サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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初陣

10話

 

 

『Dブロック一回戦が始まります。出場選手はステージへお集まりください』

 

 

会場全体に響くアナウンス。それを聞いた控え室のレイは、アタッシュケースにトロイとCCMを収めて2人と共に会場へ向かって行く。途中、試合を終えたであろうバン達と出会った。

 

 

「アッハハ!!お疲れ様3人とも、ファイナルステージ進出おめでとう!」

 

「……あぁ、ありがとうレイ」

 

「次はDブロック……レイの出番ね」

 

「うん。さっきの決勝戦……ボクはキミ達のバトルを見なかった」

 

「なんでだよ?」

 

 

カズヤが2人の気持ちを代弁して聞いてきた。

 

 

「ボクとキミ達じゃ実力に差がありすぎるからね。その分のハンデはキミ達の本気を見ないことで打ち消してあげたのさ」

 

「素直に腹立つなお前」

 

 

カズヤが卒直に言ってきたが、レイは気にしていない様子だ。

 

 

「アッハハ!!イノベーターだもん。そりゃあ敵は煽っていかないとね。まぁ、キミ達はせいぜいボクのバトルを見て対策でも考えてなよ。ファイナルステージは実質3対2だからね」

 

 

敵、と言う言葉で3人が少し反応した。それを無視して言葉を続けているレイは少しヒントを与えることにしたようだ。

 

 

「3対2……レイ、どういうこと?」

 

「おっと……言い過ぎたかな。アッハハ!!良い女には秘密が付き物ってね♪内緒だよ〜」

 

 

そのままレイはバン達の横を通り過ぎてステージに出た。訝しげな視線をレイに送る3人だが、レイはもう興味がない……いや、バトルを楽しみにしているのか眼中にないようだ。

 

 

『レイチームが入場してまいりました!!彼らの公式大会での戦績は一切無し。出場経験が無いとのことですが、使用するLBXのトロイ、アヌビスの性能も未知数!!一体どんなバトルを見せてくれるのでしょうか!!』

 

 

MCの男がレイ達について紹介している。レイ達の登場に歓声のあがっている観客席に向けてレイは手を振る。どうやら気分が良いようだ。

 

 

『対するは、九州エリアチャンピオン佐伯リョウ率いる【チームウィズダム】。チーム全員がIQ170以上という秀才LBXプレイヤー!!そのイカした頭脳で、このバトルの戦局も左右するのか、必見です!!』

 

 

レイ達の相手は、会場の盛り上がり具合からしてなかなかの人気チームであるらしいことがわかる。

 

 

「ふっ……君達が対戦相手かい?まあ、このチームウィズダムの天才的作戦の前に倒れ伏すのが目に見えている」

 

「アッハハ!!自信満々だねぇ……良い試合を期待してるよ!!」

 

『全ての選手が配置に着きました!!これよりDブロック一回戦を始めます!!各プレイヤー……レディ!!』

 

 

MCがバトル開始の合図をしてきた。それにより全てのプレイヤーがLBXをジオラマ内に投げ込む。

 

 

「さぁ!!ボク達の華々しい初陣だ……アッハハ!!トロイ!!」

 

「アヌビス投下」

 

「グラディエーター!!」

 

「カブト!!」

 

 

レイ達のバトルフィールドは【城砦】。遮蔽物となる城壁や城があるステージだ。

 

 

『バトル……スタート!!』

 

 

「データ採取開始。2号、しくじるなよ」

 

「分かってるって」

 

「相手のLBXの特性が分からない。一旦距離を取りつつ様子を見ようか」

 

「了解」

 

 

相手のLBXはグラディエーターとカブト。

 

グラディエーターは片手銃のマシンガン『クイーンズハート』と銃弾に対して強い長方形の盾『スクエアガード』を装備している。

カブトは近接戦において多大な威力を発揮する片手銃『ショットガンSG4C』を二丁拳銃として持っている。2つ同時に発射されたものを同時に食らえば並のLBXならば一撃でブレイクオーバーだろう。

 

レイのトロイは武器腕なので説明の必要はない。僚機のアヌビスは片手剣『ヘヴィソード』の二刀流だ。戦闘はレイに任せているので隠れているだけである。

 

開始早々、グラディエーターがマシンガンを乱射しながら距離を取った。カブトもその後ろに隠れるように下がる。

 

 

「へぇ……様子見ってわけね」

 

 

対するトロイは特に何かするわけでもなくその場に立ち尽くすだけだ。1マガジン30発のマシンガンから放たれた大量の銃弾がトロイの装甲を直撃する……しかし無傷だ。

 

 

「なに、グラディエーターの攻撃が効いていないだと!?」

 

「……なんかした?」

 

「ッ!!貴様……」

 

 

レイはまずCCMのボタンを触っていない。明らかに煽っているだけだ。

 

 

「落ち着いて佐伯君。装甲が硬い分動きは鈍重なはずだわ」

 

 

カブトを操る女性……元永カスミがリョウを諫め冷静にトロイを分析している。

 

 

「あれ、動かないの?じゃあボクがやっちゃうよ」

 

 

レイは一瞬だけCCMを操作する。そしてジオラマないから聞こえてくる駆動音。トロイの武器腕であるデスバレルのガトリングが回る音だ。トロイは右腕を相手に向けた。

 

 

「ッ……隠れろカスミ」

 

「ええ」

 

 

二機はすぐ側の城壁に身を隠す。そして、一定の回転速度を迎えたデスバレルからついに銃弾が発射される。

 

 

ドゥルルルルッ!!

 

 

「「ッ!?」」

 

 

デスバレルより発射された大量の銃弾は、2機が隠れている城壁の壁を一気に貫く。

 

 

「退避!!あのガトリング……威力がおかしい!!」

 

「分かってる!!……でも!!」

 

「アッハハ!!なす術なく逝っちゃえ!!」

 

 

グラディエーターはさらに奥へ、カブトは跳躍し城の方へ逃げていった。しかし、トロイは右腕を徐々にずらし銃口を城壁へ向けている。ガトリングから発射された弾はそのまま城壁を破壊していき、逃げたグラディエーターに追いつこうとしていた。

 

 

「そろそろリロードする頃だろう……カスミッ!!」

 

「…………今よッ!!」

 

「うん?」

 

 

右腕のデスバレルの射撃が収まったと同時に、城の影からカブトが飛び出してきた。そのままトロイの目の前に着地して両手のショットガンで胴体を捉え発射した。

 

 

ガシュンッ!!

 

 

強烈な炸裂音がジオラマに鳴り響く。しかし……

 

 

「だからさぁ……さっきからなにしてるの?」

 

「なぁっ……ウソ……」

 

『ぉぉぉおおおっっと!!二丁のショットガンの弾を全てボディに受けたトロイですが、なんと全くの無傷!!なんという装甲の硬さでしょう!!チームウィズダム、最大火力が全く意味を成しませんッ!!』

 

 

MCの言う通り、確実にボディにヒットしたはずのトロイはなんともなさそうだ。それどころか命中した弾は全てトロイの装甲で止まり、そのまま地面に転がった。

 

 

「アッハハ!!……墜ちろ雑魚」

 

「逃げろカスミ!!」

 

「無理よ間に合わッ!?」

 

 

カスミが声を上げる隙もなく、カブトの頭ににリロードをしていないデスバレルが向けられた。

 

 

「まさか……まだ撃てるというのか!?」

 

「ファイア♪」

 

 

レイが言うのと同時にデスバレルから発射された銃弾はカブトの胴体をいとも簡単に貫き……腕を下げていく。ガトリングを発射中の腕を下げたらどうなるか……お分かりだろう。カブトの頭から腰までを銃弾が貫きカブトは穴だらけになって爆発しかける。

 

 

「じゃ・ま♪」

 

 

やっと撃ち終わったトロイはその右腕でカブトを薙ぎ払って吹っ飛ばす。そして地面に転がったカブトは爆発した。

 

 

『カブト、ブレイクオーバーッ!!トロイ、圧倒的な火力でカブトを破壊!!なんという強さだ!!』

 

「カスミッ、くっ……」

 

「仲間がやられて戦意喪失しちゃった?」

 

「そんなわけないだろう!!仇は俺が取る!!」

 

「アッハハ!!天才的作戦とやらも無くなっちゃったねぇ?」

 

 

そしてトロイは遂にその足を動かし始めた。その巨大なボディからはありえないようなスピードで。

 

 

「早い!?いや、駆動部を狙う!!」

 

 

逃げていたグラディエーターはトロイの現在地より上の城壁からマシンガンを放つ。しかし先ほどとは異なりその攻撃は一撃もヒットすることが無い。

 

 

「正確な射撃。うん、腕はいいね」

 

「クソッ……なんで当たらない!!」

 

 

トロイはジグザグな挙動で銃弾を回避していく。中には確実に当たるだろうと思われたものまで、一瞬の迷いなく命中する前にレイは避けた。

 

 

「正確すぎるんだよキミは。確実に当たるように脳内で計算してるんでしょ?アッハハ!!さっすが天才、やることが違うね……でもだから避けやすい」

 

 

レイが語っている間も、グラディエーターは何回もリロードして銃撃を続けている。

 

 

「クソッ、クソッ……」

 

「……はぁ、興冷めだよ。飽きちゃった。じゃぁ……バイバイ」

 

「いつのまにッ!?」

 

 

レイが言った時には、すでにトロイはグラディエーターの背後を取っていた。そしてトロイは両腕のデスバレルでグラディエーターの首、肩、膝裏、足首を凄まじい速度で突いた。

 

 

「はっ……クローも付いていないような貧弱な腕でダメージがと通るとでも思っているのか!!その慢心が貴様の敗北を……ッ!?何故動かないグラディエーター!!」

 

 

腕を下ろして立ち尽くしているトロイの目の前で、グラディエーターはリョウの操作を受け付けなくなった。

 

 

『……おおっと!!審判より、グラディエーター行動不能によりブレイクオーバー判定が下りました!!よって勝者、レイチーム!!圧倒的な性能のトロイ、数多の銃撃を受けたにも関わらず無傷での勝利となりました。2回戦進出です!!』

 

「「「「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!!」」」」」」

 

 

MCの宣言により、レイ達の勝利が確定した。

 

 

「アッハハ!!やった〜。トロイ、良い初陣だったね!!この調子で残りの奴らもやっちゃおう!!」

 

 

レイは嬉しそうに笑いながら、歓声に応えている。アヌビスも男の手元に戻り満足そうな顔をしている。思っていたよりもトロイの戦闘データが良かったのだろう。

 

そのまま2人は、敗北して放心しているチームウィズダムに声を掛けることなく、ステージを後にした。

 

 

 

〜観客席side〜

 

 

 

レイの圧倒的なバトルを見ていたバン、アミ、カズヤ、郷田達は驚きのあまり唖然としていた。

 

 

「ねぇ……あれって……」

 

「ああ、レイはLBXの性能だけで戦った」

 

「そしてその上で無傷で勝ったと……ヤバすぎるだろ」

 

「お前ら、対策どうするんだ?」

 

 

レイのバトルを分析した4人だが、レイがトロイの性能のみで戦っていた事を見抜いて頭を抱えていた。

 

 

「しかも覚えてる?レイってば、左腕の銃身を使わなかったわ」

 

「片腕で、尚且つ1マガジンしか使ってない」

 

「見た感じ、肩の後ろと腕のガトリングに繋がってる奴。あれに銃弾があってあの驚異的な連射を実現しているみたいだな」

 

「そうか!つまりあれを切っちまえばレイのLBXは装填されている分しか撃てない!!」

 

「ええ、でも油断出来ないわ。あのトロイが最後にやった攻撃……きっとグラディエーターの駆動部を直撃して機能不全を起こさせたのよ。もちろん狙ってね」

 

 

アミが分析した情報は概ね正しい。しかし一部間違いがある。レイがグラディエーターの駆動部へ行ったことは機能不全ではない。駆動系の内部だけを潰したのだ。表面から見ればなにも起こってないが全て内部を解体すれば鉄屑となったパーツが多々出てくる事だろう。

 

 

「対策を考えればいいとか言ってたけど、肝心のレイの操作技術がわからないんじゃあな〜……」

 

 

バン達は他の選手のバトルが終わるまでの間、レイについて意見を交わすのだった。

一回の戦闘シーンは長い?

  • 長い
  • 短い
  • ちょうど良い
  • もっと細かく描写して欲しい
  • トロイ弱体はよ

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