Re.ドキドキ&サイエンス   作:yu-ki.S

63 / 93
あらすじ

晴夜「仮面ライダービルドことてぇんさい科学者の卵 桐ヶ谷晴夜 は、仲間と共にアイちゃんのイヤイヤ期を乗り越えようと奮闘したり、ラケルの恋に協力したりと、色々ありましたが。その間、まだ語られてないエピソードがあったのだった・・・」

「――この話は、その時に起こった物語の一部である!」


未来へと繋ぐ結婚式

雨の強いある日、一人の少年が傘を立て歩いていた。

少年は、初めてこの町に来て雨の中辺りを歩いていた。すると、路地の曲がり角から同じように傘を持っていた少女とぶつかった。

 

「ごめん、大丈夫?」

 

少年は倒れた少女に手を差し伸べて謝る。

 

「ううん、こっちこそ急いで周りが見えてなかったよ。ごめんなさい!じゃあ、さよなら!」

 

少女はそう言うと、走って行ってしまった。

 

「そろそろ戻るか、ん?犬?」

 

その少女を見送った少年は、凄いスピードで走る白い大きな犬を見かける。

 

(飼い主を探してるのか?)

 

犬を見て少年はそう思うと、犬が走って曲がる所から車が出てくるのが見えた。

 

「⁉︎危ない!」

 

少年が叫ぶが既に遅く、犬は車に飛ばされてしまった――

 

 

 

 

「ふぁっ⁉︎」

 

地下室の作りかけの発明品が置かれている作業机で眠ていた晴夜が目を覚ました。

 

「なんだ、夢か?」

 

――さっきのは、全て俺の夢だった?

そう晴夜は思い、眼を覚ます。

 

 

そして、次の日。

『ぶたしっぽ亭』の定休日に、マナはあゆみに呼び出された。

 

「マナ、ちょっと来てみて」

 

「何?ママ?」

 

部屋に入ったマナの目に映ったのは、白い、純白のウェディングドレスだった。

 

「ママ、どうしたのそれ!」

 

「服を入れ替えようと思ってね、押入れの整理をしてたら出て来たの」

 

「これ、ママのウェディングドレス?」

 

「ええ。でも元々は亡くなったおばあちゃんのなの」

 

「おばあちゃんの・・・?」

 

「パパと結婚する時に、ママがどうしてもって言ってね。これを着て式を挙げたんだ」

 

「へぇー・・・ちょっといい?」

 

あゆみがマナにウェディングドレスを渡すと鏡に映る自分に重ねる。

 

「パパ、ママ、これあたしも着たい!ねぇ、いいでしょ?」

 

するとマナは自分もこのウェディングドレスを着たいと言い出す。

 

「い、いるのかそう言う人!?」

「いるの?」

 

二人は相手がいるのかとマナに聞く。

 

「嫌だなぁ、その時が来たらの話ですよ」

 

「そうか・・・それは良かった・・・」

 

これを聞いた健太郎は気が抜けるようにして椅子に座った。

 

「でも、こう言うのって流行り廃りもあるし、レースだってところどころほつれてるし、何よりウェディングドレスって一生に一度しか着られないものなのよ?」

 

「だからだよ!親子三代の思いを受け継ぐなんて、最高じゃない!」

 

「お前が着たければ着るがいい」

 

マナが最高だと言うと、後ろから宗吉が現れる。

 

「おじいちゃん」

 

「孫が着てくれたとなれば、お前のおばあちゃんも喜ぶじゃろう」

 

「うん!」

 

マナは宗吉に着ることを認めてくれて感謝する。

 

「でも、あたしの未来の相手、誰だろ・・・・・」

 

 

『勝利の法則は決まった!』

『サンキューマナ!』

『――誰かの為に一生懸命なれる、どんな人でもマナは握手を交わして、多く人と繋がりを作るマナは凄いよ!俺なんかより最高に!』

 

 

(・・・って!なんであたし晴夜君のこと思い浮かべてるの!?)

 

「おはようございます」

 

将来の自分の相手を想像していると晴夜がぶたのしっぽ亭にやってきた。

 

「晴夜君!」

 

突如晴夜が入ってくると、マナはドキドキする胸を抑える。

 

「どうしたの?顔を赤いけど?」

 

「ううん!なんでもない!」

 

「宗吉さん、直して欲しい物があると言われてきたんですが?」

 

「おお、すまないね」

 

宗吉は直して欲しいプロジェクターを晴夜に渡す。

 

「このプロジェクターかなり古いですけど、何か思い出でも?」

 

「まぁ、そんな所じゃよ」

 

宗吉が言うと、晴夜がマナが持っていたウェディングドレスに目がいく。

 

「ん?それって、ウェディングドレスか?」

 

「うん、おばあちゃんとママが着てたんだよ。あたしもね、いつか絶対着るんだ!」

 

「親子三代でウェディングドレスを受け継ぐって、ロマンチックで最高だな」

 

「でしょでしょ!」

 

 

 

そして、次の日。

 

「ウェディングドレス?」

 

放課後、外の掃除をしていた六花、真琴、龍牙の三人に昨日のウェディングドレスの話をしていた。

 

「うん。50年前に仕立てられたとは思えないぐらい真っ白でキラキラしてて・・・もう、キュンキュンだったよ」

 

目を輝かせながらマナはドレスについて思い出す。

 

「へぇ〜、そんな前からのなんだ。で、マナはそれ着るって訳か?」

 

「そう!」

 

「意外ね、マナの将来の夢はてっきり総理大臣かと思っていたのに」

 

「六花、それはそれ、これはこれ。純白のドレスは乙女の憧れですよ」

 

予想通り聞けたマナのかわいい部分に満たされながら、六花は小さく笑みを浮かべた。

 

「ヘッ、ウェディングドレスってのは、相手がいないと着られないってのをお忘れじゃありませんか?」

 

「そうそう」

 

するとマナ達の話を聞いていた二階堂と桃田が会話に入ってきた。

 

「二階堂君、桃田君、それどう言う意味?」

 

「お前みたいな珍獣は、貰い手がいないって言ってんの。」

 

「そんな事言ったら珍獣に失礼ッスよ」

 

「それもそうか!」

 

二人がマナをバカにすると、龍牙が二階堂の服を掴む。

 

「ちょっと!」

 

同時に真琴も素早くホウキの先を二階堂に向けた。

 

「人の夢をバカにする事はねえだろ!」

「女の子の夢を笑うなんて許せない!そこに直りなさい!」

 

「まこぴー、龍牙君、ストップストップ」

 

マナに止められ龍牙と真琴は二階堂と桃田から離れる。

 

「男の子ってね、好きな人に構って欲しくて、わざといじわるしたりするのよ」

 

「「「えっ?」」」

 

「そ、そうなんすか?」

 

「ば、馬鹿!誰がこんなヤツ!」

 

「好きだからいじわるするなんて意味分からない!好きなら好きってはっきり言ったらどうなの!」

 

「まこぴーの言う通りだよ!自分の気持ちははっきり言葉にして伝えないと!」

 

「「はい?」」

 

「だったら、おばあちゃん直伝のおまじないを教えてあげるよ!」

 

直伝と言うとマナが二階堂の手を握る。

 

「こうやって、手のひらにハートを描きながらお願いすると、必ず願いが叶うんだよ」

 

二階堂の手のひらにハートを描きながら話す。

 

「・・・で、二階堂君は誰が好きなの?」

 

「だ、誰でもいいだろ!行くぞ桃田!」

 

「ああっ、待って下さいよ!」

 

二人はゴミ捨てに向かった。

 

「うわぁ、どうした?」

 

ゴミ捨てから戻ってきた晴夜が急いで走る二人を見て驚く。

 

「どうしたんだろう二階堂君・・・」

 

マナのこの一連の言葉に真琴はあきれ、首を振る。

 

「マナってああいうひとなのよ、昔から・・・」

 

「え? 何なに?」

 

六花の言葉を借りるまでも無い。

――そう、これこそが幸福の王子、マナなのだ。

 

 

場所が変わって四葉邸の庭園では、晴夜達ライダー組を除いたメンバーでお茶会をしていた。

 

「まぁ、そんな事がありましたの?」

 

今日学校であった事をありすに話していた。

 

「ウェディングドレスを着たいとか言ってる割に、恋愛関係には疎いのよね、ウチの生徒会長さんは」

 

「どうせ疎いですよ」

 

「それにしても二階堂君は、とんだとばっちりでしたわね」

 

「ありすは彼の事知ってるの?」

 

「はい、和也さんも二階堂君と小学校の時、同級生でしたから」

 

「そっか」

 

ありすと和也も小学校は同じだった事を思い出す。

 

「四人はそんな小学生だったんだビィ?」

 

テーブルの下でケーキを食べていた妖精達が四人はどんな小学生時代だったのかを聞く。

 

「今とそんなに変わらないわよ、マナは昔からおせっかい焼きだったし、わたしとありすとかずやんは毎日振り回されっぱなし!」

 

今と変わらずマナに振り回されていたと話す。

 

「ケンカの仲裁を買って出たり、捨てられた子犬を拾ってきたり・・・」

 

「里親が見つからなくて、結局自分で面倒をみたりしてね」

 

四人はいつも一緒におり、遊んでいたと犬を飼っていたと色々と話してくれた。

 

「犬を飼ってたランスか?」

 

「どんな犬シャル?」

 

「名前は?」

 

「マロ! 体は真っ白で、ふさふさのしっぽがくるんと丸まってね、あたしが学校から帰ってくると、そのしっぽをブンブン振り回してお出迎えしてくれて」

 

嬉しそうにかつて飼っていた飼い犬のマロについて説明した。

六花とありすは、マナの表情に何かの気持ち―――そう、マロとの別れについての感情が表れないかと心配そうな視線を送った。しかし今日の彼女の目には悲しさなど、どこかに置き忘れてきたかのように一片の曇りも見当たらない。

 

「その犬は今、どうしてるの?」

 

触れずにいたことについて真琴が聞いてしまう。

 

「色々あってね、今はもういないんだ」

 

「あ・・・ごめんなさい」

 

飼い犬マロの結末について悟った真琴は、先の質問を詫びた。

 

「いいよいいよ、4年も前の話しだしね」

 

マナは全然気にしている様子はなかった。

 

「それよりさ!もっと将来の夢とか話そうよ。昔の事じゃなくてさ」

 

「そうね」

「賛成ですわ」

「うん!」

 

悲しい話を変えようとこれからの未来について話そうと提案する。

 

「六花は結婚とか考えた事ないの?」

 

「あるわけないでしょ、わたしの夢はママみたいな立派なお医者さんになる事だもん。恋愛や結婚なんて、まだ考えられないわ」

 

「実はわたし、お見合いのお話は何度もいただいているのですが」

 

「「「えっ!」」」

 

ありすが衝撃の事実を告白し、既にお見合いの経験すらあるというのだ。皆の視線はありすに集中する。

 

「どういうことシャル!?」

 

「ランスも初耳でランス」

 

さすがの妖精たちもこれにはビックリの様子。

 

「早過ぎでしょ、いくらなんでも!」

 

「相手はどんな人?」

 

マナと六花もありすの見合い話に興味しんしん、身を乗り出してありすの次の言葉を待っている。

 

「色々ですわ、下は五歳から上は六十五歳まで」

 

ありすは涼しい顔でそう言うと、小首を傾げた。

 

「で、どうなったの?」

 

「しちゃったの?お見合い!」

 

二人がゴクリと唾を飲み込む。

 

「全てお断りしてます。わたしはまだまだ人として未熟ですし、なによりもこうして皆さんと過ごしている方が幸せで」

 

「そっか」

 

「そうだよね、結婚とかまだ早いよね」

 

中学生には背伸びし過ぎた言葉よって生まれた緊張はほぐれ、マナと真琴からは思わずホッとため息が漏れる。

 

「二人とも、ありすに先を越されたとか思ったんじゃないの」

 

六花のたしなめるような一言。こうして四人が揃うと六花は、すすんで冗談を言い、話の盛り上げ役に徹するようなところがある。

 

「そんなんじゃ、ないけど」

 

「でも気になるじゃない、この中で誰が一番早いか」

 

マナは無邪気な笑顔でそういうと、みんなの顔を見回した。

 

「わたしはマナだと思うけど」

 

六花はさっきのフリのお返しとばかりに、一番近しいマナを推す。

 

「いえいえ、真琴さんという可能性も」

 

「え?」

 

突然の言葉に、反応に詰まった真琴は思わず聞き返す。

 

「あるね、まこぴーはアイドルだし」

 

「芸能界で気になる人とかいないんですか?」

 

追い討ちをかけるように六花が今度は真琴に向けておどけてみせると、皆がそれに乗っかり、大げさで芝居がかった興味津々な視線を真琴に送る。

 

「いません!」

 

「あ、龍牙さんですか?」

 

「あ!―――それは・・・」

 

龍牙の名が出て真琴は顔を真っ赤にして反論できなくなった。これは百点満点の反応だ。

 

 

その頃、晴夜と龍牙の地下室では・・・

 

「へクション!」

 

龍牙がくしゃみをしていた。

 

「風邪か?」

 

「バカは、風邪引かないって言うぞ」

 

「そうそう俺はバカだから風邪は・・・って!バカってなんだよ!バカって!」

 

「もう!いちいち喰いつくんじゃないの」

 

「相変わらず、飽きねぇなお前らのそれ・・・」

 

龍牙が晴夜の肩を揺すると、翼を持った一体のガジェットが現れて龍牙を攻撃し、晴夜から龍牙が離れると晴夜の手に置かれた。

 

「あつ!何だよそれ?」

 

「これは、俺が作った発明品『アトミックウィング』ガジェットだ」

 

晴夜が鳥モチーフのガジェットの名前を言う。

 

「凄いでしょう!最高でしょ!天才でしょーー!」

 

いつものフレーズを高々と叫ぶ。

 

「じゃあ、これ使って変身できるのか?」

 

和也がそのガジェットで変身出来るのかと聞く。

 

「それが、このガジェットに合うボトルが見つからないんだ」

 

「ダメじゃねえかよ!」

 

龍牙が言うが、晴夜は黙々と何かを直していた。

 

「何、直してんだ?」

 

「ああ、宗吉さんに直して欲しいて頼まれて直してんの」

 

晴夜が今直しているのは宗吉のプロジェクターだと話す。

 

「本当、晴夜凄いよな」

 

「どうしたいきなり?」

 

「だって、そんなガジェットや武器作ったりできるからよ」

 

和也がガジェットや武器、更にフルフルラビットタンクボトルまで作れる晴夜が凄い言い出す。

 

「凄くないよ、父さんが教えられた事をただやってるだけだよ」

 

「でもよ、晴夜の親父さんってなんで科学者になったんだ?それだけの技術があるなら発明家じゃねえのか?」

 

和也が言うと、プロジェクターを直してた手を止め、晴夜が父親が科学者になった理由を思い出そうとする。

 

「そういえば、父さんがなんで科学者になったのか聞いた事・・・あれ、聞いたような気がしたような・・・」

 

「どうした?」

 

「悪りぃ、忘れちまった」

 

「「忘れたのかよ!」」

 

二人がガクッとなると晴夜は苦笑をして誤魔化す。

 

 

 

その頃、大貝商店街の片隅に今、轟音が鳴り響く。ここは大貝商店街の映画館だった。

 

「寂しくなるねぇ」

「うちらが学生の頃は、ここで何本も映画をみたもんだよ」

「見たね、SF映画の二本立て」

「また一つ明かりが消えちまうねぇ」

 

皆が一様に建物を見上げ、かつての姿、それぞれの記憶の中の姿を思い描く。

 

「仕方が無いよ、これも時代の流れってやつさ」

 

町の人達が思い出に浸りながら会話が進むと途中で雨が降り始めた。

 

「おっ、それじゃ」

 

雨が降ってきたため町の人達は映画館から離れていく。

 

――その時、とつぜんやってきた稲光によって映画館のまだらの壁面に巨大な影が浮かび上がる。照らし出されたのは、さっきその場にいた誰もが気がつかなかったものの姿、それは傾いた映写機の傍らに立つ一人の男の影だ。

 

それ――いや、そいつはまるで経帷子のように真っ白な髪に、野獣のような体躯を持ち、そのそびえ立つような長身には、不思議な力がみなぎっている。

彼は黒い仮面の奥に隠れている鋭い眼光で町を見渡しながら、静かに語りだした。

 

「――人間はずるい生き物だ。物珍しいモノにはすぐに飛び付く癖に飽きたらすぐに忘れ去ってしまう。忘れられたモノたちの怒りと悲しみ、今こそ思い知らせてやる!」

 

その口ぶり、人間全体を指しての口ぶりから察するに、ただ分かるのは、彼が彼の言う人間の身勝手さに憎悪を抱いているということだけだ。

 

男はどこからか一本の古びたクラリネットを取り出すと、静かにリードに口を付け吹き始めた。悲しげに辺りの空気を揺さぶる短調の調べが辺りに広がり進んでいく。

傾いた映写機がまるで旋律に呼応するように震えだしたかと思うと、遂には浮き上がり、鉛色の空へと吸い込まれるように上昇をはじめたのだ。

 

 

それは、この映画館のように、この街のあちこちに捨てられ、忘れ去られた物たちが再び命を得、動き出した瞬間だった。

 

「わたしはまだ映るぞ・・・」

 

走査線が何本か駄目になったTVが言う。

 

「俺はまだ走れる!」

 

ショックアブソーバーが軋み、シートに消えないシミを滲ませた車が言う。

 

「わしはまだ、時を刻む事が出来る」

 

一日に何分かズレ、時々目覚ましベルが鳴らない時計が言う。

 

「わたしたちだって・・・」

 

元々顔の無いマネキンが言う。

 

「「「まだまだ使える!」」」

 

一つ、また一つと息を吹き返した忘れられたモノ達の声はいつしか、重なり合い、分厚い重唱となってこの街、大貝町全体を揺らした。

 

 

 

その頃、大貝町から離れた都会の高速道路。

 

「いやぁ〜、美味かったーーー!サンキューな!」

 

真琴の仕事の都合が空き龍牙は食事をご馳走になり、一緒に大貝町へと向かっていた。

 

「好きって・・・言うタイミングを逃した・・・」

 

「うん?どうした、何一人でぶつぶつって言ってんだ?」

 

「えっ?んん!何でもない!」

 

龍牙は真琴の思いに気づかず、車は大貝町に到着しようとしていた。

 

「はっ!」

 

ゆるやかなカーブをいくつも越え差し掛かった頃、DBは慌ててハンドルを切って車を止めた。どこからか飛んできた落下物を避けるためだ。

 

「大丈夫?真琴!龍牙!」

 

DBは二人に声をかけるが、二人は上の方を見上げていた。

 

「ダビィ、あれ!」

 

「何?」

 

真琴に近づいた時、空の一点を指さした。

そこにはなんと、街中から浮かび上がった様々なガラクタ達が、吹き溜まりに集まる枯れ落ち葉のように、時に長く棚引き、時に密集し、その大きさを次第に拡大していた。

 

「一体何が起こってんだ?」

 

「ダビィ!龍牙!急ごう!」

 

「ええ!二人とも早く乗って!」

 

三人は急いで車に乗り込む。

 

 

一方、マナの部屋。

ここにも、どこからともなくあのクラリネットの悲しげな音色が聞こえてくる。

 

「はっ!シャル?」

 

かすかな震えるような木管の旋律に気がついたシャルルは目を覚ました。

すると、ウェディングドレスが微かな光を帯び、ヒラリはためいたかと思うと、まるでどこかに飛び去ろうとする。

 

「マナ!マナってば!」

 

慌てたシャルルは急いで隣で寝ていたマナを揺さぶり起こす。

 

「くすぐったいよ、シャルル」

 

「ねぼけてる場合じゃないシャル、ウェディングドレスが!」

 

シャルルは格闘のすえ、どうにかマナが起きると次の瞬間、服掛けから飛び上がったのだ。

 

「えっ⁉︎あっ!待ちなさい!あなたはあたしが着るんだから!」

 

反射的に飛び起きるとロフトから駆け降り、ウェディングドレスに飛び付いた。そのまま持ち主を振り切って飛び去ろうとするウェディングドレスをしっかり抱きかかえて逃がさない。

 

「うあっ!出てっちゃダメよ!」

 

ウェディングドレスにさえ、説得しようとする。

すると、いったんはマナに抵抗するかのように激しく身悶えしていたドレスだったが、ドレスから光を失うとやがておとなしくなった。

 

 

勿論、晴夜の地下室でも同じ現象が起きっていた。

 

「待って!」

 

部屋中の道具や材料がこちらも急に浮かび上がり混乱していた。

 

「頼むからお前ら逃げるな!」

 

晴夜は急いで掴もうとすると、机で直していたプロジェクターも浮かび上がった。

 

「あ!それはダメ!」

 

道具を置き、急いでプロジェクターを抑えようとするが、プロジェクターは反発し、晴夜から離れようとする。

 

「ダメ!これを直して待っている人がいるから!頼む!」

 

収まって欲しいと願うと、プロジェクターから光が無くなり、プロジェクターからの反発がなくなった。

 

「一体何だよこれ?」

 

そう呟くと上の方から音が聞こえ、晴夜は急いで地下室を出て外の様子を見にいく。

 

「これは・・・」

 

外の様子を見てガラクタが集まっているのを見ると晴夜はビルドフォンを取り出した。

 

『ビルドチェンジ!』

 

愛用のバイク『マシンビルダー』へと変わりヘルメットを出現させると、マシンビルダーに乗り込み急いで集まっている場所へと向かう。

 

 

その頃、ガラクタの集まった場所では多くの人が集まっていた。

 

「六花!かずやん!大丈夫?」

 

六花と和也を見つけたマナが声を掛ける。

 

「いったい何事?」

 

「何が起こってるんだ?」

 

「あれは?」

 

上を見ると、集められたガラクタが巨大なクジラのような船になって宙に浮いていた。

 

「でっかいクジラケル」

 

ラケルが思わず叫ぶ。

――そう、ガラクタ達は夜空を泳ぐ邪悪なクジラの姿となって現れたのだ。

 

「わが名はマシュー」

 

空の高みをゆったりと泳ぐ漆黒のクジラの上に立つ人影がマシューと自ら名乗り、月明かりを背後に語り始めた。

 

「オモイデの国の王なり!」

 

「オモイデの国?」

 

「そう、そこはお前たちに忘れられ、捨てられたモノたちの暮らす場所。マナ・・・お前を迎えに来た」

 

「えっ!」

 

マナは、はるか上空、遠くに見えるその男のシルエットにはもちろん見覚えなんてない。

 

「マナの知り合い?」

 

「いつ会ったんだよ?」

 

男の語り口では誰もがそう思ってしまう。六花も不思議そうにマナに聞いた。

 

「ううん!あのー!すいません!あなたと会ったことありましたっけ?」

 

とっさにマナが問い返す。どんな相手にも態度を変えない、マナらしさがまたも炸裂した。

 

「覚えていないというのか?ならば・・・お前たちもオモイデの中で暮らすがいい!時が止まり、静寂だけが支配する暗黒の世界で!」

 

覚えていないと言うのか、確かにヤツはそう言った。

語気を荒げ、ことさらマナとの関係性を強調する。

 

「マナ!」

 

「いったい何事じゃ!」

 

その時、外の騒ぎを聞きつけてパパとおじいちゃんが家から飛び出してきた。

 

「パパ、ママ、おじいちゃん。みんな来ちゃダメ!」

 

すると、クジラ型飛行船の内部から登場したのは大量のビデオカメラ達、それ一体一体から不思議な光線がほとばしり出てきた。それを浴びた街のみんなは見る見るうちにカメラの中に吸い込まれ、消されてしまった。

 

「どうなってるの?」

 

「おい、てめえ!何をした!」

 

次々と謎の光に吸い込まれ、消されていく人々を横目にマナが言う。周りから人々が居なくなり、あたりは不気味な静寂に覆い尽くされた。

 

「今すぐやめるシャル!」

 

まわりの状況をただ見ていることに煮やしたシャルルは思わず叫んだ。

 

「フッ! さわぐ必要はない。これを見ろ!」

 

マシューが指し示した先にはあの古めかしい映写機によって投影された映像が見て取れた、それはどこかに寝かされている赤ん坊の姿。

――誰だろう。そこにはクセっ毛の元気な女の子の姿があった。

 

「あれは・・・あたしだ」

 

それはマナ、彼女自身の姿だった。

 

「そう、これは彼らのオモイデ。人々はわすれられたモノたちの記憶と共にこのフィルムの中で生き続けるのだ。永遠にな」

 

映し出されたオモイデは、マナのパパのものらしい。

 

「あっ」

 

マシューのするどい眼光が、再びマナを捉えた。

 

「そして次はきさまの番だ、相田マナ!」

 

街の人々を飲み込んだのと同じ不思議な光線がマナを襲う。

 

「「マナ!」」

 

「わあ‼︎」

 

光線がマナに襲い掛かろとしたその時、マシンビルダーが現れた。

そして、ドリルクラッシャーを取り出しカメラに向かって放つと全てを撃ち落とし、ヘルメットを外しマナに駆け寄る。

 

「大丈夫か?マナ!」

 

「晴夜君!」

 

「なんだ、あの男・・・」

 

マシューが突然現れた晴夜を睨みつける。

すると、今度は四葉家特注のリムジンが現れると、リムジンからありすが現れた。

 

「みなさん、おケガはありませんか?」

 

「ありす!」

 

「みんな、大丈夫?」

 

そこにもう一台、車が止まる。DBと一緒に真琴と龍牙もどうやらこの危機を知り、駆けつけたようだ。

 

「まこぴー!龍牙君!」

 

「何だ、こいつらは」

 

どうやらマシューが知っているのはマナだけらしく、他の連中については知らない用だった。

 

「どこのどなたか存じませんが」

「罪もない人達をまきこむなんて」

「てめぇら、心火を燃やしてぶっ潰す!」

「絶対ゆるさねぇ!覚悟できてるような!」

「みんな、行くよ!」

 

『うん!(おお!)』

 

「さぁ、実験を始めようか!」

 

戦う前のフレーズを言うとドライバーを装着し、三人がボトルを取り出し差し込む。四人はコミューンにラビーズをセットする。

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

『ウェイクアップ!クローズドラゴン!』

『ロボットゼリー!』

 

三人はボトルとスクラッシュゼリーを差し込み、ドライバーのレバーを回し、下ろした。

するとランナーとビーカーが出現した。

 

『Are you ready?』

 

「「「変身!」」」

「「「「プリキュア!ラブリンク!」」」」

 

七人が叫ぶと晴夜達の身体にスナップライドビルダーとビーカーから形成されたアーマーが装着され仮面ライダーへ、マナ達の身体が光に包まれ、光から現れると四人はプリキュアへと変身した。

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

『Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!』

 

「みなぎる愛!キュアハート!」

「英知の光!キュアダイヤモンド!」

「陽だまりポカポカ!キュアロゼッタ!」

「勇気の刃!キュアソード!」

 

「「「「響け!愛の鼓動!ドキドキプリキュア!」」」」

 

「愛を無くしたオモイデの王様!このキュアハートがあなたのドキドキ、取り戻して見せる!」

 

七人が変身を完了した。

 

「この俺の邪魔をしようと言うのだな。仕方が無い。出てこい、忘れられしモノたちよ」

 

マシューが気合を込めると、クジラ型飛行船の船体の表面を形成していた忘れられたモノ達の一部が音を立てて剥がれ、中から三体の人形が登場した。

 

「ふんっ! パープルバギー!」

「へっへっへっへっ! シルバークロック!」

「フフ、マネキンカーマイン!」

 

現れた三体を見て、七人は構える。

 

「さあ、あいつらをたたきのめせ!」

 

両者は一斉に相手に向かって走り出した。

マネキンカーマインは頭上高く舞い上がり、全身を回転させ威力を増したドリルキックで七人に向けてを貫こうとする。

しかし、七人は後ろへジャンプし攻撃をかわし、マネキンカーマインは勢い良く地面に激突、足元に巨大な穴を穿った。

 

「それそれそれそれそれっ!」

 

次に、シルバークロックは自身の尖ったパーツを短剣がわりに、近くにいたビルドとハートに猛スピードの突きを仕掛ける。

ビルドがドリルクラッシャーを出現させ、短剣を防ぐ。

その隙にハートも前後左右への素早いウィービングによってクロックに的を絞らせない。すると、シルバークロックの後ろから近づいたキュアロゼッタが腕を取り、地面へと豪快に投げ技を放った。

 

「これ、年寄りを大切にせんか!」

 

シルバークロックは、地面へと真っ逆さまに落下し土煙が天高く舞い上がり、グリスがツインブレイカーにボトルを差し込む。

 

『シングル!シングルフィニッシュ!』

 

グリスから放たれた砲撃が命中し、シルバークロックを破壊した。

 

さらに、クローズとキュアソードがマネキンカーマインと交戦していた。

 

「こいつ・・・」

 

「さぁ、空けるよ!」

 

マネキンがクローズをドリルで貫こうとする。

 

「そいつはどうかな?」

 

その時、ソードがドロップキックを放つ、見事にマネキンの胸部に命中し、敵は派手に後方へと吹き飛ばされた。

 

しかし、その直後のソードの隙を狙っていた者がいた。攻撃のチャンスをうかがっていたパープルバギーがキュアソードに突進をかける、そこに割って入ったのはダイヤモンドだ。

 

「きらめきなさい!トゥインクルダイヤモンド!」

 

バギーはダイヤモンドの凍てつく波動をかわそうと周囲に円を描くように逃げまわった。

 

「はははは!どこ狙ってやがる!」

 

しかし、氷の輪はダイヤモンドを中心に大きく円を描くようにつながり、逃げ場を失ったバギーは転倒し壁に激突するとバラバラになった。

 

しかしそこに、またしてもあのマシューの奏でるクラリネットの音色が響き渡り地面に倒れ、バラバラになっていた忘れられたモノたちが再び動き出したかと思うと、次の瞬間には組みあがり、元の姿へと戻ってしまった。

 

「へへへへへ」

 

「再生した!」

 

不敵な笑みを浮かべ、元通りの姿となったバギーに思わず驚きの声を漏らす。

 

「こっちもかよ!」

 

マネキンカーマイン、シルバークロックの残骸も再生し元どおりになっていた。

 

「きらめけ、ホーリーソード!」

『ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンヒット!』

「オリャァァァァァァァ!」

 

クローズとソードが放つ技を食らい三体を再び粉砕する。しかし、それはクラリネットの音色と共に、すぐに元の姿へと再生をはじめてしまう。

 

「マジかよ・・・」

 

「駄目か・・・」

 

「このままじゃキリがありませんわ」

 

「こっちが不利になるぜ・・・」

 

「きっと、あのクラリネットが人形をあやつっているのよ」

 

ダイアモンドが、マシューに目を向けクラリネットの方を指し言った。

 

「つまり、あれを壊せば人形は止まる」

 

「やりますか!」

 

『うん(おお!)!』

 

マナ達の作戦は人形たちに再生の力を与えている元凶、クラリネットを潰し、まずは彼らの再生能力を奪うというもの、他の仲間達もすぐさまそれに同意する。

 

『『Ready go!』』

 

三人がドライバーのレバーを操作し高く飛躍すると、四人は手を上へと掲げて叫ぶ。

 

「「「「ラブハートアロー!」」」」

 

ハート達四人がラブハートアローを出現させる。

それと同時にビルド達三人はマシューに向かってライダーキックの態勢に入る。

 

『ボルテックフィニッシュ!』

『ドラゴニックフィニッシュ!』

『スクラップフィニッシュ!』

 

三人がライダーキックをマシューに放った。

 

「「「「プリキュア!ラブリーフォースアロー!」」」」

 

ラブハートアローの弓を大きく展開させ、台尻部分の引き金を引き絞り、前面にハート形のエネルギー体を生成される。

そして、ラブリーフォースアローをマシューに向けて放った。

ラブリーフォースアローが決まるとライダーキックを放った三人は地面へと着地した。

 

「やりました!」

 

「どうだ!やってやったぜ!」

 

敵を仕留めた手ごたえを感じ思わずそう叫んだ。

ーーしかし、霧が晴れゆくと勝利の笑顔はすぐさまそれとは別の色、落胆の色によって塗り替えられる事となった。

 

『あっ!』

 

ライダーキックとラブリーフォースアローの攻撃を受けとめ、なおも余力を残したマシューの姿を見せる。

 

「この程度の力ではおれをつらぬくことは出来ん!」

 

「引くくらいに図太い奴だな」

「次はこちらから行くぞ! イレブンファング!」

 

力を込めると体中から光線を発し、七人必殺の一撃を繰り出した、上空で11本のエネルギーの支流となり、それはまるで生き物のように襲いかかり、土煙が吹き上がる。

 

土煙が晴れた時、そこにあったのは巨大なクレーター。マシューはクレーターの縁へと着地すると、満足げに深手を負い変身の解けた七人を見下ろした。

 

『ううっ!』

「なんだよ・・・この強さ・・・」

 

無力さに悔しさを滲ませながらマシューを見つめる事しか出来ない。

 

「何も出来なかった・・・」

 

「わたしたちが、まるで歯が立たないなんて・・・!」

 

真琴が言う、マナは痛む身体を引きずるようにしてどうにか姿勢をマシューの方へと向けた。

 

「まだ立ち向かうのか? 勝てる見込みも無いのに・・・」

 

「あきらめるわけないでしょ。パパやママ、おじいちゃん。みんなを返してもらうまでは!ううう・・・」

 

「マナ!」

 

震える膝で立ち上がろうとしていたマナを支えようと晴夜が庇う。

 

「・・・ありがとう」

 

マナは顔を赤くしてお礼を言う、そんな姿を見てマシューが晴夜を睨む。

そこに、聞き覚えのあるエンジン音が近づいてくる。それは――

 

「ん?」

 

次の瞬間、辺りに土煙が巻き上がりプリキュア達を覆い隠す。セバスチャンの運転するリムジンだ。煙幕を張り逃げるチャンスを与えようというつもりなのだ。

 

「脱出しましょう!さあ早く!」

 

「セバスチャン!」

 

しかし、イレブンファングのエネルギーの脈流がありすのリムジンに襲いかかる。爆風と衝撃波に吹き飛ばされたセバスチャンをビデオカメラが襲う。

 

「セバスチャン!」

 

セバスチャンはマシューの光線に絡め取られ、心配するありすの声も虚しくオモイデの国へと送られてしまった。

 

「あわてなくてもいい。この世界の人間たちは一人残らずオモイデの中に閉じ込めるのだからな。そして次はお前達の番だ」

 

背後からそう語りかけるマシューに振り返り言った。

 

「あたしたちは、絶対に諦めたりしない」

 

「それに、まだ実験は終わっていない!」

 

二人が叫ぶと他の五人の目からも光は失ってなかった。

 

「オモイデの中で永遠に暮らすがいい!」

 

マシューがそう言った次の瞬間、集結したカメラが七人に向かって一斉に光線を照射し、

跡かたもなく姿を消した。

 

「フッ!これでいい。さあ行こうこの世の全てを最高のオモイデで包み込むために」

 

マシューと部下の人形達は巨大なクジラ型飛行船に乗り込み、この世のすべての人間達をオモイデの国へと送るべく、行動を開始した。

 

「マナ!」

 

クレーターのガレキから、吸い込まれなかったシャルル達が出て来る。

 

「行っちゃったビィ・・・」

 

「みんな吸い込まれて、僕達、これからどうすればいいケル⁉︎」

 

「ありす~!」

 

ラケルとランスが泣きそうな顔になる。

 

「泣いてもダメシャル!あたし達の力で、マナ達を取り戻すしかないシャル!」

 

 

「体に似合わず随分と勇ましいね」

 

「誰だビィ!」

 

シャルル達の前に現れたのは、頭に紫のバンダナを身につけた謎の妖精だった。

 

 

 

「――ガラクタ?」

 

「そう。長い間人間に愛され、使われてきた時計やら人形やらがいつの間にかホコリを被って忘れられ、修理される事も無いまま捨てられた。そう言う物の怒りや悲しみが凝り固まったのがあの連中さ」

 

シャルル達は謎の妖精から、マシュー達の事についての話を聞く。

 

「ソイツらが、何でマナ達を?」

 

「奴らは人間を思い出の世界に閉じ込めて、未来を奪おうとしてるのさ」

 

「そんなの許せないシャル!マナ達にはまだまだ輝かしい未来が待ってるシャルよ!それを奪う権利なんて、誰にも無いシャル!」

 

「シャルルの言う通りケル!」

 

「僕達の手で、ありす達を取り戻すでランス~!」

 

「なら方法は一つ。あの子達は思い出と共に映画のフィルムの中に閉じ込められてる。それを奪い返して解放するんだね。」

 

「ちょっと待つビィ。どうしてそこまで知ってるビィ?あなた一体何者なんだビィ!」

 

「あたしの名はベベル。あのマシューってヤツとは古い知り合いでね。

あたしはただ、アイツが間違った道に進むのを止めたいだけさ」

 

その妖精はベベルと名乗り、マシューを止めたいと話した。

 

「だったら尚更シャル!あのクジラに突入して、マナ達を救い出すシャル!」

 

『〜♪♪〜』

 

シャルルはマナ達を助けたいというと、後ろから謎の音声が聞こえ振り向いた。

 

「なにケル?」

 

後ろから現れたのは晴夜の最新の発明品、アトミックウイングガジェットだった。

 

「これって、まさか晴夜が作った発明?一緒に来てくれるシャルか?」

 

アトミックウイングが首を縦に振り頷いた。シャルル達は晴夜やマナ達を救うために、船に突入する事を決めたのだった。

 

 

 

 

その頃、どこから流れる風のなかに優しい声が聞こえた。

 

「お目覚めかい?」

 

「ここは・・・?」

 

マナは自分の部屋で目を覚ます。

 

「あんたの部屋だよ。オムライスを食べながらコックリコックリやってたんで、運んで来てあげたんだ」

 

「そっか、あれは夢だったのか・・・」

 

「夢?」

 

「大きなクジラが出て来てね、パパやママやおじいちゃん達を映画の中に閉じ込めちゃうの」

 

「随分とはっきりしてる夢だね。でもいい加減起きないと、今度は夜に寝られなくなるよ」

 

「お、おばあちゃん!?」

 

そこにいたのは、マナが小学生の頃に亡くなったハズのマナの祖母――坂東いすずだった。

 

「失礼な子だねぇ。人の顔見て驚くだなんて」

 

「だって、あたしのおばあちゃんはずっと前に天国に行ったはず・・・!」

 

「いつまで寝ぼけてんだい。顔でも洗っといで。あたしはお夕飯の支度をしに行くよ」

 

自分の姿を確かめるために鏡を見ると、小学生の姿だった。

机の上に置いてあったノートには自分の名前と『4年3組』と学年が書かれていた。

――つまりマナの思い出の世界は、今から4年前の世界だった。

 

「ただいまー」

 

「ママ・・・」

 

あゆみの声が聞こえ、すぐさま下に降りる。

 

「ママ!ママ覚えてるでしょ!あたし達映画の中に―――!」

 

「マナ、荷物キッチンに運んでくれる?」

 

買い物帰りのあゆみと一緒にかつての愛犬のマロが入って来る。

 

「マロ!」

 

マナはマロの姿を見て、抱きしめる。

 

「ちょっとマナ、どうしたの?」

 

「だってマロが生きてるんだよ!ズルいよこんなの・・・!嬉しいに決まってるじゃない・・・!」

 

マナはマロが生きていることに喜びながら涙を流す。

 

 

次の日、学校へ行く前に六花の家へ向かうが、別の人が住んでおり、学校では六花とありす、和也を知っている者は誰一人いなかった。

 

(みんなはどこにいるんだろ・・・?早く、元の世界に戻る方法を探さないと)

 

急いでみんなを見つけ元の世界に戻らなければならないと感じる。

『ぶたのしっぽ亭』へと帰宅するといすずが花に水をやっていると、マロが立ってワンワンと鳴いた。

 

「帰って来たようだね」

 

「ただいま!」

 

「お帰り」

 

「ああもうマロ!かわいいよマロ!」

 

マナは一瞬ためらったが、すぐに抱きしめた。

 

「その子はマナの足音が分かるみたいだよ」

 

「そうなの?マロはおりこうだね」

 

そう言うといすずはマロの頭を撫でる。

 

(おばあちゃん・・・いつも優しいおばあちゃん、それに大好きなマロ。

もう少し・・・一緒にいていいよね・・・?せっかくまた会えたんだもん)

 

まだこの世界に残りたいという気持ちが、マナが抱いていた先までの気持ちよりも強くなった。

 

 

その頃、クジラの艦内の中ではマシューがマナの思い出を見ていた。

 

「そうだ。そのまま思い出の中で暮らすがいい。そうすれば、辛い事や悲しい事は全て忘れ、永遠に笑顔で暮らせるようになる」

 

マシューが言うと、もう一つ気になっていた別の思い出の方に目を向ける。

 

 

その思い出の方では、一人の少年が目を覚まして辺りを見回す。

 

「ここは・・・」

 

見覚えのある部屋の景色を見て少年は驚いて髪を抑える。

 

「どうした?何か珍しいものがあったのか?」

 

少年の前に男性が現れ、少年の癖で髪を抑える事を知っていた。

 

「・・・晴夜」

 

「そんな・・・父さんなんで?」

 

ここは、晴夜の思い出の中、部屋のカレンダーを見ると4年前になっていることに気づき、姿も10歳の姿になっていた。

そして目の前には、トランプ王国で、今は行方不明の父――桐ヶ谷拓人がいた。

 

「どうして・・・(あの時、カメラに吸い込まれて、それで・・・)」

 

マシューに敗れて吸い込まれてからの記憶は覚えているが、そこから後のことが全然覚えてない。

 

「それより、早く学校に行かないと遅刻するぞ」

 

「うん・・・(みんな、大丈夫か・・・)」

 

ずっと会いたいと思っていた父と、ようやく会えた。

――だが、晴夜はみんなの事が気になってしょうがなかった。

 

 

 

それを見ていたマシューは、必要に晴夜の思い出を見ていた。

 

「あの男・・・」

 

「前方に明かりが見えます」

 

マネキンがマシューに伝える。

 

「また人間が残っていたのか。あのタワーに向かえ!」

 

タワーに明かりが見え、船はそこへと向かった。

 

 

その頃、四葉タワーではシャルル達妖精が突入準備に入っていた。

 

「来たシャル!」

 

船が来たのを確認し、屋上に向かう。

 

「ダビィ!」

 

「ホントにその格好で行くケル?」

 

「私達のスピードじゃあのクジラに追いつけないしね」

 

屋上にはハングライダーを装着していたDBがおり、妖精達がDBの服の中に入り、その横にアトミックウイングがいた。

 

「いいわね、行くわよ!」

 

タワーから飛び降り、グライダーの翼を展開させて風の力を利用し船へと飛び、船の上へと着地し、船内の中へと侵入した。

 

「罠だったか。まあいい。お前達は忍び込んだネズミを捕えろ!一匹残らずだ!」

 

「承知した」

「チッ、メンドくせーな!」

「お任せを」

 

クロック達三体はシャルル達を捕えようと命を受け、捕えに向かう。

 

「見つかったシャル!」

 

警報が鳴る中を急いで移動する。

その途中で壁からマネキンが出て来て立ちはだかる。

するとアトミックウイングが前に出て、マネキンに攻撃する。

 

「流石、晴夜の発明品ケル!」

 

今度は後ろからマネキンが出現し後ろから襲ってきたが、DBの格闘術でマネキンを破壊した。

 

「凄いシャル~!」

 

「これぐらいはね。行くわよ!」

 

マネキンを全て排除し、さらに奥へと向かう。

そして、シャルル達はフィルム保管庫へと到着した。

 

「これは?」

 

「映画のフィルムさ。この中に町の人の思い出が閉じ込められてるんだ」

 

「じゃあ、マナ達もこの中に・・・⁉︎」

 

「手分けして探すケル!」

 

保管庫へと到着し、手分けしてマナ達のフィルムを探す。

 

「見つけたわ!真琴と龍牙のよ!」

 

「こっちも発見でランス~」

 

「僕も!」

 

ラケルとランスは六花とありす、和也の思い出を見つける。

 

「マナと晴夜の思い出が見つからないシャル!」

 

――だが、晴夜とマナの思い出だけが見つからなかった。

 

「探し物はこれかな?」

 

「あれは!」

 

「マナの思い出!」

 

三体が現れ、シルバークロックが持ってたのはマナの思い出だった。

 

 

シャルル達はあっさりと捕まって捕虜となり、マシューのいるブリッジに連行された。

 

「晴夜の思い出はどこシャル!」

 

「これのことか?」

 

なんと、晴夜の思い出はマシューの手の中に握られていた。

 

「久しぶりだな、ベベル」

 

「マシュー、お前も元気そうじゃないか」

 

「フィルムを取り戻すためにわざわざ乗り込んで来るとは、相変わらず無茶な奴だ」

 

「いい子だからマナとあの少年のフィルムを返しな」

 

「捕虜の分際でよく言う」

 

フィルムを入れて映写機を回すと、幼い姿のマナと晴夜が映った。

 

「マナ!あたしの声が聞こえないシャル⁉︎早く目を覚ますシャル!」

 

「無駄だ。彼女達は完全に思い出に囚われている。見ろ、この幸せそうな顔を」

 

他にも六花、ありす、真琴、龍牙、和也が映し出された。

 

「六花!」

「ありす~かずやん〜!」

「真琴・・・龍牙・・・!」

 

映し出された映像では五人とも笑顔だった。

 

「辛い現実を忘れ、いつまでも思い出の中にいられるとしたら、これ程幸せな事は無いだろう?」

 

マシューが映像を見せ、全員幸せだと言うが…

 

「―――だが、あの男だけ・・・」

 

映像に映る晴夜だけが、何か楽しいというか違和感があるような顔をしていた。

 

「何故だ!この男はなぜ笑顔ではない!」

 

「時間が止まったお前には分からないかもしれないね」

 

「何っ?」

 

「あの子達には無限の可能性が広がっているんだ!彼女達の未来を奪う権利なんて、お前には無いよ!」

 

「黙れ!」

 

マシューが叫ぶとアトミックウイングが現れ、マシュー達に攻撃する。その隙にダビィが妖精の姿に戻るとロープがほどけ、その隙にベベルがマシューの顔に飛びついた。

 

「時間が無い!アンタ達はあのスクリーンの中に飛び込みな!」

 

「え!?でも・・・!」

 

「早くお行き!」

 

ベベルに促され、シャルル達は七人がいるスクリーンの中に入った。

 

「何っ⁉︎」

「思い出の中に入っちゃったじゃん!」

「そんな馬鹿な・・・!」

 

「奴らに何が出来ると言うんだ!」

 

「あの子達はきっと思い出の中から連れ出してくれる!お前の野望もこれで終わりだよ!

特にあそこの彼は自分で抜け出すハズさ!」

 

ベベルはスクリーンへと飛び込んだシャルル達は思い出の世界から戻ってくると信じ、そして、特に晴夜は自分の力で戻ってくると信じている。

 

「マナ・・・」

 

「えっ?」

 

「マナだけが、人間達だけが未来へ行く事は許さない!二度と現実の世界に戻りたくならないようにしてくれる!」

 

「マシュー・・・」

 

 

 

一方、その晴夜の思い出の中は父と居られたこの4年前の世界。いつも変わらず父親の研究や製作を隣で見て、出来たら触らせてくれた。

 

「すごい!やっぱり父さんは凄いよ!」

 

思い出の中とはいえ、やはり拓人の技術は晴夜の何歩も先を超える技術だと改めて確信した。

 

「お前も頑張ればこれくらい出来る筈だ」

 

拓人が晴夜の頭を撫でなながら言う。

 

「その時は、父さんに見せてくれよ」

 

「・・・う、うん」

 

その言葉を聞いて一気に元気を失くすように頷く。

 

 

それから、しばらく経ち夏休みとなり、親戚が住んでる大貝町へと里帰りのため来ていた。

着いたら中を巡り、自分が4年後に使っていた地下室の扉を見つけると、手を伸ばし扉を開ける。

だが、中は荒れ放題の物置きで何もなかった。

 

「そうだよな・・・まだいるわけねぇよな」

 

いつも扉を開けると中には龍牙や和也やマナ達がいる。

――やはり、ここは過去の世界と実感させられる。

そして、大人達がリビングへと向かい外を見ながら座り込む。

 

「晴夜、どうした。先からずっとから暗い顔で・・・」

 

「えっ?ううん!なんでもないよ」

 

何でもないと誤魔化す。

 

「ごめんちょっと、外行ってくる」

 

拓人に外に行ってくる言って傘を持って出ていった。

外は雨が降るなか晴夜は町を歩いてこれから待っている事を紛らわそうとする。

 

(あと数日経ったら、父さんは俺の前から消えてしまう・・・)

 

傘を握り締めながら呟く。

そう、あと数日経った頃には拓人はトランプ王国へと飛ばされ、会うことが出来なくなる。それを知っている晴夜にとって辛い現実が待っていた。

 

 

同時刻、ぶたのしっぽ亭では臨時休業の看板が貼られていた。

 

「えっ⁉︎おばあちゃんが⁉︎」

 

「店の前でつまずいてね、病院に連れて行ったら足の骨が折れてるって言われて入院する事になったんだ」

 

健太郎の口からいすずが骨折して入院したと告げられる。

 

「そんな・・・あたしも病院行って来る!」

 

「ママとおじいちゃんが付き添ってるから心配無いよ!」

 

「だけど・・・!」

 

「じゃあ、大貝病院の605号室だ!気をつけて行くんだよ!」

 

「はーい!」

 

傘を持っていすずが入院している病院へ行こうとする。

 

「マロ!今はダメ!後でお散歩に連れてってあげるから!」

 

マロに後で散歩に連れて行く事を約束し、駆け足で病院に向かった。

雨が降る中傘をさしながら急いで祖父のいる病院へと向かう。

そして、十字路を曲がろうとする。

 

「⁉︎」

 

曲がろうとすると傘をさしていた少年にぶつかってしまい二人とも尻餅をつく。

 

「ごめんなさい!大丈夫?」

 

少年はすぐに起き上がりマナに近づき手を差し出す。

 

「こちらこそ、ごめんな・・・⁉︎」

 

少年の手を握り起き上がろうとすると、その顔を見て、何かを感じる。

 

「・・・晴夜君」

 

「もしかして、マナ・・・なのか?」

 

ぶつかったのは、偶然この日に親と大貝町に来ていた晴夜だった。

 

 

 

その様子をブリッジで見ていたマシューも驚いていた。

 

「なぜ、あの男の思い出とマナの思い出が!」

 

まさか、二人の思い出が重なるとは思わず、ひどく驚いた。

 

「どうやらあの子の過去をちゃんと調べなかったお前の失敗だな」

 

「だが、どの道変わらん!」

 

 

 

再会したマナと晴夜は祖父のいすずが倒れたと事情を聞き、一緒に大貝病院へと向かう。

 

「大げさなんだよマナは」

 

「でもおばあちゃん、最近転んだりケガしてばかりじゃない。あたし心配で・・・」

 

「マナの言う通りよ」

 

「お前もいつまでも若くないんだから気をつけないとな」

 

「ずっと元気でいてよ。あたしが結婚するまで長生きしてよ・・・」

 

「モチのロンさ。約束するよ」

 

心配して抱き着いたマナの頭を優しく撫でる。

 

「一緒に来た君はマナの友達?それとも彼氏?」

 

「えっ⁉︎」

 

するといすずがマナの隣にいる少年のことについて聞いた。

 

「えっと〜・・・桐ヶ谷晴夜です。その・・・どうも・・・」

 

一緒に来た晴夜が挨拶して、しばらくして病院を後にした。

 

「マナ!晴夜!」

 

「シャルル!」

 

家に戻る途中でシャルルと再会する。

 

「良かった~。もう会えないかと思ったよ」

 

「マナ、マナは帰らないシャルか?」

 

「シャルル・・・」

 

「現実の世界はとんでもない事になってるシャル!さあ、一緒に帰るシャル!」

 

「だけど・・・あたし、マロやおばあちゃんにお別れ言わないと!」

 

マナはそう言うと駆け足で家へと向かう。

 

「別れ・・・父さん」

 

晴夜は『別れ』と聞くと思い出す。

――この世界から元の世界に戻る・・・それは拓人との別れでもある。

 

 

その頃、マナが家に着くと、前にパトカーが停まっていた。

 

「何・・・?」

 

急いで家の中へと入る。

 

「パパ、どうしたの?」

 

「・・・マナ、落ち着いて聞いて」

 

健太郎は暗い表情でマナに何かを告げようとする。

 

「実は、マロが逃げ出したんだ」

 

「えっ?」

 

「雨でよく見えなかったのかもしれないけど、横断歩道の真ん中で車にぶつかって・・・」

 

家の中には、冷たくなったマロが横たわっていた。

 

「すまない、パパがちゃんとマロを見て無かったから・・・」

 

健太郎が謝るていると晴夜もぶたのしっぽ亭へ到着し、犬小屋があったことに気づく。

 

「・・・切れてる。自力で切ったのか?」

 

マロの犬小屋のロープが切れたのを見て、自力でやったと察する。

 

「違うよ・・・」

 

「マナ・・・」

 

マナの声が聞こえ晴夜は中へと入ると横たわるマロの姿を見た。

 

(あの犬⁉︎確か4年前に車に轢かれた・・・)

 

晴夜は4年前に来た時、あの犬が車に轢かれたのをその場で見た事を思い出した。

そして、それがマナが飼っていた犬だと知り、衝撃が走った。

 

「あたしが・・・あたしがもっとマロを・・・」

 

 

『これで分かっただろう。未来には悲しい出来事がいっぱい待ち受けている。僕は、君にこんな辛い思いをさせたく無いんだ』

 

「この声は・・・まさか・・・⁉︎」

 

『さあ、このままずっと思い出の中で暮らそう。嫌な事や、辛い事は何もかも忘れて。

永遠に』

 

マナはマシューのささやきに頷き、泣き崩れた。

 

「ダメシャル!そっちに行っちゃ行けないシャル!マナー!」

 

「戻ってこい!マナー!・・・なっ!うわぁぁぁぁぁ!」

 

「晴夜ーー!」

 

シャルルの叫びは届かず、マナの物語はここで終わり、晴夜は自分のまだ終わらない物語へと戻ってしまう。

 

 

 

その頃、ブリッジで物語が終わるのを見たマシューが軽く拍手をした。

 

「これでいい。マナは永遠に僕の虜だ」

 

「本当にこれが、お前の選んだ結末なのかい?マナはこんな事でつまずくような子じゃない。いつも前向きで、周りを元気にするひまわりみたいな子だからね。きっと立ち直って戻って来る。あの子を慕う仲間もいるしね」

 

ベベルの言動は、まるで昔からマナの事を知っているようだった。

 

「仲間・・・?」

 

「ああそうさ。マナ達はきっとお前の思い通りにはならないよ」

 

「うるさい!」

 

マシューがそう叫び、六花、ありす、和也、真琴、龍牙を映す。

 

「マネキンカーマイン、パープルバギー、シルバークロック、コイツらを始末して来い」

 

「だけどコイツら思い出の中なんだろ?放っておきゃいいじゃねーか」

 

「奴らはプリキュアとライダーだ。万が一の事がある」

 

「人使いが荒いのう」

 

「やれやれだぜ!」

 

マシューの命を受け三体は他のみんなの思い出の中に入って行った。

 

 

 

六花の思い出の世界――それはピアノの発表会の日だった。

 

(年に一度のピアノの発表会。いつも忙しいパパもママも、この日だけは、一緒にピアノを聞きに来てくれる)

 

「今日は六花の好きな食べ物、何でも食べさせてあげるよ。何がいい?」

 

「オムライス!」

 

「オムライスだな。よーし!それじゃパパが知ってる最高の洋食屋さんに連れてってやろう」

 

「うん!(楽しい・・・。けれど、何かが足りない気がする)」

 

 

 

ありすの思い出の世界――それは、初めて父の星児と出かけた日だった。

 

「くまちゃん、今日は何の日ですか?」

 

『今日はありすちゃんとパパの、初めてのお出かけの日だよ』

 

「それは楽しみですね」

 

くまのぬいぐるみに話しかけると父親の星児が車のドアの前に現れた。

 

「さっ、ありす。今日はお前の社交界デビューの日だ。素敵なレディになれるかな?」

 

「はい!お父様!」

 

車の窓を叩き、ドアを開ける。

 

「そんなものは置いておきなさい」

 

「はい、お父様」

 

ぬいぐるみを車の中に置き、と歩く。

 

(お父様と初めてのお出かけ。嬉しいハズなのに、何かが足りない・・・)

 

 

 

和也の思い出の世界――それは親子と一緒に出かけていた日。

 

「今日は父さんと母さんと一緒に出かけられるなんて、久しぶり!」

 

和也は二人の間に挟まれながら笑顔で歩いていた。

 

(でもなんだ、なんか心の中から何かを忘れてる)

 

和也が何かを忘れていると感じ出した。

 

 

 

――すると、六花とありすと和也は同じ時間にいて、すれ違うと、立ち止まった。

 

「どうした?ありす?」

「六花?どうしたの?」

「和也?なにしてる?」

 

家族から声をかけられても三人は顔を見合わせていた。

 

「あの!(会った事がある気がするけれど―――)」

(思い出せない)

(忘れちゃいけない人達なのに)

 

 

「「「あなたは、誰?」」」

 

 

そう言ったその時、ラケルとランスが六花とありすの顔にぶつかり、二人が和也にぶつかってしまう。

同時に三人は元の姿に戻り、周りの空間の色が緑色となって先まで一緒にいた家族がマネキンの姿になった。

 

「どう言う事?」

 

「私達、今まで何を・・・」

 

「確かマシューって奴と戦って・・・」

 

「六花!」

 

「ラケル!」

 

「ありす~!」

 

「ランスちゃん!」

 

「お前ら、助けに来てくれたのか?」

 

ラケルとランスはパートナーとの再会を喜ぶ。

 

「もう会えないかと思ったでランス~」

 

「良かったケル!」

 

「そうか、私達思い出の中に閉じ込められて・・・」

 

「色んな事を忘れかけていたのですね」

 

「お前らが俺達に忘れてた心を取り戻してくれた」

 

三人がラケルとランスに礼を言う。

 

「さあ、一緒に帰るケル!」

 

「マナ達が待ってるランス~」

 

三人は頷き急いで脱出しようと試みる。

 

「そうは行かないじゃん」

「あなた達には永遠に思い出の中に留まっていただきます」

 

しかし三人の前にパープルバギーとシルバークロックが立ちはだかる。

 

「マナのいない世界なんて!」

「私達にとって、何の意味もありませんわ!」

「必ず俺たち元の世界に帰る!」

 

三人は元の世界に戻るために、今一度戦おうとする。

 

「行くよ!ありす!かずやん!」

「はい、六花ちゃん!」

「オーケー!いつでもいいぜ!」

 

二人はラブリーコミューンにラビーズをセットし、和也はスクラッシュドライバーを装着した。

 

『ロボットゼリー!』

 

スクラッシュロボットゼリーを差し込むと二体を指をさしながら構える。

 

「変身!」

「「プリキュア!ラブリンク!」」

 

三人が叫ぶと和也はレンチレバーを下ろし、ビーカーが現れるとその中で液体に覆われ、六花とありすは光に体が包まれる。

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!』

 

「帰りましょう!私達の世界へ!」

「ええ。私達を待つ希望の世界へ!」

「俺たちが出会った世界に戻る!」

 

 

 

真琴の思い出の世界――プリキュアになる就任式の日だった。その後ろにはサポートになる龍牙の姿もあった。

 

(ここは・・・トランプ王国?)

 

(この光景は・・・)

 

「今日ここに、新たな伝説の戦士、プリキュアが誕生した事は大いなる喜びです。共に祝いましょう」

 

「王女様・・・」

 

「今日からあなたは、キュアソードと名乗って、トランプ王国の平和のために尽すのです」

 

「光栄です。王女様」

 

「待てソード!これは・・・」

 

これは過去だと気づいている龍牙が叫ぶが、ソードは何の不安もなく式を行なっていた。

 

(これが私の思い出。確かに、プリキュアになれた喜びで満ち溢れていたし、何より、王女様のそばにいれるのが嬉しかった)

 

ソードはこの過去が嬉しかったとひと時だと感じていた。

 

(この平和な時が、ずっと続いていれば良かったのにーー)

 

思い出の世界の誘惑に既に虜になってしまっていた。

 

「そんな事言ってちゃダメだビィ!」

 

「ダビィ!」

 

「真琴!」

 

飛んで来たダビィの叫びと同時に空間の色が赤く染まり、龍牙が駆け寄る。

アン王女やトランプ王国の住人達がマネキンの姿になった。

 

「ここは真琴の思い出の中だビィ!」

 

「現実のトランプ王国はキングジコチューに滅ぼされてたんだぞ!」

 

「そんなの分かってる!」

 

「真琴・・・」

 

「私もう、あんな辛い思いはしたくない・・・!一人ぼっちになるのは嫌なのよ!」

 

「お前は一人じゃねえだろ」

 

声が聞こえて顔を上げると龍牙が立ちあがる。

 

「お前は一人じゃねえ!俺やダビィもいれば、晴夜やマナ達もいる!」

 

「マナ達もきっと元の世界に戻るために戦い続けてるビィ!あなたとの約束を果たすために!」

 

「約束・・・」

 

「そう、あなた達は誓ったビィ!トランプ王国に必ず平和をもたらすって!」

 

真琴はトランプ王国から魔法の鏡で二度目の脱出をした時、六人で必ず取り戻そう誓ったあの日を思い出した。

 

「ゴメンなさいダビィ。龍牙もありがとう!私、久しぶりに王女様の姿を見たものだから、ちょっと動揺しちゃったみたい」

 

「真琴・・・」

 

「やっぱお前はその笑顔がいいな」

 

「早く元の世界に戻る方法を探しましょう!」

 

「分かったビィ!」

 

「そうはさせない」

 

龍牙達がこの世界から脱出しようとすると、マネキンカーインが龍牙と真琴の前に現れ道を阻もうとする。

 

「コイツは・・・!」

 

「私達をこの世界から出さないつもりだビィ!」

 

「だったら簡単だ!こいつをぶっ倒してここから出る!」

 

「ええ!行くよ!龍牙!ダビィ!」

 

龍牙はビルドドライバーを装着し、クローズマグマナックルを取り出し、ドラゴンマグマボトルを差し込み、真琴はラブリーコミューンとなったダビィを持ちラビーズをセットした。

 

『ボトルバーン!クローズマグマ!』

『Are you ready?』

 

「変身!」

「プリキュア!ラブリンク!」

 

マグマライドビルダーと光に身体が包まれ、二人はクローズマグマ、キュアソードへと姿を変える。

 

『極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!』

「愛を無くした悲しいカラクリ人形さん!このキュアソードが愛の剣で、あなたの野望を断ち切ってみせる!」

 

胸にスペードのマークを作りマネキンカーインに向けて言うと二人は同時に向かっていた。

 

 

 

その頃、晴夜は思い出の世界で苦悩していた。

あの時、マナの涙を見たその時から・・・

 

(4年前、あのマロって犬を止めていればこんなことには・・・マナから笑顔を奪われなかった・・・)

 

髪を両手で抑えながら、あの時気づけなかった事を自分を責める。

 

「どうした。ずっと顔を下に向けて」

 

拓人が部屋に入って来て晴夜の顔を上げる。

 

「ねぇ・・・父さん」

 

「どうした・・・」

 

「もし・・・大事な人を失くして、傷ついた人がいた時、父さんならどうするの・・・」

 

拓人に今の気持ちの人がいた時どうするのかと質問する。

 

「さぁな・・・それは、わからんな」

 

しかし拓人はわからんと呟く。

 

「でも、その人の事を心に刻み、前へと進むことが大事だな」

 

「心に刻む・・・」

 

「辛い事や苦しい事が過去にあったとしてもそこから逃げず受け止める。それをいつまでも心に残し前へと進むことが未来へと繋がる」

 

「未来・・・」

 

晴夜はポケットの中に入っていたラビットとタンクのボトルを取り出す。

 

(そうだ・・・ここから未来に繋がるから、ライダーシステムは作られて、今みんなを守れるんだ)

 

「晴夜・・・これをお前に」

拓人は晴夜の手に何かを渡した。

 

「これは、ボトル・・・?」

 

それは白いボトルで、射手座の絵柄が記されていた。

 

「それは、父さんが作った最初のボトルだ」

 

この射手座モチーフのボトルは拓人が作った最初のボトルだと言う。

 

「晴夜、お前のこれからも射手座の放つ矢のように前に進むんだ!」

 

「父さん・・・」

 

拓人の言葉を聞いて、晴夜の目から涙が溢れ出ると晴夜はそれを拭う。

 

「父さん!俺行くよ!今どうしても笑顔を取り戻したい人がいるんだ!」

 

「なら行くんだ!お前のやりたいように!」

 

晴夜は頷き、家を出ようとする。

 

「最後に聞かせて・・・父さんはなんで科学者になったの?」

 

「・・・それは――――」

 

拓人は晴夜に何故、科学者になったのかと打ち明けた。

 

「・・・最高だよ。父さん」

 

晴夜は玄関の扉を開き、走り出した。

 

(父さん、さよなら言わないよ。必ずあっちでまた会ってみせる)

 

今は行方不明の父親にもう一度会うと決意し晴夜は走り出した。

 

 

 

その頃、グリス、ダイヤモンド、ロゼッタの三人がシルバークロック、パープルバギーと交戦していた。

 

「このヤロー!」

 

グリスが両腕のツインブレイカーを振り回して攻撃するが、二体は飛んで避けた。

 

「お前らは二度と仲間に会えないまま、この世界で朽ち果てるのだ!」

 

「カッチカチの、ロゼッタウォール!」

 

ロゼッタがロゼッタウォールを発動し、シルバークロックの攻撃を防ぐ。

 

「しつこい!」

 

ダイヤモンドがラブハートアローを出現させた。

 

「プリキュア!ダイヤモンドシャワー!」

 

ダイヤモンドシャワーを放ち、足場を凍らせる。

 

「甘いじゃん!スパイクタイヤに改造済みじゃん!」

 

パープルバギーのタイヤにスパイクが出て来る。

 

「それ!」

 

両腕のタイヤを投げ飛ばし、ダイヤモンドを落下させる。

 

「キュアダイヤモンド!」

 

「よそ見は、いけません!」

 

気を取られた隙にクロックのカカト落としを受け、ガードするものの地面に落下した。

 

「ロゼッタ!」

 

「お前もじゃん!」

 

「甘い、ですぞ!」

 

タイヤと短剣が今度はグリスに襲いかかり、グリスが倒れる。

 

「マナって言ったか?」

 

「今頃ソイツも同じ目に遭っているでしょうね」

 

「「マナ・・・」」

「マナちゃん・・・」

 

「そろそろトドメと行こうじゃん!」

 

そう言うとパープルバギーとシルバークロックが合体し、より強大なものとなった。

 

「ちょっと嘘でしょ・・・!?」

 

突進を跳躍してかわすが、腕から放たれた火炎放射がロゼッタに向けて放たれる。

ロゼッタウォールを発動して防ぐが、粉々に砕かれてしまう。

 

「「ロゼッタ!」」

 

ダイヤモンドとグリスも腕からの一撃を受けて、ガードしたものの吹き飛ばされる。

 

「「これで、ジ・エンド!」」

 

三人にとどめを刺そうとする。

その時、どこから放たれた砲撃が合体した二人のバランスを崩した。

 

「「「⁉︎」」」

 

「「誰だ!」

 

砲撃が放たれた方を見るとネビュラスチームガンを持ち、パープル色のクロコダイルがモチーフのライダーが現れた。

 

「仮面ライダーローグ・・・見参・・・」

 

「「「幻冬(君)!」」」

 

仮面ライダーローグが現れ、三人を守ったのだ。

 

「大義のための犠牲となれ!」

 

「「ふざけるな!」」

 

『ファンキーブレイク!クロコダイル!』

 

クロコダイルクラックボトルをスチームガンへと差し込み、蓄えられたエネルギーを放ち、合体したバギーとクロックが倒れる。

その隙に倒れていた三人が起き上がる。

 

「私達は・・・いつもマナに助けられて来た!」

「あいつの優しさが・・・俺達を勇気づけて来た!」

「今度は私達が、マナちゃんを助ける番ですわ!」

 

マナ助ける思いが三人に力を与え、起き上がる。

 

「行くよ、ロゼッタ!かずやん!」

 

「はい!」

「あぁ!」

 

「「貴様ら、許さん!」」

 

起き上がった合体した二体がローグに向けて火炎放射を放つと、ロゼッタが前に出た。

 

「プリキュア!ロゼッタリフレクション!」

「プリキュア!ダイヤモンドブリザード!」

『チャージボトル!潰れな〜い!チャージクラッシュ!』

 

ロゼッタがロゼッタリフレクションで火炎放射を防いでる隙にダイヤモンドがダイヤモンドブリザードを放ち凍らせると、グリスの手がクマボトルの力で巨大なクマの手となり左右からぶつけるが受け止められる。

 

「ロゼッタリフレクション!ダブルクラッシュ!」

 

そこにロゼッタリフレクションを左右から同時にぶつけた。

 

「今です!」

 

「かずやん!幻冬君!」

 

ダイヤとロゼッタの二人に言われ、グリスとローグはドライバーのレンチを下ろす。

 

『スクラップフィニッシュ!』

『クラックアップ フィニッシュ!』

 

二人が同時にライダーキックを放ち、パープルバギーとシルバークロックを倒した。

だが、これまでにダメージを受け過ぎ、力尽きて倒れてしまう。

 

 

一方、クローズマグマとキュアソードはマネキンカーマインと一進一退の攻防を繰り広げる。

 

「ハァァァ!」

 

ビートクローザーを振りかかるがマネキンのドリルで防がれる。

 

「相討ち⁉︎」

 

ソードがドロップキックを放つが、相殺された。

 

「こちらの技が読まれているビィ!」

 

「それなら・・・!ラブハートアロー!」

 

「なら、俺も!」

 

ソードがラブハートアローを出現させ、クローズはボトルをビートクローザーに差し込む。

 

「プリキュア!スパークルソード!」

『スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンスラッシュ!』

 

ラビーズをセットしスパークルソードを、クローズがグリップを引っ張りミリオンスラッシュを放つ。

 

「マネキンカッター!」

 

しかしマネキンカーマインが放ったマネキンカッターで相殺され、爆風で吹き飛ばされて倒れてしまう。

 

「私がただのマネキンだと思ったら大間違いよ。これが私の本当の姿!」

 

この場にいた全てのマネキンを吸収し、巨大化した。

 

「マジかよ⁉︎」

 

「何なのこれ⁉︎」

 

「デカいビィ!」

 

腕に覆われたリボンがドリルのように回り、クローズとソードに遅いかかる。

何とかかわして近づくが、隙を取られて動きを封じられた。

 

「逃げて龍牙、キュアソード!」

 

なすすべもなくやられるかと思ったその時、「きゅぴらっぱ~!」と声が聞こえ、腕のリボンが花となり、クローズとソードは危うく難を逃れた。

 

「誰だ⁉︎」

 

「愛の切り札!キュアエース!」

「アイ!」

 

柱の上にキュアエースが立っていて、傍にはアイちゃんが浮いていた。

 

「美しさは正義の証!ウインク一つであなたのハートを射抜いて差し上げますわ!」

 

エースは手でエースマークを作り、決め台詞を叫ぶ。

 

「キュアエース・・・」

 

「どうしてここに・・・?」

 

「愛は時空を越えるもの。さあ、立ちなさいキュアソード!クローズ!あなた達の心はまだ折れていないハズです!」

 

二人に指をさしながら叫ぶと二人は起き上がった。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

クローズが一人向かっていた。巨大化したマネキンは攻撃を繰り出すとそれを避けながらクローズの拳を繰り出す。

 

「ぐぅ!」

 

「力がみなぎる!魂が燃える!俺のマグマがほとばしる!」

 

自身のフレーズを叫びながらクローズは全身のマグマを燃やしながらラッシュを繰り出す。

 

「もう、誰にも止めらねぇ!」

 

そう叫びながらクローズはドライバーのレバーを二度回す。

 

『Ready go!』

 

クローズの体がさらにマグマで帯び、後ろにマグマを纏ったドラゴンが現れる。

 

『ボルケニックフィニッシュ!』

 

「はぁ〜・・・オリャャャャャャャ!」

 

クローズから放たれたマグマのドラゴンがマネキンの右腕や一部に直撃し破壊した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!…貴様が現れなければ・・・」

 

残った片手で襲い掛かるが、エースは華麗にかわした。

 

「この程度の攻撃では、わたくしの心は痺れませんわ。お見せしましょう。本当の衝撃と言うものを!」

 

エースはルージュを口紅を塗る

 

「ときめきなさい!エースショット!ばきゅ~ん!」

 

両手持ちして頭上に掲げたラブキッスルージュを振り下ろし、エースショットを放った。

 

「キュアソード!今よ!」

 

ソードは走り出しマネキンに向かっていく。

 

「閃け!アルティマソード!」

 

エースが動きを封じた隙にソードはアルティマソードを放つ。

 

「決めなさい!龍牙!」

 

クローズが既に空中へと飛躍していた。

 

『Ready go!』

 

クローズがライダーキックの態勢に入り、マグマのドラゴンが足に収束していた。

 

『ボルケニックアタック!』

 

クローズのボルケニックアタックのライダーキックが決まり、マネキンカーマインを倒した。

 

「しゃあ!」

 

「やったわね!龍牙!」

 

二人は高々とハイタッチする。

 

「さあ、参りましょう。一刻も早くキュアハートを救うのです」

 

エースがマナを助けに行こうとする。

 

「このまま逃がしはしないよ!」

 

しかし、まだマネキンカーマインは動けていた。最後の悪あがきとして自爆し、クローズ達を相討ちに持ち込んだ。

 

「エース、ソード、クローズ、しっかりするきゅぴ!」

 

爆発を受けたクローズとソードとエースは倒れてしまい、残されたアイちゃんだけが、所在なさげに二人の周りを飛び回っていた。

 

 

 

その頃、ブリッジから見える最後の映像もこれで途切れた、マシューは静かに目を閉じる。

 

「我がしもべ共はよくやってくれた。これでもうマナはオモイデの中から出てくる事はない」

 

「それはどうかな」

 

マシューの計画はこれで完成したと確信した時、声が聞こえると、スクリーンから晴夜が現れた。

 

「貴様、なぜここに・・・!」

 

「当然、マナを助けるためだ」

 

「何故だ!何故、貴様は思い出の中の誘惑にかからなかった!」

 

マシューは晴夜が何故、思い出の誘惑に負けず、なお元の世界に戻ってこれたのかわからなかった。

 

「・・・俺は過去を受け入れた!」

 

「何・・・⁉︎」

 

「お前が見せた父さんとの思い出・・・父さんが居なくなってから俺は悲しくて辛かった・・・」

 

「だったら、尚更・・・!」

 

すると晴夜はビルドドライバーを取り出す。

 

「でも、どんな過去を受け入れて、未来に向かって進んでいく!そして・・・必ず父さんを見つける!」

 

ビルドドライバーを装着し、ボトルを2本取り出し、数回振り始め、後ろからいくつかの数式や化学式が現れるとキャップを回した。

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

兎と戦車のシルエットが浮かび、『R/T』と表示された。そして、レバーを回すと前と後からスナップライドビルダーが出てきてアーマーが形成された。

 

『Are you ready?』

 

「変身‼︎」

 

一度構えた後、両手を一度交差させてバッと広げると、アーマーが中央の晴夜に重なるように装着される。

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

仮面ライダービルド・ラビットタンクフォームへと変身しすると、ドリルクラッシャーを取り出しマシューに振るが攻撃を防ぐようにバリアが阻む。

 

「硬いな〜、なら・・・」

 

『タカ!ガトリング!ベストマッチ!』

 

タカとガトリングのボトルを取り出しキャップを回すとドライバーに差し込む。

 

「ビルドアップ!」

 

『天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ!』

 

ホークガトリングへとフォームチェンジを完了し、ホークガトリンガーを出現させる。

 

『テン!トゥエンティ!サーティ!フォーティ!フィフティ!シックスティ!セブンティ!エイティ!ナインティ!ワンハンドレッド!』

 

空中へと飛びながらホークガトリンガーのシリンダーを回した。

 

『フルバレット!』

 

ホークガトリンガーの百発の攻撃が繰り出され、マシューに張られたバリアも連続で撃ち続ける弾に耐えきれず破壊され、バランスを崩すとビルドも着地した。

 

「何故幸せの中からマナを連れ戻そうとする!」

 

「そんなの決まってるだろ・・・友達だからだよ」

 

晴夜は友達だから取り戻すと叫ぶ。

 

「俺達が辛くても苦しい時もマナの笑顔が俺達を助けてくれた」

 

――戦いが辛く、何度もピンチな時があった。

――ハザードトリガーで悩んでいた時も、マナのおかげで乗り越えられた。

 

「でも、あいつの大事な人が亡くなって辛い顔を見た時、俺は自分が最悪だ・・・って思った」

 

あの時、落ち込む彼女にどう言葉をかければいいのか、わからなかった。そして、マロを助けれられたかもしれないのに、できなかった。

 

「だから・・・マナから笑顔が消えた時は必ず俺がマナの笑顔を取り戻す!」

 

ビルドの強い決意を感じたベベルがビルドに向けて口を開く。

 

「ビルド!マナの思い出にはそのスクリーンを潜ればいける!」

 

「なっ!貴様!」

 

「サンキュー!」

 

後ろを向きホークガトリングガーの翼を高く広げ、マナの思い出の中へと向かおうとする。

 

「させるか!喰らえ!イレブンファング!」

 

イレブンファングの11本の牙がビルドに襲い掛かる。それを見て新たに2本ボトルを差し込む。

 

『忍者!コミック! ベストマッチ!』

 

「ビルドアップ!」

 

ランナーから形成された新たなアーマーがビルドの体に重なる。

 

『忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!』

 

ニンニンコミックへとフォームチェンジし四コマ忍法刀を取り出し、4回トリガーを押す。

 

『分身の術!』

『隠れみの術!』

 

ビルドが何体にも分身すると周囲から煙幕が現れる。

 

「無駄だ!」

 

だが、イレブンファングは煙幕に隠れたビルドの分身に全て直撃させた。

 

「お前を・・・貴様をマナの元には行かせん!」

 

『ドローン!』

 

「な⁉︎」

 

直撃したビルドは全て分身していたものだと気づき驚く。

 

「どうやら、彼は無事に入ったようだね」

 

「ふん!だが、マナは既に僕の虜抜け出すことは出来ない!」

 

思い出の世界に入っても無駄だとマシューは叫ぶ。

 

 

 

一方、変身解除し晴夜はマナを助けに思い出の世界へと入りこむに成功した。

 

「待ってろ、マナ!」

 

 

その頃、マナの思い出の世界では。

 

「みんな、夏休みの宿題はちゃんと進んでいますか?最後の方になってあわてないように」

 

オモイデはループし、また同じ登校日がやってきたのだ。

 

「ワン!ワン!ワンワン!」

「おかえり」

 

そして、甘い思い出がマナを出迎えてくれていた。

 

「ワン!」

 

マロの出迎え、少し複雑な気持ちでやりすごす、このマロも自分自身のオモイデの中であると気付いているからか…

 

「んっ?」

 

しかし、側に居たいすずは、彼女の心のわずかな変化を見過ごさなかった。

 

「マナ、帰らなくていいシャルか?」

 

部屋に戻ったマナにシャルルが言った。

 

「あたし、もうマロが死んじゃった世界になんか戻りたくない。おばあちゃんだって、あたしのこと置いて天国にいっちゃうんだよ、元の世界に戻っても辛いことばっかりだよ」

 

「マナ・・・」

 

マナの気持ちは分かる。家族を思う強い気持ちは誰にだってある。

 

「あたし、もう未来なんて欲しくない・・・」

 

「そんな事いっちゃダメシャル! どうしてマロやおばあちゃんの分まで生きてみようって思わないシャルか?マナは自分に甘えてるだけシャル!」

 

「いいかい?」

 

自分の部屋だからと油断して話しているところを見つかったと思ったシャルルはそっとマナの陰に隠れる。

 

「おばあゃん」

 

「友達を心配させちゃいけないよ」

 

いすずはマナにそう語りかけた。

――やはり、おばあちゃんに隠し事はできないや。

そう感じたマナは……

 

「――あたし、折角おばあちゃんやマロに会えたのに・・・でも本当はこんなところにいちゃいけなくて・・・どうしたらいいんだろうって・・・」

 

遂に現実とオモイデの間に揺れる複雑な思いを告げた。

言葉を待つ間、そうマナは恐れた。しかし、次の言葉は意外に早くやってきた。

 

「お前のマナって名前は“愛”って字を書くだろう?」

 

「え?」

 

「困った人がいれば手を差しのべ、共に未来へ進もうとする気持ち、それが愛さ」

 

「愛・・・」

 

「目を閉じて、耳を澄ましてごらん。何が聞こえる?」

 

マナはおばあちゃんに言われた通り目を閉じ耳を澄ます。

すると、聞こえてきた。マナを待っている友達の声が――

 

「「「マナ(ちゃん!)!」」」

「「マナ!」」

 

――六花が、ありすが、真琴が、龍牙が、和也が、彼女を待つ友が呼ぶ。

――彼らから聞こえる声が、マナのオモイデの壁が壊れようとしていた。

 

 

 

「これは・・・!」

 

マシューは立ちあがり、スクリーンから溢れだすマナを呼ぶ声に耳を傾ける。

 

 

「聞こえる。あたしを呼んでるみんなの声が!」

 

「そうかい・・・だったら行ってあげなきゃ。お前を待ってくれているみんなのところへ」

 

「でも・・・あたし、おばあちゃんとも離れたくない」

 

「何を言ってるんだい。わたしたちはずっといっしょだよ」

 

「えっ?」

 

マナはいすずの顔を見つめる。

 

「愛は受け継がれるんだ、親から子へ、子から孫へ、わたし達が受け継いだ愛をお前も未来につなぐんだ。さあ、お行き。お前自身の明るい未来へ!」

 

「おばあちゃん!でも、どうすれば戻れるのかあたし、分からないの!」

 

何も言わずにマナの手を取る。しっとりと温かな感触が体全体に広がるようだ。

 

「教えただろ? 魔法のおまじない。手のひらにハートを描きながら祈るんだ」

 

――そうだった。魔法のおまじない、愛を受け取る唯一のやり方。

かつて教えられた通り、目を閉じて祈った。

 

 

「帰りたい、みんなの場所に。仲間が待っているあたし達の世界に!」

 

 

「マナ!」

 

「あっ!」

 

突然、声が聞こえ、温かな周りの風景が歪み、その隙間から現実からの風が吹き込んで一つの差し伸べる手が見えた。

 

「晴夜君!」

 

差し伸べる晴夜の手を掴むと元の姿へと戻り、次第にぼんやりしていく祖母の姿に向かっていった。

 

「おばあちゃん!また会えるよね」

 

「モチのロンさ!」

 

そういうと次第に周りの歪んだ背景と一体となり、マナと晴夜の目の前から姿を消した。

 

「マナ!」

 

「シャルル!」

 

シャルルはマナの肩につかまる。

 

「遅くなってごめん」

 

「ううん!ありがとう!」

 

すると、アトミックウイングが彼らの前に現れ、現実への帰還する道筋へと案内する。

 

「行こう!みんなの所へ!」

 

「うん!」

 

マナはラブリーコミューンにラビーズをセットし、晴夜はラビットタンクスパークリングを取り出し、ドライバーに差し込む。

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

ビルドの前後にビルドマークの形をしたランナーが出現し、アーマーが形成された。

 

『Are you ready?』

 

「変身‼︎」

「プリキュア!ラブリンク!」

 

二人が叫ぶと形成されたアーマーが晴夜の体が重なり、マナの体が光に包まれた。

 

『シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イェーイ!』

 

二人はラビットタンクスパークリングへ、キュアハートへと姿を変えた。

 

 

そして、その影響で思い出の世界が崩壊し、九人揃って元の世界へと戻り、マシューの前へと現れる。

 

「どうして蘇ってきた?折角甘いオモイデの中で永遠に生きる道を用意してやったと言うのに」

 

「永遠なんていらない!」

「俺達はこの世界で生きる!」

 

――この世界でみんな歩む決意をしたことを、クローズとソードの二人が叫ぶ。

 

「困難でも心火を燃やし生き続ける!」

「未来へ続く道はけわしいかもしれないけれど」

「それでもわたしたちは前に進みたいんです!」

 

――小さかった自分と家族が一緒に過ごしたかけがえの無い時間よりも、未来へと進むことを、グリスとダイヤモンド、ロゼッタの三人は選んだのだ。

 

「つらく苦しい思いを味わったとしても、その分だけ強くなれる!」

「だから、日々人は強くなれる!」

 

――エースとローグの二人が信じてる唯一の道を叫び。

 

「愛をだれかに分け与えることが出来る!」

「そして、みんな未来へと繋がる道を求めてる明日を守る!」

 

愛のプリキュアとしてキュアハートが、明日を守る仮面ライダービルドが、マシューに呼びかける。

 

「んんん・・・!おのれ!」

 

しかし、そんな思い思いの口上はマシューの怒りに火をつけたに過ぎなかったようだ。

全身に負のエネルギーをみなぎらせビルド達に戦いを挑もうとする。

 

その邪悪な姿は、オモイデに浸る事の安楽と停滞の功罪の具現化に他ならない。マシューは全力でぶつかっていき姿かたちを変化させ、飛行船の上部へと昇っていった。

その姿は屈強な人の姿ではなく異形の、巨大な野獣の姿となって、彼を追って上部甲板へと上がり立ちはだかる。

 

「オモイデなどいらないというのか?ふみにじられ忘れ去られたモノの思いなど必要ないというのか!」

 

巨大な狼に姿を変え、牙をむく獰猛な野獣の姿に思わずたじろぐ。

しかし、ハートだけはその姿に懐かしい面影を感じた。

――それは、マシューの首輪で輝くハートのオーナメント。それは、彼女にとって忘れられぬオモイデ・・・

 

「あなたもしかして・・・マシュ・・・マロ?」

 

「マシュマロ・・・はっ⁉︎まさか、あの時の⁉︎」

 

ビルドもそれを見て面影が似てることに気づく。

 

ハートもあの時、マシュマロを拾った事を思い出す。

 

 

 

 

「まあ」

 

「かわいい」

 

クラスメイトが持つ段ボールの中で、怯えた目であたりをうかがう真っ白な子犬の姿は思わず声を上げる。

 

「どうしたの?この犬」

 

「公園のすみで拾ったの。ずっと鼻をならしていたから放っておけなくて」

 

和也がクラスメイトの八嶋に聞くと、公園で拾ったと答える。

 

「捨て犬かなあ」

 

「首輪もついてないしきっとそうね」

 

「だったら里親になってくれる人を探さないとね」

 

「さすがはマナだな」

 

「名前はどうします?」

 

「真っ白でフワフワしてるからマシュマロ!略してマロ!」

 

マナは子犬に早速名前を付けると満面の笑みを披露した。

 

「略してって・・・マナ、自分で飼う気マンマンでしょ?」

 

「でも、素敵な名前ですわ」

 

「犬の方も気に入っているみたいだし」

 

六花とありすと和也は、マナの意見に賛同する。

 

「じゃあ、お前の名前はマロに決定ね」

 

マナはマロと名付けられたムク犬にむかって呼びかけた――

 

 

 

 

そして、今に戻り、戦いの火ぶたは切って落とされた。

強烈なタックルがキュアハートを襲う。巨大な質量の突進に、追いかけられた空気がうなるような音を立てて寸前のところでそれを側転でかわした。

 

「うおおおおおお!ガウ!」

 

マシュー・・・いや、マロの攻撃がハートを襲う、しかしキュアハートは今度は避けることをせず、両手で正面からマロの口蓋を受け止めた。

 

「「マナ(ちゃん!)!」

 

ダイヤモンドと、ロゼッタがハートを気遣って叫びを上げた。

 

「そんな・・・マロ、どうして、ううっ!」

 

力を受け流し、マロの胴体の下へと逃れたハートはすかさず彼から距離を取る。

 

「うるさい!お前達全員ならくの底に叩きこんでやる!くらえ!イレブンファング!」

 

全身から11本のエネルギーの柱が空に向かって放たれる。九人は一斉に避ける。

そこへ再びマシューの牙が襲う。

――しかし、両手を下げたまま一切守りの姿勢を見せない。鋭い牙がハートに襲い掛かる。

 

すると、ビルドが前に出てマシューの鋭い牙をハートの代わりに肩口で受け止めた。

ビルドの肩から血が勢いよく迸り出る。

 

『晴夜(君・さん)!』

 

「晴夜君、何で・・・」

 

「ううう・・・」

 

しばらくしてマシューはビルドから離れるとビルドは肩口を抑える。

 

「どうして庇った。なぜ避けなかった」

 

傷ついたビルドは肩口を抑え、そのビルドを介抱しているハート。

ビルドとハートの行動にうろたえたのかマロがそう聞く。

 

「俺は、お前を・・・君を助けられなかった!」

 

「何⁉︎」

 

「俺が4年前・・・お前の切れたロープを掴んでいればこんな事にならかったはずだ!」

 

――4年前、大貝町の外を歩いている時、必死にマナを探していたマロをあの時、轢かれる所を助けられたら、こんな辛い思いをマシューにも、マナにもさせなかった。

 

「晴夜君・・・あたしもあなたの気持を受けとめなくちゃって思ったから」

 

先程、避けなかった理由をハートがマロに告げた。クローズ達は、ビルドとハートの行動をただ見守る他は無い。

 

「ああ・・・」

 

マシューから後悔とも、憐憫ともつかないかすかなため息が漏れる。

 

「ごめんね、気がつかなくて。マロはあたしが帰ってくるとすぐに気づいてしっぽをいっぱい振ってくれたのにね・・・」

 

「ああ・・・」

 

後悔と恐れ、マシューは顔を上げ少し後ずさった。あの時自分を差し置いて行ってしまったマナと助けてあげられなかった晴夜を許そうとしているのだろうか。

 

『だまされるな。あの日お前の時間は止まってしまった。なのにそいつはお前を置き去りにして、自分だけ未来に進んでしまうつもりなんだ!』

 

「この声は?」

 

「どこから・・・」

 

すると周りから恐ろしげなこの声が聞こえてきた。

 

「それでも!あたしはマロの事、一生忘れない!」

 

「嘘だ!」

 

こじれたマシューの心はハートの言葉を跳ね除ける。

 

「嘘じゃない!ハートが・・・マナが嘘つかないことはお前が一番わかってるはずだ!」

 

ビルドの言葉に、マシューはその言葉を聞いて何も返す言葉がなかった。

 

「あたしね、あなたと過ごした時間は短かったけど、楽しい思い出はいっぱいもらったよ。ありがとう、マロ・・・」

 

「マナ・・・」

 

思わず噴出したマナの本心に、マロは彼女と過ごした楽しかった日々を思い出した。

 

「うう・・・ああ!ぼくは、ぼくは、どうしてこんな事を・・・」

 

その時、巨大な狼の姿をとっていたマシューの体がまぶしい光に包まれたかと思うと、元のマシューの大きさになり、ひざまずいた。

 

「どうなってるの?」

 

「何が起こったのか全くわかんねぇ?」

 

マシューの変化をクローズとソードが不思議そうにみつめる。

 

「マナの愛が、凍りついていたやつの心を溶かしたのさ」

 

「もう大丈夫だよ・・・ちゃんと元通り街の人たちもオモイデから解き放てば、きっとみんな許してくれるよ・・・」

 

ハートはやさしくマロに語り掛けた。

 

「ああっ・・・」

 

ハートに掛けられた許しの言葉に、ほんの少し明るい顔をのぞかせた。

 

「桐ヶ谷晴夜・・・君にも・・・すまなかった・・・」

 

ビルドの肩を傷つけたマシューが謝る。

 

「気にすんなよ・・・これくらい、お前の苦しみに比べたら安いもんだよ」

 

 

「うらぎるのか?マシュー!」

 

顔を上げたマシューの後ろ、そこにあったのはあの不思議な旋律を奏で、忘れられたモノ達に力を与え、みんなを苦しめたクラリネットだった。

邪悪な力場に包まれ、宙の一点に浮かぶこのクラリネットこそが、マシューをそそのかし、復讐の虜にまで変えてしまった張本人だったのだ。

 

「お前はちかったはずだ、我らの無念を晴らすと。忘れられたモノたちの復讐を成し遂げると!だからわたしはお前に力を与えたのだぞ、マシュー!」

 

「ちがう!僕の名前はマシューじゃない!マシュマロだ!」

 

「だまれ!きさまら!もはやオモイデの中に閉じ込めるだけでは収まらん。未来を丸ごと消し去ってくれる!」

 

未来を丸ごと消し去る。そう言うとクラリネットは謎の燐光を放ち、クジラ型飛行船はまるで吸い込まれるようにクラリネットもろとも時空の彼方へ消えてしまった。

――そしてビルド達は足場を失い、地表に真っ逆さまだ。

 

『うあああああ!』

 

「どうなってるの?」

 

「あいつ!どこに行ったんだ!」

 

「やつは時空を越えて君達の未来をつぶすつもりだ!」

 

クラリネットの手口を知るマシューが答える。

 

「そんな!」

 

どうにか大貝中学校の屋上へと着地した。しかし、無事に着地はしたものの、時空を超え未来へと行ってしまったクラリネットの暴走を止めるには一体どうすればいいのだろうか。

 

「変身が・・・」

 

「もう5分過ぎてしまったんだ」

 

そして、ここで長く続いた戦いにより、エースの変身がとけてしまう。

 

「晴夜君!大丈夫?」

 

マシューの牙によってダメージを負い、傷口を気にしていたビルドにハートは駆け寄り気遣う。

 

「未来を消すってどういう事ですの?」

 

ロゼッタがマシューに改めて聞いた。

 

「現在と未来はつながっている。連続する時空が崩壊すれば、やがては君達の存在するこの世界も消えてしまう」

 

マシューの説明に皆が驚いた。未来が消えるということは、遅かれ早かれこの世界も行き詰まり消えてしまうこと、ここ現代にいる自分たちにはそれを止める手立てはないということだ。

 

「どうすればいいのでしょうか」

 

「なんか、方法はねえのかよ!」

 

グリスが止める方法はないのかと聞く。

 

「やつを追いかけて止めるしかない」

 

「そんなの無理よ!わたし達には未来に行く方法なんか無いのよ!」

 

邪悪なクラリネットを追いかけて未来へ行き、それを倒し、時空の崩壊を止める。

現実主義者の六花でなくとも無理だと思うのは当然である。

 

「行こう! 未来へ!」

 

「ハート・・・」

 

ハートが何かを決心した表情で言う。

 

「――そうだ。まだ、勝利の法則はあるはずだ!あいつを・・・止めるんだ!」

 

ビルドもハートの決意に賛同する。

 

「晴夜君!あなた、そんな体で!・・・それに仮に行けたとしても、戻ってこられる保証はどこにもないのよ!」

 

「それでも!行かないと。あたし達が守らないでだれが未来を守るっていうの?」

 

「キュアハート」

 

この一言にダイヤモンドの気持ちのすべてが詰まっている。

 

「行きましょう、未来へ」

 

「あぁ、心火を燃やして行くぜ!」

「わたしたちの未来を守ろう!」

「俺達なら未来でも負ける気がしねえ!」

 

クローズ達四人もビルドとハートに同意する。

 

「でも、どうやって行くんですか?」

 

ローグが肝心の部分を指摘する。話が堂々巡りになるかと思われたその時。

 

「ひとつだけ・・・可能性があります」

 

今までじっと黙ってみんなのやり取りを聞いていた、亜久里がここで声を上げた。

 

「伝説のミラクルブーケライト。それがあればプリキュアに奇跡を起こす事が出来ると言い伝えられています」

 

一万年前のプリキュア、キュアエンプレスのパートナー、メランとも通じプリキュアの歴史にも詳しい亜久里は、プリキュアの真の力を引き出し軌跡を起こすアイテム、ミラクルブーケライトの存在を知っていたのだ。

 

「そんなのどこに・・・」

 

ダイヤモンドがそう言いかけたその時、アイちゃんが不思議な力を表しはじめた。

 

「きゅぴらっぱー!」

 

ハート型の花輪のマークの中央に刻まれたベル。持ち手の部分には愛らしいリボンがデザインされている。

 

「これは!ミラクルブーケライト!」

 

どうやらベベルもこのミラクルブーケライトを知っているようだ。

 

「「「「「「えぇぇぇぇぇぇー!?」」」」」」

 

「アイちゃん、ナイス!」

 

「凄すぎなんですけど」

 

都合の良い、正におあつらえ向きのタイミングで現れたミラクルブーケライトの存在に様々な反応を示す。

 

「これがあれば未来に行けるのですか?」

 

「でも、これだけじゃ力が足りません」

 

「じゃあ、どうすれば?」

 

「皆で願うのです!プリキュアに力をと!プリキュアに力を!」

 

「プリキュアに、未来に飛び立つ力を!」

 

「プリキュアに、力を!」

 

皆の思いがミラクルブーケライトに力を与え、巨大になった光に包まれ、肩口から血が出ていたビルドの傷が治って行くと亜久里はエースにもう一度変身した。

 

「行くよ!一緒に未来を守ろう!」

 

「俺達の手で、現在(いま)も未来も救うんだ!」

 

ビルド達九人は時空の扉を通り未来へと向かう。

 

 

 

無事に未来へと到着したビルド達。そこへ頭上高くから鐘の音が鳴り響く。

長い眠りから覚めたように身震いすると、体の動きを確認するようにゆっくりと起き上がった。

 

「ここが、未来・・・」

 

「みんな、大丈夫?」

 

ハートが皆に声をかける。

 

「ええ、なんとか・・・」

 

「寿命が縮んだけどな」

 

皆は起き上がったあたりを見回した。未来へ向かったはずだったが、辺りは現代と少しも変らぬ見覚えのある風景が広がっていた。

 

「ここは、どこシャル?」

 

ここは、四葉財閥所有の公園の一角にある小さな教会。時空を超えたはずなのにこの公園へとやってきてしまったのだろう。

 

「あれは?」

 

先ほどの鳩といい、鐘といい。今日行われているのは、間違いない、結婚式である。

教会のドアの前に集まり、新郎新婦を迎える一同。

その中に今より少し大人になった龍牙、和也、ありす、六花、真琴、そして亜久里と幻冬がいた。

――だが、晴夜の姿だけ見えなかった。

 

「わたしたちの未来・・・?」

 

(俺がいない?)

 

未来の教会で行われている結婚式の最中だったのだ。参列しているメンバーから考えると結婚したのはどうやら身近な人物らしい。

 

「みなさまで新郎新婦をおむかえください」

 

係員の誘導により、道が開けられ割れんばかりの拍手が巻き起こる。一歩一歩歩き、現れた白衣の二人、そのうち一人にマナは見覚えがあった。

 

「あ・・・!あのドレスは・・・!」

 

――そうだ、間違いない。マナが譲り受け大切に部屋に掛けられているはずのあのドレス。親子三代にわたって引き継がれたドレスだった。

 

「マナ…」

 

満足げな気持ちを含んだ声でマシューが言う。

 

「そーれっ!」

 

ウェディングドレスに身を包んだマナが掛け声とともにブーケを投げると、時間が凍り付き、色のないセピア色の世界がやってきた。ここは、未来のはずなのに。これはオモイデの国で見たのとまったく同じだ。

 

「あれは?」

 

「クジラに足が生えてる」

 

忘れられたモノ達の集合体。邪悪なクジラがそこにあった。

 

「まるでタコさんですわ」

 

クラリネットの音が聞こえ、クジラでは無くタコになった船が教会へと移動していた。

 

「見た目で判断してはいけませんわ」

 

エースが言うと全員が構える。

 

「お前たちの未来など消し去ってくれる!」

 

クラリネットの声が聞こえると、タコの触手が結婚式の会場に向けて放った。

 

「そんな事はさせない!」

 

『マックス!ハザードオン!』

 

ハザードトリガーを起動させ差し込むとフルフルラビットタンクボトルを振り、栓を回しボトルを半分に分けた。

 

『ラビット!』

 

そのまま、ドライバーにボトルを差し込んだ。

 

『ラビット&ラビット!』

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!』

『Are you ready?』

 

ドライバーから金型が現れ、ラビットラビットアーマーも出現した。

 

「ビルドアップ!」

 

『オーバーフロー!』

 

体に金型が重なり、スパークリングからハザードフォームとなり、パージされたラビットユニットが装着された。

 

『紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!』

 

仮面ライダービルド・ラビットラビットフォームへとなり足をゴムのように伸ばし触手の攻撃からみんなを守る。

 

「邪魔な仮面ライダーが!」

 

クラリネットの割れ鐘のような声が聞こえてきた。次の瞬間、巨大な触手が今度はビルドをめがけてまるで鞭のようにしなり、襲い掛かってきた。

ロゼッタがとっさにロゼッタウォールでクジラの触手を受け止める。

 

「今です!ハート!晴夜さん!」

 

ロゼッタは、ハートとビルドをクラリネットの元へと行かせようと叫んだ。

勢いよくクジラへと突進する。巨大な船体に何度か飛び乗りながら上部甲板を目指す。

 

「オラァ!」

 

グリスはダブルツインブレイカーで二人に放たれた触手を防いだ。

 

『ツインフィニッシュ!』『ツインブレイク!』

 

2本のボトルを両方に差し込み触手をはじき返した。

 

「ここは任せていけぇ!」

 

しかし、次なる触手が迫りきて二人を薙ぎ払い地面の芝地へと落下してしまう。

その後、クローズ達が船体へと攻撃を何度も叩き込むが、まったく効いている気配はなくこちらも触手に薙ぎ払いを喰らう。

せまり来る触手に突破口を見いだせず再び芝生の上に座り込む。

 

「やっぱり、あのクラリネットを何とかしないと!」

 

「なら、あそこまで行くしかない!」

『フルボトルバスター!』

 

フルボトルバスターを出現させビルドとハートは再び敵に向かって走り出した。

他のみんなもビルドとハートを助けようと駆け出した。

 

「無茶よ!どうやって?」

 

「何か方法があるんですか?」

 

追いついて並んで走り出す。

ダイヤモンドの指摘はもっともだ、さっき最初に飛び込んだ時と状況は全く変わっていない。

クラリネットを破壊すること。一体、どんな策があるのだろうか。

 

「あのバケモノのどこにあるかもわからないのに」

 

しかも、あの広い船体の中からから小さなクラリネット一つを探し出すのは至難の業だ。

 

「ぼくにまかせて!」

 

「マロ!」

 

それは、再び生前の姿に戻ったマナの愛犬、マロの姿だった。マロは五人と並走すると、不思議な燐光を帯び語りかける。

 

「ぼくの鼻を使えばやつの居場所がわかるよ、ついて来て」

 

クラリネットのすぐそばに居た彼ならばそれが可能だ、その優秀な鼻を使えば。

ハートとビルドはマロに導かれるようにして走り出した。

 

「うん!」

 

ハートはうなずきそう言った。

 

「みんな、援護して!」

 

二人はマロを追ってクラリネットのところへと向かう。

 

「晴夜の判断は的確です。今は二人を信じましょう」

 

迫りくるクジラの大腕を受け止め、ビルドとハートの活路を開きながらエースが言う。

二人は寸前のところでしなる攻撃をかわし、更に上へと進む。

 

「えいっ!もう、勝手なんだから!」

 

「しつこいな・・・」

 

フルボトルバスターのトリガーを砲撃モードへと変わり、ボトルを差し込む。

 

『ラビット!フルボトルブレイク!』

 

赤いエネルギー弾が放ち攻撃を防ぐが、次の触手が二人に襲いかかる。

ダイヤモンドが捕まえようと近づいた触手をキックで薙ぎ払い二人を守る。

 

「仕方ありませんわ、マナちゃんですもの」

「行って!キュアハート!」

「晴夜お前も行け!」

「ここは、心火を燃やして道を作ってやる!」

 

クローズにロゼッタとソード、グリスもビルドとハートを通すに徹する戦術をとる。

 

「みんな・・・」

 

甲板まであと少し、ビルドとハートはクジラの触手の上を猛ダッシュして、少しでも高い位置に上ろうと頑張る。

 

「ソード!活路を開きます」

「龍牙さん!僕達も行きましょう!」

 

「ええ!」

「おお!」

 

そこでエースとソードは連携技を思いつくとローグがクローズに行こうと言う。

 

「「プリキュアウルトラ!キーック!」」

『ボルケニックアタック!』

『クラックアップフィニッシュ!』

 

エースがソードを振り回し、遠心力を利用して、全身刃と化したソードとドライバーを操作した二つのライダーキックが船体にぶつかり、左舷に大きな穴を穿った。

 

「今の内だ!行けえ!」

 

クローズとエースとソードが入り口を守る。

 

「こっちだマナ!晴夜」

 

開いた入り口はどうやらクラリネットへの近道になったようだ。マロはその中に飛び込みビルドとハートを呼んだ。

 

「ありがとう、みんな!」

 

「後は頼むよ!」

 

ビルドとハートは船体の外で戦いを続けている仲間たちに向かって叫び中へと入る。

 

「またこうして、マロと一緒に走れるなんてうれしいよ!」

 

「ぼくだって!」

 

(よかった、二人に笑顔が戻って)

 

走り続けると迫りくる忘れられたモノ達の攻撃を次々かわしながら、いくつもの分かれ道を越え、マロとビルドとハートは飛行船の最深部へと進んでいった。

たどり着くとそこは、不思議な円筒状の空間だった。忘れられたモノ達の瓦礫で出来た、しかしそれまでの凸凹の道々と違い、滑らかな壁面が周囲を覆っている。

 

「ついにここまで入り込んできたか」

 

クラリネットの不協和音を含んだくぐもった声で言った。

 

「愛をなくした悲しいクラリネットさん!このキュアハートがあなたのドキドキ、取り戻してみせる!」

 

胸のハートマークを作りいつもの決め台詞を叫ぶと、三人に道を作ったクローズ達も合流した。

 

「みんな!行くよ!」

 

『タンク!』

 

フルフルボトルをドライバーから外し数回振り栓を回し、青いランプが出た瞬間半分に割ってからもう一度ドライバーに差し込む。

 

『タンク&タンク!ビルドアップ!』

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!』

 

レバーを回すのと同時に小型のタンクユニットが現れ宙に浮かぶ。

 

「ビルドアップ!」

 

『Are you ready?オーバーフロー!』

 

ラビットラビットのアーマーがパージされ、タンクのユニットがビルドに装着される。

 

『鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!』

 

「「「「マジカルラブリーパッド!」」」」

 

ビルドがタンクタンクフォームになると同時にハート達もマジカルラブリーパットを出現させる。

 

『フルフルマッチ デース!』

 

フルボトルバスターにフルフルボトルを差し込むと五人はキュアラビーズを填め込み、マジカルラブリーパッドの中央にそれぞれのシンボルマークを表したエネルギーカードを出現した。

 

「「「「私達の力をキュアハートの元へ!」」」」

 

四人がエネルギーカードをキュアハートのマジカルラブリーパッドに送る。

四枚のエネルギーカードがハートのマジカルラブリーパッドの画面の上に載り、ハート形を描き、五枚のカードを合わせた強力なエネルギーカードを生成する。

 

「プリキュア!ラブリーストレートフラッシュ!」

『フルフルマッチブレイク!』

 

巨大な青いエネルギー弾と五人の愛の波動がクラリネットに向けて放った。

だが、放たれた攻撃はクラリネットの作り出した一瞬の闇の波動によってかき消されてしまう。

 

「そんなものが効くものか!」

 

そう言い放つと、静かに演奏し始めた。するとこの巨大な空間のどこからともなく出現した忘れられたモノ達の遺骸が縦横無尽に襲い掛かる。

 

「えいっ!」

 

狭い空間での戦いに防戦一方となる。

すると、別方向から来る攻撃にハートのピンチを悟ったマロが体を犠牲にして攻撃を受け止めてた。

 

「マナ!ああっ!うっ…」

 

受け止めるとハートの方へ体を向け、床に静かに横たわった。

 

「あ・・・マロ!」

 

ハートがマロに駆け寄り、ハートはとっさにマロを抱くと、また二人に襲ってきたがビルドがフルボトルバスターを放ち二人を守ると二人に駆け寄る。

 

「マロ、しっかりしろ!」

 

ビルドが話しかけるものの、マロの反応は既に薄い。

 

「マナ・・・」

 

何度かの呼びかけの末、弱々しい声で大切な主人の名を呼んだ。

 

「大丈夫・・・」

 

「でも!」

 

するとマロがビルドを見つめる。

 

「ビルド・・・これを・・使って!」

 

マロの体内から放たれた光が拓人から貰った射手座が記されたボトルに当たり、ボトルが金色へと変わる。

そして、ビルドの手へと置かれた。

 

「これは・・・」

 

「君と君の父親との思い出からだ・・・」

 

するとアトミックウイングガジェットが後ろに現れ、振り向いた。

 

「いけるか?」

 

ビルドが聞くと、ガジェットは頷いた。

 

「マロ、使わせてもらうぞ!」

 

ビルドは立ち上がりボトルを強く握りしめる。

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

『マックス!ハザードオン!』

 

トリガーを起動し、フルフルボトルを外しガジェットに金色のボトル――サジタリアスボトルを差し込む。

 

『アトミックサジタリオ!』

 

ドライバーのレバーを操作すると、タンクタンクアーマーが外れ後ろから金色のサジタリアスのユニットが現れた。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

ハザードフォームに金色に輝くパージされたサジタリアスアーマーがビルドに装着した。

 

『オーバーフロー!金色に輝く翼!アトミックサジタリアス!ヤベーイ!カガヤーケ!』

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

ハザードフォームに黄金の輝きを放つサジタリアスのユニットが装着され、後ろには翼――『ゴールドアトミックウィング』が装着されていた。

 

「すげえ・・・」

 

「あのガジェット、こんな姿になるのかよ・・・」

 

アトミックウイングが新たなビルドのフォーム、『アトミックサジタリアス』へとなったことに驚いた。

 

「こけ脅しだ!」

 

無数のカメラがビルドに襲いかかるが翼を広げてかわし、ドライバーのレバーを回す。

 

『Ready go!』

『ハザードフィニッシュ!』

 

ビルドの右手に黄金に輝くエネルギーが溜まって行く。

 

『アトミックフィニッシュ!』

 

高速拳となったライダーパンチが一瞬にして全てのカメラを破壊した。

 

「速い・・・」

 

目にも止まらない高速拳は誰にも捉えなかった。

 

 

一方、ハートには分かっていた。マロと自分にとって、これが最後のお別れになることを。

 

「そんな顔しないで。会えないと思っていたマナにもう一度出会えたんだ。もう思い残す事はないよ・・・戦って!ぼくのぶんまで」

 

マロはそう静かに別れの言葉を言い終わると、ぐったりとその身を床に落ちつけた。

すると再び不思議なことが起こった。真っ白なマロの亡骸が突如輝きだしたかと思うと、その体のちょうど真ん中、心臓のあたりから何やら光り輝くものが生まれ、こちらに向かって飛び出してきたのだ。

マロの毛並みそっくりの真っ白なプシュケーをそっと抱きしめる。すると、プシュケーと一体となったキュアハートの体が輝きを放ち始めた。

 

「これは・・・!」

 

巨大なエネルギーの放出と共にキュアハートの体が徐々に空中へ持ち上がっていく。

まぶしい輝きの向こうにかすかに見えるのは、長く伸びた流れるようなフリルスカート、フリルのスリーブ。そして連なるハートのティアラ。

 

「何・・・!」

 

忘れられたモノ達の憎しみの化身、クラリネットもこの未知のエネルギーの爆発には驚きを隠せない様子。

 

「キュアハート・エンゲージモード!」

 

マロとマナの愛が作り出した新しいフォーム。キュアハート・エンゲージモードに変身を遂げたハートは、胸の中でブーケへと姿を変えたマロの魂を天へと返すと、誓った。

 

「マロ、見ててね。あなたの思いをもてあそんだあいつをあたしはゆるさない!」

 

ブーケを解放したキュアハートは、手の中にあった光を大きな光の弓矢へと変えた。

 

「人々に忘れられたモノたちが生まれ続ける限り、わたしは不死身だ!」

 

クラリネットが叫ぶとビルドも隣に現れる。

 

「それでも、大切にしてくれる人はいる!けど、みんなの未来を壊そうとするお前を絶対に許さない!!」

『フルボトルアロー!』

 

ビルドの前にフルボトルアローという、カイゾクハッシャーとは違った新たな弓矢が現れた。

 

『アトミックサジタリアス!』

 

アトミックウイングガジェットを差し込み弓矢の弦を引くと徐々にエネルギーが溜まっていく。

クラリネットは忘れられたモノ達の最後の叫びを、その運命の絶叫を響かせながら、ビルドとハートを迎え撃つ。

 

「それでもわたし達はあなたに勝つ!」

「俺達の未来へと繋がれぇーー!」

『アトミックブレイク!』

 

ビルドとハートは、渾身の力で弓を引く。弓の張力が最大に高まり、二つの放たれた弓は巨大な光となり、一直線にクラリネットめがけて飛んだ。

 

「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁーーー!」

 

クラリネットは断末魔の叫びを上げ、次第にその闇の力場を薄くしていった。

 

 

 

 

辺りが開いた窓に洗いざらしのカーテンがはためく、白で統一された室内に、その子はいた。

 

「でかしたぞ、あゆみ。元気な女の子じゃないか」

 

「名前はどうするんじゃ?」

 

その場にいた年配の男性が、生まれた赤ちゃんは名前はなにかと聞く。

 

「いやあ・・・それがまだ・・・」

 

散々考え悩んだ末、いまだに名前を決められていなかった父親は、少しバツの悪そうな笑みで頭をかく。

 

「なんだい、まだ考えてなかったのかい? しょうがないね」

 

「そんなこともあろうかと思って、わたしが考えておいたよ。愛と書いてマナ。相田マナというので、どう?」

 

「マナか・・・いいですね!」

 

「愛がみなぎってきそうな名前ね」

 

母親も、自分の母親がつけた名前に賛成した。

 

「きっとお前みたいなおせっかい焼きな人間になるよ」

 

「あんた、一言多いよ!」

 

皆が優しいまなざしでマナの名を呼ぶ。赤ちゃんはそれを聞いて嬉しそうに笑った。

――こうしてマナと名付けられたこの赤ちゃんは、生まれて最初に出会った人間である父や母、祖父、祖母。つまり家族から、愛という言葉を受け取ったのだ。

 

 

 

 

「元の世界にもどったみたいね」

 

元居た大貝町、九人が到着し高台から街を見下ろしていた。そして空から降り注ぐ幾千筋もの輝き。

 

「あの輝きは・・・」

 

「どこに向かってるんだ・・・」

 

「帰って行くんですわ。オモイデにとらわれていた人々のたましいが・・・」

 

要塞の保管庫に収められていた街の人々のオモイデのフィルムは、現代の大貝町へと降り注いだのだ。皆がその光景を眺める。

 

「マナ、それ・・・」

 

「マロだよ、最後まであたしを守ってくれたんだ」

 

晴夜がアトミックウイングに差していた金色になったサジタリアスのボトルを見ながらマナの手の内にあるプシュケーを見る。

 

「ありがとう、お前のおかげだよ」

 

それは、力を放出し、天へと帰っていったマロのプシュケーだった。魂が抜け石化した姿となってまで、彼はこうしてマナを守ろうとしたのだ。

 

「あんたのおかげでマロの魂は救われた。礼を言うよ」

 

謎の妖精べベルは知り合いというマロのプシュケーを連れて元居た場所へと帰っていくという。一人一人と握手し、別れの挨拶を済ませたべベルはマロのプシュケーを引き連れ、ゆっくりと空へと浮かび上がる。マナは、マロのプシュケーに最後のお別れをした。

 

「マロ!」

 

「この子のたましいはわたしが連れて帰るよ。今度こそ道に迷わないようにね」

 

「あの・・・!」

 

しかし、晴夜がベベルに待ったをかける。

 

「こいつも、連れて行って下さい!」

 

アトミックウイングを連れて下さいと言う。

 

「こいつもマロのプシュケーを守りたいみたいです」

 

アトミックウイングガジェットが頷く。

 

「わかった。よろしく頼むよ」

 

『〜♪♪〜』

 

ガジェットは鳥の様な鳴き声を響かせながらわかったと頷きマロのプシュケーの隣につく。

 

「あの・・・またマロと会えますか?」

 

「モチのロンさ!」

 

「えっ!」

 

べベルの言葉にマナはハッとした。

――モチのロン、それは忘れるはずもない。あのマナの祖母の口癖だったからだ。

 

「これからは時々、空を見上げてマロの事を思い出してやるといいよ」

 

別れ際にべベルは言った。

 

「おばあちゃん・・・!」

 

「えっ?」

 

マナのつぶやきに皆が振り返ると、マナの目から涙があふれ出していた。マナはあらためて気づいたのだ、あの夏、自分が失った大切な家族、マロとおばあちゃんの愛の大きさに。

 

「ありがとう、マロ。ありがとう、おばあちゃん。また、会おうね!」

 

空を見上げると龍牙が晴夜に近づく。

 

「いいのかよ?あのボトルとガジェットがあれば・・・」

 

「いいんだよ。あいつが行きたいと思ったから行かせてやったんだよ」

 

ガジェットを託した事を後悔していなく、龍牙も相変わらずだなと呟く。

 

「そういえば、未来で晴夜さん何でいなかったんでしょう?」

 

幻冬が未来で何で晴夜がいなかったと言う。

 

「あの中にいませんでしたから?」

 

「忘れてたとか?」

 

「それは、ないでしょう」

 

「ねぇ、そういえばマナの相手も見えなかったよな?」

 

六花が言うとそういえばマナの相手も見えなかった事に気付く。

 

 

『――まさか・・・』

 

 

龍牙達が晴夜の方を見る。

果たしてマナの結婚式の相手は誰だったのか、それは謎のままだった。

 

 

 

 

 

 

――それから、しばらくして。

仮面ライダーエボルとキングジコチューへと最終決戦へと向かった頃、晴夜とマナはお互い告白し付き合い始め―――

 

「―――おっと失礼。ここからは第39話の先を見ていない皆様にとっては、

未来のお話、でしたね。先まで読みすぎました・・・」

 

 

 

終わり




おまけ

さぁ〜て!次回の『Re.ドキドキ&サイエンス』は〜?

オルガ「俺はぁ・・・!鉄華団団長・・・!オルガ・イツカだぞぉ・・・!(迫真)
最近は異世界転生の回数が減って来ているんだが、相変わらず死ぬ回数は減る事なく、希望の華を咲かせている。俺は、あと何回死ねば良いんだよ…
まったく・・・勘弁してくれよ・・・・

さて次回は――

『あたしの愛した天才科学者』
『復活のE』
『守れない約束はハナから守ろうとするな』

――の三本だぞぉ…!」

次回もまた見てね☆ぴかぴかピカリン!ジャンケンポン♪

ピース「はい!私の勝ち!なんで負けたのか、次回のお話までに考えて来てね♪」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。