「なんだあの光…」
石神千空は高校の理科室からその光を見ていた。その光は千空を呑み込み、世界へと広がっていく。呑み込んだ人間たちを石に変えて。
(体が動かねえ…あの光が人類を動けなくするとして…文明は滅んでいてもおかしくない…いつか動けるようになるなら…タイミングが命…!春に復活が最低条件…!)
千空は石になっても驚異的な精神力で自我を保ち、復活を待っていた。しかし…文明の崩壊によって、水が溢れてしまった。川は氾濫し、ダムは決壊。当然、千空もその水に巻き込まれ流され…巨大な岩(瓦礫)にぶつかり、砕ける…その寸前。忽然と姿を消した。
「…は?」
千空はなぞの空間にたっていた。石化は解かれ、元の服装…白衣を着て、様々な扉が壁一面に取り付けられた廊下に立っていた。そして目の前にはまるでどこかの役所のようなデスクに腰掛けた、金髪を七三分けにした眼鏡をかけた男がいた。
「あー…なんだこれ…まず…あんた、ここはどこだ?」
男は応えず、手元の書類を取り出すとそこに何事かを書き込む。すると千空の目の前に石の門が現れ、呑み込んでいく。
「ああ?!おい、ちょっ…おい!なんなんだこれは?!」
己の得意とする科学ではどう考えても説明のつかない状況に困惑し、取り乱す千空。しかし男は歯牙にもかけず、次の書類に目をやる。そうこうしているうちに、千空は呑み込まれてしまった。
「あー…マジかー…これはーあれだ…異世界ってやつか?」
千空の目の前にはどこかの森。そして何を話しているか分からない耳の長い少年達がいた。
「…ああだが…ま、あれだ…とりあえず、動けるな…なんもわかんね…」
千空は困惑を誤魔化すように笑い、目の前の少年達に向き直った。
「助けてください」
それはそれは綺麗な土下座だった。
「ksoryhwbgyhenudhw」
「iwjdyfndkkxjdhskkqnkapkfys」
「あー…何言ってッかわかんねーけど着いていくしかねえ…ククク、博打も良いとこだな」
とりあえず耳の長い少年達(おそらくエルフだろうと千空は当たりをつけた)に着いていく千空。それいがいにとる手が無いから、というのが主な理由である。
(見た感じ薪拾い、か?ガスは通ってねえ…いや、単に田舎なだけか?ククク、マジで情報が全くねえ…せめて言葉が解れば…)
「ksyudkbsj!」
「あ?」
「!kahydjbsyhdbdhks!」
「kduhfbjalhfyje!」
朽ちた石造りの城が見え始めたとき、頭上から声がかけられた。エルフの少年たちは千空を指差し、何事かをしゃべると、木の上に立ち矢を構えていた何者かは指示するような声を出し、エルフ達はそれに従ったのかどこかへ行ってしまった。
「日ノ本の者か!名を名乗れ!」
「!」
(日本語…?!日本人、か?…手掛かりだ…!)
「あー…石神千空だ!あんたは?!」
「何事だ!!」
「?!」
廃城から男の大声がした。
「エルフ達が日ノ本の者を連れてまいりました!奇抜ななりです!石神千空というそうです!」
「…で、あるか」
(二人目…?!マジでどうなってンだこりゃあ…)
「では、連れてこい。ちと話をしよう」
「はっ!では、どうされる?石神殿」
「…石神殿、はやめろ。千空でいい。ああ、俺も話がしたい。連れていってくれ」
「了解した。では此方へ、千空殿」
(さて…鬼が出るか蛇が出るか…ククク、おもしれえ…そそるぜ、これは…!)
かくして異分子は交わった。科学の申し子と言える千空の存在が一体どのような影響をもたらすのかは分からない。しかし確実に、録なことにはならないだろう。
「………ッ…何、だッ」