弱くてニューゲーム   作:双子うさぎ

3 / 8
ある霊能者の話

[前回までのあらすじ]

 

 霊幻「変わったのは世界でなく俺だった……あと超能力者の弟子ができた」

 

 

 

 

 とある雑居ビルの一角にある小さな事務所の中。

 机を挟んで小学生の子供と、20代半ばの青年が対面していた。

 子供は内向的で大人しそうな見た目であり、一方青年は髪が明るく、スーツ姿のどこか胡散臭い雰囲気してる。

 第三者からみれば、奇妙に思える組み合わせだろう。

 青年ーー霊幻新隆はおもむろに胸の前で指を組み、少年ーー影山茂夫の目を見据える。

 厳かな空気纏った霊幻は、大きく息を吐いた後、ピンと人差し指をあげた。

 

「とりあえずお前を弟子にするにあたって、いくつか聞きたいことがある」

 

「は、はい」

 

 一体何を聞かれるのか。

 茂夫は緊張した面もちでピシっと背筋を伸ばす。

 

「まず、お前の超能力はどんなのだ?」

 

「スプーン曲げたり、物を浮かせたりできます」

 

「サイコキネシスか。世界全部……とまでいかなくてもいいが、調味市丸ごと浮かせて○ピュタみたいにできる?」

 

「ま、丸ごと……やったことないです……」

 

「物を浮かす以外で他に何の能力があるんだ?テレパシー、テレポート、治癒、精神操作、肉体強化、サイコメトリー、パイロキネシス、未来予知、時間停止とか色々あるけど」

 

「じょ、除霊はできるけど、そういうのはできない……」

 

「超能力は常時発動してるのか?バリアを24時間欠かさず張ってたりとかさ」

 

「ずっとは疲れて使えなくなるから、使いたいときに……」

 

 茂夫の話を聞いて霊幻は、ふーっと大きく息を吐くと、どっかりソファに背中を預ける。

 

 なーんだ、身構えて損したぜ。

 

「その程度なら大丈夫だ。俺が力の使い方教えてやるよ」

 

「ほ、本当ですか!」

 

 パアッと顔を明るくさせる茂夫に、霊幻は鷹揚に頷く。

 

「大船に乗ったつもりで任せろ!」

 

 茂夫に向かって霊幻はビシっと親指あげてみせる。

 

 もっと凄い力を持ってるかと危惧したが……あーよかった、たいした力持ってなくて!!

 

 自信満々に言い放った霊幻の言葉を聞いて、茂夫は安心したらしく、それまで思い詰めてた顔が嘘のように消えていた。

 キラキラ目を輝かせ、尊敬の眼差しで霊幻を見上げている。

 

「あのっ、お兄さんのこと、師匠って呼んでもいいですか?」

 

「おう、いいぞー。じゃあ俺もお前のこと……名前じゃ味気がないな、なんかあだ名とかないのか?」

 

「友達からはモブって呼ばれてます」

 

「んじゃモブって呼ぶぞ。で、力の使い方教えるといったが、超能力の開発でもするか?」

 

 話を聞いてる限り、モブの力は……かなり弱かった。

 何せ町を丸ごと浮かせることもできないし、超能力のスタミナもない。

 さらに使えるのがサイコキネシスだけとはあまりにも頼りなさすぎる。

 せっかくだし、前世の俺流超能力開発術でも伝授してやろうじゃないか!

 内心茂夫のことを哀れみつつも、どうにかしてやろうとやる気を出す霊幻だったが、茂夫の言葉は霊幻にとって意外なものだった。

 

「僕……師匠から力を暴走させない方法を教わりたいです」

 

「ふむ、力の制御か」

 

 このとき霊幻新隆は思った。

 あれ、超能力って普通、制御できるもんじゃねーの?

 前世の”霊幻新隆”は超能力者だった。

 しかし前世の記憶を辿ってみるも、生まれたときから死ぬまで、一度もコントロールを失敗したことがない。

 

「師匠?」

 

 なにやら難しい顔で考え込んだ霊幻を、茂夫は心配そうに声をかける。

 

「もしかして……できないんでしょうか」

 

 途方に暮れたような顔で泣きそうになってる茂夫をみて、霊幻は慌てて口を開く。

 

「いやそんなことないぞ!大丈夫なんとかしてやる!」

 

 モブ自身、自分の力を怖がってるが、俺から言わせればそんなの気にするほどでもない。

 暴走させてもモブの力じゃたかがしれてる。

 力加減ミスって地球が木っ端みじんになることも、洗脳波強くしすぎて人類全員の頭パーンになるリスクもないだろう。

 せいぜい町が壊滅する程度なら問題ナッシング。

 とはいえ、いくら弱いといっても、超能力持ってない普通の人間相手に使えばそれは凶器になるしな[ついでに俺も死ぬ]

 それに万が一他の超能力者たちと戦闘になった場合、弱いモブだと負けて怪我したり最悪死んでしまう可能性がある。

 とにかく戦闘を避けることを徹底して叩き込んでやらねば、モブが危ない。

 

「師匠の俺に任せとけ!」

 

 今の俺は超能力者じゃないが、モブの力弱いしーーなんとかなるだろ!!

 今世で初めて出会った超能力者の少年、影山茂夫。

 前世では弟子などいなかったが、まさか超能力失った今世で超能力者の弟子ができるとは。

 人生、何が起こるかわからないもんだ。

 そう、しみじみ思いつつも、霊幻は真剣な顔で同じく真剣な顔でじっと見つめる茂夫に懇々と諭す。

 

「いいかモブ。はっきり言おう。残念ながらお前の力はそこまで強くない!」

 

「そう、なんですか?」

 

 他の超能力者に会ったことないので、よくわからないけど……と首を傾げる茂夫に、霊幻はやれやれと言わんばかりにため息をついてみせた。

 

「まあ、他に比べる人がいないなら、自分の強さなんて計れないもんだ」

 

 俺も前世の俺という比較対象がなければ、モブの強さはわからなかったけどな!と心の中で付け加えておく。

 

「たとえばモブ、お前がゲームの主人公で旅に出たばかりだとする。その状態でラスボスに出会ったら戦うか?」

 

 そう霊幻に問われ、モブはふるふると首を横に振る。

 

「今のモブはそのゲームの主人公状態なんだ。力の使い方を鍛えれば強くなれるが、お前はその初期状態のままでいたい。そんなお前が万が一ラスボスーー別の超能力者と出会ってしまった場合……どうしたらいいと思う?」

 

「えっと、戦ったら負けちゃうから……逃げる?」

 

 モブの答えに霊幻は満足そうに頷く。

 

「うむ、それが正解だ!もし超能力者に出会ったら戦っちゃ駄目だぞ。そのときは手を出さず、バリア張って攻撃を防げ。そして隙をみて即撤退、逃げることだ!周りの大人、できれば警察、お巡りさんに助けを求めるのが一番だな」

 

「わかりました」

 

 茂夫はコクっと頷き、素直に霊幻の言葉を受け入れる。

 

「かといって、自分より弱い超能力者なら戦っていいってわけじゃないからな。そもそも超能力ってのは人に向けていいものじゃない。いいか。よく聞け」

 

 一旦言葉を切った後、霊幻はひたと茂夫の顔を見据える。

 

「俺達は人とは違う特別な力を生まれ持ったわけだが、決して自分を特別な存在だと勘違いしてはいけない」

 

 前世の俺はそうやって勘違いして自滅した。

 魅力の本質は人間味。

 超能力なんて勉強ができる、足が速いとかいった特技の一つでしかない。

 そのことに気づかず、超能力に依存し内面を磨くことなく、好き放題にした前世の俺は結局何者にもなれなかったし、満たされない空っぽな人生だった。

 モブには同じ轍を踏ませたくない。

 

「力に自信を持つのはいいが驕ってはいかんぞ。俺達の力は使い方次第で凶器にもなる。刃物と同じだ」

 

 そう教えてやる大人がいなかったから、前世の俺は間違えてしまったんだ。

 だから今世でもし超能力者に会ったら、教えてやろうと心に決めてた。

 

「刃物でやっちゃいけないことといえば何だ?」

 

「人に向ける……?」

 

「よくわかってんじゃねぇか。肝に銘じておけ」

 

 ニっと口の端をあげ、霊幻は茂夫に笑いかける。

 

「人を傷つけるのでなく、人を助けることで力を使う。それが特別な力を持つ俺達のモラルだ。力の制御ができてないなら尚更、気をつけないと危ないぞ」

 

「はい師匠」

 

 真面目な顔で茂夫は何度も頷き、小さく「人に向けて力を使わない……」と繰り返し呟く。

 よし、ちゃんとモブに伝わったようだ。

 

「よろしい!そういや除霊できるって言ってたが……確か幽霊もみようと思えばみえるんだよな?」

 

 霊幻の問いに茂夫は数度目を瞬く。

 

「みえますけど……あの師匠」

 

 もじもじと何か言いたげな様子だった。

 

「どうした?」

 

 トイレか?と暢気にたずねる霊幻に対し、モブは不思議そうに小首を傾げる。

 

「師匠の背中にくっついてる悪霊、そのままにしてていいんですか?」

 

 けっこう師匠の生気吸ってますけどと指摘する茂夫に、霊幻は笑顔のまま固まる。そして冷や汗が全身を流れ出す。

 最近体だるいと思ったら、俺、つかれてたのか!疲労的な意味じゃなくてとりつかれてる的な意味で!

 というか悪霊、普通に存在するのかよ!?

 そりゃそうか、超能力があるなら幽霊や呪いなんかあっても不思議じゃねーよな!

 ということはあれか、今まで見えてた幻聴や目の錯覚、妙な体の疲れも全部悪霊、呪いのせいだったのか?

 

「師匠?」

 

 怪訝そうなモブの声に、ハッと我に返った霊幻は瞬時に取り繕う。

 今世紀最大の霊能力者っぽい貫禄ある顔で重々しく話す。

 

「……モブよ。これはお前を試したんだ。お前の力がどの程度あるかを。視える力はあるようだな。じゃあ次だ、悪霊を消してみろ」[訳※早く悪霊消してくださいお願いします]

 

「はい」[師匠からのテスト……頑張らなきゃ!]

 

 霊幻の言葉に全く疑うことなく、若干緊張した面もちで茂夫は霊幻に向かって手をかざす。

 

 バシュン

 

 実際にそのような音は鳴らなかったが、それくらい体の疲れが一気になくなったのを霊幻は感じた。

 

「消しました」

 

「よし、よくやったぞモブ!」

 

 満面の笑みで茂夫をを誉めちぎる。

 そして心の中では感謝の嵐を送っていた。

 超能力者にありがとう!

 

「だが修行はこれからだ。お前がちゃんと力を使いこなせるよう訓練しないとな」

 

 ひとまず俺の仕事を手伝わせるか。

 悪霊相手なら力加減ミスっても問題ねえし、力のコントロール訓練にうってつけだしな[何より俺が助かる]

 サイコキネシス自体は色々応用きく便利な超能力だし、そのへんもアドバイスしてやろう。

 モブの力は前世の俺には遠く及ばない。

 きっと他の超能力者よりも弱いだろう。

 しかし元世界最強超能力者だった俺の弟子になったのも何かの縁。

 前世の俺ほどじゃなくても、一人前の超能力者にしてやらねば!

 

「頑張ろうなモブ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 これが前・最強超能力者”霊幻新隆”と現・最強超能力者”影山茂夫”のファーストコンタクトである。

 

 

 

 

 

 

 弱くてニューゲーム 3

 

 

 

 

 

 

 超能力者”影山茂夫”を弟子にするも、霊幻の生活は意外にも大きく変わることはなかった。

 仕事は普段通り、適当にのらりくらり依頼人を騙し言いくるめて終わり。

 ただちょっとだけ変わったとするなら、どうしても誤魔化せない”本物”のときには最終兵器モブを呼び出して、除霊させることになったことだろう。

 除霊という行為に関して、茂夫は非常に優秀であった。

 どんなに大きくてグロテスクな悪霊と対峙しても、手こずることなく、簡単に消し去ってしまう。

 また色々な霊能者に見せてもお手あげだったという呪いのアイテムすらも、手をかざして数秒で綺麗さっぱり元通り。

 いやー、モブを弟子にして本当によかった!

 ほくほく状態の霊幻だった。

 もちろんただモブに投げっぱなしにしてはいない。

 悪霊の溶かし方やらバリアなどはちょくちょくアドバイスする。

 特にバリアに関しては、たとえ相手が自分より弱い相手でも必ず張るよう、口を酸っぱくして教え込んだ。

 前世では無能力者や格下超能力者相手に余裕ぶっこいて、不意打ち一発でダウンし負けた超能力者を山ほど見てきたからな。

 アホすぎるだろ超能力者。

 特に自分の力に絶対の自信持ってる奴ほどその傾向が強い。

 超能力者を倒そうと思ってる諸君、いきなり不意打ちパンチは有効だぞ。是非一度試してくれ。

 あとついでにバリアは俺の分まで張るようにとも頼んだ。でないと俺死んじゃう。

 自分で張らないんですか?と聞かれたから、俺のバリアは強力すぎて周囲のものまで消し飛ばしてしまうからなと答えといた。

 実際、前世の俺が張ったバリアも当たったものすべてを弾き飛ばし、時には瞬間蒸発させてたから嘘ではないな、うん。

 除霊やバリア以外にも念動力を使って高速移動する練習もさせたが、途中気持ち悪いとモブがギブアップしたので、やめた。

 モブ自身、酔うからもうやりたくない……と泣きべそかいたしな。

 ついでに他の超能力も開花させようともしたが、モブが他の超能 力に目覚めることはなかった。

 本当モブのやつ、超能力のセンスないな……力も弱いし可哀想。

 霊幻の超能力開発プログラムは早々に打ちきりとなり、結局茂夫は除霊以外で超能力を使うことは殆どなくなっていったのだったーー

 

 

 

 

 

 

 

 おおむね、平和な日常だった。

 時にはモブの人生相談に乗ってやり、またあるときには超能力の訓練と称して除霊させる。

 超能力者との遭遇はモブ以降、全くない。

 もしかしてモブ以外に超能力者はいなのだろうか。

 それを確認する術は今の俺にはない。

 超能力者じゃなくなったから、全世界に超能力者だけがわかる電波とばせなくなったし。

 まあ、少なくとも世界征服狙う超能力集団はいないだろう。

 前世の俺は悪の組織のボスやってたが、今の俺は善良な一般人。

 あの頃の俺みたいに超能力で世界征服できるって勘違いしてる馬鹿はいないはずだ[俺の場合、本当に世界征服できる力はあったが、他の超能力者ではまず無理、不可能だ。今思い返すと前世の俺、凄かったんだな……超能力だけは]

 

 

 

 そして月日は流れーーランドセル背負ってた小学生は学ランを着た中学生となっていた。

 霊幻が適当に始めた霊とか相談所は潰れることなく、今も続いている。

 今日は悪霊がいると噂される呪いのビルへ依頼人たちと一緒に向かう。

 珍しく本物の案件にぶち当たり、とりあえず懐に隠し持ってた食塩袋を景気よく悪霊めがけて、霊幻は激しくまき散らして見るもーー

 

「スーパーで売ってる食塩じゃねぇか。清めた塩じゃねぇと効かねぇよ」

 

 効果は全くなかった。

 馬鹿な……霊が塩に弱いというのは俺の思いこみだったのか?

 いやいや前世ではちゃんと悪霊、溶けたぞ。

 塩に溶けるタイプと溶けないタイプとがいるのか悪霊って。

 と、考えても埒があかない。

 今、俺ができることは一つ。

 

「……ま、塩で溶けないんじゃ仕方ない。最終兵器を呼ぶか」

 

 ポチポチ。

 

「あ。モブ。悪いけどすぐ来てくれないか?」

 

 除霊はすぐに終わった。

 

 

 

 

 

 中学に入ってからも、茂夫の生活サイクルは小学校のときとほとんど変わらなかった。

 学校が終わればそのまま家に帰宅し、もし霊幻に呼び出しされたら現場に急行して除霊を済ませる。

 何か悩み相談ができたら、自分から相談所を訪れ、霊幻に話を聞いてもらい色々なアドバイスをもらう。

 何かしたいことも特になく、のっぺりした毎日を送る。

 このままでいいのだろうか。

 なんてことを悶々と考え始めた茂夫に転機が訪れた。

 そして茂夫は自分の意志で新しいことを始めることを決意するーー

 

 

 

 

 

「で、結局入部したのかよ、その電波部という変な部活」

 

 ばっかだなあと半笑い浮かべる霊幻だが、霊幻の言葉を否定するように茂夫はふるふると首を横に振る。

 

「いえ、入部したの脳感電波部じゃなくて肉体改造部です」

 

 そう言いながら、ぱくりとおやつとして出されたたこ焼きを口の中に放り込む。

 

「肉体改造部ぅ?」

 

「体を鍛え、いい筋肉を作るための部活だそうです」

 

「なんでそんな部活に入ったんだよ」

 

 怪訝そうに眉を顰める霊幻の顔を見つめた後、茂夫はゆっくりと口を開く。

 

「僕は……」

 

 このまま何も変わらない日常でなく、新しいことをやってみて自分を変えてみたいんですと、言葉足らずながらも、率直に自分の気持ちを霊幻に伝えた。

 そういやモブも中学2年、14才か。

 ハフハフと熱々のたこ焼きと格闘しながらも霊幻はふと思う。

 14才、それは青春まっさかり、自分探ししたくなるお年頃である。

 これといった趣味もなく、学校とバイトの往復する毎日。

 それではあまりにも味気ない青春だ。

 何かやってみたいことに挑戦することは悪くないだろう。

 バイトに支障でない範囲でならこちらとしても特に問題ない。

 ただ一つ懸念すべきことは……。

 

「おまえ超能力者なんだから、筋肉つける必要ないんじゃないか?」

 

 なんでその部活を選んだかという点である。

 その気になりゃダンベルどころか鉄骨くらい余裕で持ち上げられるだろうにと突っ込む霊幻に、茂夫は暫し黙り込んだ後、ぽつりとつぶやいた。

 

「もう……超能力に頼った生き方はしたくないんです」

 

 生まれつきの超能力者である茂夫は、自分でも意識せず自然に超能力を使っていた。

 考えるよりも先に超能力が発動し、気づけば超能力に依存してしまう。

 それじゃ駄目だ、ちゃんと自分の力で立って生きられるようにしなきゃ。

 超能力以外の自分の魅力を見つけたい!

 ぎゅっと握り拳をつくり、切実に訴える茂夫に、口の端にソースつけたまま、かっこいいキメ顔しながら霊幻は力強く頷く。

 

「そうだな、超能力に頼りすぎるとろくな目にあわんから、その考えは大事だぞ!」[※前世で頼りまくったせいで今世で苦労しまくってる人]

 

 霊幻に自分の考えを肯定され、茂夫の顔は明るくなる。

 

「そうですよね!やっぱり筋肉あるとモテますよね!」

 

 僕の考えは間違ってなかった!と喜びを顔に表す茂夫を、霊幻はにっこり笑いつつも、心の中で突っ込む。

 

 一番の理由は”モテたい”かよ!

 

 いかにも思春期の男子中学生らしい理由だった。

 

 

 

 

 霊幻に部活入ったことを報告して翌日。

 

「師匠はテレパシー使えますか?」

 

 ふらっと相談所にやってきた茂夫は、開口一番、新聞読んでる霊幻にそう尋ねた。

 

「テレパシー?[今の]俺はちょっとできないな。霊の声は聞くことはできるんだが[※嘘]」

 

「でも何で急に?」と聞き返す霊幻に「なんとなくですよ」と顔色一つ返ることなく淡々と答える茂夫。

 しかし、茂夫の目が一瞬僅かに泳いだのを霊幻は見逃さなかった。

 

「心を覗きたい相手がいるのか」

 

 一般的な男子中学生がテレパシー使いたいと思う対象は。

 ……ははーん。

 霊幻はピンときた。

 伊達に対人能力スキル極めてない。

 

「女か」

 

「!?」

 

 霊幻に心の内を見事に当てられ、茂夫の顔に動揺が走る。

 

「おやおやモブ君わかりやすいねぇ」

 

 読んでた新聞をくるくる丸めた後、霊幻は訳知り顔に物を言う。

 

「ま、モテたいのは全男子中学生の共通観念だから恥じることはないぞ。かくいう俺もモテたくてしょうがないしな」

 

 うんうんと頷きつつ、霊幻は一人空しさを感じていた。

 というのも、今世の”霊幻新隆”はさっぱりと言っていいほど女性にモテないからである。

 何故だ。

 なお前世の自分は問題外だから除外しておく。

 モテるモテない以前に、女性を口説くよりも先に洗脳してたし……うわ最低すぎる前の俺。

 霊幻の顔はイケメンと言っても差し支えないくらい整ってる方であり、また対人能力を磨く過程でモテる恋愛心理テクニックやスマートな会話術などもマスターしている。

 しかし悲しいかな、霊幻新隆は女性に縁がなかった。

 何故だ[大事なことだから二回言いました]

 なお、霊幻がモテない理由は、霊幻の怪しすぎる見た目[茶髪にスーツという変な組み合わせ]に胡散臭い職業[霊能者]、そしてホスト並に口が上手すぎるため、返って女性が警戒し近づかないからである。

 また霊幻の学生時代を知る者たちの間では既に悪評[性格がねじ曲がりすぎて複雑骨折してるなど]が広まってるため、霊幻の存在自体敬遠されている。

 ……本人はそのことに全く気づいてないが。

 茂夫が帰った後もしばらく、霊幻は一人自分のモテなさに嘆き落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 日も暮れ、辺りは真っ暗になった時間帯。

 最後の客も帰り、夕飯用にテイクアウトしたハンバーガーセットを一人食べてた霊幻の元に、帰ったはずの茂夫が戻ってきた。

 その表情は明らかに暗く、どんよりしている。

 一体何事かと霊幻が聞くより先に茂夫の方から口を開く。

 悲愴な面もちで「空気が読めるようになるにはどうすればいいですか」と。

 だがしかし。

 

「空気が読めるようになりたい?そんな上等な処世術お前には無理だろ」

 

 霊幻はバッサリ切り捨てた。

 ズココーとドリンク吸いながら、何いってんだこいつ的な目で茂夫をみる。

 

「空気が読めるのは常識と経験がある奴だけで存在が非常識なお前には」

 

 俺が完璧に空気読めるようになったのも、大人になってからだし。

 なまじ前世でテレパシーと洗脳能力あったから、今世ではお前よりも超絶ハイパー空気読めなくてすげー苦労したんだぞ。お前はまだいい方だよモブ。中学、高校と学年で一番いけ好かない奴ランキングぶっちぎり一位を六年連続とった俺に比べれば。おかげで今でも中学高校から同窓会の誘いはかかってこないし、たまに呪いの手紙も匿名で送られてくるんだぞ。そんな俺でもなんとかやってこれたんだ、お前もきっと大丈夫だよ、うん。

 

「何を今更な事でへこんでんだよ」

 

「……僕のノリが悪いせいで楽しそうな人達の空気が台無しになった」

 

「なぜお前がそいつらに合わせる必要がある?お前の人生の主役はお前だろ」

 

 まあ、かといって好き放題するのもアウトだけどな。

 霊幻の脳裏に浮かんだのは、前世の自分が超能力でやりたい放題してた過去の記憶、黒歴史のオンパレードだった。

 ……死にたい。

 モブの手前、かっこいい師匠を装おうと、身悶えしたくなる衝動を必死に抑え、平静な顔でハンバーガーにかぶりつく。

 いくら自分の人生の主役は自分だといってもあれはやりすぎだ。

 人様に迷惑かけるのダメ、絶対に!

 

「……僕のせいでそのグループはなくなってしまったんです。みんなで笑っていただけなのに」

 

「お前の空気の読めなさは破壊的だからな」

 

 こともなげに言ってのける霊幻の言葉に、茂夫はさらにズーンと落ち込む。

 茂夫のあまりの落ち込みように、何かあったことを察知した霊幻は、どうしたどうした、詳しく話してみろと茂夫から事情を聞き出したーーそして。

 

「……成程。典型的なマインドコントロールだ。救いじゃねぇ。ただ依存させてるだけだ」

 

 茂夫からあらかた聞き終えた霊幻は大きなため息をつく。

 

「集団心理を用いた詐欺に多い手口だがハイパー空気が読めないお前には効果がなかった」

 

 独学で心理学学んでる最中、宗教関連の書物も読み漁ってたため、集団心理を利用した新興宗教にありがちな手口に関しても詳しかった。

 しかしモブ、いくら何でも素直すぎるぞ。

 モテるようになるって誘い文句で、怪しい宗教勧誘にあっさり引っかかるとは。

 超能力の使い方より、詐欺に騙されない方法でも教えておくべきだったか?

 まあ、そのへんはおいおい考えておくとして。

 

「つまりモブ。お前は今日お前にしか助けられない人を偶然助けた、ということになるな」

 

 口に食べカスいっぱいつけたまま、霊幻はニッと笑った。

 

「……」

 

 茂夫は何も喋らない。

 ポテト食うかと差し出す霊幻に、こくりと無言で頷きながらも手を伸ばす。

 モグモグと貰ったポテトを口に運び食すその顔に、さっきまでの思い詰めた暗い表情はもうなかった。

 

 モブ 0%

 

 

 

 

 

 

 

 霊とか相談所には色んな仕事が舞い込んでくる。

 悪霊退治、呪い解除、そしてーー心霊写真のお祓いも立派な仕事の一つ。

 パソコンにデータを取り込み、CGソフトを用いて写真を不自然なく合成処理するも、勢い余って依頼人の眉を消してしまい、さらに修正するかとマウス操作してるときだった。

 

「師匠。今朝からこの霊がくっついてるんですけどどう思いますか?消した方がいいかな?」

 

 自分に憑いたこの悪霊をどうすべきか。

 心霊写真の合成処理に奮闘してる霊幻に、茂夫は意見を仰ぐ。

 いったん作業を中止し、茂夫の方へ顔を向ける。

 じーっと茂夫をみた後、霊幻は平然と答えた。

 

「弱すぎて俺には見えん」

 

 は!!?

 悪霊の形相が凄いことになってるが、残念ながら今世では全く霊感がない霊幻にはその顔は見えていない。

 

「ちなみにその悪霊はどこで拾ってきたんだ?」

 

「昨日話した宗教のところで。消したつもりだったんですけど、まだ残ってて、僕に憑いてるんですよ」

 

「なんて名前だ?」

 

「エクボです」

 

「ふーん。エクボ、ねえ」

 

 ぽりぽりと自身の頬をかきながら、前世の記憶を辿っていく。

 人を洗脳して自分の配下にする悪霊……俺の記憶にはないな。

 過去の記憶を思い返しても、脅威になるような悪霊はいなかった。

 というかいつもバリア張ってるから、オート除霊モードになってて、視認する前に消し飛ぶからまともに視たことないんだよなあ……。

 数十人程度しか洗脳できないみたいだし、下級悪霊だな。

 エクボって名前にも聞き覚えがないし。

 そもそもモブに勝てない時点で弱っちいだろ……洗脳もできなかったみたいだし……うん、やっぱり雑魚だ!

 

「お前にとっちゃ肩にてんとう虫が付いたレベルだろ。好きにしろよ」

 

 モブは空気が読めない。しかしそれは裏を返すなら、確固たる自分がある証でもある。悪霊に唆されて悪事するような馬鹿な真似はしないだろう。

 

「よかったね。害がないなら消さないでおくよ」

 

「……」

 

 エクボの顔が得もいわれぬ表情になってるが、残念ながら今世では無能力者である霊幻にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、新聞の一面で謎の竜巻が発生したという怪奇現象が載り、霊幻はその記事を目にするもーー

 

「超能力者でも暴れたのか?」

 

 まあ、規模も小さいし大したことないかと、特に気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊能者は危険と隣り合わせの職業である。

 悪霊や呪いという精神面的な危険もあるが、ときには

 

「ようクソジジイ!隠し金庫のパスワードを教えやがれ!」

 

 このように依頼人から刃物を突きつけられ脅されることもあるのだ。

 死んだ父親と話がしたいという依頼人の願いを叶えるべく、降霊術[ただの演技]した結果がこれである。

 

「俺の誕生日だったような……」

 

「とぼけんね!アルファベット13文字だろうが!」

 

 適当に誤魔化してみるも、逆上した依頼人はさらにヒートアップ していく。

 

「俺はその金で一生暮らすんだよ!」

 

 喚き散らす依頼人に、霊幻は慌てることなかった。

 

「OH!思い出しマーシタ。パスワードは」

 

 騒がず非常に落ち着いて

 

「HATARAKINASAIだ!」

 

 依頼人に対し、見事なアッパーカットをお見舞いした。

 霊幻の拳をもろに受けた依頼人は、もんどりうって床に倒れ込む。

 

「しまった、依頼人の意識がログアウトした」

 

 息はあるものの、ピクピク痙攣しており、起きる気配は全くない。

 これでは依頼料が貰えんと、霊幻は大きなため息をついた。

 警察でも呼ぶか。

 

「気絶したんですかこの人……?」

 

 受付で霊幻たちのやりとり見守ってた茂夫が、床で伸びてる依頼人を見つめる。

 

「ああ。けどまぁ正当防衛だ」

 

 パンパンと手を叩きながら、霊幻はこともなげに答えた。

 やりすぎると過剰防衛だが、今回は相手が刃物を突きつけてるし、俺は素手で対抗したからな。何か格闘技やってたら俺の方が問題になるパターンもあるが、少林寺拳法緑帯程度なら突っつかれることはないだろう。

 万が一訴えられたら、完全論破して逆に金をむしり取ってやる。

 

「正当防衛……」

 

 霊幻の”正当防衛”発言を聞いて茂夫の顔が曇る。

 

「正当防衛だったら相手の髪の毛を刈り取って、服を剥ぎ取って、プライドへし折って友達なくさせて、通ってる学校破壊してもいいんですかね……?」

 

 真顔でえげつないこと暴露した弟子に

 

「どうやったら正当防衛でそこまでできるの?」

 

 霊幻は即突っ込んだ。

 何がどうなってその結果になったんだよマジで。

 霊幻の心の声でも聞いたかのように、茂夫はポツポツ語り出す。

 

「僕の超能力はたまに勝手に動き出すんです。それも僕の意識が無い時に……」

 

 寝ぼけてうっかり使っちゃったのかよ。

 超能力者あるあるだな。

 俺も朝起きたら辺り一面瓦礫の山になってたこと、何度かあったなあ……

 いや不可抗力なんだよ。

 俺は別に何もやってなく、ただ寝てる間も発動してるオートバリアが作動ししただけであって、俺の寝込み襲った連中が全部悪い。

 

「こんな力もう持っていたくない……」

 

 使えなくなったらそれはそれですげー苦労するぞ。

 

「マイナス面ばかり見るな。刃物は使いようだろうが。な?」

 

 落ち込んでる茂夫を励ますように、霊幻は言葉を続ける。

 

「自分を殺すな。お前を生かせるのはお前しかいないんだ。信用しろ。お前は大丈夫だ」

 

 超能力は自分の一部なんだ。ちゃんと受け入れてやれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塩。

 それは古来より魔を祓い、浄化させる清めのアイテム。

 普段霊幻が愛用[?]してるのは博多の塩だが、何も使う塩はこれだけではない。

 パスタや肉にもよく合うヒマラヤ産の岩塩を使うことだってあるのだ。

 

 暴走アロマ特急

 

 それは依頼人の心と体をリラックスさせ美容効果てきめんの旅へと誘う霊幻の必殺技。

 岩塩のゴツゴツを利用したマッサージで強張った筋肉をほぐし血流を良くし、蒸気で温めたタオルを顔に被せて霊の視覚干渉をシャットアウト。アロマオイルでリラックス効果を高めると共に霊が苦手なお香を焚くものであり。

 

「なんだか若返った気がします」

 

 依頼人の見た目も心も若返らせる効果がある。

 ふう、なんとか対応できたぜ。

 今回はガチなやつじゃなくて助かったが、モブが約束の時間を無断で破るなんて初めてだ。次会った時は説教だな。

 

 

 

 

 

 なおその頃茂夫はーー弟が超能力に目覚めたり、途中謎の襲撃者に襲われ、さらにその襲撃者に弟を誘拐され、弟を取り戻すため組織のアジトへ乗り込んだりとーーてんやわんや忙しかった。

 

 

 

 

 

 弟子が大変なことになってることなど露知らず、暢気に店じまいしてた霊幻だが。

 

 プルルル……ガチャ。

 

「はい、霊とか相談所ーーあ、これは茂夫くんのお母様!」

 

 電話の相手は茂夫の母親からだった。

 

「いえいえそんな、お世話ってほどのことしてませんよ。むしろ茂夫くんには随分助かってますから!え、茂夫くん家に帰ってないんですか?」

 

 話しながらもちらりと窓を見やる。

 既に日は落ち、辺りは真っ暗だった。

 

「いえ、実は今日、こちらに来る約束してたんですが、茂夫くん来なかったんですよ。ええ、はい、こちらでも探してみます、はい、では」

 

 ガチャン。

 

 電話を切り、霊幻は盛大にため息をつく。

 いったいどこをほっつき歩いてんだが。

 しかも戻ってきてないのはモブだけでなく弟もまだ帰ってきてないという。

 兄弟二人で夜遊びか?

 いや、弟くんは生徒会に入ってて優等生だってモブが話してたからそれはないだろう。

 ……もしかして、二人で秘密の超能力特訓してるのか?

 モブの弟、超能力開花してないみたいだし。

 中学生といえば修業とか特訓に憧れる年頃だもんな。

 前世の俺も無駄に超能力研究したし、今世の俺だって人並みの身体能力になろうとあらゆる部活の体験入部した。

 というか超能力の訓練したいなら、俺に声かけてくれたらいいのに。

 これが親離れならぬ師匠離れか……。

 ちょっぴり寂しく思いつつも、懐から自身の携帯を取り出し確認するも着信もメールもない。

 

「……GPS機能つけててよかったな」

 

 ポチポチ携帯操作し、茂夫の現在位置を確認した霊幻は、タクシーで現場まで向かうのだったーー

 

 

 

 

 ○○分後。

 タクシーから降りた霊幻は怪訝そうに眉を顰める。

 

「あいつこんな所で何やってんだ?」

 

 たどり着いたのは人気のない山奥だった。

 超能力の練習ならもっと開けた荒れ地でやりなさい。こんな山奥でするもんじゃないぞ。

 自然大切に!

 時折GPSで茂夫の位置を確認しつつも、てくてく歩き続ける。

 どれくらい歩いただろうか。

 茂みをかきわけ進んだ先に、建物が見えた。

 鬱蒼とした山の中に場違いなほど大きな近代的な建物である。

 

「なんだこれ」

 

 建物の雰囲気、形は、前世の自分が創設した組織のアジトを彷彿させた。

 

「超能力研究所とか何かか?」

 

 まあ何でもいい。早くモブを連れ戻さないと。

 モブに何かあったとあれば、モブの一時保護者失格だ。

 臆せずその建物に近づいていく。

 中の人達と出くわすも、問題なく中へ入ることができた。

 意外とオープンな組織なんだなあ。

 部外者の俺にも懇切丁寧な態度だし、この様子ならモブたちも大丈夫だろう。

 と、思ってたら悪いこともやってた。

 超能力者の子供を拉致監禁とかいい大人失格だろ。

 

「いや……ボスの指示で……」

 

 なんかもごもご言い訳してるが……はあ?

 

「誰かに指図されたからって外道かましていいわけないだろうが。下っ端気質も極まるとただのカスだな」

 

 侮蔑たっぷりに言い捨てる霊幻に、組織の構成員たちの顔色が悪くなる。

 

「そ……そんな……俺達はボスを信じて……」

 

「ばっかやろー!!」

 

 霊幻の一喝が周囲に轟く。

 

「お前らそんなんでトップに立ったところで」

 

 頭に浮かぶは、前世で見た光景。

 

「自分達が踏み荒らしてきた汚い景色しか残らないぞ」

 

 超能力者たちが暴れ回り、廃墟と化した町並みだった。

 千里眼でその光景を見てて、言いようのない不快感があるも、その不快の正体が何なのか、そのときはわからなかった。

 しかし今ならその不快に思った理由がわかる。

 

「何がしたいか知らねぇが、マナーを守った上で頂点とるから気持ち良いんだろうが!」

 

 組織に勧誘したいなら、拉致監禁の洗脳教育じゃなくて、真っ当な超能力者養成所として募集しろ。

 超能力研究してるなら、もっと社会の役に立つことしやがれ。

 

「反省して改めろ!」

 

 超能力悪用すんな!

 

 ……もしこの場に前世の霊幻を知る者がいたならばこう突っ込むだろう。

 

 

 

 お前が言うな。

 

 

 

 

 

 その後霊幻はあっさりと茂夫と再会することができた。

 

「よーモブ。お前こんな所で何やってんだよ。弟も一緒じゃねぇか。どうした?」

 

 見たとこ五体満足だし、変な実験とかもされてなさそうでよかったよかった。

 後はモブたちを家に送らねえとな。

 モブの親御さんにも後で連絡しよう。

 モブと弟以外にもう一人いるが……これは。

 

「カツ……彼は友達か?」

 

 頭すげぇ。

 この少年が実はモブが正当防衛した相手で、落ち武者ヘアーを隠すために不自然なほど増毛したカツラを被ってることなど露知らず、最近は変なカツラが流行してるんだなあと、霊幻は特に気にしなかった。

 

「ここに閉じこめられているんです!僕達を解放してください!」

 

 そうカツラの少年、もとい花沢が必死に霊幻に訴える。

 

「なんで閉じこめてんだよ……」

 

 近くにいた構成員の一人に事情を聞くと、素直に答えてくれた。

 機密事項らしく、ごにょごにょ小さい声で。

 モブたちも組織の一員にするつもりだったらしい。

 あと、この部屋にいると超能力が使えなくなることもついでに教えて貰った。

 なんで大人しく部屋にいるのか不思議だったが、超能力を封印する部屋なのか。

 あれ、でも可笑しいな。前世の俺も一回その部屋に入ったことあるが、普通に壁壊して脱出したぞ?他にも能力無効にするアイテムとか使ったことあるが、全然効果なかったんだよなあ……。        効力は個人差があるのか?

 まあ、それは置いておいて。

 

「だからさぁ。お前らそれ犯罪だろ」

 

 モブたちまだ中学生だぞ、義務教育もまだ済んでない子供を拉致監禁して洗脳教育施すなど言語道断だ。

 責任者出てこい!

 

 

 

 

 

 

 霊幻の望みはすぐ叶った。

 

「君誰?」

 

 ぞろぞろと構成員たちやモブたち連れて出口に向かってる途中、廊下の先でばったりと遭遇する。

 

「先に名乗れよ。犯罪者集団が」

 

 人数は4人。

 ガスマスクのチビにスーツ着たメガネ、壷抱えたオカマに、肩パットしたマント男……サーカス集団かよ。

 

「超能力者結社「爪」第7支部の遺志黒。で、君は?」

 

 全身黒装束の子供[?]はじろりと霊幻を睨みつける[ガスマスクで顔は見えないが雰囲気的に]

 子供[?]もとい遺志黒の問いに、霊幻はビシっと自分を指さし

 

「[元・世界最強超能力者で]今世紀最大の霊能力者・霊幻新隆様だ!よくチェックしとけ」

 

 華麗に自己紹介&宣伝した。

 しかし「爪」なんて組織の名前なんて聞き覚えがないぞ。

 なるほど。前の世界では俺が創設したが、この世界では俺の代わりに別の奴が超能力者結社つくったのか。

 いったいどんなヤツがボスになってるんだろ。

 案外、俺の部下だったやつがボスになってたりしてな、ハハハ。

 

「我々のボスなんじゃ!?」

 

 ここにきてようやく霊幻が自分たちのボスじゃないことに気づいた構成員たちが驚愕の声あげる中、最初に行動したのは。

 

「小鳥と言えど私を差し置いてボスなんて……極刑!」

 

 遺志黒だった。

 ゆらりとオーラが溢れ、放出された力が遺志黒の周囲にたちこめる。

 

「何言ってんだこのチビ。てめーなんか少林寺拳法緑帯の俺様が ちょちょいのちょ……」

 

 凄まじい光と爆音が霊幻の目と鼻の先で破裂した。

 

「え?何これ」

 

 俺、攻撃されたの?

 

「霊専門の師匠は下がってて」

 

 間一髪バリアを張って霊幻を守った茂夫が平然と放った言葉に、霊幻はちょっとショックを受けた。

 俺、戦力外かよ。

 てかあのチビ、俺の後ろにいる仲間たちも一緒に消す気か。

 上に立つ者ならちゃんと部下に大切にしろ[※前世では組織にノータッチで部下を大切どころか放置してた人]

 

「支部長!俺達まで死んでしまいます!」

 

 必死に訴える構成員に、遺志黒は冷たく言い返す。

 

「知らないよ。君達のボスはその男なんでしょ」

 

「そ、そんな……」

 

 支部長の遺志黒に見捨てられ、涙目の構成員たちに向かって霊幻は叫ぶ。

 

「お前ら部屋に隠れてろ!ビッグになるならこんな所で死んでられないだろ!」

 

 超能力者の戦闘にバリアも張れない一般人が巻き込まれたら、その結果は火を見るよりも明らか、避難誘導させねば!

 霊幻に促されて、逃げていく構成員たちを霊幻も後を追う。

 

「つか俺も行くけど」

 

 前世の俺ならいざ知らず、今の俺はバリア張れないからな。

 また生死の境をさまようなんてゴメンだ。

 安全確保安全確保。

 だがしかし。

 

「うわ!天井が!」

 

 無情にも天井が崩れ落っこちた瓦礫の塊が霊幻の行く手を阻む。

 

「君達は逃がさないよ」

 

 霊幻たちの方へゆっくり近づく遺志黒たちに、霊幻の顔はひきつる。

 もう、なんだこの状況は!モブ以外の超能力者なんてマジでいたのかよ!

 これまで他の超能力者の存在はいるかもなー程度の認識だったが、実際目の当たりにすると、思ったよりも心の衝撃が大きい。

 見たところ大した力は持ってなさげなのがまだ救いか。

 そんなこと考えてる霊幻をよそに遺志黒は霊幻たちを守るよう前にでた茂夫に力を使う。

 突然体にかかった凄まじい圧に、茂夫はたまらずその場に膝をつく。

 同時に茂夫を中心にビシビシとコンクリートの床にヒビが入り円状に凹みが生じ、茂夫の体は地面にめりこむ。

 

「私の力に耐えるなんてなかなかやるな。重力を上げてみようか」

 

 そう、遺志黒が茂夫に向かってさらに圧をかけようとしたときだった。

 

「対超能力者ドロップキック!」

 

 超能力者には不意打ちが効果的。

 霊幻の持論は正しかった。

 超能力者に対して思いっきり跳び蹴りをかまし、物理攻撃で遺志黒を吹っ飛ばした霊幻は、静かな口調で茂夫に言う。

 

「モブ。お前こんな奴等と超能力で争う気か?」

 

 幸いお互いそこまで力は強くない。

 ここで暴れてもたかがしれてる。

 せいぜいこの建物が壊れる程度だろう。

 だが超能力は。

 

「危なくて人に向けるもんじゃねぇって話したよな?」

 

 簡単に人を傷つけーー殺すことができる。

 

「ルール破るのか?」

 

 霊幻に諭され、茂夫の表情が陰り俯く。

 茂夫の様子に見かねて、律が霊幻に向かって叫ぶ。

 

「僕を助けるために仕方なかったんだ!」

 

「……モブ」

 

 もう誰かを傷つけたくない。

 それは相談所に来始めた頃、どうして力の制御を教わりたいか理由を尋ねた霊幻に対し、茂夫が答えた言葉。

 なのに。

 

「お前、そんなに追いつめられてたのか」

 

 そんなモブが人に向けて超能力を使っていた。

 弟のために。

 

「辛かったな」

 

 すごく苦しかっただろ。

 

「……こいつは人との対立が大の苦手なんだよ。ましてやお前らみたいな大人がな」

 

 スウと息を吸った後、霊幻は遺志黒たちに向かって啖呵を切った。

 

「弟子に余計なストレス溜めさせんじゃねぇよ!」

 

 

 

 

 

 

 状況は最悪だった。

 相手は自分と同じ大人、ひとまず不意打ちで一発殴って冷静にさせた後、話し合いに持ち込めば一旦この場は収まるだろう。

 そう考えてた霊幻の心算は外れた。

 

「呪玩。この剣はプラスチック製のおもちゃだが長年帯刀し呪いをかけ続けることによって威力を持つようになった」

 

 スーツ着たメガネ。

 

「私が育てた悪霊ちゃんズ。あなたにどうにかできるかしら」

 

 壷を抱えたオカマ。

 

「幽体術。俺は自由自在に幽体離脱しさらにそれを分身させるこ とができる」

 

 肩パットしたマント男。

 

「黒玉。散らばる重力に引っ張られバラバラになるといい」

 

 ガスマスクのチビ。

 各々戦う気満々で、話し合いに応じる気配が全くなかった。

 なんでだよ。

 お前等が戦おうとしてる相手、自分よりもずっと年下の中学生たちだぞ?

 子供相手にマジになっちゃってるこいつらはーー世界征服を本気で主張しちゃってるこの連中はーー大人になれなかった子供だ。どうしてそうなった。答えはわかる。

 

 

 こいつらはーー昔の俺だ。

 

 

「ここは一旦逃げるぞ!相手するなモブ!」

 

 モブを戦わせてはいけない。

 そう判断した霊幻が、茂夫に指示するも。

 

「影山君!全力を出してくれ!」

 

 超能力を使い、激しい戦闘繰り広げてる花沢が叫ぶ。

 相手の猛攻をしのぐも、徐々に防戦一方になっていく花沢に、茂夫の顔が強ばる。

 

「やめろ!反撃するな!」

 

 茂夫が今何を考えてるのか霊幻は瞬時に察知した。

 

「ここは大人の俺がなんとかするから!」

 

 超能力もってない一般人がどうにかできる状況でないことは、俺自身よく理解してる。

 でも、それでも絶対に。

 

「モブはあいつらと同じ土俵に立つ必要はねぇぞ!」

 

 人を傷つけるために力を使わせてはいけない。

 しかし、敵側の攻撃はどんどん激しさを増していき、それに応戦してる花沢や律がそれぞれ茂夫に助けを求める。

 

 

 殺意のある相手に本気で対抗しろと。

 

 

 律……花沢君……霊幻師匠……みんなを死なすわけにはいかない……僕が本気で戦うしかないんだ……

 目の前で傷ついてく仲間たちの姿に、茂夫の中である感情がわき起こる。

 それは相手と同じ感情ーー殺意。

 大切な人達を守るためにはたとえ相手がどうなったって

 茂夫が感情に身を任せようとしたそのときだった。

 

「やめとけモブ……お前が苦しくなるだけだ!」

 

 茂夫の顔を両手で包み込んだ霊幻が、まっすぐ茂夫の目を見つめ る。

 ずっとそばで見てきた。

 誰も傷つけたくない、こんな力持っていたくないといつも苦悩してたモブを。

 おまえ、積極的に力を研究することも、練習し努力もせず、それどころかできるだけ使わないようにしてたよな。

 超能力のセンスもないんだ、無理に使わなくていい。

 

「嫌なときはな、逃げたっていいんだよ!」

 

 茂夫にそう強く訴えながらも、霊幻は己の現状に歯噛みしていた。

 俺に超能力があれば一瞬で大人しくさせられるのに。モブと違って完璧に力の制御ができる俺なら、殺意持った相手でも殺すようなへまはしない。精神おこちゃまなあいつらに教育的指導して説教してやる。

 ほんの少しでいい、前世の俺ほどの力じゃなくていいんだ。

 少しの時間だけ、俺に力が戻れば!

 そう霊幻が強く念じたときだった。

 手を伝って何かが体の中へ流れていく。

 ……これは。

 28年振りに感じたーー力の気配だった。

 どうして今更。

 

「師匠!」

 

 茂夫が叫ぶのと同時に、霊幻は背中に大きな衝撃を受ける。

 肩から縦に長くまるで斬られたように。

 まあ、そりゃそうだよな。

 無防備に背中見せたらチャンスと思って攻撃するわな。

 どこか他人事のように考えながらも、前のめりになって倒れ込む。

 コンクリートの床を両断できるほどの切れ味を持った刀で斬られたら一巻の終わりである。

 普通の一般人なら。

 霊幻流、超能力者の鉄則その1。

 

「びっくりさせんなよ!マジで斬られたと思ったじゃねぇか」

 

 常にバリアは張ること。

 たとえ自分より弱いやつが相手でも。

 力が宿った瞬間、バリアを展開していた。

 考えるよりも先に、無意識で。

 何事もなかったようにひょいと起きあがった霊幻に、斬った本人も周りも唖然とする

 ああ、この感覚、懐かしいなあ。

 首めがけて飛んできた攻撃もバリアで無効化され、ただのプラスチック刀が当たった程度の痛みしか感じない。

 そのまま素手で刀を取り上げ、パキリと真っ二つに割る。

 襲ってきた悪霊もパンチ一発で消滅させ、四方八方から同時に攻める敵の分身たちも、少し腕を振りかざしただけで、跡形もなく消し去った。

 ふむ、前世の時よりも力は劣ってるが、この際贅沢は言ってられん。

 

「なんてことだ……まだこんな実力者が世の中には存在するのか……消さなければ。世界征服の邪魔立てをされては困る!」

 

 遺志黒の周りに数え切れないほどの黒玉が出現する。

 なんて数だ……

 大丈夫か……?

 花沢と律が心配げに霊幻の方を見るも、霊幻自身は全然焦りを感じなかった。

 それどころか内心安堵までしていた。自分の見立ては正しかったと。

 やっぱり思ってた通りーーこいつらの力は弱い!

 手品レベルの強さ程度しかないのに、本気で世界征服できると思ってるとは笑止千万。

 今の弱体化した俺でも十分対応できる。

 さて、あいつらを大人しくさせて教育的指導してやるか。

 世界征服夢みちゃってる馬鹿どもに、まずは目を覚まさせ、現実に生きるってことを教えてやらねえと。

 

 

「大人に任せとけ」

 

 

 久しぶりに、体の調子がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 その後の展開は皆が知っての通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第7支部との戦いから数日経過したある日の昼下がり。

 霊とか相談所はいつもどおり、閑古鳥が鳴いていた。

 相談所には霊幻一人だけ。

 

「……」

 

 新聞を広げ、一見すれば記事に目を通してるようだが、実際は新聞など読んでいなかった。

 

”私達は特別だ!他の人類より上位の生命体だよ!”

 

 それは数日前、遺志黒が主張していた言葉。

 みっともなく喚きちらし、いかに自分が特別であるかを声高にスピーチするその姿は、昔の自分と重なって見えた。

 超能力の強さで言えば、前世の自分は遺志黒と比べものにならない。

 誰よりも圧倒的なーーそれこそ”神”の力を持っていた。

 

”社会社会って……そっちの尺度で作られた共同体は私に適さない!力を持って生まれた私が力を振りかざして何が悪い!”

 

 生まれついた力を自分のために、好き放題使いまくって。

 

”世界を変えて何が悪い!こんなに優れてるのにどうして認めてくれないの?”

 

 世界を変えてみようとした。

 でも。

 所詮、どんなに特別な力があったって人は人。それ以上でもそれ以下でもない。

 はあと大きなため息をついた後、「で、お前がここに何の用だ?」自分の上に漂ってる緑の悪霊に尋ねる。

 

「茂夫に頼まれて来ただけだ。貧血起こして除霊手伝えないってさ」

 

 力を宿した影響か、霊幻の目にはしっかりエクボの姿が視えていた。

 

「てかお前もう茂夫必要ないんじゃないか?目覚めたんだろ超能力に」

 

 そう指摘するエクボに、霊幻は大きく肩をすくめる。

 

「馬鹿言え。あれは全部モブの力だ」

 

 一時的に力を借りただけで、相変わらず自分の体には何も残っていない、俺はーー空っぽのままだ。

 

「あれをきっかけにお前が見えるようになっただけで前と何も変わらん」

 

 この先もずっと俺は”弱いまま”だろう。

未来予知の力はもう使えないが、そう強く確信した。

 

「またただの詐欺師に戻ったのか」

 

「人聞きの悪い悪霊だな」

 

 お前なんか一瞬で消し飛ばす力はあったんだぞ。前世の俺は!

 しかしモブ来れないのか……それなら。

 

「よし!じゃあお前手伝え」

 

 丸めた新聞紙の先をエクボに突きつけニヤリと笑う霊幻に、エクボが「はあ?」と嫌そうな顔をつくる。

 

「なぜ俺様がてめぇのヘルプを?」

 

「そのためにお前を寄越したんだろ。欠勤連絡だけなら電話でいいし」

 

 今日はモブの代わりにしっかり働いて貰うぞ。

 

「マジかよ……俺様を何だと思ってんだこいつら」

 

 まさか自分がパシリに使われたとは思ってなかったのだろう、頭を抱えて呻く悪霊に、霊幻は不思議そうに「え?お前モブの使い走りだろ?」と首を傾げる。

 それともモブのペットだったか?と揶揄する言葉に、エクボはピキリと青筋立てて叫んだ。

 

「上級悪霊だっつーの!」

 

 

 

 

 

 思わぬところで超能力者結社と遭遇したが、もう関わることはないはずだ。何人かの超能力者とは連絡先交換して、就職やら生活に関しての相談事にはアドバイスしてやって、ちゃんと社会復帰できるようサポートはしてやるつもりだけど。

 だいたい超能力で世界征服なんてどうやってするつもりなんだよ。

 力を見せびらかして恐怖で人を支配する気か?

 そんなの土台無理な話だろまったく。[※全人類の精神支配して世界征服完遂した人]

 まっ、こっちから首突っ込まなければ、巻き込まれることもないだろう。

 面倒事はもうゴメンだ。

 今の俺は前世の俺と違って、超能力も霊感もないただの善良なる一般市民。世界規模の問題は警察や軍に任せようではないか、ハッハッハ。

 なんて暢気なことを考えてた霊幻は知らない。

 自分の知らない水面下でーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし。第7支部?潰されたよ」

 

「外部のエスパーが攻めてきて幹部は全滅。支部長の遺志黒さんもたいしたことなかった。下っ端構成員に至っては敵にまんまと懐柔されちまった」

 

「ショウ何を言ってる。視察の経過報告を聞いているんだが」

 

「あんたの自慢の組織全然世界一じゃねーぞ。遊んでないで早く日本に来い。バカ親父」

 

「ああ。近いうちにな」

 

 

 

 事態が進んでおり、そう遠くないうちに自分たちが巻き込まれることになることをーー今世では未来予知できない霊幻には知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピッ。

 

 

「もしもし。今大丈夫か?運動できて汚れてもいい格好で90分後に集合な」

 

 ツチノコ捕まえて報奨金ゲットだぜ!

 

 

 

 

 →To be continued……?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。