった俺にとっても、当然同じ感情を芽生えさせてくれた。

 

 

「お前、名はなんという?」

 

「名前?いいよ、好きに呼んでくれ。俺にとって名前は、いずれ忘れられる悲しいモノだったからさ」

 

「そうか。ならば私が与えた名を名乗るが良い。私はお前を決して忘れることはない」

 

「!……あははっ、そうか、君は死なないか」

 

 

死なないのなら。忘れられないのなら。そうしようかな。

 

 

「──鬼卿。それだけで充分だろう」

 

「ききょう……鬼卿かぁ。あはは、もしやそちらの陣営に組み込まれてたりするのか?」

 

「お前には生温い世界など釣り合わぬ。それに、私は不変であるお前を好いている。逃すつもりなど毛頭ない」

 

「ふふっ、あははっ!それはとても、とても光栄だなぁ」

 

 

 

死なない友人。忘れられない名前。

 

どちらも手に入れられて、どちらもかけがえのない宝になった。その上変える必要もない家も与えてくれたのだから、本当に頭が上がらない。本当に本当に、嬉しかった。

 

 

だから、俺は彼の血が与えられた鬼達が好きだったし、彼等が死ぬのは嫌だった。そんな彼等を殺す鬼狩りが存在すると知って、久しく表に出さなかった嫌悪が沸き出た。

遊びならまだしも、人間が牛や豚を食べるように、鬼にとってはそれが食事なのだ。それとも、もし牛や豚なんかが人間を敵視したとして、同族を殺された怨恨などを口走ったら、彼等は仕方ないなと殺されてやるのか?

 

──いいや、どうせ煩わしくて殺すに決まってる。

 

だって結局、自分以外は「仕方ない」で済ますのだから。

 

この左眼を潰した、異端を恐れる彼等と同じに。

 

 

 

まぁ色々言ってはいるが、所詮俺も同じ人間だ。

友人がしていることは客観視すれば、悪ではあるし、理解もしている。

でも、それは全て己を生かす為だから。

 

俺だってそうさ。俺も死にたくない。

そんな俺を理解している無惨様は、一度俺に提案したことがある。きっとそれは、不変だけを思った末だろうけど。

 

 

 

「鬼卿。

 

 

 

────鬼になるか?」

 

 

 

「…?なんだ、選択の余地をくれるんだな」

 

 

「お前は、重症を負わなければ死ぬ事は無いと言うが、碌でもない事に巻き込まれ死ぬ危険性はあるだろう。

なればこそ、鬼になればその不安は解消される。

それに、その左眼も再生するはずだ。お前にとって悪くない話ではないか」

 

 

「……んー、確かに羨ましいとは思うけど」

 

 

 

無惨様の血にもし適応しなかったら普通に死ぬな。

 

 

 

「……ふむ。それこそ不本意か。この話は忘れろ」

 

「あはは、そうするよ」

 

 

無惨様にとって、俺が死ぬこと曰く不変が崩れるということで、あまり望ましいことではないらしい。

そんな訳で彼は俺を守る各目としても、新たに鬼を生み出してくれる。鬼達にとっては些か腑に落ちないだろうけど、無惨様の命令でもあるし仕方ないと割り切ってくれるそうだ。申し訳ないけど、鬼狩りの情報で許してほしい。

 

 

……あぁ、そうだ、それに昔といえば。

 

無惨様は確か、昔鬼狩りに殺られそうになったことがあったな。あれは衝撃的過ぎて記憶に残るものだった。俺もあの場に居たけど、無惨様が斬られると珠世にすぐ鳴女を呼ばれ無限城に戻ったから姿は欠片程しか思い出せない。今思えば、だからあの頃鬼殺隊に探られたのか。

 

でもどんな容貌だったかな。無惨様が大層怨んでいる相手。

最近、何だか似ているものを見た気がするけど。

 

…あ、そうだ。

最近といえば、無惨様が珍しく殺気立って探せと仰ってた鬼狩りの特徴は──────・・・あれ?

 

激闘が終わった末の惨状の中、俺はうんと首を傾げる。

 

 

「もしかして、無惨様が探してたのは君かい?」

 

 

鬼の少女を傍に置き、傷だらけの少年に俺は微笑んだ。

 

 

 





無惨様を知る人からすれば、本当信じられない仲の良さですよね。
それが友情なのかどうかは断言しませんけど。

感想・評価あるともれなく無惨様プレゼント!
あまって冗談ジョーク止めてっ、あべしっ!!?

で、ではでは!
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