Re.ドキドキ&サイエンス   作:yu-ki.S

84 / 93
前回までのあらすじ!

晴夜「仮面ライダービルドであり、てぇんさい科学者の卵 桐ヶ谷晴夜は、マナ達とお花見しに行ったものの、その道中でプリンセスプリキュアと魔法使いプリキュアと出会う。だが馬面の男・トラウーマとその主人であるソルシエール、そして彼らの仲間である怪物アジ・ダハーカによって俺達はバラバラになり、ピンチに陥っていた!」

龍牙「残された2組の仲間達のピンチを救ったのは、俺達と同じ仮面ライダーである“仮面ライダーオーズ”と“仮面ライダーフォーゼ”の二人だった!
……『奇跡の魔法』って題名なのに、ウィザードは出ないんだな」

晴夜「オーズ、フォーゼのお陰で先に進めた俺達は果たして、どの様にして彼らの目的を知り、プリキュアの涙を奴らに手渡さない様に出来るのだろうか!」

龍牙「……なあ晴夜。さっきから思ってたんだけどよ……『みんなで歌う♪奇跡の魔法!』の話に、“麻袋の人形”なんてキャラ出てたっけ?あんま記憶ねぇんだけど……」

晴夜「細かい事は気にすんな。それじゃあ後半唱始まりまーす」


特別編2 仮面ライダービルド&みんなで歌う♪奇跡の魔法!後半唱

晴夜達やミラクル達が離れ離れになっていたその頃。トラウーマの後を追っていたモフルン達は、ソルシエールの居る屋敷へと着いていた。

 

「「「ぬきあし…さしあし…しのびあし…」」」

 

先程トラウーマの馬車から忍び込んできたモフルン、パフ、アロマの三匹は、屋敷の廊下を慎重に抜き足差し足忍び足で慎重に歩いていた。

 

「捕まったプリキュアを捜すロマ!」

 

「変装も完璧パフ♪」

 

オマケにサングラスや付けヒゲを装着して、本人達にとっては変装だと思い込んでいるらしいが、こんな所で変装してもあまり意味が無いことには気付いていない。

 

「こっちにクッキーの匂いがするモフ」

 

「モフルン、今はそんな時ではないロマ」

 

「クッキーは後回しにするパフ」

 

「そんな事を言っても、こっちにクッキーの匂いがして気になるモフ。

それに、クッキーの匂いと一緒に甘い匂いがたーーーくさんするモフ!」

 

「ロマ!?」

 

甘い匂いが沢山すると聞き、初めに会った時にクッキーと言いながらはるかの顔面に飛びついた事を思い出したアロマは、もしかしたらと思いながら考えを纏める。

モフルンの言う甘い匂い。これまでのモフルンの行動を整理すると、つまりそれは捕まっているプリキュア達の事ではないかという考えが脳裏によぎった。

事実。モフルンにはプリキュアに関わるアイテムや人物を嗅覚として感知する力も持ち、モフルンはそれを「甘い匂いがする」と表現する。ただのお菓子の匂いと区別できないためお世辞にも精度は高いとは言えないが、その能力はみらい達のリンクルストーン探しの手掛かりとなっている。

 

「お兄ちゃん、どうしたパフ?」

 

「その甘い匂いというのは、きっと捕まっているプリキュア達ロマ!」

 

パフが変な声を出した兄にどうしたのかと聞くと、アロマはモフルンが言う“甘い匂い”を辿っていけば、はるか達と出会える事を説明する。

 

「モフ?」

 

「本当パフ!?」

 

「間違いないロマ!モフルン!甘い匂いを辿るロマ!」

 

「任せるモフ」

 

アロマはモフルンの匂いを頼りにプリキュア達を探そうとする。

 

「ああ、そこ。段差があるから気をつけて」

 

張り切って探しに行こうとしたその時、モフルン達へこの先の道に段差があると伝えた者がいた。

 

「親切にありがとうモフ」

 

モフルンは前方に階段の段差がある事を教えてくれた者に、お礼を言いながら振り向くと…

 

「どういたしまして」

 

そこには笑顔のトラウーマがいた。

 

「「「……」」」

「……」

 

「「「うわあああああああああああああ!!」」」

 

誰にも見つからない様に行動したと思ったら、とっくに見つかっていたと言う状況を目の前にいるトラウーマを見てようやく気付いた三匹の叫び声は、館の外にまで響き渡る。

 

「「助けてーーーー(モフ・パフ)ッッ!!」

 

「逃がしませんよ!!」

 

◆ ◆ ◆

 

三匹がトラウーマから逃れる為に全速力で逃げ続けているその頃。洋館らしき物が立ち並ぶ場所へと到着したミラクルと晴夜は、マシンビルダーから降りてヘルメットを外しながら辺りを見る。

 

「……また、さっきとは違う場所か?」

 

先のビル一つしかなかった所とは違い、いくつもの建物がある所へと着いたとはいえ。この空間の中はどうなっているのかと頭を悩ませる晴夜。

 

「…ねぇ、晴夜君。このバイク、晴夜が作ったの?」

 

ミラクルもバイクのシートから降りると、ビルドフォンから変形したマシンビルダーを見ながら、これを作ったのは晴夜かと聞く。

 

「えっ?そうだけど?」

 

「すごいね!ワクワクーもんだ!」

 

フルボトルの力を使っているとはいえ質量保全の法則を無視した発明品に、ミラクルは目を光らせながた晴夜に顔を近づける。

 

「でも、ミラクルとマジカルだって魔法の箒で空とか飛べるでしょ?」

 

「そうだけど、晴夜みたいなバイクだって凄いよ!

……あれ?でも、免許とかどうしてるの?」

 

「ん?免許なら持ってるよ」

 

そこでふと、バイクは普通なら高校生以上ではないと免許証を持ってないのでは思ったミラクルだったが、晴夜は着ているコートからライセンスを見せた。

 

「四葉財閥のおかげで特別免許証を貰っているんだ」

 

「凄い〜!あれ?」

 

「ミラクル?……ん?」

 

二人がマシンビルダーについて会話していると、建物の隅っこで縮こまっている妖精らしき姿を見つけた。

 

「妖精?」

 

妖精を見た晴夜はマシンビルダーをビルドフォンへと形態を戻し、懐へと仕舞い込む。

 

「あ、あの──」

 

「ルルルルル~~~~!」

 

ミラクルが声をかけたは良いものの、相手の妖精は声を上げて泣き始めてしまった。

 

「わぁぁぁっ!お、脅かしてごめんね!私、キュアミラクル!」

 

ミラクルが背を向けて泣く妖精の警戒心を解くために自己紹介すると、『キュア』という単語に反応した妖精は泣き止み、ミラクルと晴夜の方に振り返る。

 

「プリキュアルル?」

 

「あれ?お前……ルルン!」

 

「……晴夜ルル〜!」

 

そこにいた妖精は、一番最初のプリキュアであるキュアブラックとキュアホワイトの仲間・シャイニールミナスのパートナー妖精である『ルルン』であった。

 

「ブラック達を助けてルル~!」

 

「まさか、なぎささん達が……『『通りま~~~す!』』……ん?」

 

泣きながら晴夜の胸に飛びつくルルンに、晴夜達はなぎさ達プリキュアオールスターのメンバーまでもがトラウーマ達に捕まってしまったのではないかと思っているとピンク色の少女が二人、ドップラー効果が聞こえる勢いで通り過ぎて行った。

 

「通りま~~~、まぁルルン!無事だったんですね!晴夜君もお久しぶりです!」

 

二人が通り過ぎ、更にもう一人が通り過ぎたかに思ったが、二人の前に戻ってきてルルンを心配していた。

 

「ほら急いで~!」

 

困惑するミラクルと晴夜がそのピンク色の少女に声をかけるよりも先に、更にもう一人のピンク色の少女がビルドとミラクルの後ろを通り過ぎ。「あなた達も早く!」と言って走り去る少女を、ミラクルとビルドの二人は訳が分からずポカンとしていた。

 

「今のブロッサムにメロディ、ピーチにハッピー?『グウォォォォォーー!』ッ!?」

 

突然背後から咆哮が響き振り返ると、そこには6本の腕に蝙蝠の翼を生やした紫色の化け物が、腹部に付いた大きい口と一緒に大声を出していた。

 

「プロトジコチュー!?」

 

その敵はかつて晴夜が初めてマジェスティロードへと変身した際、ハートと一緒に戦ったジコチューの親玉・プロトジコチューが立っていた。

 

「「おりゃあぁぁぁぁぁっ!」」

 

そこへ先ほど二人の前を通り過ぎた少女たちが現れ。壁を走って加速すると、プロトジコチューの側面からダブルキックをかまして吹き飛ばした。

 

「次来るよ!」

 

「えぇ!?」

 

すると今度は建物の影から、灰色と紫色という二対の羽を持った獣人のような姿の敵──かつてプリキュア5が戦った敵、戦闘形態の姿となった『エターナル』という組織の館長が飛び出してきた。

 

「「あちょぉぉぉぉっ!!」」

 

エターナルがミラクル達に襲い掛かるが、金髪ツインテールの少女とピンクポニーテールの少女が殴り飛ばした。

二体の敵を一掃した、四人のピンクコスチュームを身に纏った少女がミラクル達の前に降り立つと、それぞれ名乗りを始めた。

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」

「大地に咲く一輪の花!キュアブロッサム!」

「爪弾くは荒ぶる調べ!キュアメロディ!」

「キラキラ輝く未来の光!キュアハッピー!」

「「「「4人揃って、———プリキュア!」」」」

 

「……あー、何だって?」

 

「揃ってないルル」

 

名乗る部分がごちゃ混ぜで聞き取れずに疑問符を漏らす晴夜に、突っ込むルルンと、「え~」と困惑気味な表情のミラクルがその場に居た。

 

 

 

一方、霧と枯れ木の森林地帯を抜けたマジカルとハートは、今度は荒れた岩石地帯の大地の上を走っていた。

 

「マジカル~!」

 

だがその道中、前方から先ほどまで一緒だったフローラ達4人が現れた。

 

「よかった。無事だったのね?…ハート!」

 

「ミラクルと晴夜、龍牙は、一緒ではないの?」

 

「龍牙は……」

 

一度別れた三人はどうしたのかと問うスカーレットに、マジカルはここまで来るまで龍牙と二人になってミラクルと晴夜を探していたがディスピアが再び現れた事。ハート達と出会いながらディスピアに応戦し、マジカル達を探すために龍牙達が時間を稼いでくれた事。更に二人の危機へ仮面ライダーフォーゼの如月弦太郎が現れ、ここまで導いてくれた事を話した。

 

「そうだったんだ。なら、一緒にミラクルと晴夜君を探そう!」

 

「ありがとう」

 

新たに合流したフローラ達の前で少しばかり安堵してか、笑みを漏らすマジカル。

 

「無駄だ」

 

だが唐突にそんな声が響いたかと思うと、6人の前に新たな敵──ハッピー達と戦った巨大なピエロ姿の皇帝・ピエーロのコピー体、キュアブルーム達と戦った黒と緑のボディに白髪と巨大な角を持った男・ゴーヤーンのコピー体が現れた。

 

「きた」

 

「涙を渡せ!」

 

ハートが身構えていると、ピエーロとゴーヤーンの背後に黒いオーラ纏ったソルシエールが出現した。

 

 

 

そして晴夜とミラクル達が戦っていたプロトジコチューとエターナルの背後にも、黒いオーラを纏ったソルシエールの立体映像らしきモノが現れていた。

 

「あれがソルシエールの姿……」

 

ここに飛ばされる前では顔の形しかわからなかったが、此処でようやく姿を見せた。

 

「先ほどお前たちを逃がしたプリキュアに仮面ライダーは、既に私が捕らえた」

 

その言葉に愕然とするミラクルと、晴夜達が居る場所とは違う所でも同じく愕然とするマジカル。その瞬間二人の頭には、自分たちを逃がしてくれたラブリー達、龍牙とダイヤモンド達の別れ際の再開の約束が浮かんでいた。

 

「みんなが……」

 

「もう殆んどのプリキュアが…」

 

「捕まったって事!?」

 

「そんな……」

 

「早く助けないと……みんなが危ない!」

 

同じく仲間達が既に敵の手の内にある事を聞いたブロッサム、メロディ、ミラクル、ハッピーの四人は、仲間達を助けるべく目の前で構える二体の敵を見据えていた。

 

 

(まさか、マナと龍牙も……)

 

(晴夜……大丈夫だよね)

 

そして晴夜とマナは、お互い無事ではあるも連絡がとれず安否不明な為に、不安な気持ちを抱えていた。

 

◆ ◆ ◆

 

トラウーマの策略によって捕まってしまった龍牙と和也と幻冬、プリキュア達が収容されていた檻の部屋では、捕まった者達が魔法の力を前に何も出来ずに悔しがっていた。

 

「で♪で♪」

 

「でら♪でら♪」

 

「でられなーーいーーーーーー♪」

 

『オ・リ♪』

 

ブラックやブルーム、ドリーム達が突如歌い出し、他のプリキュア達が揃って放った息ピッタリな掛け声は、まるで某金の着物を着た人の歌うサンバの如くとても素晴らしい物だった。

 

「アホかーーーーー!!」

 

しかし檻の中に閉じ込められているというのに、こんな事をしている場合ではないと、マリンが真っ先にツッコむのであった。

 

「なにが“オ・リ”よ!プリキュア大ピンチっしょ!揃いも揃ってとっ捕まってーーー!」

 

「マリン、落ち着いて……」

 

『ソウ言う時ハ、三秒数エテ十引くノガ一番デスわ』

 

ホワイトが荒ぶる気持ちを抑えるようとするマリンを宥める。

 

「無念だわ……」

 

「しかも、他のみなさんも捕まっていたなんて……」

 

『残☆念☆無☆念』

 

フォーチュンとエース達はせっかく時間稼ぎをしていたのに捕まってしまい、申し訳ない気持ちと残念な気持ちが一杯になっていた。

 

「みんな!気持ちはわかるけど。まずは先の事を考えましょう」

 

「早く、ここから抜け出す方法を考えましょう」

 

『ソンナコト言って良いノカナァ〜〜ダ〜グ〜ラ〜ス?』

 

そんな中でホワイトとフォーチュンがみんなに冷静な気持ちでいるように促す。

 

「くそぉ!こんなところにいる場合じゃ……」

 

「こんなもん!ボトルがあれば!」

 

龍牙は隣で何度もタックルしながら檻を破ろうとしており、和也も何度も檻を蹴っていた。

 

「そんな事してもダメですよ……

そもそも僕達の変身アイテム……みんなと一緒に取られたんですよ……」

 

だが幻冬の言う通り、プリキュアでも出れない檻を生身で破れるはずがなく。その上この檻へ捕らえられる前に気を失っていた際、トラウーマによって龍牙達のビルドドライバーにスクラッシュドライバー、更にはフルボトルまで全て没収されてしまっていた。

 

「だいだいかずやん!何ですぐに捕まったんだよ!」

 

『ソウダソウダ〜!』

 

「俺か⁉︎ 俺のせいなのかよ!お前まで変身出来ないようにされて、何も出来なかったじゃねえか!」

 

『この役立タズ〜!』

 

「やめてください!こんな所で!」

 

『クローズゥ!グリスゥ!ヤメルォ!!』

 

「だぁぁぁうるせぇぇぇ!お前は俺たちの手の届かねぇトコで煽ってんじゃねぇよ!!」

 

龍牙と和也の喧嘩を止めようと幻冬が仲裁しようとするも、トラウーマに捕まったプリキュアと仮面ライダーを見に来た麻袋の人形が野球観戦のコスチュームを着たままフォームフィンガー片手に煽っていた為、龍牙らの怒りは更に強くなっていた。

 

「……ねぇ、貴方。晴夜達が今どうなっているか知らない?」

 

『鼻でスパゲティ食ったら教えてヤルヨ。マァ、ソモソモ此処にスパゲティなんテ無いけどナァ!キャキャキャ!』

 

「………無駄よサンシャイン。あいつに何を聞いても、こんなふざけた返答しかして来ないわ」

 

ダメ元でサンシャインが晴夜達に着いて質問するが、ムーンライトの言う通り麻袋の人形に声を掛けても煽るだけしかして来ない為、他の者は彼に質問する事をとっくに諦めていた。

 

『トラウーマです。みなさん、尋問の時間です』

 

すると檻の外に設置された放送機からトラウーマの声が聞こえ、尋問を始めると言う。

 

「無駄だよ!私達は絶対泣いたりなんかしない!」

 

『威勢がいいですね、ブラックさん。

私は今、取り込み中ですので……私の人形が御相手をします』

 

ブラックの叫びを聞いていたトラウーマは今、パッドを持ってモフルン達を捜し求めていて忙しい為、彼本人の代わりに牢屋からトラウーマの形をしたマリオネットが糸に吊るされて降りて来る。

 

「おい!俺達のドライバー返せ!」

 

トラウーマが声だけとは言え現れたのを見た龍牙は、彼のマリオネットに向かってドライバーを返せと叫ぶ。

 

『残念ながら、あなた達のドライバーはこちらで預からせて貰います。

特にあなたのドラゴンボトルは…』

 

「何だと!しかも、俺のボトルを!」

 

しかし、ドライバーに加えて自分の分身のボトルとも呼べるドラゴンボトルまでも返さないと言われ、龍牙は檻の鉄棒を強く握りしめる。

 

『それでは……』

 

まず最初の尋問は、感動的な人形劇作戦から始まった。

 

『ママーーーー!』

『ウマキチ…やっと会えた』

 

内容は離れ離れの親子が出会う、よくある定番のお話だった。

 

「すごごごーく良いお話…」

 

「でも、泣いちゃダメよ…!」

 

『オロロォォォーン!よがっだネェーー!!』

 

定番でも感動の再会には涙が潤うも、それでもなんとか耐え凌ぐプリンセスやダイヤモンド達。ちなみにプリキュア達と一緒に人形劇を見ていた麻袋の人形も、目からムカデや毛虫を涙を流す様に動かしながら感動していた。ついでにそれを見たマーチは絶叫し掛けていた。

涙を流さない事を確認すると今度は玉ねぎを用意し、包丁を持った人形が現れた。

 

『うわーーーーー!?』

 

そのまま人形は微塵切りにした玉ねぎをプリキュア達に浴びせていく。

 

「た、玉ねぎが」

 

「こっちに飛んでくる~~~」

 

「あかん!玉ねぎはアカンって!」

 

「野菜を粗末にすんな!」

 

ソードやジョーカーサニーが微塵切りにした玉葱を浴び悶え、野菜農家である和也は食べ物を粗末にする相手に怒りを抱いていた。

 

『ア、ソレじゃア。微塵切りにしたタマネギは此方ガ美味しくイタダキマーす』

 

『えっ』

 

そう言って麻袋の人形は口から無数の毒虫を出すと、プリキュア達の方へ飛んで行った玉葱を食べに行った。大量の毒虫にプリキュア達は阿鼻叫喚しながら玉葱の破片を急いで払い落とし、足元で玉葱を食べる蜘蛛を刮目したマーチは気絶した。

これでも泣かないのならと、今度は七輪で秋刀魚を焼いた際に出た煙を浴びせ始める。

 

「こほっ!こほっ!……煙で涙を出そうという作戦ですね」

 

「煙い~~~」

 

「うう~~こりゃあ、たまらん……」

 

幻冬の言う通りトラウーマは七輪から発せられる煙で涙を流させようとするが、ドリームやプリンセスを始めとした彼女達も絶対に泣かないと頑なに決意する。

そしてトラウーマは痺れを切らし、最後の切り札を出した。

 

『僕、スカンク』

 

「あ、あれって……もしかして……」

 

「あれは!確かスカンクといって──」

 

パッションの口から白と黒の動物の名を聞いたみんなは、ぞっと青ざめた表情を浮かべる。ついでに麻袋の人形も表情を固める。

 

「ま、まさか……」

 

ホワイトの懸念通り、そのスカンクは尻尾をおっ立てて力みだす。麻袋の人形は真っ先に逃げ出した。何しに来たんだこいつ。

 

『それだけはやめてーーーーーーーー!!?』

 

『さぁ!この匂いに耐えられますかね!!ふひひひ♪』

 

『うわわわわわわわわわわ!!』

 

スカンクは尻尾を立てると、龍牙達ライダー組とプリキュア達に向けて狙いを定める。

 

「うわっ!うわっ!やめ!やめ…」

『うわああああああああああああああ!!』

 

ブラック達はやめるように叫ぶがしかし、スカンクが全員の言葉を耳にすることなく、スカンクのケツから強烈なガスが噴出されるのであった。

 

『うう~~~~~……』

 

あまりにも強烈なスカンクのガスに、みんなは目に渦巻きやバッテンを浮かべたり、白目になって臭い匂いに鼻をつまんでいた。

 

「みんな!絶対に涙を出しちゃダメよ!」

 

「さもないと、私達の涙で何か恐ろしい事に使われてしまう!」

 

「助けが来るまで……頑張るっしゅーーーーー!!」

 

『うん!!』

 

「晴夜!早く何とかしてくれーー!」

 

トラウーマに酷い目に遭わされたみんなにホワイトとブラック、そしてマリンが啖呵を切るも、牢の外でまだ無事な仲間が早くここへ来て助けてくれる事を、龍牙達を加えたプリキュア達は願うしか無かった。

 

◆ ◆ ◆

 

外で無事な仲間達は、ソルシエールが生み出したコピーと戦い続けていた。

洋館のある空間では晴夜、メロディ、ブロッサムの三人がプロトジコチューを相手している間に、エターナルにミラクル、ピーチ、ハッピーの三人が応戦している。

 

「「やぁぁぁぁっ!」」

 

両サイドから同時に仕掛けるミラクルとハッピーの二人。

だがエターナルは攻撃を片手で受け止めると、手から放つ黒い波動で二人を吹き飛ばした。壁に激突しながらもめげずに再び突進するミラクルに、エターナルはそれを待っていたと言わんばかりに彼女に向かって黒い波動を撃ち出す。

 

「ミラクル!」

『火遁の術!火炎切り!』

 

晴夜は火炎切りでプロトジコチューの腕を弾くと、ラビットボトルを振りながらミラクルとハッピーを庇うように彼女の前に飛び込む。

 

「ぐぅ!」

 

腕を振りかぶったエターナルの攻撃を食い止めた晴夜、しかし変身していない今の晴夜では長くは持たない。

 

「「晴夜君!?」

 

「やめてぇぇぇっ!」

 

ミラクルとハッピー、晴夜を助けるべく横サイドから攻撃するピーチだが、その攻撃さえも受け止めるエターナル。しかしビルドはその隙を見てホークガトリンガーを構えると、それを見たエターナルは離れた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「晴夜!大丈夫!」

 

「ああ……ありがとう」

 

何とか耐え凌いだ晴夜だったが、やはり生身の戦闘ではプロトジコチューのような敵にはかなりきつい。それでもまだ戦うと決意する。

 

 

 

一方のマジカルとハート、プリンセスプリキュアのいる森でも戦闘が開始された。

 

『ぬぉぉぉぉっ!』

 

トゥインクル、マーメイド、スカーレットがピエーロと戦っている近くで、フローラ、マジカル、ハートはゴーヤーンと戦っていた。

 

「ッ!」

 

するとフローラ達と戦っていたゴーヤーンは、近くにあった岩をバッドのように振り回し始めた。

振り抜かれた棍棒の標的はマジカルだった。

 

「危ない!」

 

咄嗟にマジカルを庇うべく、ハートが彼女の前へ飛び込んだ。

 

「ぐうっ!」

 

「きゃぁぁぁぁっ!」

 

何とかハートが腕を盾にしで受け止めようとするだが、空中で踏ん張りが聞かないことに加え、圧倒的質量を前に力を抑えきれず、マジカルと共に吹き飛ばされる。

その時、上空から新しい別の人影が現れると、寸前の所でハートとマジカルを支えた。

 

「間に合ってよかった」

 

そう言ってマジカルとハートを安全な場所に一時避難させた、若草色が入った白い服装を着てサイドポニーに淡いピンク色のリボンを身に付けた少女の背中を見たフローラとハートは、笑みを浮かべながら少女の登場を喜んだ。

 

「思いよ届け!キュアエコー!」

 

今此処にいる彼女こそ、かつて普通の少女だった人物がパートナー妖精と変身アイテムの力を借りずに、ただ純粋な想いの力だけで覚醒した特殊なプリキュア、キュアエコーである。

 

「ハート、大丈夫!?」

 

「うん!大丈夫!ちょっと腕が痺れちゃっただけだから」

 

「さぁ、立って。あなたも一緒に」

 

ハートがエコーに支えられながら起き上がると、エコーは仰向けに倒れているマジカルを促す。

 

「……無理……もう、無理」

 

「…マジカル」

 

だがマジカルは、ここまで導いてくれたプリキュアと仮面ライダーが捕まった事で、半ば絶望感に陥ってしまっていた。

そんな彼女の元にハートが腕を抑えて歩み寄る。

 

 

 

エターナルの猛攻の前に押されていたミラクルは、繰り出されるラッシュを防ぐので精一杯。何とかジャンプして距離を取るが、回り込まれたエターナルのキックで上空へ打ち上げられそうとなる。

 

「ミラクル!」

 

そしてエターナルがミラクルを追撃すべく、両手を彼女に向かって突き出したのを目撃した晴夜が前に出ると、ドリルクラッシャーと四コマ忍法刀を盾にしてミラクルを守ろうとする。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

 

間一髪ミラクルを守る事が出来たものの、エターナルの猛攻の前に晴夜の持つ二本の武器が砕け散り、地面の上を何度もバウンドさせながら吹き飛ばされてしまう。

 

「げほぉ……ミ、ミラクル!」

 

受け身を取ってダメージを最小限に抑えて起き上がった晴夜は、倒れているミラクルに歩み寄って怪我はないかを確認した。

 

「……敵うわけ、ない、あんな怪物に」

 

取り敢えず大した怪我は無いように見えたが、ミラクルの目には輝きが失われ。見事な戦いぶりを見せるプリキュア達や生身でも必死に戦う晴夜に比べて見劣りする自分の姿に不甲斐なさを感じ、更には強敵達の猛攻を前に何故こんな目に遭わなくてはいけないのかと心が折れそうになり、その心を絶望で濡らしながら項垂れていた。

 

「そんなの──」

 

だがハート達の前で己の非力さに弱音を吐きながら戦意を喪失させたマジカルと、

 

「無理──」

 

今この場で膝をついたミラクルの心が折れそうになっている要因は、身も心もボロボロになったから。という事実だけでは無かった。

隣にパートナーの居ない二人の頭に蘇るは、今朝彼女達が決めていた『二人で立派なプリキュアになる』という目標。

だが今、ミラクルとマジカルは遠く離れている。

互いに心を支える柱を失った二人は、そんな目標を達成させる事など無理だと、こんな相手に勝てっこないと後ろ向きな考えが浸透し始めていた。

 

「「無理じゃないよ!」」

 

しかしミラクルとマジカルと同じ様に離れている筈の晴夜とハートの声が、絶望によって崩れ始めようとしていた心を支える様に、同時に重なった。

 

「俺にも無理だと思ったことや、もう戦いたくないって思ったことがあった!

けど、俺は……」

 

「あたし達は……絶対諦めない!

たとえ、仲間が近くにいなくても……あたし達は繋がっている!」

 

晴夜とハートはあの戦い(プロトジコチューとエボルトとの戦い)を境に、いつも離れていていることが多かった。

それでも二人は互いに離れていても、いつでも思いは繋がっていると信じている。

 

「晴夜君は、何で戦うの……」

 

「何で……」

 

同時に彼らの言葉は、変身することも出来ないのに何で晴夜は戦うのかと、何でそこまでボロボロになってもハートは戦うのかと、ミラクルとマジカルはそれぞれの疑問を抱いていた。

 

「諦めないで最後まで戦うの!きっと晴夜も!だって……」

 

「俺は……俺達には、戦う理由がある……」

 

だが彼女ら彼らの戦う理由などたった一つ、たったひとつの“言葉”だけで十分であった。

 

「「ラブ&ピース。それだけの為に戦っているから!」」

 

その言葉が物凄く脆く、いかに弱い言葉だとしても、そんな世界を導いて守る為にプリキュアと仮面ライダーは存在している。晴夜とハートは強くそう語った。

 

「そうです!それが、晴夜君の覚悟なんです!」

 

「その思いは、私達も同じ!」

 

「それがいつも、私達を助けてくれた」

 

「晴夜も、私達も……その思いを胸に、何度も立ち上がってきた」

 

此処に居るブロッサムやハッピー、メロディ、ピーチの四人も、彼がどんな逆境にも辛い言葉をぶつけられ、心が折れそうになっても、その度に立ち上がる事を知っている。

そしてまた、プリキュア達も同じ様に何度辛いことがあっても立ち上がってきた。

 

「……だから、俺は諦めない!」

 

四人のプリキュアが並んだのを見てた晴夜はビルドドライバーを装着し、顔から笑顔を溢れさせる。

 

「さぁ、実験を始めようか?」

 

そう言って懐からラビットとタンクのボトルを取り出し数回振り始めると、後ろからいくつかの数式や化学式が現れ、キャップを回したボトルをドライバーに装填した。

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

ドライバーに兎と戦車のシルエットが浮かび上がり、レバーを回すと共に前後からアーマーが形成された。

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

その音声と共に晴夜は構えた後、両手を一度交差させてから広げると、アーマーが中央の晴夜に重なるように装着される。

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

煙が晴れるとそこには、赤い目から伸びたピンと兎の耳のようなアンテナと青い目から戦車の大砲のようなアンテナが伸びた、赤と青のアーマーを纏った姿が現れた。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

多くの人の明日を創り、未来へと繋ぐ仮面ライダー・仮面ライダービルドへと変身した晴夜は、右のアンテナをなぞり上げながら右手を広げて決め台詞を言い放った。

 

「へ、変身……出来たの」

 

ミラクルはトラウーマの秘術により変身出来なくされていた晴夜が、再び仮面ライダーへの変身を遂げた光景に目を大きくする。

 

 

 

「なんだと……」

 

『………コリャてぇへんダ。アノ方に伝えナイト……』

 

この光景を杖を介して見ていたソルシエールも、影で隠れて見ていた麻袋の人形も驚く。

 

 

 

「晴夜君がビルドに……」

 

「変身出来た!」

 

「でも、どうして変身出来るようになったの?」

 

変身完了したビルドがプロトジコチューとエターナルを見つめる姿を目にしたピーチとハッピーは、晴夜がビルドへと変身した事に喜びを感じていたが、メロディは何故唐突に晴夜がビルドに変身出来たのか分からなかった。

 

「詳しい説明は省くけど、さっきまでの俺はビルドに変身するのに必要な数値であるハザールレベルが足りなかったんだ。

けれど俺は、これまで戦いの中で幾度もなくハザードレベルを上げてきた。

ミラクル。これが俗に言う、諦めない強い思いって奴さ」

 

確かに晴夜のハザードレベルは3以下にされてしまっていた。

だがこれまで生身でも尚戦い続けていた影響で、ハザードレベルの上昇条件である感情が高まり。そのおかげでハザードレベルがライダーシステムの必要条件値に達し、再び仮面ライダービルドへの変身を可能にしたのだ。

 

「さてと、説明はこれくらいにして。みんな、後は俺に任せて。はぁぁ!」

 

ビルドがエターナルとプロトジコチューに向かって走り出し、対する二体もビルドに攻撃を仕掛ける為に拳を振りかぶった。

 

「はぁ!」

 

ビルドはラビットの脚力を活かし高くジャンプして躱し、地面へと降りると右足をエターナルに繰り出す。

 

「ぐぅぅ!」

 

繰り出したタンクのローラが回り腹部にダメージを与え吹き飛ばすと、ビルドの背後にプロトジコチューが現れた。

 

『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!』

 

一瞬驚くも、直ぐにゴリラボトルとダイヤモンドボトルをドライバーと装填。レバーを回して前後から茶色と水色のアーマーを生成した。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ‼︎」

 

二つのアーマーが装着されると、体から蒸気を出しながら音声が流れた。

 

『輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イェーイ!』

 

左側の複眼と右腕はゴリラがモチーフ、右側の複眼と左手はダイヤモンドがモチーフの姿であるゴリラモンドフォームへと変わる。

 

「くぅ!」

 

ビルドはゴリラの腕を模したパワーナックル『サドンデストロイヤー』を前に出してプロトジコチューの攻撃を耐えると、左拳の『BLDプリズムグローブ』にある機能を使ってプロトジコチューの前にダイヤモンドを出現させる。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

右手のサドンデストロイヤーで振り払ってダイヤモンドを砕くと、飛び散ったダイヤモンドをプロトジコチューに直撃させて吹き飛ばした。

 

「晴夜君……」

 

そんなビルドの戦いを見たミラクルは、あれだけ傷つきながら変身すら出来なかったはずなのに、諦めないで挑み続けて再変身を果たしたという事実を受け取り、折れかけていた心の柱が元の形状に戻っていくのを感じた。

 

「ミラクル。何度だって躓いてもいいんだよ」

 

最初に会った時に立派なプリキュアになると言ったミラクル達の言葉を、ビルドは自分なりの答えで語る。

 

「どんなに偉い人に会って学んだって、すぐ立派になれないよ。立派なった人も何度も躓いて、それを乗り越えて、人はその度に強くなっていくんだと俺は思うよ」

 

彼も又、何度も躓いて今の自分を見つけた。

彼が語った言葉は、若くして仮面ライダーとして戦い続け、その中で負けたり苦しんだり絶望すること多くあったが、その度に仲間が彼を支え、ここまで来れた晴夜だからこそ言える言葉だった。

 

 

 

マジカル達のいる場所では、マーメイド達がゴーヤーンとピエーロと戦っており、ハートとフローラとエコーの三人がマジカルに駆け寄る。

 

「でも、私……足を引っ張ってばかり……」

 

「なんだって最初から出来るわけじゃないよ」

 

自分のせいでみんなに迷惑をかけている思い詰めるマジカルに、ハートは彼女と同じ目線で話しかける。

 

「えっ……?」

 

「どんな事も一つずつ覚えて、前に進む事が大事なんだと思うよ」

 

最初から何でも完璧にこなせる人間なんてなかなかいない。最初は失敗するのが当然かもしれない。

でも、ただ失敗するだけじゃダメ。次に自分の何が足りないのかを理解し、自分の力に変える必要がある。

 

「だから、今は自分に出来る事をしよう」

 

だからこそハートは、今自分に出来る範囲内で精一杯頑張る事が大事だと語る。

 

「私に出来ること……」

 

「約束したでしょ。一緒にお花見に行こうって」

 

「きっと来るよ。ミラクルも」

 

「晴夜と一緒にね」

 

ハートの話を聞いてマジカルの折れかけた心に変化が訪れたのと同時に、少しずつ目の輝きを取り返し始めたマジカルへと言い放たれたフローラとエコーの言葉に、最初に交わした約束を守る事こそが今自分の出来る事であると理解した。

そしてハートは、彼が必ずミラクルと一緒に来てくれるだろうと信じていた。

 

 

 

場所が変わってビルドとミラクルの方は…

 

「ミラクル!」

 

ルルンがミラクルの腕を掴み、涙目になりながら叫ぶ。

 

「ミラクル達が頑張らないで、誰がみんなを助けるルルン!」

 

ルルンの涙を漏らしながら放つ言葉に、ミラクルは立ち上がる。

 

「うん!こんな所で立ち止まってるわけには、いかないんだ!」

 

 

「私には、助けたい友達が居る!」

 

同じように、ハート達の励ましによって徐々に立ち直っていったマジカルも、その足でしっかりと地を踏み締める。

 

 

「みんなと行くんだ!」

 

 

「みんなとお花見に!」

 

 

「「だから!!」」

 

今、絶望を乗り越えた二人の少女が立ち上がる。

 

 

「「私たちは戦う!」」

 

 

ミラクルとマジカルの振り切った絶望は再び闘志へと変わり、それを乗り越えた上で手にした希望をその瞳に宿した。

 

「晴夜君!」

 

「あぁ!これで勝利の法則はできた!」

 

戦意を取り返したミラクルを目にしたビルドは一本のボトル缶を取り出し、数回振って缶を開けるとそれをビルドドライバーに差し込む。

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

ドライバーのレバーを回して前後からビルドマークのスナップライドビルダーが作られると、ビルダーから新しいアーマーが形成された。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

ビルドの叫びと共にアーマーが彼の体に装着されると、アーマーから無数の泡が弾けた。

 

『シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イェーイ!』

 

そしてビルドは通常のラビットタンクフォームに白が加わってトリコロールになったギザギザとした装甲を持つ、パンドラボックスの残留成分を利用して作り出した『ラビットタンクスパークリング』を使って変身した姿、ラビットタンクスパークリングフォームへとフォームチェンジした。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

「はぁ!」

 

ビルドがスパークリングへとチェンジした頃、マジカルとハート達はゴーヤーンへの反撃を開始すべく、エコーがゴーヤーンのパンチを受け止めると彼の拳を押し返して体勢を崩したた。

 

「はぁぁ!」

「タァァァ!」

 

次にハートの右足から繰り出されたドロップキックが決まり、マジカルが一瞬ふらついてガードを崩したゴーヤーンにアッパーを咬まして上空へと吹き飛ばす。

 

「ハート!」

 

「任せて!」

 

マジカルが宙に浮いて身動きが取れないゴーヤーンにトドメを刺すように言うと、既にハートがラブハートアローを構えて準備していた。

 

「プリキュア!ハートシュート!」

 

ラブハートアローから放たれた一撃でゴーヤーンを倒すと、残るピエーロがマジカルを狙う。だがマジカルは冷静に後ろへ下がると、後ろにある木の棒を掴んで鉄棒の大車輪の如く何度も回転する。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

マジカルが回転で遠心力を付けてピエーロの足を掴み投げ飛ばした。

 

「どうやらもう大丈夫だね」

 

「ええ!!」

 

もう大丈夫だと返したマジカルにハートは笑顔を浮かべ、トゥインクルに「さっきまでは別人じゃん」と言わしめるほどの力強い反撃を見せたマジカルの心の変化に応えるべく、プリンセスプリキュアはドールハウスの様なアイテム『プリンセスパレス』と『ロイヤルドレスアップキー』と呼ばれる特殊なドレスアップキーを取り出した。

 

「「「「ドレスアップロイヤル!!」」」」

 

そのままロイヤルドレスアップキーを挿し込んだプリンセスパレスの力によって、ロイヤルドレスに変化したプリンセスプリキュア。

 

「「「「響け、遥か彼方へ!!プリキュア!グランプランタン!」」」」

「ごきげんよう」

 

プリンセスプリキュアの合体技『プリキュア・グラン・プランタン』を受けたピエーロは、有無を言わせず浄化されていった。

 

「やったー!」

 

「マジカル!」

 

ピエーロが浄化されたのを確信したマジカルは、喜びが冷めぬうちにハートが差し出して手にハイタッチをする。

 

 

 

三度場所が変わりビルドとミラクル達の方は、ミラクル達が連携攻撃で相手を撹乱していた。

 

「「プリキュア!ダブルパンチ!」」

 

ミラクルとピーチによるダブルパンチが炸裂した。

 

「ブロサッム!メロディ!ハッピー!」

 

「「「はい(えぇ・うん)!」」」

 

ブロッサムとメロディとハッピーの三人が連続パンチを叩き込み、エターナルの動きを抑えたのを見ていたビルドはタイミングを計っていた。

 

「今だ!」

 

三人がエターナルから離れたのと同時に、ビルドは左足から『ラビットバブル』を噴出しながらエネルギーを溜める。そのまま一瞬のスピードでタンクの『インパクトバブル』をまとった右足がエターナルに繰り出してバランスを崩した。

 

「はぁ!はぁぁ!」

 

さらに左足に力を入れてスピードを上げ、プロトジコチューをスパークリングの圧倒的なスピードで翻弄しながら腕にあるRスパークリングブレードの大型エネルギー斬撃を繰り出し、二度目の斬撃で吹き飛ばした。

 

「やった!」

 

「晴夜君!凄いです!」

 

ピーチとブロッサムがビルドのスパークリングで一気に形成逆転となったと喜ぶも、すぐにプロトジコチューがビルドの前に現れると反撃を仕掛ける。

 

『海賊ハッシャー!』

 

対するビルドはドライバーから海賊ハッシャーを呼び出して手に持ち、攻撃を受け止めて振り払うと、斬撃攻撃を繰り出してプロトジコチューにダメージを与えながらトリガーを引っ張る。

 

『各駅電車!急行電車!快速電車!海賊電車……発車!』

 

海賊ハッシャーから放たれたエネルギー弾によりプロトジコチューを吹き飛ばすと、今度はエターナルに目を向けながらドライバーのレバーを回す。

 

『Ready go!』

 

そのまま高く飛躍してキックの態勢に入ると、エターナルの周囲にワームホールの様な図形を出現させてその中に拘束した。

 

『スパークリングフィニッシュ!』

 

「ハァァァァァァァァァァ!!」

 

ビルドが右足に無数の泡を纏いながら、エターナルに向けてスパークリングフィニッシュを放つ。

 

「ぬうわぁぁぁぁぁぁーー!」

 

スパークリングフィニッシュによって放たれたライダーキックにより、エターナルは建物へ叩きつけられた。

 

「やった!」

「イェーイ!」

 

何とかエターナルとプロトジコチューを行動不能に出来た事を喜ぶミラクルとメロディだったが、ブロッサムは戦闘を終えて息を切らすビルドに寄り添って心配する。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「晴夜君。大丈夫ですか?」

 

「……レベルを徐々に上げてきたから……少し休んだら大丈夫」

 

ハザードレベルを生身で戦いながら上げて変身出来るまでのレベルに戻したとはいえ、ビルドはそこまで行く為に体力をかなり減らした。

 

「それよりもここを出て、まずは捕まったみんなを……」

 

『ルラララル~~♪』

 

「?…また、この歌……」

 

それでも捕らえられた仲間の救出を行おうとしたビルドの耳に、三度目のあの歌が聴こえる。晴夜と彼女達が歌声に耳を傾けていると、再び何かの落下音と共に新たな敵が彼女達の前に現れた。

 

ミラクル達の前には、ラブリー達の戦ったレッドとブラック達が戦ったジャアクキング。

マジカル達の前には、ブロッサムたちが戦ったデューンにピーチ達が戦ったメビウス。

ソルシエールから生み出された四体のコピーが現れた。

 

「くぅ……まだやるのか」

 

新たな敵が現れ、ビルドはまだ体力が戻っていないがやるしかないと思い、ハザードトリガーとフルフルラビットタンクボトルを取り出した。

 

「晴夜とミラクルは先に行って!」

 

「「えっ!?」」

 

「二人はあの歌を追ってください!ここは私達が食い止めます!」

 

「けど、みんなの体力だって……」

 

だがピーチ、ブロサッム、メロディ、ハッピーの四人がビルドとピーチの前に出て、二人に先に行ってと言う。

だがそれに異論を唱えるはビルド。確かに自分の体力は満足に戦える程残っているとは言えないが、それは四人だって同じ。そんな状態で戦うなど、ビルドからすればあまりにも無謀に思えた。

だが四人はそんなの関係ないと言わんばかりに、四体いるコピー態の敵に立ち向かおうとしていた。

 

「そんな問題ないよ。あの時のあんたが、私達を助けてくれた時に比べたらね」

 

「私達は、晴夜君に助けてばかりじゃないよ」

 

ファントムにより固められた時、マダムに眠らされた時、ブラッド帝国に操られ襲ってしまった時も、ビルドは諦めずみんなを救ってくれた。

だけどプリキュア達は、仮面ライダーに助けらればかりの弱者ではない。

事実。此処ではない世界……仮面ライダーが存在しない世界(本来のプリキュアの世界)では、ファントムとの戦いも、マダムを通して起こった戦いも、彼女達の力だけでも解決出来たし。仮面ライダーが居なくとも彼女達が力を合わせさえすれば、どんな敵でも立ち向かえる。少なくとも、彼女達を知る者達はそう信じているであろう。

 

「わかった……ミラクル」

 

四人の気持ちを組み取ってドライバーからボトルを外し変身解除すると、晴夜はルルンを抱きながらミラクルに歌の聴こえる所へと行くように促す。

 

「あの……」

 

「大丈夫です!後でいきましょう!お花見に!」

 

「……はい!」

 

晴夜とミラクルは二体の敵をハッピー達に任せ、歌の聴こえる方へと向かう。

 

 

 

何度も場所が変わり、ハートとマジカルのいる方でも新手の敵に苛まれていた。

 

「マジカルは先に行って。歌の聴こえるほうへ」

 

「そんな……」

 

エコーが先に行く様に伝えるが、一人で行くなんて出来ないと言おうとするマジカル。

 

「大丈夫。あの歌声は貴方達を呼んでいるようだった」

 

「マジカル」

 

「また後で会おう!約束!」

 

「……えぇ!」

 

だがエコーとフローラとハートの言葉を聞いたマジカルは自分がやるべき事を理解すると、みんなと必ずまたあとで会おうと誓い、歌の聴こえる方へと向かった。

 

 

 

「……手っ取り早くいきましょう」

 

だがモフルン達を追いかけていたトラウーマがパットでその様子を確認すると丁度、晴夜とミラクルとマジカルの三人が戦線から離脱したのを見て、パットを操作して四体のコピーにある機能を働かせた。

 

「何ですか?」

 

一方現場では、ブロッサムが彼女達の前に現れた強敵達の瞳が赤くなったのを見て、何か起こるのでないかと予測すると、その予測通りにレッドとジャアクキングが同時に爆発した。

 

『シャチ!ウナギ!タコ!シャ・シャ・シャウタ!シャ・シャ・シャウタ!』

 

「はぁぁ!」

 

だが彼女達の前に誰かが現れて前に立つと、何かを回して爆風をかき消した。

 

「てめぇら!早くしろ!」

 

一体誰が現れた。という疑問を覚える前に現れた金髪の男性に早く離れろと言われ、プリキュア四人は爆心地から離れた場所まで移動する。

 

「アンク、ありがとう!……大丈夫?」

 

アンクと呼ばれた金髪の男に案内されたハッピー達四人の前に、手に持った鞭のような武器を回して盾を作り、彼女達を爆発から防いだ人物が現れた。

 

「仮面ライダー?」

 

「オーズ。仮面ライダーオーズ!よろしく!」

 

それは黒と青のアーマーを纏い、腕には二本の電気鞭『ウナギウィップ』を持ち、脚部にはタコの吸盤がついた『シャウタコンボ』に変身した仮面ライダーオーズが、アジ・ダハーカが召喚したグリードのコピーを撃破し、この場に登場したのだった。

 

「晴夜君とミラクルは?」

 

「大丈夫。二人なら先に行きましました」

 

ハッピーが二人は無事だと伝え、それを聞いたオーズは一安心した。

 

 

ハッピー達の前にオーズが現れたの頃、ハートとフローラ達の所ではデューンにメビウスがエコー達を巻き込んで爆発していた。

 

『シールドオン!』

「させるねぇよ!」

 

だが逃げられないと思ったハートとエコーとフローラ達の前には、ゾディアーツを撃破した後にロケットモジュールでここまで飛んできた仮面ライダーフォーゼが、スペースシャトル型の巨大なシールドを左腕に召喚した状態で現れた。

 

「弦太郎さん!」

 

「よう!遅れてすまねえ」

 

爆発直前にシールドのアストロスイッチでシールドモジュールを出し、みんなを守ったフォーゼはゾディアーツとの戦後である事を感じさせぬ程の余裕を見せていた。

 

 

 

「ふぅ……ここまで逃げれば大丈夫モフ」

 

一方で、トラウーマから逃げ続けていたモフルン達はどこかの部屋へと入り、トラウーマから何とか逃げ切れたと思い安堵した。

 

「……ん?」

『……ギ?』

 

だが三匹が入ったそこは、ソルシエールの部屋であった。

 

「回れ右ロマ!」

 

モフルン達は逃げようとしたが……

 

「逃がしませんよ」

 

「「「わああああああああああああ!!」」」

 

逃げようとした道の前にはトラウーマが立っており、三匹は彼によって逃げ道を阻まれてしまった。

 

 

 

同じ頃、晴夜とミラクルは歌の聞こえる方へと向かう。しかし、その途中でまた歌が聞こえなくなってしまった。

 

「歌が聞こえなくなった……」

 

「じゃあブラック達には、もう会えないルル?」

 

歌が聴こえなくなったと呟くミラクルと泣きそうなルルンを見て、晴夜は「もう少しこの辺りを探そう」とルルンが泣くのを堪えらせる。

 

「ルラララ……ルルラ……」

 

「ミラクル」

 

すると泣き出しそうなルルンを落ち着けるためにか、キュアミラクルが歌い始めた。

 

「ララルルラーー♪」

 

「……その歌、落ち着くルル」

 

「そうだな」

 

ミラクルが歌い続ける歌は、遠くにいたマジカルの耳にも届いていた。

 

「……ミラクル?」

 

そしてミラクルの歌と協調するが如く、同じように歌いだすマジカル。

 

「「ルラララルルラ♪ララルルラ♪リラルラリリラーー♪」」

 

二人がお互いの存在を知らせるかの様に歌い続ける。

すると空から光が現れ、何かを感じた晴夜達はその光に飛び込んだ。

 

「やっと会えたね!もう離れない♪なんか、前よりキラキラしてるね!」

 

「さあ手をつなごう!想いはずっと!」

 

光に飛び込んだ先で宇宙のような空間に出たミラクルはマジカルと、マジカルはミラクルと満を持して邂逅していた。

遂に再会を果たしたミラクルとマジカルは、今の気持ちを歌で伝え合いながら手を繋ぐ。

 

「無事でよかった」

 

「当たり前でしょ!楽勝よ!」

 

ミラクルとマジカルの二人が再会に喜んでいると、ルルンを抱いていた晴夜は光り輝く鏡を見つけ、その光り輝く鏡に三人は飛び込む。

そして鏡が割れるとその中からミラクルとマジカルと晴夜が飛び出し、その先には部屋の主であるソルシエールと、その部屋の隅でトラウーマに追い詰められて居たモフルンとアロマとパフが怯えていた。

 

「魔女ソルシエール!」

 

「プリキュアのみんなを返してもらうわ!」

 

「ミラクル!マジカル!」

 

マジカルとミラクルが現れた事で安心したモフルン達が、直ぐに三人の元に駆け寄る。

 

「モフルン!」

 

「よかった!無事だったんだね!」

 

マジカルとミラクルがモフルンとの再会に喜ぶと、晴夜はソルシエールとトラウーマ、ついでに何故か一緒に居る麻袋の人形に視線を移す。

 

「あんたが魔女ソルシエールか」

 

「そう言うお前が、桐ヶ谷晴夜……仮面ライダービルド」

 

「変身出来ない君が、良くここまで来れましたね」

 

『………アノ〜、トラウーマ様。アイツ実は……』

 

「後にしろ。今お前の話を聞く気は無い」

 

ビルドドライバーを装着しているが、トラウーマはまだ晴夜が自分の秘術が効いていると思っているようで。麻袋の人形もそれを指摘しようとしたが、当のトラウーマは彼の話を遮ってしまっていた。

 

「言っておくが、もう助けは来ない……」

 

その言葉を聞き、ミラクルとマジカルもソルシエールの方に視線を向ける。

 

「お前達以外のプリキュアと仮面ライダーは、既に私が捕らえた」

 

「ソルシエール。みんなを解放して」

 

「ならば、涙を渡せ」

 

「変身出来ない君なら、ここは言う通りしたほうがよろしいですよ」

 

『……イヤ、ダカラ。アイツもう既ニ……』

 

ソルシエールは捕まったみんなを解放したければ涙を渡せと言うが、晴夜は目的がわからないのに涙を渡すのには不安があるため、誘いに乗るわけにはいかなかった。

 

「やるしかないか」

 

話し合いで解決したかったが、ソルシエールは力尽くでも奪う様子。そんな思いを胸に晴夜はルルンをアロマとパフに預けると、ハザードトリガーのスイッチを押した。

 

『マックス!ハザードオン!』

 

起動させたトリガーをドライバーにセットし、フルフルラビットタンクボトルを振ってフルフルインジケーターに赤いランプが出ると共にセレクティングキャップを回した。

 

『ラビット!』

 

そのままボトルを半分に割ってドライバーに差し込み、ドライバーのレバーを回した。

 

『ラビット&ラビット!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!』

『Are you ready?』

 

すると巨大な金型『ハザードライドビルダー』とラビットラビットアーマーが出現し、ラビットのアーマーユニットが空中へ跳んでパージされた。

 

「変身!」

 

『オーバーフロー!紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!』

 

変身の叫びを放つと同時にハザードライドビルダーが晴夜の体と重なり、金型が離れてハザードフォームへと変身しビルドはパージされたラビットのユニットを飛びながら装着した。

 

「何ですと!変身した!」

 

『……ダカラ恥カク前に、教えてアゲヨウと思っタノニ〜』

 

「うわぁ〜!」

 

「凄いわね。その変身」

 

「ラビットラビットフォームな。このフォームはみんなで作り上げたものなんだ」

 

マジカルラブリーパットを継承する試練の中でハザードトリガーを克服する為にみんなで編み出した姿『ラビットラビットフォーム』へと変身したビルドは、赤い装甲を輝かせながらミラクルとマジカルの真ん中に並び立つ。

 

「涙をもらうぞプリキュア。何としてでも!」

 

そう叫んでソルシエールが振り下ろした杖の先端にある黒い水晶が怪しく輝き、上方に割れた巨大なハートが現れて降りてきた。

ビルドは素早いスピードでハートのハサミ攻撃を回避したが、ミラクルとマジカルは攻撃に巻き込まれてしまい、元のみらいとリコの姿になった。

 

「ミラクル!マジカル!はぁっ!」

 

ソルシエールは液体エネルギーのハサミを生み出してビルドに向けて放つが、ビルドは足を伸ばしハサミをはじき返し、ソルシエールを止める為に前へと突っ込む。

 

「プリキュアでないお前に、用はない」

 

だがビルドにハサミを弾かれたのを見て、ソルシエールは杖から魔力で作った紫の電流を放つ。

 

「フルボトルバスター!」

 

それに対してビルドはフルボトルバスターを呼び出すとそれで電流を防ぎ、そのまま彼女が持っている杖に向かって叩き込もうとする。

 

「……ハァ!」

 

しかし何処からともなく紫の斬撃が飛んできてビルドに直撃。

謎の攻撃を受けたビルドの前に現れたのは、オーズと共に出会った古のファントムである魔獣、アジ・ダハーカだった。

 

「アジ・ダハーカ……」

 

『アジ・ダハーカ様ァァ〜〜〜!よクおイデ下さイマシたぁ〜〜!!』

 

ビルドはアジ・ダハーカに警戒心を侍らせながら、アジ・ダハーカの登場にテンションを高まらせている麻袋の人形を見て、彼奴こそがトラウーマから聞いた麻袋の人形を作ったと言う主人なのかと思っていた。

 

「オメェ〜、まじで変身してるでねぇ〜か〜〜?」

 

「ヒャッハァァァァ!これは面白くなりそうだなぁ、クレイジーボ〜イ!」

 

「フン…………こいつから聞いた通り、変身能力を取り戻したか……まあ良い。

仮面ライダービルド、とやらの力……見させて貰おう」

 

自身の周りを飛んでいたスズメバチから視界を外して紫の双剣を構えたアジ・ダハーカはビルドに狙いを定めると、彼に向けて三つの首から一斉に紫色のエネルギー弾を放った。

 

「ふぅ!」

 

ビルドは高く飛び上がり攻撃を躱すと、フルボトルバスターを振り上げアジ・ダハーカに攻撃するが、アジ・ダハーカも手に持った剣でフルボトルバスターを抑える。

 

「くぅ!……みらい!リコ!こいつは俺が止めるから、ソルシエールは頼む!」

 

アジ・ダハーカをビルドが抑えているうちに、みらいとリコにソルシエールを頼むと言う。

 

「……小僧が………図に乗るな……!」

 

「!?」

 

中首が再びエネルギー弾を放とうとしたのをビルドはすぐに察知し、右足を伸ばし地面を蹴りながら頭の上を飛び越え、アジ・ダハーカの背後へ回って着地した。

 

「なら、これならどうだ!」

 

フルフルボトルをドライバーから外し、数回振って青いランプが出た瞬間半分に割ってからもう一度ドライバーに差し込む。

 

『タンク&タンク!ビルドアップ!

ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!』

 

レバーを回すのと同時に小型のタンクタンクアーマーが現れ、アジ・ダハーカの周囲を囲みながら攻撃する。

 

『Are you ready?オーバーフロー!』

 

「変身!」

 

攻撃を終えてユニットが宙に浮かぶとラビットラビットのアーマーがパージされ、タンクのユニットがビルドに装着される。

 

『鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!』

 

全身が青色に染まった戦車の力を持ったフォーム、タンクタンクフォームへとフォームチェンジを完了した。

 

「はん!そんなもん!」

 

「ッ!待て!」

 

アジ・ダハーカの左首が中首の制止を聞かずパンチを繰り出すが、ビルドは腕を出してその攻撃を防御した。すると、ビルドの腕部『ファイトマイトガントレット』にある戦車のローラー『ブルータンクローラー』が動き出す。

 

「くぅ!」

 

履帯での装甲削りを披露された事でアジ・ダハーカの拳にダメージを与え、ビルドから離れた。

 

「モフルン!」

 

「もう一度変身よ!」

 

「も、モフ!」

 

「「キュアップ・ラパパ!サファイア!」」

 

モフルンは二人の気持ちを汲み取って近づき。二人はモフルンの手を握り叫ぶと2人は青い光に包まれ、今度は青を基調とするギリシャ風の衣装を纏った『サファイアスタイル』と変身する。

 

「何の真似だ」

 

そしてソルシエールはまたハートを出してきた。しかし2人は一房を水色のリボンで編み込んだポニーテールとストールをひらめかせながら、海で泳ぐ様に飛び上がって回避する。

 

「!?」

 

「飛べるのか!?」

 

「「はぁ!」」

 

「くっ…」

 

驚くソルシエールとトラウーマを前に放った2人のパンチは防がれたが、ソルシエールを少し後ろへと仰け反らせた。

 

「はぁ!」

 

ソルシエールは再び割れたハート型のエネルギーを作るとそれを飛ばし、ミラクルとマジカルを捕らえ爆発させた。その一撃で、再び二人は変身解除まで追い込まれてしまった。

 

「二人共!?」

 

「よそ見すんじゃねェェェ!」

 

「ちっ!」

 

二人がソルシエールに一方的にやられているのを見て、助けに行こうとするビルドだったが、こちらもアジ・ダハーカに手を焼いていた。

 

「終わりですね」

 

「……いや」

 

「「キュアップ・ラパパ!」」

 

トラウーマが勝利を確信するも、ソルシエールは警戒心を解く事は無く。彼女の懸念通りみらいとリコは三度立ち上がり、基本フォームであるダイヤスタイルへと変身する。

 

「ほう?最初に拝見した時よりかは、何かが違う……」

 

「伝わったのよ」

 

「?」

 

だが最初にプリキュア達を監視していた時に見た姿とは何かが違う事に気付いたトラウーマがそう呟くと、何かを語り出したマジカルを見てソルシエールは眉をひそめる。

 

「みんなの想いが伝わったの」

 

「そう」

 

「どんな時でも、希望を捨てないって!」

 

「だからわたしたちは……」

 

「「絶対に諦めない!」」

 

絶対に行こうと誓ったお花見の約束。

捕まったみんなを取り戻すという誓い。

どんな敵が現れても、諦めずに戦い続ける勇気。

ここに来るまでに多くのプリキュアと二人の仮面ライダーに出会い、そして一緒に戦った事で、ミラクルとマジカルは多くのことを学び、二人の気持ちはより強くなっていた。

 

「よし……俺も!」

 

それを見たビルドは仮面の下で笑顔を浮かべながら、二人の諦めない気持ちがより強くなったと感じると、アジ・ダハーカの反撃を開始する。

 

『マグネット!』

 

まずはフルボトルバスターにマグネットボトルを装填し、アジ・ダハーカへ向けて放った。

 

「ぐうぉ!何、だと……」

「う、動けねぇ……」

 

『ラビット!ラビット&ラビット!』

 

銃弾を食らうとマグネットボトルの持つ磁力の力で体がくっ付き、アジ・ダハーカは動きを止めた。

動けない所で再びラビットラビットへとフォームチェンジし、ドライバーのレバーを回す。

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!』

『Ready go!ハザードフィニッシュ!』

 

ビルドが高くジャンプしてキックの態勢に入ると、彼の足が脚部の『ジャンプチャンプレガース』に搭載された次元伸縮バネ『ディメンションスプリンガー』の影響で伸びた。

 

「「「伸びたー!」」」

『何デ伸びタ!?』

 

『ラビットラビットフィニッシュ!』

 

伸びた足が縮んで、その勢いでアジ・ダハーカを吹き飛ばす程の勢いのライダーキックを放ち、この部屋の外へ吹っ飛ばした。

 

『ウビャァァァァァァ!?アジ・ダハーカ様ァァァァァァ!!』

 

「馬鹿な!今の彼に、あれほどの力は……」

 

部屋の外へぶっ飛んでいった主人を見た麻袋の人形の叫びが響き渡る中。トラウーマはビルドの力は今大きく抑えられて本来の力は出てない筈なのに、アジ・ダハーカを押していたという事実に酷く驚いていた。

 

「見積もりが甘かったな。俺達仮面ライダーも諦めない気持ちで戦い続ける限り、自分でも思いがけない程に力が溢れ出るんだ」

 

だが強敵と戦い続けて来たからビルドからすれば。例え自身の力を抑えたところで、自分達が諦めない限り抑える力など軽く跳ね除けてしまう、更なる力を呼び覚ます為の布石でしか無かった。

 

「黙れ……黙れ!」

 

ミラクルとマジカルの強い瞳を見て、ソルシエールは割れたハートを二人に飛ばした。

しかしそれを二人は難なく押し返した。

 

「「プリキュアトルネード!」」

 

二人は手を繋ぐとそこから竜巻を生み出し、ソルシエールを吹き飛ばした。

 

「くっ……おのれ」

 

『ルラララル~~♪』

 

竜巻を受けて尚、立ち上がるソルシエール。まだ戦おうとする彼女を前にミラクルとマジカルは構えると、またまたあの歌が聴こえた。

今度の歌は、今までの中で一番ハッキリと響いていた。

 

「くっ……止めろ!そんな歌など聴きたくもない!」

 

「ソルシエール?どうして?」

 

歌が聴こえた途端にソルシエールの様子が変わり、その事にビルドは如何してだと聞く。

するとこの場にピンクの服を着て、ハートのカチューシャを身に付けた幼い少女の姿が現れた。突然出てきた少女を見て、ソルシエールに誰なのかを問おうとするマジカル。

 

「あの子は一体……あなたは、知っているの?」

 

「お前たち……想いは伝わると言ったな。だが私の思いは伝わらなかった!」

 

「何これ?」

 

「あれは……」

 

ミラクルとマジカルが幼い少女の姿を目にしていると、歌を歌っていた女の子と一人のお婆さんが居る光景に移った。

 

「かつて私は、ある魔法使いに拾われ、弟子になった」

 

そしてソルシエールは語り始めた。何故自分が悪の道へと進んでまで、プリキュア達の涙を入手しようとしたのか。

 

「あれが昔の?じゃあ、さっきの歌は……」

 

「あの女に聞かされた子守歌だ」

 

「子守歌?」

 

本棚で埋め尽くされていた部屋とは別の場所に立っていたビルドが、今見ている少女が昔のソルシエールだと知り。ミラクルはソルシエールの口から今まで自分たちを導いた歌が彼女と一緒に居たお婆さんが歌ったとされる子守唄であると知らされる。

 

「彼女は自分の後継者を探していた。だから私は必死に修行をした。

だが……あの女は私を認めなかった!

私の魔法がいくら上達しても、究極の魔法を教えてくれなかった!それどころかいつまでも子供扱い。子守歌で寝かしつけようとする始末だ。そして結局……」

 

ビルド達は彼女の辛そうな顔を見て、あの魔法使いのお婆さんがソルシエールを遺して他界した事を悟る。

 

「なぜ教えてくれなかったのか、私の記憶の中に答えは無かった」

 

「ですから、亡くなった人を一時的に呼び戻す魔法が必要なのです」

 

「そうだ……寄越せ!プリキュアの涙を寄越せ!」

 

ソルシエールはトラウーマの語る『死者を呼び出す魔法』を完成させるべく、プリキュアの涙を寄越せと再びミラクルとマジカルに向けて割れたハートの形をした魔力の塊を放つ。

 

「「晴夜!?」」

 

しかしビルドか前に出て腕を構え、彼女の攻撃を防ぐ。

 

「ぐぅ!あなたは……あなたは先生を恨んでいるのか?」

 

ビルドはソルシエールに何故先生を恨んでいるのと質問する。

 

「当然だ!あの女は私の努力を踏み躙ったのだ!

私は……見捨てられたのだ!」

 

「そんな事ないよ」

 

ソルシエールの先生への憎しみを感じたミラクルとマジカルは、ソルシエールに対して彼女の先生の子守唄を歌ったのかを語る。

 

「考えてみて♪憎しみを滾らす前に♪」

 

「考えてみて♪子守歌はなぜ、歌ったの♪」

 

「歌ったのーー♪」

 

「「あなたに……♪あなたに……♪」」

 

「だから……♪それは……♪」

 

三人が歌いながら話し合う様子に、ビルドは出番なしと思い後ろへ下がる。

麻袋の人形は突然の光景に困惑しながら「何故歌う?」と疑問に思ったが、そんな事より自身の主人が心配なのでそっちに向かった。

 

「先生はあなたのことを♪とても愛していたはず♪」

 

「いや……♪そんな訳が無い♪」

 

「いえ……♪愛してなきゃ歌わないわ♪」

「「歌わないわ♪」」

「ルラララルルラ〜♪」

「子守歌は♪」

「ララルルラ〜♪」

「大事な人♪」

「「守るため♪」」

「歌うもの♪」

「歌うの♪ルラララルルラ♪」

「闇の中でも♪」

「ララルルラ♪」

「怖がらずに♪」

「「安らかな夢♪見れたのはなぜ?♪」」

「考えてみて♪先生はなぜ歌ったのーー♪」

 

ミラクルとマジカルは自身の考えを歌にしながら、先生がなんの為にソルシエールへ子守唄を歌ったのかを思い出して欲しいと語る。

 

「私達、あのメロディーを口ずさむと、元気が出たわ。あなたもそうだったんでしょ?」

 

「小さい時の話だ……それに、やはりおかしいでは無いか!

愛していたのなら何故、究極の魔法を教えてくれなかったのだ⁉︎」

 

「それは……」

 

「分からないけど……」

 

子守唄を歌うと元気が出ると語るマジカルの言葉を、完全に否定することは出来なかったソルシエール。だがそもそも愛してるのならば、何故究極の魔法を教えてくれなかったのだと叫ぶ。その答えはマジカルとミラクルにもわからない。

 

「それは……もしかしたら、あなたの為だからだよ」

 

「なんだと……」

 

するとビルドは自分の憶測上での答えであるものの、あの子守唄に込められた彼女の先生の言葉を代弁しようとする。

 

「きっとあなたの先生は、本当の意味であなたに魔法を理解して欲しかったかもしれない」

 

「魔法を理解……だと?」

 

ソルシエールの口から語られた話は、彼女が本当に先生から認められたくて頑張っていたのだと感じられる。

だからこそ、そんな姿を目にしたビルドはある人物と重なって見えた。

 

──何で……父さんばかり……僕だって……

 

(似てるな。兄さんに……)

 

そのある人物──晴夜の兄である桐ヶ谷巧は、父である拓人に何時も引け目を感じていた。

これはのちに兄の知り合いから聞いた事だったが、兄は父が余りにも偉大だった為に、父の研究と比較されて、時には親の七光りと馬鹿にされ、自分の研究が認めて貰えない事が続いていたらしい。

思い悩んでいた兄は父の呪縛から解き放たれようと、父以外にも母や弟にすら距離を置き始め、遂には家族を置いて家を出ていった。

晴夜は兄との思い出を育むことは愚か、彼が抱いていた苦悩を知らぬまま生き別れたのだ。

皮肉にも彼の苦悩と本当の想いを知ったのは、父がトランプ王国に転移した事で行方不明になり、エボルト達の悪事を知らぬまま協力していた兄が殺された後だった。

 

「あなたは先生に認められたい気持ちで、ずっと魔法の鍛錬していたんですよね…?」

 

「そうだ。けど、あの女は私の努力など見ていなかった……」

 

「そうじゃないよ」

 

「そうじゃない……だと?」

 

「先生は、あなたが魔法を誰かに認めて貰うための道具にしているから、教えなかったんだよ」

 

誰かに認めてもらいたい、それは人が誰しも何かをやる上で起こり得るもの。

認めもらう為には人々はどんな努力も惜しまず、自分の力を証明したいと必死になる。

 

「けど……どんなに認められたくても、心からそれが好きでいる気持ちを忘れちゃいけないんだ!」

 

「ッ!?」

 

だが例え認められる為とはいえ、それを道具にはしてはいけない。

それが好きでいる気持ちを忘れずにいる事こそが、大事なんだとビルドは思う。

だからビルドは、自分の兄もいなくなる前にそう思い直し、自分達の下へ戻って欲しかった。

だからその願いを叶えられなかった晴夜は父の計画を知った時、エボルトの犠牲になった兄を救済し、また家族全員で暮らそうと、エボルトによって犠牲になった人々を復活させるべく新世界を創造した。

…にも関わらず、兄はエボルトではなくブラッドことエピオンに殺されていた事で、最後の最後で蘇ることはなかった。

晴夜にとって兄を蘇らせられなかった事は、これからも彼を蝕むであろう後悔のひとつになるだろう。

 

「先生もあなたにその事を思い出して欲しかったから、究極の魔法を教えなかったんだと、俺は思う」

 

だからこそソルシエールには、兄の巧の様に悪い意味で外れた道を歩いて欲しくなかった。

 

「魔法を楽しむ、気持ち……」

 

ソルシエールはビルドの話を聞いて。初めて魔法に触れた事をなかなか出来ないで挫けそうになった事もあったけれど、上手くいくと先生も自分も笑っている姿を思い出した。

 

『先生はあなたの才能に嫉妬していたのですよ』

 

次の瞬間。先生が亡くなって絶望していたソルシエールの前に、トラウーマが現れた所へと切り替わった。

 

『誰…?』

 

『弟子に追い抜かれるのが嫌だから、魔法を教えなかったんですよ』

 

『まさか、そんな……』

 

『さもなくば、先生はあなたをお嫌いだったのでしょう』

 

トラウーマが先生は自分が追い抜かれるのが嫌で、ソルシエールが嫌いになったのだと彼女本人に語り。「先生は自分の才能に嫉妬した上に、嫌っていたかも」という一言にショックを受けたソルシエールの心を表す様に、頭のハートが割れたところで映像は終わった。

 

(あの言い方……)

 

ビルドはさっきの映像に映ってたトラウーマの発言に何やら不吉さを感じていた。

そして先生が弟子に越えられるのが怖くなって嫌ったと思っているソルシエールに向け、ミラクルは「そんな訳ない!」と叫びかけていた。

 

「思い出してみて!幼いあなたを、あんな素敵な笑顔にしてた先生だよ!」

 

「しかし、もう先生の顔も声も思い出せないのだ………」

 

だが今となっては当時の事を思い出せないと返したその時、こけたモフルンが背負っていた壺に入っていた魔法の杖がこぼれ落ち、先端にあるリンクルストーン・ダイヤの形をした部分が輝き出した。

 

「ミラクルライトか……?」

 

その壺の中身を見たビルドがミラクルライトと呟くと、『ミラクルステッキライト』と呼ばれるステッキが光りだし、ソルシエールの曖昧になっていた先生との思い出を確かな物へと蘇らせた。

 

『棘の影に♪』

 

『先生!私が知りたいのは、子守歌なんかじゃないの!究極の魔法を教えて欲しいの!先生ってば!』

 

『迷っても……♪』

 

そして子守歌を歌いながら、先生はソルシエールの手を取った。

 

『つなぐこの手が♪道しるべ♪』

 

ソルシエールの手を取った先生。その顔は優しく微笑んでいた。

 

「先生……何故なの先生!何故、究極の魔法を教えてくれないの先生!?

私はこんなに一生懸命にやってるのにどうして!私は.....

聞いているの!?先生ってば!」

 

何度も語りかけて先生は答えてくれない。

本当に晴夜がさっきソルシエールに放った言葉も、所詮只の仮説に過ぎない。

それでも彼女が先生に愛されてきたという事だけは、ハッキリとしていた。

 

「やめて……もう、やめて……」

 

「ソルシエール……」

 

「うっ……ううっ……」

 

「……どうやら嫌われていたというのは、私の思い違いだったようですね」

 

ソルシエールが涙を流す横で『思い違い』と呟くトラウーマに、ビルドは彼がまるでソルエールの先生に会った事があるような言い方をしている事に気付く。

 

「私は、ただ…先生に褒めて貰いたくて……だから、凄く頑張って………」

 

「分かっております」

 

そんなソルシエールの姿を見て、ミラクルは何と目に涙を浮かべていた。

 

「何で、あなたがうるうるしてるのよ」

 

「だって、だって……」

 

先生との記憶を思い出したソルシエールが涙を流し始め。彼女を見て貰い泣きしたミラクルの頬わ伝って涙が落ちると、ミラクルのお腹の辺りで『ピチャン』という音が響いた。

 

「プリキュアの涙。いただきました」

 

ミラクルが下を見るといつの間にか小瓶を持ったトラウーマがおり、小瓶の中にはミラクルが流した涙で波紋を作り出されていた。

 

「ソルシエール様。実は、プリキュアの涙は先生と会うための物ではないのです」

 

「……え?」

 

「何ですって!?」

 

「…そういう事か」

 

理解が追いつかず呆気にとられるソルシエールに、驚愕を露わにするマジカル達。

だがビルドは先の映像にあった言動から、トラウーマがソルシエールを唆して何かを企んでいると気付いていた。

 

「どういうこと?」

 

「……そもそも。ソルシエールに先生が彼女を嫌いだって吹き込んだのも、そこから生まれたソルシエールの『想いを先生にぶつけたい』って願いも、プリキュアの涙を手に入れるために起こった。

この戦いも全部、黒幕はお前だったんだろ!トラウーマ!」

 

「く、くく、くくく、ハハハハハハハッ!」

 

ビルドが黒幕はお前だと問いただすと、唐突に笑い出すトラウーマ。

 

「見事な推理ですよ。天才科学者の卵にして、あの伝説の剣士『メサイア』の力を持つ桐ヶ谷晴夜君」

 

トラウーマは自らが真の黒幕であると明かし、それどころか晴夜が伝説の剣士の力を持っていることすら知っていた。

 

「その通りです!私は以前、ソルシエール様の師匠であった先生によって力の大半を封じられてしまいましてね。

必要だったんですよ。その封印を解くために、プリキュアの涙が!」

 

「それで、先生への不安を残していたソルシエールに近づき利用したのか!」

 

「すべては、私の力を復活させるためです、よ!」

 

晴夜の追求にトラウーマがそう叫びながら蹄で床にあった魔法陣を踏むと、その魔法陣が赤く光りだし。眼帯で隠されていた左目に描かれた魔法陣に、プリキュアの涙によって完成した秘薬が流れ込んでいった。

 

「来たぁ!来た来た来たぁ!」

 

そして、どんどんと巨大化し始めるトラウーマ。

 

「大きくなるロマ~~!」

 

「くっ!このままだと天井が崩れる!」

 

「早く外へ行きましょう」

 

ミラクル達はこの部屋から出るためにモフルン達妖精を抱いて急いで出て行こうとすると、ビルドがソルシエールに声をかける。

 

「ソルシエール!あんたも!」

 

ビルドは手を伸ばすが、ソルシエールは膝を折って下を向いたまま動く様子がない。

やがて瓦礫が散乱し、彼女の姿が見えなくなった。

 

「くぅ!……みんな、集まって!」

 

ビルドはソルシエールが無事であることを願うと、ここから逃げようとするミラクル達を呼び止めて集まる様に叫ぶ。

 

「えっ?晴夜君?」

 

「どうするの!早くしないと!」

 

こんな時に集まってと言うビルドに疑問を抱いたミラクルに、ここを早く出ないと押しつぶされてしまうと叫ぶマジカル。

しかしビルドは冷静に、このピンチを切り抜ける秘策がある事を説明する。

 

「今からこれを使って、ここから脱出する」

 

そう言ってミラクル達に、全てのボトルの成分を含んだ最強のフルボトル『ジーニアスボトル』を見せて構える。

 

『グレート!オールイエイ!』

 

ジーニアスボトルが光りだし、音声が鳴り響くとボトルの真ん中のキャップを回して、腕を高々と上げドライバーに差し込む。

 

『ジーニアス!』

『イェイ!イエイ!イェイ!イエイ!』

 

ジーニアスと鳴り響く音声と共にレバーを回し。晴夜の周りから加工設備プラントが作られていくと、そこから何本ものボトルが晴夜の後ろを囲んでいった。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

叫びと共にビルドマークが晴夜の胸に出現。白いボディーが装着されると同時に後ろを囲むボトルに成分が注入され、プラントから射出された六十本のボトルがビルドの全身に装填される。

 

『完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!』

 

こうして晴夜は、六十本のボトルの力全てを使うことが出来る、かつて兄が完成させた最強のビルド『ビルドジーニアス』へと変身した。

 

「はぁ!」

 

ビルドの体に装填されている六十本のボトルが全て光り出し、ミラクルとマジカル、モフルン達を囲む。

 

「な、何なの?この魔法?」

 

「魔法じゃないよ。これが俺の力……科学の力さ」

 

囲まれた光はバリアのようになり、降ってくる瓦礫からみんなを守る。

 

「とにかく二人はモフルン達を連れて、外に出るんだ!」

 

ビルドが瓦礫を防いでいる間にミラクルとマジカルは妖精達を連れて、ソルシエールの屋敷から脱出させた。

 

「よぉし、俺も!」

 

「「「待て!仮面ライダー!」」」

『オレ達の事ヲ忘れてんジャネェー!』

 

「!?」

 

二人が妖精達と脱出したのを見てビルドも脱出を試みようとするが、制止する様にアジ・ダハーカが麻袋の人形と再度ビルドの前に現れた。

 

「また、お前らか……」

 

ビルドは流石に今はこいつらと相手をしてる場合ではなのだが、戦うのならば仕方ないと思っていた。

 

「お前のような……小僧に……」

 

そして中首は首元に青筋を作り、怒っていた。

ビルドのようなただの青二才の子供に吹き飛ばされた……即ち力比べに負けたという事実は、壁にぶつかった後呆気にとられて放心状態になってしまう程、彼らにとって耐え難いものだった。

 

「しかも……『また、お前らか……』だと……?

……貴様は、私達を……何だと、思っているんだ……ッ!」

 

だが中首の怒りを助長させるものは、負けたと言う事実だけでは無かった。

彼にとって一番許せない事……それは『自分が下に見られる事』。

封印される前の古の時代、彼らは常に頂点に立っていた。

そんな彼らにとって人間は、自分達の食糧である『家畜』。家畜たる人間達は自分達に恐怖し、黙って食われる事だけを心待ちにしていた。

そして自身を封印した魔法使いでさえ、その命を削ってまで弱体化させた上で封印させると言う、『格下が自分達格上を必死に倒す』といった構図であった。

 

「許さん………絶対許さんぞ家畜どもがァ!!私達を下に見た、貴様だけは………ッ!

貴様を生き殺しにした後、油でじっくり茹でて、足先からじわじわと喰らってやる……!

必ず貴様に、生き地獄を味あわせるぞ…覚悟しろ……ッ!!」

 

だがビルドが自分達に言った言葉は、『格上あるいは同列が自身達に言う言葉』。

自身と同じ種族が言うならば、最悪長年生きた熟年の魔法使いならばまた許容できた。

しかしビルドは、自身の一割も生きていない若造にして、道具が無ければ何も出来ない家畜の代表格たる人間。

そんな者から下に見られたと言う事実は、普段は寡黙で知性的な中首でさえ我慢出来るものでは無かった。

 

「いいでしょ!」

 

「バットガイ……」

 

「あなたに力をあげましょう」

 

そんな怒りに燃えるアジ・ダハーカへ、闇の力を未だに解放中のトラウーマが力をあげようと言う。

 

「おめぇ〜プリキュアの涙ってのは、お前の力を復活させるもんだべか〜?」

 

「つまりはよォ〜俺達も、その涙があればァ〜!」

 

「……封印される前の、力を………取り戻せるのか?」

 

『アァ………アジ・ダハーカ様の悲願でアル、本来の力を……

オイビルドォ!さっきアジ・ダハーカ様ガぶっ飛ばサレタのは、大昔の魔法使いに封印された所為で本調子じゃナカッタからダ!

今のコノ方の力ハ本来の半分以下!本来のノ力を取り替えシタラ、オマエなんかイチコロなんダゼ!』

 

このアジ・ダハーカもトラウーマと目的は同じだったようだが、プリキュアの涙により力が戻るとは考えてはなかった模様。

 

「涙によって解放されるのは私の力だけです。ですので、あなた達は……」

 

だがプリキュアの涙で力が戻るのはあくまでトラウーマ自身だけだと話すと、トラウーマはあるものを二つ見せた。

 

「それは……俺と龍牙の……」

 

それはビルドの持つ闇の力を持つ『シャドウボトル』、もう一つは相棒の分身とも言えるボトル『シルバードラゴンボトル』という、二本のハザードレベル7のフルボトルだった。

 

「古の時以上の力を渡しましょう!」

 

トラウーマは二本のボトルをアジ・ダハーカの体内に飲み込ませた。

 

「なっ!?」

 

ビルドは自分達のボトルが飲み込まれたのを見て驚いていると、アジ・ダハーカの体から変化が起こり始める。

 

「「「あぁぁぁ……アァァァァァァーーーッッッ!!」」」

 

「うぅぅぅ……!」

『ホアァァァーーー!?』

 

アジ・ダハーカから放たれる闇のオーラに、ビルドはその体を後ろへと飛ばされそうになる。麻袋の人形に関してはぶっ飛ばされ過ぎて、屋敷の外に落とされてしまった。

 

「「「来たぞ!来たぞ!まさにあの頃の───いや!それ以上だぁぁぁーーー!」」」

 

ボトルを乗り込んだアジ・ダハーカはその姿を変えていくと、腰から下は棘の生えた長い尻尾へと変化し、背中からは巨大な翼が現れ。体も徐々に大きくなっていき、当に巨大な三首龍と言うべき姿へとなる。

 

「これは……」

 

「「「さぁ、小僧!」」」

 

形態変化が終わると三つの首が口を開き、そこからビルドに向かって紫の炎が一斉に放たれた。

 

 

その頃。脱出したミラクル達は魔法の箒の上で、崩壊していくソルシエールの屋敷を見つめていた。

 

「なにこれ……」

 

「空間が……」

 

しかし屋敷の崩壊と連動する様に、ミラクル達がいるこの世界の空間も壊れ始めた。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」

 

そして鏡でも割れたかの様な音が響くと、遂に空間の崩壊によって周りの世界が屋敷と一緒に爆発し、ミラクルとマジカルに加えて妖精達も爆発に巻き込まれてしまった。

 

◆ ◆ ◆

 

とある町道にて、二人の親子が歩いていた。

買い物の為に外へ出ていた母親は物が詰まったエコバック片手に、自身の手を掴んでスキップしている娘を微笑ましく見ていた。

 

「……ねぇママ、あれなぁに?」

 

だが明るかった空が突然闇に包まれ、娘は暗くなった空を不安そうに見上げていた。

母親はと言うと、黒く染まった空に現れた巨大な魔法陣から黒煙と共に何かが落下してきている事に気付いたが、それに続くかのようにミラクルとマジカルが落下して来た事までは気付かなかった。

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!」

「ヤバイ!ヤバイ!落ちる!」

 

一方ミラクルとマジカルは、爆発で魔法の箒がどっかに飛んでってしまった状態では宙を保っていられず危機感を覚えた。

しかし、彼女達の落ちていく先に二つの円盤が現れた。

 

「それに乗るんだ!」

 

「「!?」」

 

その声に従い、ミラクルとマジカルはその円盤に乗り込む。

 

「浮いてる……」

 

「!?モフルン達は……」

 

「ミラクル!マジカル!」

 

マジカルがモフルン達はどこに行ったのかと辺りを見渡すと、後ろの方からモフルンの声が聞こえる。

 

「「晴夜(君)!」」

 

二人が振り返ると、そこにはモフルン達を抱えるビルドがいた。

とにかく一度整理を知るため、森林公園がある地上へと降りる。

 

「ありがとう」

 

「今の晴夜が出したの?」

 

「うん。間に合ってよかったよ」

 

それでは読者の皆に、ここまでの経緯を説明する。

アジ・ダハーカがビルドに火炎放射を放ったあの時、ビルドは咄嗟にライトボトルの力で目を眩ませると、ローズとロックの力で口を塞ぎ発射を防いだ。

その隙に外へと出てミラクル達を見つけ後を追いかけたビルドは、一緒に落とされた二人に向けてUFOボトルの力で二つの円盤を渡し、自分は空を飛べるボトルの力で宙を保ちつつモフルン達を救出した。

 

「うわぁ〜!凄い〜」

 

「晴夜。あんた何者なの?」

 

二人より長く戦っていたから戦い慣れしているとは聞きていたが、流石にビルドの手際の良さには驚く。

 

「俺?俺は……てぇんさい科学者の卵にして仮面ライダービルド、桐ヶ谷晴夜だよ」

 

自分の事を天才科学者の卵というビルドに、ミラクルとマジカルは頭にクエスチョンマークを浮かべながら沈黙を生じさせる。

 

「……それよりも来るよ」

 

「「「さっきはよくも!」」」

 

ビルドが魔法陣の方を見ると、魔法陣からビルドを逃して追いかけてきたアジ・ダハーカが怒りを露わにしながら現れた。

 

「クレージーボーイ!このぉ!」

 

左首は口の中で複数の毒虫や毒蛇などを召喚すると、それをビルド達に向けて放ってきた。

 

「させるか!」

 

『フルフルマッチデース!』

 

ビルドがフルボトルバスターを取り出してフルフルラビットタンクボトルを装填すると、フルボトルバスターから虹色に輝くエネルギーが形成されていく。

 

『フルフルマッチ ブレイク!』

 

ビルドがトリガーを引き、虹色に輝くエネルギー弾が毒蛇と毒虫に向けて放って撃ち落とす。

 

「マジカル!」

 

「わかってるわ!晴夜はあいつを!」

 

「あぁ!」

 

ミラクルとマジカルは残った毒虫達を倒す為に向かう。そしてビルドはアジ・ダハーカを抑える為に飛び立つ。

 

「おのれ……ッ!ペッ!ペッ!ペッ!」

 

今度は真ん中の首が毒弾をビルドに向けて放つ。

ビルドはアジ・ダハーカの攻撃をフルボトルバスターで撃ち落とすか躱すを繰り返し、そのまま接近する。

 

「調子に乗るんでねぇぞ!」

 

右首はそう言って顔を動かすがしかし、右首が向いたのはビルドではなく町の方だった。

 

「な、何を!」

 

「こうするだ〜よ!」

 

右首は紫色のエネルギーを口内に貯めると、高出力の炎をビームの如く町の方にいる人々に向けて放った。

 

「「ッ!?」」

 

「バカやろォ!」

 

ビルドはすぐにボトルの力で高速スピードの移動を行い、一瞬にして地上にいる人達の前に回り込むと、ダイヤモンドボトルの力でシールドを作り紫炎のビームから町の人を守る。

 

「ぐぅぅ!」

 

ビームの攻撃を耐えるビルドだったが、追い討ちをかけるように真ん中の首が毒弾をビルドに向けて放つ。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

シールドの外を狙って放った毒弾が直撃し、ビルドの体が傾き出す。

 

「くぅ!」

 

それでも耐え続けるが、体から力が抜けていくのを感じた。おそらく、さっきの毒弾が体内を巡っているかもしれない。

 

(このままじゃ……)

 

ここで引いたら多くの人が被害を受けるそれは避けたい。しかし毒がビルドの体を巡り、限界が近づいてきていた。

 

「あなたに届け!マイスイートハート!」

 

「!?」

 

しかしビームは別に放たれたものにより、かき消された。

 

「晴夜!大丈夫!」

 

「もしかして……マナ」

 

ビルドの限界の危機に来てくれたのは、彼にとって大切な存在であるキュアハートだった。

 

「無事だったんだ……うぅぅぅ!」

 

「晴夜!無理しないで!」

 

「だ、大丈夫……すぐに……」

 

ビルドはジーニアスボトルの力で、アジ・ダハーカから受けた毒弾の毒をすぐに解毒した。

 

「はぁ、はぁ……」

 

しかし、幾ら解毒しても体にそれなりにダメージは残る為に、一度変身解除する。

 

「ちっ……!まだ生きて、いるか!」

 

中首が毒を受けてまだ晴夜が無事だと知ると、アジ・ダハーカはまたしても口から毒虫に毒蛇を放つ。

 

「プリキュア!ピンクフォルテウェーブ!」

「プリキュア!ハッピーシャワー!」

「プリキュア!ハートフルエコー!」

 

だが三つの光が晴夜の前に現れ、毒虫達を浄化した。

 

「お待たせしました!」

 

「晴夜君!大丈夫!」

 

ブロサッムにハッピー、ピーチ、メロディ、エコーの五人も現れた。

 

「オメェら〜!何でここにいるんだ〜よ!」

 

「残ったクレイジーガールは、捕まってるんじゃなかったのかよォ!」

 

右首と左首は現れた四人を見て、コピー達の爆発で捕まったのではないかと騒ぐ。

 

「チッ……ならば、纏めて始末するのみ!」

 

「そんなことはさせない!」

 

そこへフローラが現れてパンチを繰り出し、アジ・ダハーカは腕を前に出して防ぐ。

 

「「「ハァァ!」」」

 

その隙にアジ・ダハーカの背後に、マーメイド、トゥインクル、スカーレットといった三人のトリプルキックが炸裂した。

 

「他のみんなも無事だったのか!」

 

「ブロサッム!ハッピー!」

 

「ハート!エコー!みんな無事だったの!」

 

ミラクルとマジカルはみんなが無事だと知ると、晴夜に駆け寄る。

 

「晴夜君!」

 

「あなた大丈夫なの!」

 

ハートに支えられながら片膝を折って座っている今の晴夜は、ここまで生身の戦闘と変身による連戦による疲れ、毒の攻撃によりかなり体力を減らしていた。

 

「大丈夫だよ……少したらもう一度戦うよ!」

 

まだ立つのは辛いが体力が少しでも戻り、次第にもう一度戦うつもりらしい。

 

「後輩が無理すんなよ!」

 

「それにライダーは、君一人じゃないよ!」

 

だがそんな晴夜の前に、仮面ライダーフォーゼと仮面ライダーオーズの二人が現れた。

 

「映司さん……それと……」

 

「俺は仮面ライダーフォーゼ!お前の先輩ライダーで、ダチになる男だ!」

 

弦太郎は胸に手を当てて、拳を晴夜に向けて自己紹介する。

同時に晴夜は、ハート達が無事な理由を理解した。きっとこの二人が、みんなを守ってくれたのだと。

晴夜達がプリキュア四人と仮面ライダー二人と対峙していると、マジカルが魔法陣から出て来た黒煙の正体に気付いた。

 

「なんなんの、あれ……?」

 

「無に………すべてを無に……」

 

黒煙の中からは、ソルシエールの屋敷を取り込んだのか、建物上部からは漆黒の巨大なウマの頭が生え、下部には複数の足がある。言うなれば、要塞と馬が合体したかのような姿……トラウーマ本来の姿である『闇の王』が現れた。

闇の王は体の壁面から突き出た砲台で闇のエネルギーを放つと、その闇によって町がとりこまれていき、人々は慌てて逃げだす。

 

「町が闇に飲まれてる……」

 

「みんな、行くよ!!」

 

ミラクル達が闇の王の暴挙を阻止すべく動き出す中、残った屋敷の一部に取り残されたソルシエールは闇の王を止めようとした。

 

「やめろトラウーマ!! なぜこんなひどいことを……」

 

「ひどい?貴様がそれを言うのか⁉︎」

 

「何!?」

 

「自分がやってきたことを思い出すがいい!」

 

ソルシエールはトラウーマ……否、闇の王の言葉を聞き。自分のやっていたこと……自分の願いを叶える為にプリキュアと仮面ライダーを襲ったを思い出し、彼女達彼らを傷つけた事を後悔した。

 

「私といったいどこが違う?どこが違うというのだ!」

 

闇の王の言葉に、ソルシエールは言い返すが見つからなかった。

だが彼女が犯した『罪』という変わらない事実に対し、真っ向から否定する者が居た。

 

「違う!」

 

晴夜が闇の王とソルシエールに向けて違うと声を上げて叫ぶ。

それに対してオーズとフォーゼも変身解除し、闇の王を睨みつける。

 

「やれやれ、あなたも物好きですねぇ。桐ヶ谷晴夜君、如月弦太郎君、火野映司君」

 

「どういう意味だ。何が言いたんだよ」

 

晴夜がそう問いかけると、アジ・ダハーカが闇の王に並んでソルシエールを塵屑を見る様な目で見下す。

 

「フン…………そこに居るソルシエールは、お前達にひどい事をした。

そんなクズ、助ける価値もないだろ……」

 

「正しく文字通り、バッドガールと俺が呼ぶだけはあるよなぁ〜?」

 

「そ、それは……」

 

「そいつは私達と同じ、他人を傷つけ利用した、言わば私と同類。

あなた達にとっては、倒すべき敵ではないのですか?」

 

その言葉に反論しようとしたソルシエールだが、彼女には出来なかった。

自身には、彼らの言葉に反論する資格など無いと理解しているが故に。

 

「いや、それは違うな」

 

「何……?」

 

だが弦太郎を始めとしたライダーやプリキュア達からみれば、ソルシエールとトラウーマには決定的に違うものがあった。

 

「ソルシエール。確かにあなたは自分の思い違いで、みんなを傷つけたかもしれない……」

 

晴夜の言う通り、確かにソルシエールは人々を傷付けたという罪を犯した。

 

「けど彼女は、先生に認めて貰う為に、ずっと一人で頑張ってきた。でも、先生との間に齟齬があったせいで、小さな不安が生まれた。

それは、先生は自分を愛していたのか?っていう、小さな疑問だった」

 

「あんたはその答えが見えなくて、迷っていたはずだろ?」

 

だが映司と弦太郎を始めとした全員は、彼女の行動は先生を想うが故に起こった事だと理解していた。

 

「その彼女をそそのかし、生き返らせるためだと嘘をつき、みんなの過去を利用し、他人の願いを利用し踏みにじったのは、お前だ!」

 

「「「闇の王!トラウーマ!」」」

 

「桐ヶ谷……晴夜、如月弦太郎、火野映司………」

 

だからこそソルシエールの願いを利用し、先生への思いを捻じ曲げた闇の王……トラウーマは許す事が出来ないと揃って叫ぶ三人の言葉に、俯いていたソルシエールの顔が上がる。

 

「……やはり仮面ライダーとやらは、異常者の集まりだな。

こんな小娘の為に怒るなど、狂っているとしか言いようが無い………」

 

しかしアジ・ダハーカはそんな彼ら仮面ライダーの叫びを下らないものとして一掃し、闇の王は三人が言い放った言葉に笑いが込み上げてきていた。

 

「く、くくくく!許さない?はははははははっ!!

もはや、闇の力を取り戻した私に!敵などいない!」

 

闇の王は自ら取り戻した力を前に敵はいないと叫ぶが、この三人がそんな言葉に負ける筈がなかった。

 

「そんな事で諦めるかよ!」

 

「俺達はこの手で明日を掴む為にも!」

 

「お前なんかに、絶対負けない!」

 

例えどんなに強大な敵でも、敵の数が多くても。仮面ライダーは、この世界の自由と明日をもたらす為にも、絶対に退かない。退く訳にはいかないのだ。

 

『そうだよ』

 

「……えっ?」

 

「晴夜?」

 

突然、覚悟を決めた晴夜の耳に女性の声が聞こえた。

 

「みんな〜〜!」

 

今度はみんなの耳に幼い子の声が聞こえ、上を見上げるとそこから一人の妖精が現れた。

 

「「はーちゃん!」」

 

「はーちゃん?」

 

それは『はーちゃん』と呼ばれる、頭周辺に5つの花飾りを身に付け、背中から4枚羽を生やした女の子の妖精だった。

その妖精は晴夜に近づくと、「あなたがせいや?」と聞きかけた。

 

「そうだけど……」

 

「それよりはーちゃん!今までどこにいたの?」

 

実はミラクル達二人が人間界でプリキュアについて調べる際、はーちゃんも連れて行こうとしていたが、どういうわけかはーちゃんの姿がなかったらしく。その理由をマジカルは聞こうとしていた。

 

「この人が、はーちゃんを呼んだの」

 

そう言うはーちゃんの後ろには一人、鳥の様なモノと一緒に誰かがいた。

 

「久しぶりだね。ビルドの坊やにマナ」

 

「ベベル……」

 

「お、おばあちゃん……」

 

紫のバンダナを身に付けたそれは、かつてビルド達の前に現れたマシューと呼ばれる存在によって皆が思い出の世界に囚われていた際。シャルル達と共にマナ達を救う手伝いをしてくれた妖精にして、マナの祖母の魂そのものでもある存在、ベベルだった。

 

「久しぶりだね。坊やに、これを返しに来たんだよ」

 

「……アトミックウイング」

 

久し振りの再会に微笑みながらそう語るベベルの背後から現れたのは、マシューと未来を守る為に使用したアイテム『アトミックウイング』。

 

「この子はずっと、マシューの心を守ってくれた。

そのマシューから、今度は君を守って欲しいと言われたのさ」

 

あの世に居るであろうマシューの想いを受けつつ、晴夜は翼を羽ばたかせて近寄るアトミックウイングを掴む。

 

「あの闇を払うには、君とその子じゃないと出来ないからね。

……頼むよ。みんなを……マナを守る……仮面ライダービルド」

 

「ベベル・・・ああ」

 

ベベルから託されたアトミックウィングを手に取り、晴夜は起き上がり前へと進む。

 

「映司さん、弦太郎さん。行きましょう!」

 

「おぅ!任せろ!」

 

「あぁ。俺達仮面ライダーは助け合いだからね」

 

「……マロ。君も一緒に戦ってくれ」

 

マシュー……マナの飼い犬だった『マシュマロ』の想いも詰まったガジェットを握る晴夜。

近くに居なくても一緒にいる、そう思わせてくれると信じながら。映司や弦太郎と一緒に闇の王を見る。

 

「行くぜ!」

 

弦太郎は全てスイッチの集合体である、上部に大きな装置が付いた青いスイッチ『コズミックスイッチ』を取り出す。

 

「映司……これを使え」

 

そして映司の横にアンクが現れると、彼の体内から二つのコアメダルと更にもう一枚コアメダルを投げ渡した。

 

「アンク……それが、お前のやりたいことなんだな!」

 

三つの赤いメダルを手に取ってアンクの意思を受け取った映司は、笑顔を浮かべたアンクに同じく笑顔で返しながらお互いに笑い合うと、三人は変身の準備を終えて並び立つ。

 

「さぁ、闇の王。実験をはじめようか〜!」

 

『マックス!ハザードオン!』

 

いつもの決め台詞を言いながら、晴夜はハザードトリガーのスイッチを入れて起動するとドライバーのビルドポートに装填。アトミックウイングガジェットに金色のボトル『サジタリアスフルボトル』を差し込む。

 

『アトミックサジタリオ!』

 

映司はアンクから授かったタカ、クジャク、コンドルの三つのコンボの赤いコアメダルをドライバーに入れる。

3枚のメダルが投入されるとバックル部分を斜めに傾け、スキャナーを握ると構えと映司はオースキャナーを右からスライドさせる。

 

『コズミック!』

 

弦太郎は上部に大きな装置が付いた青いスイッチ。40番のスイッチである『コズミックスイッチ』を起動し、フォーゼドライバーに装填。

 

『コズミックオン!』

 

三人がそれぞれドライバーを操作し、晴夜にはハザードライドビルダーとサジタリアスのアーマーユニットが現れた。

 

『Are you ready?』

 

「「「変身!!」」」

 

そして三人が同時に叫ぶと、彼らの体にそれぞれ違ったエフェクトが纏っていった。

 

『タカ!クジャク!コンドル!タ~ジャ~ドルゥ~~!』

〈パァァァーーーーーン!〉

『オーバーフロー!金色に輝く翼!アトミックサジタリアス!ヤベーイ!カガヤーケ!』

 

オーズは通常のタカヘッドから進化した頭部『タカヘッド・ブレイブ』と、胸にはフェニックスを思わせる紋章が刻まれた金の縁付きのオーラングサークルが装着された、赤いメダルのコンボである『ダジャドルコンボ』。

フォーゼは右足と左足と左腕のモジュールデッカーの色が銀となり、アストロスイッチのナンバープレートがあるスイッチングラングが付いた胸部装甲が目を惹く、コズミックエナジーをバリア状に纏ったお蔭で全体的に青くなった姿『コズミックステイツ』。

ビルドはハザードフォームに黄金の輝きを放つサジタリアスのユニットが装着されたフォーム、『アトミックサジタリアス』へと変身を完了する。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

ビルドが決め台詞を叫び、三人はアジ・ダハーカと闇の王へと挑む為に飛び立った。

 

「まだ来るのか……!」

 

アジ・ダハーカの左と右の二本首が口中で何かを溜め込むと、そこから再び毒虫達が現れた。

 

「今の我々の前では、そんなモノこけ脅しだ!」

 

無数の毒虫がビルド達に襲いかかるが翼を広げて躱し、ドライバーのレバーを回す。

 

『Ready go!ハザードフィニッシュ!』

 

ビルドの右手に黄金に輝くエネルギーが溜まって行く。

 

『アトミックフィニッシュ!』

 

高速で放たれたライダーパンチは、一瞬にして全ての毒虫達を破壊した。

 

「速い……」

 

エコーの目にも止まらない高速拳は、アジ・ダハーカの視界に捉えられる事なく喰らい続けた。

 

「おい!あのクレイジーボーイ、なんかさっきよりも強いぜ⁉︎」

 

「こうなったら、また町を狙うだよ!」

 

左首がビルドの予想以上の速度に驚いていると、右首がまた町の方にビームを放とうした。

 

「させるか!ハァッ!」

 

「オラァ!」

 

だがそこへ右首に突撃したオーズは背中に孔雀を模した羽を展開して光弾を放つ『クジャクフェザー』を右首に向けて発射して怯ませ、更にフォーゼがロケットに柄とレバーがついた大剣型モジュール『バリズンソード』をブーストモードのまま右首の顔に叩き込み、ビーム発射を防いだ。

 

「凄い……」

 

「これが仮面ライダーの力……」

 

ミラクルとマジカルは全力で挑む三人の仮面ライダーの力を目の当たりにしていると、ハートが祖母であるベベルに近づく。

 

「おばあちゃん!私も何か出来ない⁉︎」

 

そして今戦っているビルド達を見ながら、ハートはビルド達の力になりたいと叫ぶ。

 

「あたし、ずっと晴夜に守ってもらってばかり……」

 

ブラッド帝国事変の時に操られた自分を、彼は傷つきながらも諦めず助けてくれた。

だが対するハートは助けて貰っているばかりで、いつも晴夜に何も返せていない。

 

「守られてばかりじゃダメなの!私も晴夜を……みんなを守りたい!」

 

守られてばかりじゃない、一緒に並んで前に進みたいという彼女の決意を見せるハート。

 

「マナ。それはあの子も同じはずだよ」

 

そんな彼女にベベルが近づき、ハートの手を握る。

 

「あの子もマナとみんなを守りたい!その思いで今戦ってるはずだよ」

 

ベベルはそう優しく語りながら、アジ・ダハーカと戦っているビルドを見つめる。

 

『フルボトルブレード!』

 

「はぁぁ!ハァ!」

 

ビルドのフルボトルブレードと、アジ・ダハーカの両手に持つ剣がぶつかり合っていた。

次の一撃でビルドが一旦アジ・ダハーカから離れる姿を目にしていたベベルは、ハートに視線を戻すと彼女の名前を呼ぶ。

 

「マナ。お前はその思いを、どう強くするんだい?」

 

「あたしの思い……(あたしは、晴夜とみんなを……大切なものを守りたい!

だから……)」

 

ハートが自分の想いを心の中で呟くと、ビルドのホルダーにある二本のボトルが光りだした。

 

「ラビットボトルとロイヤルボトルが……」

 

ビルドのボトルホルダーで光ったラビットボトルとロイヤルボトルは、勝手にビルドの元を離れてハートの方へと飛んで行った。

 

「晴夜のボトル?」

 

ハートは手に収まった二つのボトルを握ると、二つのボトルは一つとなってより一層強く光り出す。そして光が収まると、彼女の手には白い兎型の宝石の形をしたラビーズ『ロイヤルラビーズ』が現れていた。

 

「新しいラビーズ……シャルル!」

 

「わかったシャル!」

 

「ロイヤルラビーズ!セット!」

 

ハートはロイヤルボトルから変わったロイヤルラビーズをコミューンにセットすると、眩い光でハートの身体を包んでいく。

 

「キュアハート!ロイヤルモード!」

 

そしてキュアハートの格好が、やや薄めのパールピンクのコスチュームに、羽と兎の耳を足した様な金の線が追加された白っぽいマフラー。ハートの髪飾りと一緒に金の兎型の髪飾りを付けた姿へと変わった。

 

「変わった……」

 

「何だか、ビルドに似てるような……」

 

キュアハートがロイヤルモードへと変身を遂げた光景を目撃したミラクルとマジカルは、その姿が何処と無くラビットラビットになったビルドを連想させるモノになった事に、驚きを隠せなかった

 

「おばあちゃん!」

 

「言っておいで!」

 

「うん!」

 

新しい姿になったハートはベベルに笑みを浮かべながら、地面を蹴り上げて飛び立った。

 

「おのれ………!ならば、もう一度苦しめ!」

 

一方ビルド達と戦っていたアジ・ダハーカは、三つの首から同時にビルド達に毒の弾を放つ。

 

「危ない!」

 

「来い!」

 

オーズとフォーゼがフローラ達の前に出て躱すように促し、フォーゼがエコーの手を握り飛んで躱した。

 

「!?」

 

ビルドもすぐ様躱そうとするが、毒弾の一つが直撃しかける。

 

「はぁ!」

 

もはやこの距離では防御すら間に合わないと思ったビルドの前にハートが現れると、手を弾に向けている広げて気合で吹き飛ばしビルドを守った。

 

「ハート……その姿」

 

「晴夜のボトルの力だよ」

 

ハートがビルドのボトルの力だと言うと、自身が持つラビットボトルとロイヤルボトルから誕生した新しいキュアハートである事に気づくビルド。

 

「愛を無くした悲しいドラゴンさん!このキュアハートがあなた達のドキドキ!取り戻して見せる!」

 

そして彼女は胸の近くまで手で作ったハートマークを移動させながら、いつもの決め台詞を叫ぶ。

 

「小娘が……邪魔をするな!」

 

「ハート!」

 

「大丈夫!見てて!」

 

アジ・ダハーカが手に持つ剣で攻撃を仕掛けるも、ハートは落ち着いた様子で地面を蹴って剣を避ける。

 

「何!?」

 

翼を羽ばたかせて空を飛んでたアジ・ダハーカは、今の自分よりも高い場所にハートが強靭な脚力を持って跳んでいることに驚くも、気を取り直して紫の火炎弾を無数に放つ。

だがロイヤルモードになったハートはラビットの力で強化された脚を活用し、空気そのものを連続で蹴ることで空気を足場にして空を高速で飛んでいた。

 

「タァァ!ハァ!」

 

彼女は宙の上を走る様に火炎弾を避けると、そのスピードのまま移動してアジ・ダハーカの懐に入って腹部を右脚で放ったキックを直撃させる。

更には中首へアッパーを喰らわせ、アジ・ダハーカをダウンさせた。

 

「凄え〜……」

 

ロイヤルラビットで変身している時の力と同じくらい、あるいはそれ以上のスピードを見せつけるハートの力に、思わずビルドも絶賛。

 

「うぐぅ……どういう事だ……私達が封印される前に君臨していた時代には、貴様らの様な奴らはいなかった……

それなのに……貴様らの何処に、そんな力を秘められているというんだ……!」

 

アッパーを喰らったアジ・ダハーカはと言うと、ダウンから立ち直りながらハートの突然なパワーアップを苛立ちの篭った目で睨み。只の家畜である筈の人間が、何故ここまでの力を得たのだと疑問視していた。

 

「当たり前でしょ!私達は貴方達と違って、皆んなと未来へ生きているんだから!」

 

「「「………なんだと?」」」

 

「あぁ、ハートの言う通りだ。俺達人間は色んな歴史から成功や失敗を沢山学び、何度転んでも常に進化続けた。その中で人の価値観も、大きく変わっている。

それに比べて、過去の失敗から何も学ばず、過去の価値観ばかりに縋っているお前らなんか、俺からすれば“時代遅れの蛇野郎”だ!」

 

「「「ほざけェ!!」」」

 

だがビルドにとって、かつて魔法使いによって封印されても尚人間を警戒せずに侮り続けたアジ・ダハーカは、今も進化し続けている人間に勝てるわけが無いと考えていた。

 

「プリキュア!仮面ライダー!」

 

「ウオオオオオオオオ!!」

 

アジ・ダハーカと戦う仮面ライダーとプリキュアに叫びかけるソルシエール。

だが遂にアジ・ダハーカとの戦いの均等を崩さんと闇の王の攻撃が始まり、大砲から放たれた闇のエネルギーによってミラクル達やビルド達が吹き飛ばされそうになる。

 

「やめろ!」

 

ソルシエールは闇の王を攻撃するが、今の彼女の魔法では闇の王に通用しなかった。

 

「無駄だ。もはやお前には何もできん」

 

「くっ……」

 

「どうするモフ?」

 

「このままじゃ世界の終わりロマ!」

 

モフルンやアロマ達が慌てふためく中、闇の王は更に世界を闇で覆うとしていた。

 

「私は……いったい……どうすれば…」

 

そして倒れたキュアミラクル達も立ち上がろうとするが、既に何時間も戦い続けていた為に彼女らの体は限界を迎えていた。

 

「くっ……早くしないと」

 

「はやく……みんなを……」

 

パワーアップしてようやくアジ・ダハーカと闇の王と戦う事が出来ているビルドとハートも、すぐに闇の王を倒さないといけない事を理解しつつ。ここまでの戦いで徐々にガタが出始めていた。

 

 

 

「晴夜!クソォ!」

 

「こんなところにいるわけいかねえ!」

 

「このぉ!このぉ!」

 

それを残骸となった屋敷にある牢屋から外の様子を見ていたみんなは格子を突き破ろうとし、外で戦うビルド達に加勢に行きたい気持ちが抑えられなかった。

 

 

 

「寝てる場合じゃないのに……!」

 

「ルラララ……ルルラ……♪」

 

なんとか立とうとするマジカルの横で突然、ミラクルが歌いだした。

 

「ミラクル……」

 

「ララルルラ……♪」

 

「なぜ…?なぜこんな時に、歌っているの?」

 

ソルシエールは突然あの子守唄を歌い出したミラクルに困惑したがその時、彼女は館でミラクル達が言っていた言葉……あの子守唄を聴くと元気が出るという言葉を思い出した。

 

「「ルルルラララ……ララルルラ……」」

 

何かを察したマジカルもミラクルと歌いながら立ち上がろうとしたが、体力の限界だけは誤魔化しきれず再び倒れてしまった。そんな様子を見たソルシエールは……

 

「もう一度………」

 

しかし限界を迎えつつある体に鞭を打ち、ミラクルとマジカルは歌い続けた。

 

「瞼、閉じれば♪夢の森……遊んでおいで♪夜明けまで……」

 

それに代わる形で、ソルシエールも歌い始めた。

 

「茨の影に…♪迷っても……つなぐこの手が……」

 

「うん?何の真似だ?」

 

「道しるべ……♪」

 

闇の王が唐突に奏でられた歌に疑問を抱くが、ソルシエールは更に歌い続けた。

 

「耳をすまして……♪星の鈴……♪鳴らしてごらん……」

 

「ああ……なんか……」

 

「あったかい……」

 

「気持ちが落ち着く……」

 

そして彼女の歌を聞いていると、ミラクルやマジカル、オーズ達の体が仄かに光りだし、気づいた頃には心が落ち着いていくことを感じた。

 

「瞬きで……♪闇の獣に、追われても……」

 

「体力が……それに……」

 

だが彼女の歌う子守唄の効果はそれだけでなく、グリードやホロスコープスの戦いで疲労を重ねたオーズやフォーゼを含めた、皆が付けたこれまでの戦いの傷を癒していき。プリキュア達の体力も、ビルドのハザードレベルも全開になるほどの回復を見せていた。

 

「プリキュア!」

 

するとモフルンが背負っていたミラクルステッキライトの入っていた壺から、光が放たれた。

 

「みんな、その光は……」

 

「魔法の杖だ〜!」

 

ミラクルがミラクルステッキライトの光に驚き、はーちゃんが喜びを露わにしていると、何かを思いついたアロマはパフやルルンと一緒にミラクル達へステッキライトを手渡した。

 

「みんなもプリキュアと仮面ライダーを助けるために、杖を振ってほしいロマ!」

 

アロマの言葉に同意したミラクル達は、モフルン達から受け取ったミラクルステッキライトを手に取る。

 

「行くモフ!」

 

「「「「プリキュア!プリキュア!仮面ライダー!」」」」

 

「あの光は……」

 

闇の王がステッキライトの光で僅かに怯む中。妖精達がミラクルステッキライトを振ると屋敷の中にある、龍牙達やプリキュア達を閉じ込めた牢屋が光りだした。

 

「お願い……」

 

ミラクル達プリキュアも、妖精達に続いて振り続ける。

すると、屋敷に保管されていた龍牙達のドライバーが浮き始め、そのまま檻へ向かい彼らの元へ戻っていった。

 

「俺達のボトルとドライバー…」

 

「戻ってきたのか……」

 

「とにかく、僕達もいきましょう!」

 

「「おお!」」

 

三人は戻ってきたドライバーを手に取り、各自腰へ装着。龍牙はクローズマグマナックル、和也はグリスブリザードナックル、幻冬はプライムローグフルボトルを取り出す。

 

『ボトルバーン!クローズマグマ!』

『ボトルキーン!グリスブリザード!』

『プライムローグ!』

 

龍牙達がドライバーにナックルやボトルを差し込むとレバーを操作。マグマライドビルダー、アイスライドビルダー、プライムライドビルダーとワニの顎を下から出現させる。

 

『『『Are you ready?』』』

 

「「「変身!」」」

 

『極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!』

『激凍心火!グリスブリザード!ガキガキガキガキガキーン!』

『大義晩成!プライムローグ!ドリャドリャドリャドリャドリャー!』

 

三人が変身を完了するとその光と同時に、檻の部屋を吹き飛ばし。元々半壊していた屋敷が完全に崩れて爆風の中から、プリキュアオールスターズにクローズとグリスとローグという三人の仮面ライダーが現れた。

 

「龍牙!みんな!」

 

みんなが解放されると一箇所に集まり、他のメンバーとの再会を喜ぶ。

 

「ソルシエール、ありがとう!」

 

ビルドのお礼にソルシエールは笑顔になると、破壊された屋敷はステージへと変化。

スポットライトを浴びたソルシエールの衣装の色が白や桃色といった優しい色に変化し、カチューシャにある割れたハートの飾りはふたつのハートへとなった。

 

「「「小僧……小娘……共……!」」」

 

「何人いても同じだ!」

 

アジ・ダハーカと闇の王の二人は思い通りにならないとイラつき始め、闇の王は砲台からニンジン型ミサイルを放った。

 

「よし!みんな!行こう!」

 

全員がミサイルを避けるように飛び立ち、闇の王とアジ・ダハーカへと向かって行く。

 

「来るんじゃねェェヨォォォォォ!」

 

それを見たアジ・ダハーカの三つの首は、プリキュア達に毒弾を放つ。

 

「はぁ〜…はぁぁぁぁぁ!」

 

その全てをクローズの拳から放たれた炎でかき消すと、ローグはライフルモードにしたネビュラスチームガンにクロコダイルクラックボトルを差し、グリスはブリザードナックルをドライバーから外してボトルをもう一度差し込む。

 

『クロコダイル!ファンキーショット!』

『ボトルキーン!グレイシャルナックル!ガチガチガチーン!』

 

ローグのスチームガンから放たれた砲撃と、ブリザードナックルから繰り出されたグリスのパンチで、アジ・ダハーカにダメージを与えた。

 

「どうだぁぁぁ!」

 

「……図に乗るなと、何度も言わせるなァァァァァァ!」

 

度重なる攻撃に、中首が激昂しながらグリスに攻撃をしようとする。

 

「和也さん!」

 

しかしラブハートアローを持ったロゼッタが四葉クローバー型のシールド『ロゼッタリフレクション 』を作り、グリスを守る。

 

「「タァァァァァ!」」

 

その隙にエースとジョーカーのダブルキックが、アジ・ダハーカの真ん中の首を攻撃した。

 

「和也さん。大丈夫ですか?」

 

「おぉ。サンキューな」

 

「早く倒してお花見に行こう!」

 

「はい!」

 

「幻冬!来ますわよ!」

 

ジョーカーとエースがローグと話をしている間に、アジ・ダハーカが再び起き上がるのを見たクローズ達は構える。

 

「瞼閉じれば、夢の森♪遊んでおいで♪夜明けまでーー」

 

一方、ソルシエールは歌い続けた。

そんな中で、闇の王が放たれたミサイルをキュアブルームとキュアイーグレットが撃ち落としていた。

 

「ここから反撃開始だよ!」

 

「ええ!」

 

プリキュア達と仮面ライダーはアジ・ダハーカと闇の王の攻撃を難なく対処し、徐々にこちらへ形成が逆転しようとする。

 

「闇の獣に、追われても♪怖がらないで♪そばにいる……」

 

闇の王は無数にある足でミラクルとマジカルを踏みつけようとしたが、二人は何とか踏ん張る。

 

「なんの……これしき!!」

 

ミラクルとマジカルが闇の王を投げ飛ばし、更にビルドとハートがダブルパンチで攻撃を仕掛けた。

 

「力があふれてくるわ!」

 

「そうか……究極の魔法は、あの歌なんだよ」

 

ソルシエールが歌う子守唄を聴いてからと、力が回復したり勇気が湧くようになっている事に気付いたマジカルとミラクルは、この歌こそが究極の魔法であることを知る。

 

「ソルシエールの先生は、既に教えてくれたんだ」

 

「ああ。この歌が、俺達の力になっている」

 

ソルシエールの先生は彼女を嫌ってたから、究極の魔法を教えなかった?

彼女が心から魔法が好きでいる気持ちを忘れぬ為に、究極の魔法を教えなかった?

とんでもない。ソルシエールの先生は既に、彼女へ究極の魔法を教えていたのだ。

子守唄自体が究極の魔法である事を教えなかっただけで、ソルシエールは既に究極の魔法を習得していたのだ。

この事実を知ったハートはソルシエールに笑みを浮かべ、ビルドは自身の仮説が半分外れていたと悟りつつも何処か安堵した様子を見せていた。

その時、ミラクルステッキライトの光が突然あふれだした。

 

「何パフ?」

 

「魔法の杖が飛んでいくロマ!?」

 

アロマの言う通り、ミラクルステッキライトは何処かへと飛んでいく。

ステッキライトがばら撒かれた先には、この人間界に住む世界中の人々の手があった。

 

「みんな!応援してほしいロマ!」

 

「みんな、歌に合わせて杖を振って!」

 

ミラクルステッキライトが渡っていた人々の耳にアロマやはーちゃん達の声が聞こえ。みんなはその声の通りに今戦ってるいるプリキュアと仮面ライダーに応援を送る為、ミラクルステッキライトを振る。

その影響によりみんなの動きは格段に上がっていき、アジ・ダハーカも闇の王と同じくミラクルステッキライトの光とソルシエールの歌により苦しみ始めた。

 

「な、なんだべ…」

 

「ファンキーに……気持ちが……」

 

『ボルケニックアタック!』

 

苦しみ出して隙だらけのアジ・ダハーカにクローズのライダーキックが炸裂し、アジ・ダハーカは地面を横たわる。

 

「ち、ち、力が……」

 

その隙にクローズは、アジ・ダハーカの体内にあった二本のボトルを掴む。

 

「返して貰うぜ!」

 

ライダーキックを受けたアジ・ダハーカから、クローズはシャドウとドラゴンのボトル二本を取り戻した。同時にその影響で、アジ・ダハーカも力を取り戻す前の最初の大きさに戻った。

 

「後は任せたよ!」

「決めてやれよ!」

 

フローラとクローズに決めろと声をかけられたビルドとハート、ミラクル、マジカル、オーズ、フォーゼは闇の王へと向かう。

 

「歌は魔法!(魔法!)」

 

その時、耐えきれなくなった闇の王がソルシエールにミサイルを放つ。

 

「くぅ!」

 

だがソルシエールの前にアンクが現れ、ミサイルを彼女から守る様に体を張って受ける。

 

「アンク!」

 

「うるせえ!早く決めろ!」

 

「……わかった!」

 

オーズがアンクのやりたいことを察しながら、ビルド達は闇の王の元へ向かい続ける。

 

「はぁぁ!」

 

更なるミサイルがソルシエールと彼女を守るアンクの元へ飛んで行くも、エコーがミサイルをかき消してアンクを守った。

 

「大丈夫ですか?アンコさん?」

 

「アンクだ!間違えるな!」

 

アンクは助けて貰ったことにお礼を言う事はなく、寧ろ何処ぞのおでん好きな医者と同じ間違った呼び名をしたエコーに文句を言っていた。

 

「茨の影に、迷っても♪つなぐこの手が、道しるべ♪(歌が流れてくる♪)」

 

だが二人のおかげで、ソルシエールは無事に歌え続けていた。

 

「一緒に歌えば、不思議な力が沸き上がる♪歌は魔法……♪」

 

ソルシエールの歌の力を受けたミラクルとマジカルの二人は、ダイヤスタイルをベースにコスチュームの裾や袖丈が長くなり、背中には翼が生えた姿『スーパーモード』へと姿を変えた。

 

「究極の魔法ーー♪」

 

「私達は繋がってる!」

 

「私達プリキュアと仮面ライダーの思いの力を、受けてみなさい!」

 

ミラクルとマジカルに力を与えるために、全てのプリキュアが二人に集まる。

そしてビルドとオーズとフォーゼは、闇の王の攻撃を躱しながら至近距離まで近づいてきた。

 

「いけぇ!晴夜!」

 

「君が決めるんだ!」

 

「弦太郎さん……映司さん……はい!」

 

フォーゼとオーズの二人がビルドにそう叫びかけると、ビルドに最後のトドメを刺させる為に前へと出る。

 

「うぉぉぉぉ!」

「はぁぁ!」

 

フォーゼは外装を展開させて刀身を露出させスラッシュモードにしたバリズンソードの斬撃を放ち、オーズは左腕に付属した手甲型エネルギー解放器『タジャスピナー』でエネルギー弾を放ち続け、ビルドを守りながら道を作る。

 

『ロケットオン!ドリルオン!』

 

「世界中のダチを守るために!」

「ライダーロケットドリルキッーク!」

 

そのままの勢いでフォーゼは右腕にロケットモジュール、左足にドリルモジュールをセッティングして体制に入る。

 

「この手で掴み続ける。世界を守る為に!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

更にオーズがオーズスキャナーをドライバーに翳すと、彼の足が燃え盛る猛禽類のようなツメ『コンドルレッグ』へと変形した。

 

「セイャャャ!」

 

オーズのダジャルコンボによるライダーキック『プロミネンスドロップ』とフォーゼの『ライダーロケットキック』が闇の王に炸裂し、それによって彼の砲撃砲が破壊されると、プリキュア達がミラクルとマジカルに力を注ぐ作業を終えた。

 

「「フルフル・リンクル!」」

 

「黒き獣よ」

「闇の世界へ!帰れ!」

 

闇の王の砲撃砲を潰されたのを見ながらミラクルとマジカル達が技を放つと同時に、ビルドは残った本体を見据えながら翼を広げてドライバーのレバーを回す。

 

『Ready go!』

 

右足に黄金に輝くエネルギーが溜まって行くと、闇の王に向けて飛んで行こうとする。

 

「「「この家畜どもがァァァァ!」」」

 

しかしアジ・ダハーカが立ち上がると、手に持った双剣にエネルギーを溜めながらビルドの妨害をしようとする。

 

「プリキュア!ロイヤルハートフィニッシュ!」

 

そんな彼を守らんと、キュアハートは白いハートのエネルギーを足に纏って、アジ・ダハーカに向かってキックを放った。

ハートの必殺技に気付いたアジ・ダハーカはエネルギーを溜めた双剣で返り討ちにしようとしたが、彼女はそれすら打ち砕いて双剣と共にアジ・ダハーカを貫いた。

 

「「「ぐわぁぁぁぁぁ!……滅ぶのか……こんなところでェェェェーーー!」」」

 

ハートの放ったキックに貫かれたアジ・ダハーカの体は、彼らの断末魔と共に消滅した。

 

「行って!晴夜!」

 

「あぁ!行くぞぉぉぉ!」

 

『ハザードフィニッシュ!アトミックフィニッシュ!』

 

黄金のオーラを全身に纏ったビルドのライダーキックは闇の王に直撃。ビルドのライダーキックが闇の王の突き出した体に直撃し、そのまま勢いを増してどんどんめり込んでいく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして黄金のオーラを纏ったビルドのライダーキックとミラクルとマジカルの放った技の光は、弱った闇の王の体を貫いて下半身を消滅させた。

 

「やったのかしら……」

 

闇の王の顔がある体の方は地上へと落ち倒されると、ビルドとオーズとフォーゼの三人がプリキュア達の元へ戻ってきた。

 

(空が戻らない……)

 

「……晴夜?」

 

「ごめん。もう一仕事してくる」

 

しかし空の色がまだ暗いと気づき、闇の王の力がまだ残っているのではと睨んだビルドは、ハートにそう告げると一人闇の王の倒れた場所へ飛んで行った。

 

「あ……あぁぁ……」

 

闇の王が居ると思われる所へ降りるとそこには、生きてはいるが既に身動きすら取る事も出来ない闇の王がおり、ビルドが闇の王を睨みつけながら近づく。

 

「終わりだな……トラウーマ」

 

「……き、さ……ま」

 

「お前は今日までソルシエールを利用し、みんなの記憶を利用した。

このまま、自分の罪を悔いていくんだな」

 

それだけを告げて、ビルドはみんなの元へ飛び立とうとする。

 

「……ふん。まさかとは…思うが。この私が、素直に反省すると……本気で思って、いるのか?」

 

すると闇の王はビルドを前にそう口語し、それを耳にしたビルドは足を止めた。

 

「………確かに今の私は、動く事すら出来ない……

……だが私は、腐っても闇の王……!

仮にこの場で消滅したとしても、必ずや貴様らの恨みを募らせながら、復活してやる……それこそ、何百年、何千年かけてでもな……!

そして私は再び、この世を闇で覆ってやる……フハハハ!」

 

闇の王の言葉を聞いて更なる怒りを抱いたビルドは、同時にこの町の人々を飲み込もうとしたあの惨状を思い出す。

 

「……お前は……お前という奴は………ッ!」

 

全く反省の色が見えない闇の王にトドメを刺すべくフルボトルアローを構えるが、躊躇いがあるのかビルドの手は僅かに震えていた。

 

──自分の甘さを永遠に呪うがいい。ハッハッ……

 

瞬間。彼の脳裏にかつてエピオンに言われた事が浮かび上がり、それがビルドの判断を鈍らせてしまう。

 

「フハハ……あぐぅ…!……ハハハ」

 

「……」

 

更に苦しみながらも笑い声をあげる痛ましい姿を見せる闇の王の前で悩んだ末…

 

「ハハハ……っ!?」

 

ビルドは闇の王の体に少し触れると、手から闇の王へ何かを注ぎ込んだ。

 

「……俺の力を少し分けてやる。二度と悪さをするなよ……

少しでも悪さしたら、俺は何処でも飛んで行って、今度こそお前を倒す」

 

なんと彼は闇の王に、自らの力を注ぎ込み助けたのだ。

ビルドにとってこいつは許せない存在である事など、頭の中では何よりわかってる。

敵に情けをかけてしまう優しさは、敵から見れば只の甘さでしかない。

けれど彼にとって、抵抗出来ない相手を此処で消滅させてしまうのは何か間違っていると感じた。故にビルドはいずれ後悔すると分かっていても、闇の王を助けてしまった。

これに驚いたのは、当然闇の王だった。自分は彼らと戦った敵の筈。それなのに何故ビルドは敵の私を助けたのかと、全く理解出来ずにいた。

 

「な、何故だ……何故、私を……」

 

「さっさとこの世界から出て行け!……そしてひっそりと生きて、命のありがたみさを学ぶんだな」

 

しかし命のありがたみを学ぶ様に語るビルドを見て、闇の王はたったそれだけのために生かしたのかと呆れながら。さっきまでの苦しそうな笑みから、何処か柔らかい表情で皮肉げな笑みを浮かべていた。

 

「……命の、ありがたみさ……か。甘い男だな……君は。

……後悔するぞ、その選択を選んだ事を……」

 

きっと後悔するだろう事を告げる闇の王の言葉を背中で受け止めたビルドは、無言のまま仲間達の元へと飛んでいき。みんなはビルドが戻ってきたのに安堵する。

 

『マッタく、アナタは実に甘いデスネ〜』

 

「うがアァァァーー!?」

 

『!?』

 

すると突如闇の王の断末魔が聞こえ、それを聞いた全員が何が起こったのかと驚いて視線を向ける。そこには麻袋の人形が闇の王を破れた腹部から出した無数の毒蛇や毒虫で包み込み、今にも飲み込もうとしていた。

 

「……お前……俺達を倒しに来たのか」

 

『キャキャキャキャ!マサか〜、オレ達がお前達に勝テル訳無いダロォ?

ダ〜カ〜ラ!この弱った闇の王ト、アノ方の分身とも言えるオレ達を生贄ニ〜!再びアジ・ダハーカ様を蘇らせルのデース!』

 

「や、めろ……!私は……や、闇の王…世界を無にする存在だぞ……!

それを…い、生贄だと……?そんな事が、許されるでも……アアアアァァァァーー!!」

 

『許す許さないジャナイんダヨ。敗北者に死ニ場所ヲ選ぶ権利なンザ、ハナからネェんダよ!』

 

麻袋の人形はキュアハートに消滅させられたアジ・ダハーカを復活させるべく、静止させようとするビルドの視線を受けつつ、抵抗する闇の王の叫びを一掃しながら一緒に飲み込んでしまった。

 

『サァ〜!アジ・ダハーカ様ァ!今こそ、奴らに一矢報イルトキですゥ!どうか復活ヲォォォォォォーーーアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッ!!」」」

 

アジ・ダハーカ復活の準備を終えた麻袋の人形が主人の復活を心待ちにしていると、麻袋の人形は突如力を失った様に手をぶらんと下げるや否や、彼の目と口として機能していた穴からそれぞれ三匹の大蛇が出現した。

形は全く違うものの。この三匹の大蛇こそ、麻袋の人形によって復活したアジ・ダハーカである。

 

「ハァ、ハァ……よくやった……お前のお陰で、私達は復活する事が出来た……礼を、言おう………だが……!」

 

「足りねぇ!このまま俺達の意識を保つ程の力がァーー!

このままじゃあどちらにしろ、また消滅しちまうよォ〜〜!!」

 

「ならば〜!やる事はただ一つだ〜よ!」

 

だが復活するために使ったエネルギーで殆どの力を使い果たしてしまったのか、今のままでは直ぐに消滅してしまう事を感じ取ったアジ・ダハーカは、背中から生やした翼を広げて飛び上がると、残された力の全てを使って紫色の巨大なエネルギー塊を作りあげた。

 

「「「仮面ライダービルドォ!このまま我々と共に、消えて無くなれェェェーーーーー!!」」」

 

そして自分達に屈辱を与え続けたビルドへの怨言を放ちながら。自分達を倒したハートへの怨みを晴らすべく、直ぐにでも消滅する自分達と道連れにすべく、ビルドに向けて紫色のビームを放った。

 

「「晴夜(君)!」」

「桐ヶ谷晴夜!」

「晴夜!」

 

ビルドに向けて放たれたビームを見て、彼の名を叫ぶハート達。

 

『アトミックサジタリアス!』

 

対するビルドは既に手に持っていた『フルボトルアロー』を構えると、アトミックウイングガジェットを差し込み、弓矢の弦を引いてエネルギーを徐々に溜めていった。

 

「……うあああああぁぁぁぁーーーー!!」

『アトミックブレイク!』

 

遂に弓の張力が最大に高まり、ビルドの悲痛な叫びと共に放たれた矢は巨大な光となり、アジ・ダハーカが放ったビームを飲み込んで一直線にめがけて飛んでいった。

 

「ッ!ま、不味い……!すぐに抑え───!?」

 

アジ・ダハーカは自身達が放ったビームを上回る光を見てすぐに抑え込もうとするが、どういうわけか光の矢を抑え込もうとした自身の体が突然動かなくなってしまったのだ。

 

(な、何が起きただ……!体が……動かねぇだよ………!)

 

「……ふ、巫山戯るなァ!俺達は、この世の頂点ッ!テメェらは、下劣な家畜ッ!」

 

「私達を足蹴にした、貴様ら家畜どもは……此処で殺されるべきなんだぁーーー!」

 

(───いいえ。殺されるのは、貴方達の方ですよ)

 

金縛りにあったような感覚を覚えた刹那。怒りの叫びを奏でるアジ・ダハーカの背後に、喰われて消滅した筈のトラウーマの声が聞こえ、後ろを振り向くと自身を羽交い締めに固定したトラウーマの幻が居る事に気付いた。

 

(何!?な、何故だトラウーマ!何故あの家畜どもを、助ける様な真似を……ッ!)

 

(勘違いしているようなので、訂正させていただきますが。私はただ、貴方達に扱き使われて死ぬくらいなら、此処でビルドに殺されたほうがマシだと思っただけですよ。

理解できますか?時代遅れの大蛇さん?)

 

(……こ、この……薄汚い、馬如きがァァァーーーーーーーーーッッッ!!)

 

ビルドを道連れに消滅しようとしたアジ・ダハーカの怨念が、清く死ぬ事を望んだトラウーマに向けられた瞬間、光の矢が彼らの仮初めの体を包み込んだ。

──矢が放たれて被弾するまでの間、僅か1秒の攻防だった。

 

「「「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーッ!」」」

 

光の矢を食らったアジ・ダハーカは再び、断末魔を上げて二度目の消滅。

 

(───私は決して、反省などしませんよ。プリキュア、仮面ライダー……

そして、ソルシエール様……)

 

次第にトラウーマに残された闇の力を彼の僅かな意識と一緒に薄くしながら、暗雲で包まれていた空は美しい青空へと変わっていった。

 

「晴夜……」

 

「……」

 

そしてビルドはフルボトルアローを下ろし、さっきの自分の行動は間違って無かったと思いながらも。闇の王を改心させられなかった事については、後味の悪さだけが残っていた。

ビルドが復活したアジ・ダハーカにとどめを刺したのを見て、ミラクルとマジカルはソルシエールの元へ行く。

 

「……本当にすまなかった」

 

「いいよ。もうあなたの思いは伝わったから」

 

「思い……もし許されるなら……先生がやっていたように、私も子供たちに魔法が伝えるような仕事がしたい……」

 

「いいね」

 

「頑張って」

 

彼女は先生のように子供に魔法を教えたいと言い、彼女なりに前へ進めることが出来たのだとミラクルとマジカルは思えた。

新たな道を歩もうとしたソルシエールはというと、偶然目に映った黒いシルクハット──トラウーマの遺品を静かに手に取り。恩人の想いを捏造して自身を騙したというか恨めしい思いと、先生が死んで絶望した自分に生きる意欲を湧かせてくれた感謝の思いが混じった、複雑そうな目で見つめていた。

 

(……トラウーマ。来世はきっと、誰かを正しい道へ導く者になる事を──)

 

◆ ◆ ◆

 

そして戦いは終わり、約束通りお花見が始まった。

 

「クッキーおいしいモフ!」

 

「アイスもな!」

 

「モフルンとアンクは結局そればっかりロマ」

 

アンクは妖精達と一緒に菓子やアイスを食べながら、お花見を楽しんでいた。

 

「今〜私の〜♪願い〜事は〜♪」

 

「和也!いいぞ!」

 

「和也様!頑張ってください!」

 

「この、大空に〜!翼を広げ〜!」

 

「次は私が歌う!」

 

こちらは和也がカラオケで『翼を広げて』を熱唱していた。(以外と上手かった)

 

「弦太郎さん、先生何ですか!?」

 

「おぅ!天高の教師だぜ!」

 

弦太郎が胸に手を当てて教師と言うと、のぞみも教師を目指していることを話す。

 

「映司さん。世界を旅してるんですよね?」

 

「うん。色んな世界を回って、いつか本当の意味であいつに会いたいんだ」

 

つぼみと映司が話をしながら、妖精達とアイスを食べるアンクを見る。

 

「世界中回っているのなら、写真とかありますか?」

 

「いいよ」

 

「うわぁ〜!」

 

世界を渡る映司の話に興味深々のつぼみ達は写真などを見て、映司の話をもっと聞きたなくなった。

 

「さあ、改めてプリキュアの徹底調査よ」

 

「ワクワクもんだね〜♪」

 

みらいとリコは今日ここに来た目的の為に早速、なぎさたちに聞いた。

 

「あの皆さんはどんな魔法が使えるんですか?」

 

「魔法?」

 

「みらいちゃんとリコちゃんとことはちゃんは、魔法が使えちゃうんだよ」

 

魔法と聞い首を傾げるほのか達に、はるかがみらい達二人とはーちゃんが魔法を使えると言うと、一気に注目の的になった。

 

「見せて!」

「俺も見てえ!」

「なぁ!俺にも見せてくれ!」

 

「はいはい、みんな順番に………って、うわああああぁぁぁーー⁉︎」

 

マナが仕切ろうとするも、一斉に集まりさらに大騒ぎになった。

 

「あれ?」

 

だがそんな中、マナは一人複雑そうな表情の晴夜を見た。

 

「晴夜?どうかしたの?」

 

「……実は……」

 

晴夜はマナにあの時、闇の王へ最後の最後に自分の力を渡して助けてしまい、それが結果的にアジ・ダハーカの一時的な復活を遂げさせてしまった事を話す。

 

「やっぱり甘いのかな……俺」

 

「そんな事ないよ」

 

晴夜は甘いのは優しいさから生まれたものであると、マナは理解している。

だがその心を持っていたから、レジーナとキングジコチューとなった国王の心を取り戻し、トランプ王国を取り戻せた。

 

「だから晴夜は、私の知ってる優しいあなたでいて」

 

「マナ……」

 

「あっ!そうそう、これ返すね」

 

晴夜はマナのおかげで少しだけ気持ちを落ち着かせると、彼女からラビットとロイヤルの二本のボトルを返して貰った。

 

「うん。ありがとう……俺、マナと出会えてよかった」

 

「あたしも晴夜と出会えて、最高にキュンキュンしてる!」

 

「マナ……」

 

桜の花びらが舞散る木の下で、晴夜とマナはお互い見つめ合う。

 

「相変わらず、お熱いですね」

 

「「!?」」

 

六花に声をかけられ振り向くと、何故かみんなの注目がこっちに移っていた。

 

 

それからお花見が終わると晴夜は映司、アンク、弦太郎の三人に別れの挨拶する。

 

「映司!次会う時は、もっとアイス寄越せよ!」

 

「わかってるって!」

 

「ふん。じゃあな」

 

映司の記憶のコピーとして現れたアンクの体が光りだすと、トラウーマが消えた影響で徐々にその存在を薄れさせていった。

 

「アンク……」

 

アンクは笑って消えていくと、そこには割れたタカのコアメダルが落ちており。映司はそれを拾って、いつか出会える明日を改めて想っていた。

 

「お別れみたいだね」

 

「はい。本当にありがとうございました」

 

アンクとしばしの別れを終えた映司が振り向いてお別れだねと伝えると、晴夜は頭を下げて協力してくれたことに礼を言う。

 

「お二人のおかげです」

 

「言ったはずだよ。ライダーは助け合いだって」

 

「ライダー同士、お前とはダチだ!ほれ!」

 

「え?」

 

弦太郎は笑みを浮かべながら、晴夜の拳を数回打ち合わせて友達の印を行った。

 

「何ですか?」

 

「友達の印だ!また、会おうな!」

 

「成る程……良いですね」

 

そうして、映司は世界を回ってアンクのコアメダルを復活させる為に旅を続け。弦太郎は自分の学校で待つ生徒達の元へと戻っていった。

晴夜は二人を見送りながら、今までに出会った晴人や紘太、タケル、戦兎、士とはまた違う、大切な部分を学べたと感じていた。

 

「……俺はあなた達のように、なれないかもしれないけど……

必ず、この世界を守り続けます」

 

例え自分の甘さが弱点だとしても、人を信じ、自分を信じる心を忘れず。

この思いのまま、みんなを守りたいと晴夜は決意を固めるのだった。

 

 

 

「──おやおや、こりゃあ珍しいお客さんが来ているね。何しに来たんだい?」

 

そんな想いを募らせる晴夜の姿を離れたところでベベルが見守っていると、自身の下辺りで彼らの姿を手に持ったトイカメラで写真を撮っている男性を見かけ、彼にそう話しかける。

 

「……さぁな。俺はただ、また此処で時空の歪みがあって来てみただけだ……」

 

その男性…門矢士はカメラを構えながら、ベベルを見据えていた。

 

「それより気になるのは、お前の方だ。

俺の情報が正しければ、その身体は『正体を明かさない』事を条件に構築されている。

だが既に正体が知られているお前が、タダで此処に来れる筈がない。

……誰が手を回した?」

 

「ふふふ……実は私にも、よくわかってないんだよねぇ……

ただ……フルーツの香りを漂わせる神様から、またこの姿を借りる事が出来たってことだけはわかる」

 

「フルーツの香り、神………成る程、だいたいわかった」

 

ベベルの話から、何処ぞのミカンの神様を思い浮かべた士。

一方のベベルは、目の前の男が神様について何か知っているのかと思ったが、別に特別知りたい訳でないので気にしない事にした。

 

「……さてと。マナの元気な顔も見た事だし、そろそろ帰るとするよ」

 

「……そうか」

 

「ねぇ、旅人さん。またこの世界に来る事があったら、マナと坊やに色々手助けしてやってくれないか?」

 

「……それは、これからのあいつら次第だな」

 

「ふふっ……それじゃあ、頼んだよ」

 

手助けして欲しいと言う頼みを聞いた士は、晴夜達に手を貸し続けるかどうかは彼ら次第だとベベルに返し。士の答えを聞いたベベルは笑みを浮かべ、そのまま天へと帰っていった。

 

「………ウィザードや鎧武、ゴーストの次は、オーズとフォーゼか……

案の定、『ジオウの世界』との融合が近づいている……いや、もう既にある程度融合しているな……だとすれば、本来の流れと違っているのも頷ける」

 

彼は色んなライダーが二度に渡って晴夜達に手助けをした事実と、二度目の訪問時に知った『メサイア』の存在、今回のアジ・ダハーカと麻袋の人形の登場を見て、別の世界との融合とそれによる時空の歪みを察し始めていた。

 

「……そのうち、また見に行くか。

プリキュアの世界との融合で、この世界がどうなるのかを、オーマジオウがどんな道を辿るのかを見る為にも……な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、月日が流れる────

 

「パパ!ママ!」

 

ピンクのパーカーとスカート、スパッツを着ており、レッドピンクの長髪をミドルツインテールで留めている少女が走っていた。

 

「イリア」

 

二人は約束通りに結婚し、一人の女の子を授かった。それがこの子、晴夜とマナの一人娘の桐ヶ谷イリア。

 

「イリア!お帰り!」

 

マナは大事な愛娘をぎゅっと抱きしめる。

 

「イリア。今日はお誕生日に紹介したい子がいるんだ」

 

「なになに?」

 

「この子シャル!」

 

後ろから濃いピンク色でウサギと犬を足して二で割った様な姿をしている妖精がいた。

 

「はじめまして!ルルアと申します!」

 

それは、イリアのパートナーなる妖精“ルルア”である。

 

Go to next generation……




おまけ

教えて!パラガス先生!

伝説の超野菜人「Q.親父ィ……麻袋の人形は元の話には一切登場していないのに、なんでこの話では登場しているんですかぁ?そしてなんで最後に闇の王が麻袋の人形に食われて、アジ・ダハーカが復活してしまったのですかぁ?」

親父ィ「A.そもそもあっち(原作)こっち(リメイク版)とでは世界が違うので、同じになるわけが御座いません」

これも全部私の趣味だ、良いだろう?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。