「久しぶりだな、エボルト。調子はどうだ?」
その声が、俺が石動総一郎に憑依してから初めて聞いた、同胞の声だった。
「んっん〜・・・イマイチだな〜、まだこいつの体が馴染んでないからな〜」
「その調子だと、かなり調子が良い様だな・・・」
俺たちは今、パンドラボックスが封印されていた洞窟内にいる・・・えっ?今は伊能賢也だって?そいつの隣には仲間の…今は斗賀野光臣と岸波涼香だって?そうか。
まあ、俺たちはキュアエンプレス達との戦いで敗れたわけだが、何とか奴らから逃げて来れたこいつらと感動的な再会を楽しんだ。
「何言ってんやエボルト・・・今の俺たちの周りに、感動的な雰囲気が流れとるか?流れえへんやろ?何人間みたいな事言っとるんや」
おいおいおいおいおいおい。光臣〜、こう言うのはいい雰囲気が大事なんだよ。折角の雰囲気を壊すなよ〜。
「雰囲気も何も、私達にはそもそも人間の感情が無いんだから。それよりも早く帰らない?
ここ土埃すごい立ってんだけど?」
おいおい涼香…余韻ぐらいつかせてくれよ。一万年ぶりに外に出られたんだからよ〜。
「そんなものよりも、今は俺たちの使命の方が大事だ。アンタの余韻とやらに付き合っている暇はない」
オーマイガー、お前もかよ伊能。全く、仲間が冷たくて泣きそうだぜ〜。
まあ、こいつらの言う通り、さっさとここを出て俺のドライバーを取り戻さないとな〜。
――トランプ王国滅亡まで、後4年。
「……何?しくじった?どう言う事だエボルト」
横浜のとある喫茶店、俺と伊能は顔を合わせていた。
「あぁ〜俺とした事が、パンドラボックスを使ってトランプ王国に行こうとしたが、そん時桐ヶ谷拓人と箱の取り合いになっちまってよ〜。そん時にうっかりあの箱にあるワープ機能を作動させちまった。お陰で奴らは俺を置いて楽しい楽しい異世界旅行だぜ」
俺とした事があんなドジをこくとはな・・・ちょっとばかり油断しちまった。
しかも、そん時に発生した光を偶然その研究所に居たガキ供が浴びちまった。幸い、そのガキ四人はその場に残り、パンドラボックスの光の影響で記憶は消えていたが、当分はトランプ王国に行けそうにないな…
まったく、こんな事なら東都科学研究所に持って行かず、さっさと使うべきだったな。
「・・・まあ良い、こっちはこっちで何とかしてくるから、お前はお前のやるべき事をやれ」
「悪いな〜今の俺には、お前達の様にトランプ王国を行き来出来ねぇからなぁ」
取り敢えず、パンドラボックスと俺が飛ばした細胞の一部の捜索はこいつらに任せるとして、俺は何をしようかな〜?
・・・よし、まずはあの光と、それを浴びたガキどもについて調べるか。
――トランプ王国滅亡まで、後4年。
「エボルト、お前に良い知らせと面倒くさい知らせがある」
おい伊能、良い知らせは兎も角、何だよ面倒くさい知らせって。
「・・・良い知らせから頼む」
「お前が飛ばした遺伝子を見つけた。それと、パンドラボックスからパネルを一枚取り出して持って来た」
伊能はそう言って俺の目の前に風呂敷を取り出した。
俺がその風呂敷の中身を除くと、そこには土産屋に売ってある饅頭の箱、そしてその箱の下に緑のパネルが見えた。
「おぉ〜悪いなぁ。・・・さてと、面倒くさいお知らせを頼む」
「遺伝子がお前の記憶を無くしてトランプ王国のガキとして悠々と過ごしている。そしてパンドラボックスの力の殆どが抜き取られていた」
「フワァイジャパニーズピープル」
「誰が日本人だ」
さてと、冗談はさておき。伊能が渡してくれたタブレットの情報曰く、俺が封印される前に飛ばした俺の遺伝子生命体はトランプ王国の世界を周り、とある女に憑依した。
だが、その生命体はその女ではなく、体内にいた赤ん坊に憑依してしまった。
そいつが俺の遺伝子生命体である上城龍牙である。そして、そいつが生まれた時にその生命体は俺の力と記憶を失ってしまった。
そしてパンドラボックスについてだが、当時トランプ王国に飛ばされた拓人は、俺が一部だけでも復活した事をその地に住む国王と話し、その国王の相談でアイツらが研究中だった“地球上のエレメントを取り入れたボトル”というものを応用して、俺の力をボトルに詰め込み、60本精製させたらしい。しかも肝心のボトルは、そのうちの数本は成分が抜けちまってるときた。
「まったく面倒なことをしてくれたねぇ〜あのヤロー」
「それでどうする?何か考えているのか」
「まぁ、無いでもないが」
あの後総一郎の記憶を覗いて調べてみると、拓人には二人の息子が居て、しかもそのうちの一人、桐ヶ谷巧は父親並みの天才らしい。そこで伊能と俺で何とか上手くまる込めて、俺たちの為に利用して貰おう。
「成る程、わかった。シナリオとしてはあの研究に残されていたそのパネルを使って研究をする、と言ったものにしておくか・・・俺は桐ヶ谷巧がそう行動するように促し、ボトルの成分を集めるための研究、ついでに俺たちの力になるシステムを作って貰おう」
伊能はそう言って喫茶店から出ていった。さてと、俺も行動するか〜っと、そう言えば背中が痒いな。ん〜なんか細長いのあるかな〜無いなぁ〜・・・誰も見てないよな?
「よっと、こうして、こうやって〜っと出来た」
俺は持ってたタブレットを孫の手の様にして背中をかいた。あ"ぁ"〜気持ち〜。
――トランプ王国滅亡まで、後3年。
それから俺たちは、桐ヶ谷巧を利用して計画を進めた。
奴は良い様に動いてくれた。あれからあのパネル・・・ここではパンドラパネルと言おう。
パンドラパネルの力を使ってあのガス――今で言うネビュラガスを利用してボトルの成分を集める為、スマッシュという怪人を一度作ってからその怪人を倒し、それからボトルでその怪人の成分を吸収するという方法をとった。その中で効率的にスマッシュにする為にスチームブレードというものを開発した。
ああ、それともう一つ。奴はスチームブレードと並行してトランスチームシステムを開発した。巧曰く、トランスチームシステムは防衛システムとして作ったと言っていた。まあ、あの後俺が良い様に使うんだけどな!
ちなみにトランスチームシステムは元々、アイツが開発していたカイザーシステムを元にしているらしい。巧が言うには、二人の人間が合体することで強大な力を得るというものだったが、人類には早すぎたという理由で開発を断念したらしい。
・・・カイザーシステムか。これは、利用できるな・・・
――トランプ王国滅亡まで、後2年。
伊能達が遂にエボルドライバーを見つけ、持って来てくれた。
だが、キュアエンプレス達の戦いで俺のドライバーは破損していた。仕方ないので俺は破損していたエボルドライバーの修理を巧に任した。
全く、人間ってのは本当に愚かだねぇ〜自分が直しているドライバーが地球滅亡のトリガーだと知らずにいるなんて。
このままエボルドライバーの修復を待つばかりである。
「・・・な〜んて思っていた時期が、俺にもあったよ」
まず話さなきゃならない事が、トランプ王国に飛ばされた拓人についてだ。
トランプ王国で新しいプリキュアの誕生の時、アン王女が一人では心配だと思い、奴に一人サポートできる者を付けたいと言ってきた。そう、それがライダーシステムだった。
完成させたライダーシステムを拓人は俺の遺伝子生命体である龍牙に託した。アイツは幼少の頃から新しいプリキュア、キュアソードの親友らしく、さらに奴の作ったガジェット「クローズドラゴン」が龍牙の心と同調した。
さて、ここで問題。このライダーシステム、元々はとあるアイテムを元に開発されたらしい。その元にされたアイテムというのがそう、俺のエボルドライバーである。
いや、この辺は別に良い。なんの問題もない。問題はここからだ。
その時、トランプ王国にいた拓人から送られたビルドドライバーとトランプ王国でのデータが送られた。
そのデータにはそのエボルドライバーと俺の正体について記されており、このことで巧はすべてを知ってしまった。お陰でエボルドライバーの修理は中断された。
そして真実を知った巧は、俺を倒そうと部屋に呼んだ。
「アンタと上城龍牙は、異世界の生命体エボルトなんだろ!この世界を滅ぼすのが目的だと!」
「父親の送られた資料を読んだのか〜」
「アンタには、すっかり騙された!だから、こっちも手を打った!」
「それで、どうするつもりだ〜?」
「当然、アンタと上城龍牙の二人を倒す!」
巧がビルドドライバーを装着し、ゴリラボトルとダイヤモンドボトルを取り出し、差し込む。
『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!』
そのままレバーを操作し、音声が流れ出した。
『Are you ready?』
「変身‼︎」
巧が叫ぶが、当然ドライバーから何も出現しなかった。
「残念だったな、それは偽物だ」
「すり替えたのか⁉︎」
「人間ごときに、俺がやられるわけないだろ。お前が直してくれたエボルドライバーはどこにある?」
「誰が教えるか!お前の計画にこれ以上加担するつもりはない!」
「そうか、残念だが知られたからにはしょうがない。ふぅん!」
「ガァ!」
俺はブラッドスタークの腕から伸びたスティングヴァイパーで巧の胸を貫き、奴は倒れた。
「ったく、面倒な事させやがて、チャオ〜!」
俺はそう言って巧の部屋を後にした。
だが俺は知らなかった。俺がコイツの部屋を去って、伊能がエボルドライバーの場所を知り、殺す為に来るその間に巧は“ある細工”をしていたことを。
それについては、コイツを殺すことになった伊能さえ、知らなかった。
「・・・くそっ!こんなはずじゃあ…ッ!」
奴に胸を貫かれたが、僕はまだ生きている。
しかし、それを知った奴はエボルドライバーの場所を吐かせようとする為にまた来るだろう。ビルドドライバーが何処にあるかわからない以上、今の僕には戦う術がない。
だから僕は、体を捨てることにした。
僕は這いずりながら部屋にあったパソコンを立ち上げ、とあるプログラムを作ることにした。
このプログラムは賭けだ。エボルトがこのプログラムについてのフェイク情報を読み、ビルドドライバーの最終調整として、保険として前もって作っておいた僕の人格データプログラムを移植する様に仕向ける。
今、僕が行なっている作業は今の自分の記憶――エボルトの正体と上城龍牙の存在、エボルトにやられた事で僕が部屋に火を着けて自殺するという記憶のデータプログラムを研究所にあるパソコンに送る為のものだ。
もしかしたら、エボルトはこの最終調整と評した僕の人格プログラムを見つけない、見つけたとしても移植せずに削除するかも知れない。
それに、仮に移植したとしても僕は復活出来るのかは、今の僕にはわからない。
それでも、僕はいずれ復活出来ると信じて、記憶のデータを送り続ける。
そして、自身の最期の記憶データと、「エボルトを倒した後に、龍牙を倒す為にする筈だった最終調整」と書いたメモと言う名の遺言を研究所のパソコンに送り終えた僕は、途中まで修復したエボルドライバーをどうするかを考えていると、研究仲間の伊能賢也が現れた。
「あっ・・・ああぁぁぁっ!・・・伊能…!」
彼の姿を見た僕は、すぐにエボルドライバーの場所を書いたメモを渡す。
「そこに・・・エボルドライバーがある・・・早く移送するんだ!」
伊能にエボルドライバーを移送して欲しいと頼む。
――だがそれは間違いだったと、この後すぐに理解した。
「わかった・・・これでお前の役目も終わりだ」
伊能はそう告げて僕の肩を叩くと、手から炎が作られ部屋の中へと放つ。すると、部屋の中一帯が燃え上がる。
「伊能・・・まさか・・・君も・・・」
「あぁ、俺もエボルトと同じブラッド帝国の生き残りだ・・・」
伊能は自分がエボルトと同じ生命体だと答える。
この時、僕は彼に裏切られたと察した。
「エボルドライバーの情報をありがとう。これまで、スマッシュの開発、カイザーシステムのデータ感謝してるよ。けど、これでさよならだ」
そのまま僕の部屋を出ると、さよならと告げて去っていった。
「もう・・・絶対・・・絶対に人を信じない!」
もう人を信じない、そう叫んだ僕は、奇しくも自殺する時に決めていた方法で死んでいった。
――僕の死に目を最期に見届けたのは、母親でも弟でも、ましてや父親でも無かった。
僕はまだ起動中のパソコンのカメラに死に目を写されながら、この世から去っていくのだった。
――トランプ王国滅亡まで、後1年。
「・・・エボルト、何をしている」
「ん?・・・何って、ビルドドライバーの最終調整だけど?」
「それは見ればわかる。問題なのは何故それをお前が行なっているのか、と言う事だ」
なぁ〜に、桐ヶ谷巧の後釜としてビルドドライバーを弟の桐ヶ谷晴夜に使わせようとするついでに巧のパソコンを見ていたら、ドライバーの最終調整っていうのがあったから、お兄さんの代わりにやってやろうと思っただけだ。
「最終調整?何故それをお前と戦う前に組み込まなかった。怪しいと思わないのか?」
「んん〜・・・まあ、多少はな?だがアイツが死んだ今、そんな事なんでも良いさ。安心しろ、コイツの最終調整程度で俺たちの計画は倒れないさ」
「だと良いんだが・・・」
「それよりも伊能!トランプ王国滅亡計画は順調か?」
「あぁ、アン王女が不治の病に倒れ、絶望の淵に立たされた国王に王女を助ける方法を与えたら、まるで砂漠でオアシスを見つけたかのような顔になった。まあ、その方法というのがエターナルゴールデンクラウンだとを教えたら、直ぐにその表情は消えたがな」
そりゃそうだろ〜何せあの王冠は今や、プロトジコチューを閉じ込める為の錠前だからな〜
もしあの王冠を使うってなったら、プロトジコチューの封印を解かなくちゃならねぇからな〜
「だがそれも時間の問題だ、直ぐにでも国王は封印を解く。というわけで、お前にはこれからトランプ王国に行って貰う」
「りょーかい!ようやく龍牙と融合出来るのか〜楽しみだな〜」
そう言って俺たちは、研究所から姿を消したのだった。
――トランプ王国滅亡まで、後1日。
「おお、アン!気が付いたか!」
「お父様・・・」
あの後、我々の予想通り。国王は王冠の知識を使い、アン王女の病を治した。そしてアン王女が意識を取り戻し、国王は嬉しそうな表情となった。
――そろそろだな。
『聞こえたぞ・・・闇の鼓動を・・・自分勝手なよこしまな願い』
「誰だ⁉︎」
突如聞こえた闇の声の囁きが、国王に迫る。
『最愛の娘を救うために禁忌を犯し、世界を破滅へと導く・・・!
これぞまさに究極のジコチュー!貴様こそ、私の器に相応しい!』
そして彼らの前に現れた闇が、国王を取り込んだ。
「お父様!」
「国王様、どうされました!」
アン王女と拓人の二人が呼びかけるが、国王は海へと落ちていった。誰もが死んでしまったかと思ったが、なんとそこから国王がキングジコチューとなって出て来たのだ。
その様子を、ブラットスタークに変身したエボルトは、高い建物の上から楽しそうに見ていた。
『さぁ〜て、トランプ王国滅亡の始まりだ』
――トランプ王国滅亡まで、後5時間。
それからは、早かった。キングジコチューの登場によってジコチューがトランプ王国を攻めてきた事で、王国の騎士とプリキュア達はジコチューと勇敢に戦った。
しかし、騎士達やプリキュア達は一人、また一人と戦死していった。
『まったく悲しいねぇ〜俺はこんな事をするジコチュー達が許せねぇぜ!お前らもそう思うよなぁ?』
「黙れぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!」
「お前だけは・・・お前だけはぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そして俺は何をしているのかって?今はトランプ王国のプリキュア二人と戦っている。
全く、何を怒ってんだよ〜。俺はただ、トランプ王国の住民をここの研究所から掻っ払ってきたパンドラボックスの力で好戦的にして、殺し合いをしてもらっただけだろ?
・・・もしかして、お前達の先輩をうっかり殺しちまったことを根に持ってんのか?
『人間ってのは愚かな生き物だよ。
元々仲良く暮らしてきた国民達がこんな大惨事になった程度で恐怖の余り豹変し、自分だけは助かりたいと言う思いで醜い行動を取り、自らジコチューと化した。
そして救助活動とかに協力的だった国民達も、俺がちょいと好戦的にしただけで国民同士が疑心暗鬼になって、ジコチューになる前にって殺し合ったんだからな〜』
「貴様ァァァァァァ!!」
『まあまあ落ち着けよ〜地獄に行っても、あんな面白い殺戮ショーは見られねぇぜ?』
「貴方の所為でしょうがッ!!」
あ〜あ、駄目だこりゃ。全然聞いてねぇやコイツら。そう思った俺はスチームブレードのバルブを回して地面に向けて放った。
『アイススチーム!』
『よっと!』
「「!?」」
すると地面が凍りつき、コイツらの足も凍っちまった。そう簡単には動けそうにないな。
「なに・・・これ!」
「くっ!うぅ・・・」
『さて、少しは落ち着いたか?』
「黙れッ!!」
あれま、足は凍っても、まだ頭は冷えてなかった様だな。
「殺してやる・・・お前を、絶対・・・殺してやるッ!」
『ほぅ〜、威勢の良いこと言うねぇ〜俺に一度も攻撃を当てられなかったお前がか?』
「ぅあああああああああああああ!!!!」
『煩い女だな〜だがそれでも、俺を倒そうとする姿勢。お前の様な執念深い人間は嫌いじゃねぇぜ!フッハッハッハッハッハ!!』
俺はそう言いながらこの女の肩を叩き、慰めた。
「やめろ!その子に触るなッ!」
『あぁ〜わかったぜ。ホイ!』
あの女の言われた通り、俺はこの女から離れる。
するとどう言うことでしょう!さっき俺が肩を好意的に叩いていた女が苦しんでいるではないか!
「いぎゃァァァぁぁぁぁぁぁあああああ!!!??」
「ッ!?どうしたの!何があったの!?」
『なぁ〜に、ちょいと強力な毒を打ち込んでやっただけだ。後数分でコイツは死ぬぜ?』
「なっ!?」
『さてと、この毒は俺しか治せないがどうする?お願いしますって頼み込むか?それとも俺を倒して毒を消すか?勝てない相手を倒せる自信があるなら、受けて立つぞ?』
「ぐっ!・・・・・うぅ」
血反吐を吐きながら苦しんでいるこの女にそう語りかけると、女は俺を睨みつける。
しかし、すぐに痛みと恐怖が湧き上がってきたのか、涙を流しながら何かを呟き出す。
「・・・して下さい」
『ん〜?なんだって〜?聞こえないな〜、言いたいことがあるなら、はっきり言いな』
「治して・・・下さい・・・私は、まだ死にたくない・・・ッ!」
「えっ・・・」
女は、家族の顔を思い出しているのか、それとも恋人の顔を思い出しているのか、屈辱的な顔でそう言って命乞いしてきた。
その様子を見ていたら別の女も、予想外の答えに驚きを隠せないでいた。
『あれだけ他人を心配しといて、いざ自分の番が来たらやっぱり自分の命が惜しいか。
フフッ、やっぱり最高だよ!俺はお前の様な人間が大好きだ!』
そして俺は、この女にハグをした。それと同時に女の体が消え始める。
『・・・吐き気がするくらいにな』
「えっ?なんで?なんで、消えているの、私・・・」
『ああ、そうそう。言い忘れていたが、本当は数十秒で死ぬ毒なんだよ、俺が打ち込んだのって。こりゃあ、もう間に合わねぇなぁ』
「そんな…いやだ、いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!」
・・・さてと、女が一人消滅してようやく静かになったところだが、あっちの女はどうだ?
「どうして、どうしてあの子を、殺したの・・・」
残った女は、虚ろな顔でそう問いかけてきた。
『さぁ?何でだろうな?』
「・・・ぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
っ!?おいマジかよ、コイツ気合だけで凍っていた地面を砕きやがった。正直びっくりだ。
「ハァァァァァァ!!」
『ぐぉ!?』
しかもさっきよりもパワーが上がってると来た。これは、ちょいと面倒だな。
するとコイツはコミューンってやつを操作すると、俺に手をかざして来た。
「プリキュア!グレイブインパクト!」
『グァぁぁぁァァァ!!』
すると予想以上の衝撃波が放たれ、俺は倒壊した建物に頭から突っ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……これで・・・」
ブラットスタークが突っ込んでいった建物が崩れていくのを見届けた彼女は、二人のプリキュアの仇は取れたと思い、安堵の息を吐いた。
『終わりって言いたいのか?だとしたら、随分能天気だなぁ〜』
「!?」
だが、終わってなかった。彼女はすぐに周りを見渡すが、スタークの姿は見当たらない。
何処にいるんだと叫びながら探していると…
『こっちだ』
声が聞こえ、直ぐにそちらに顔を向けた。
――ドスッ
「・・・えっ」
しかし、彼女が気付いた時には、腹をスチームブレードで貫かれていた。
そしてそれを確認したスタークはスチームブレードを抜き、直ぐにプリキュアから離れた。
『あの程度でやられると思うなよ〜それじゃあ、俺は龍牙を探しに行くぜ。チャオ♪』
その言葉を最後に、スタークは彼女の元を去って行った。
――もうじき、目的の上城龍牙が来ることを知らずに。
――トランプ王国滅亡まで、後57分。
さてと、結論から言おう。トランプ王国は俺たちの予想通り滅亡した。
ただ、予想外なことに。あの後、予定通り龍牙と融合しようとしたが、奴のハザードレベルはまだ俺と融合できるほど無かった。だから、俺は奴を生かして成長するのを待った。
龍牙を伊能と斗賀野光臣に託した後、俺は桐ヶ谷晴夜を仮面ライダーにする計画を進めた。
それとエボルドライバーについてだが、やはりまだ俺のドライバーは未完成だった。
そんなわけでドライバーの修理は桐ヶ谷拓人に託す事にした。初めは拒否していたが、断ったら晴夜を始末すると話したらあっさり承諾した。
伊能は修理が終わったら始末しろと言っていたが、俺にはまだそのつもりはない。アイツは裏切りの可能性を考えている様だが、そん時はそん時だ。裏切るまで使い潰してやるよ。
・・・そういえば、晴夜と拓人以外にもあの光を浴びて体質が変化し、ハザードレベルが常人よりも上がったガキが二人いたな。アイツらも仮面ライダーにするか?まあ、ゲームプレイヤーは多い方が燃えるから良いか!
それにしても、あの光がネビュラガスの様に人間の体質を変える力を持ってたなんて驚きだったなぁ。名付けるなら、ネビュラ光線か?
「何だこれ・・・?」
俺は学校から帰って地下室に入ると、そこには謎のケースがあった。
ケースを開けてみると、そこには赤いボトルと青いボトル、大量の白いボトル、そして黒いナニカのデバイスがあった。
「これは・・・ん?」
それらを取り出すと、ケースの奥に何やら説明書らしきものも入っていた。
「何々・・・『プロジェクト・ビルド』?」
そこには興味深い内容が書かれていた。
このデバイスは『ビルドドライバー』という名前で、仮面ライダービルドに変身するのに必要な道具らしい。
変身時はビルドドライバーに2種類のフルボトルと呼ばれるアイテムを装填する。
フルボトルを振ることで内部の成分が活性化しより力を発揮する。
また、変身していない状態でも、活性化させて持っていればフルボトルの効果を使用することができる。
ボトルの特性に応じて各部の色や形状、装備を変化させる機能を備えているため、敵や状況に適したボトルを選択・使用することで戦いを有利に進められる。
また、最も相性の良いボトルの組み合わせは「ベストマッチ」と呼ばれており、ベストマッチフォームは最大限の戦闘能力を発揮する。
そして、ビルドが戦うのはスマッシュと呼ばれる怪物。
スマッシュの正体は、姿を変えられた人間。スマッシュを倒し、ボトルにスマッシュの成分を採取させると無事に元の人間の姿へと戻れる。吸収したボトルは浄化することでビルドが使うアイテムになる。
そして説明書の最後にはQRコードが描かれており、俺はそれを読み込むと携帯に新しいアプリが追加されていた。
「何だこの機能は・・・〈プープープー!〉ッ!?」
すると突如、携帯からアラーム音がなり、アプリを起動させると地図が現れ、そこには一個の点があり、何かがいるというのがわかった。
「・・・もしかして、これがスマッシュ?」
このアプリがスマッシュを発見する為の機能だと考えたこの俺――桐ヶ谷晴夜は、ビルドドライバーと呼ばれているデバイスとフルボトルを手に取り、現場に向かって行くのだった。
そして、その様子をエボルト――石動総一郎は、晴夜が自身の兄:巧のビルドドライバーと父:拓人のラビットボトルとタンクボトルを持って、スマッシュを倒しに向かっているのを陰から眺めていた。
「――いってらっしゃい、晴夜」
総一郎はそう呟くと、その場から離れて行った。
「頑張って、俺の為にボトルの回収、ハザードレベルを上げてくれよ〜」
総一郎の呟きは、誰かが聞いている訳でもなく、そのまま誰もいない道で響いていった。
これから晴夜は、スマッシュだけでなくジコチューとも戦い、ビルドを強化せざるを得ない状況に陥るだろう。嗚呼、楽しみだなぁ〜
「さあ、プロジェクト・ビルドの始まりだ」
――地球殲滅まで、後9ヶ月。
完