「さて…先ずは名乗ろうか、千空とやら」
千空は廃城に案内され、そこで不精ひげを生やし、着物を着た五十ほどの男と向かい合っていた。その男の背後には葵の紋が飾られていた。
「俺は信長。織田前右俯信長である」
「……………………………あ?」
千空は目の前の男を恐ろしく胡散臭げに見据える。
(織田信長?あの?同姓同名…いや、前右俯って言ってるし…狂人か?いや、とうにあり得ねえことが起こっている…しかし…)
ここまでを一瞬で考え、とりあえず自らの知識とのすり合わせを行うことにした。
「織田信長ってーとあれか、尾張の?」
「そうそう。なんだ知っているのか、奇っ怪な成りをしているが…南蛮の服か?」
「あー…ククク、あり得ねえ…俺が知ってる信長は本能寺で明智光秀に焼き討ちされて殺されてんだが?」
「ああ?ワシがあの金柑頭に殺されただとぉ?ってなぁ、やっぱ死んだことになってんのか」
「ああ…400年以上、昔な」
「……………………………………………………………………………………………は?」
「む…」
目を見開き大口を開けて驚きを露にする信長。そしていまだに名の分からぬ男は目を細めて千空を見やる。
そして驚愕から復帰した信長は大声で怒鳴り付ける。
「馬鹿を言えい!!400年だと!?金柑頭が本能寺によせてきたのも!この世界に俺がすっ飛ばされてきたのも!まだ半年と経っておらぬわ!!」
「…半年?」
「おお!」
「…時間がずれている?ククク、あり得ねえのオンパレードだな、こりゃあ」
「…時間がずれている、か」
「フフフ…その予想、当たってでしょうな」
「?なんで…いや、そういやあんたの名前は?」
男はゾッとするような美しい微笑みを浮かべ静かに名乗りを上げた。
「私は、与一。那須資隆与一で、御座います」
「那須資隆与一?……あ゛ー…あれだ、扇を射った…」
「………いや、まあそうなのですが…反応鈍くないですか?」
「え、いやまあ…信長に比べッとパッとしないっつーか…」
「………」
「…プッ、クククク…!」
千空にパッとしない、と言われ大分落ち込む与一。おもいっきりどや顔で名乗ったのにパッとしない、なんて言われればそれはそうだろうが。信長は腹を抱えて思い切り笑っていた。
「ダーハッハッハッハ!俺と比べてパッとしねえってよお!ハッハッハ!!」
「……………鳥でも射ってきます…」
「………さーせん」
出ていく与一を見送り、改めて向かい合う千空と信長。
「しかしまあ400年か…色々変わったろうな」
「ああ…月にだって行ったんだぜ、俺達は」
「な!?真かそれは?!」
「ああ…ま、色々あってな、全部台無しになっちまったが…」
千空は自らの頭を親指で指す。そしてニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「まだここに。人類が遺した知恵…科学がある!月にだって行けるぜ…!あんたが持ってるその火縄銃。それをもっと進化させたやつも作れる。俺は作り方を知っている…!」
「!」
「ククク…異世界…良いねえ上等だ…!」
「そそるぜ、これは…!」
「く…はは。鬼だ。やっぱい、地獄行きか」
割りと早く書けたので投稿。次は…まあ1ヶ月以内には…