サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
12話
決勝戦までは少し時間がある。乱れた脳波を落ち着かせるため、レイは自販機で買ったいちごオレを飲んでいた。もちろん1人である。
「これおいしー……仙道君、中々面白いねぇ。負けた後でも衰えることのない闘志。市販のLBXで分身ができるスピードを生み出したりも出来る。中々愉快な人だね」
独り言を言いながらレイはさらにいちごオレを飲む。先ほどのバトルの事を思い出し持ってきていたトロイの脚部の傷を撫でた。そんな彼女の下へ、1人の男がやってきた。
「おや、お嬢さんは確かDブロック決勝戦進出者のレイ君だったかね?」
「ん?……あ、師匠お久しぶりです」
「師匠?何のことかね。私の名前はマスクドJというのだよ!!」
「……あ、はい。すいませんマスクドJさん」
レイは折れた。キレッキレの決めポーズを決めながら声高らかに宣言する彼、マスクドJに対してレイの精神力は少し削られてしまったのである。さらにそれがいつかの日にLBXについて教授して貰った師匠相手だとしても、相手にするのが面倒という印象を抱いたのだ。
「君のバトルに興味が湧いてね。お邪魔なら失礼するが……?」
「別に良いですよ。どうせボクも暇ですし」
珍しいレイの敬語は違和感を感じさせない。普段からこのような態度で真崎にも接すれば良いが彼女にとっては論外だろう。
「実は、かの山野淳一郎博士から君宛にメッセージを預かっていてね。受け取ってもらえないだろうか?」
「……あーはいはい、そういうことですね。良いですよ(この人……後から恥ずかしさで悶絶したりしないのかな?いや、別にボクには関係ないから良いんだけどさ)」
「それは良かった。ではCCMに直接転送する」
「了解でーす」
お互いにCCMを出して通信をした2人。ピロリンという機械音とともにレイのCCMにデータが送信された。
「「ふっ……」」
お互いに少し笑う。設定上初対面の2人のはずなのだが……
「使命は果たした。ファイナルステージで待っているよお嬢さん」
「すぐ行きますよ。せいぜい寝首をかかれないようにしてくださいな」
2人の関係はすでに単なるライバルに戻った。レイは去っていくマスクドJの後ろ姿を眺めた後、起きられてきたメッセージに目を向けた。
『レイ君……先日渡した設計図だが、あの機体はあの時の設計図一枚では完成しない。添付している画像に対となるもう一つの設計図を入れてある。きっと君の力になってくれるだろう。願わくば、バン達の力になってやってほしい』
「あっはは!!良いねぇ……研究者らしい自分勝手な人だ。だからこそ憧れたんだよボクは。うんうん……取り敢えずこれは真崎さんに送信して消しとこっと。さて、あの設計図は機体名称が設定されてなかったけど……あれ?こっちにもない。むぅ……名無しのLBXなんてどうしろっていうのさ」
表示された文章を読んでにやけながら呟くレイ。どうやら添付された設計図には機体コードが無かったらしい。山野博士には何か思惑があるのだろうがレイにはわからないようだ。
「ま、今考えても仕方ないか。よし、じゃあ決勝戦もちょちょいと勝ちますか!」
席を立ったレイは機嫌の良さそうな雰囲気でステップを踏みながら控え室へと向かうのだった。
〜十数分後〜
「よ、よろしくお願いします!!」
「はい、よろしくね」
アルテミスのステージの中央。他の東西南北に設置されたステージより一際高い位置に設置されたそのDキューブに小面から向かい合う男女。レイとユジンだ。ユジンはいつもの赤いジャージに仮面を被っておらず、緊張して両肩が上がっているし声も上ずっている。
「しょ、少々お待ちください」
「ん?」
ユジンがいそいそと手元の紙袋から物を取り出した。レイは不思議そうに見ているが何をしているのかわからない。
「とぉう!!愛と勇気のLBXバトラー、オタレッド参上!!師匠、見ていてください!!必ずファイナルステージに行って見せます!!」
「……(ボクが外の世界の常識を知らないだけで、もしかしてこういうのは普通なのかな?)」
オタレッドとしての格好に着替えた彼はポーズをとりながら師匠とやらに向かって言った。レイは何も言うことなく無言でトロイを取り出した。
MCによる2人についての紹介があり、彼のコールでLBXをスタンバイした。
「トロイ」
「ビビンバードX!!」
『両者準備が整いました!!それでは、Dブロック決勝戦。バトルスタートッ!!』
ついに始まった決勝戦。フィールドは『都市』だ。両者はどちらも動かない。読み合いをしているのだろう……と思われたが、
「やはりか!!」
「……何が?」
突然ユジンが指を指しながら言った。レイは内心、またか……と思いながらも問う。
「その形状、ガトリング、そして何よりその一つ目!!お前こそまさしく悪の尖兵に違いない!!」
「…………なまじ間違ってないから何も言えない」
ビシッ!!っと効果音がつきそうなほどキレッキレの動きで彼は続ける。戦隊もののレッドのような彼はやはりと言うべきか、そういうところは厳しいらしい。レイは、イノベーターについては大体合ってるので小さな声で呟いた。
「一個だけ言わせてもらうけど、一つ目ってだけならブルド改だっt……「そしてぇ!!」……君あれだね。空気読めないんだね」
「この私、オタレッドがいる限り!!この世界の平和は脅かさせない!!」
珍しく苛ついているレイ。言葉を遮られたばかりか、人の話を聞かない彼に少しきているらしい。さらに、彼のLBXビビンバードXも彼と同じような動きをしているため2倍でウザい。
「じゃあ正義の味方っぽく、このボクとトロイを打ち破ってみせなよ」
「ぬわっ!?」
レイの言葉でトロイが両腕をビビンバードXに向けた。そして無慈悲に放たれる銃弾の雨。慌てた様子でビビンバードXはスライディングやジャンプ、ステップで回避する。その光景は間抜けだが1発もヒットしていないあたりその操作技術の高さが窺える。
「くっ……なんと卑怯な。しかし、悪は滅びる定め!!食らえ、ビビンバードスペシャルビーム!!とぅ!!へぁー!!」
「いや、唯の銃撃だよね?」
流石のレイもいつも通りには笑えない。掛け声を上げながらジャンプして右手に持つ『ビビンバードブラスター』から放たれる射撃は彼の様子に反して正確にトロイを捉えている。ツッコミを入れながらもレイは冷静に、内心焦りながら肩部装甲で受け止めた。レイのCCMでは、微量だがHPが減っている。
「むぅ……思ったより威力高いなぁ。やっぱ実弾じゃないときの耐性に不安があるかも」
呟きながらもレイは操作を続ける。ビビンバードXの射撃を躱し、蹴りをいなす。隙あらばデスバレルを撃ちまくる。準決勝のようなデスバレルを用いての格闘をせず、両者ともに均衡状態のままだ。
「なかなかやりますね。ですが、これならどうだ!!」
飛び上がったビビンバードXが銃を構える。すかさずトロイは右にステップして回避行動をとった。
「甘い!!」
「へぇ?」
ビビンバードXは射撃をすることなくすぐに着地、そのままトロイの懐まで低い姿勢で突撃し足を払って転ばせた。
「うわ……起きにくい」
「これでトドメだ!!ビビンバードスペシャルウルトラダイナマイトキィィィック!!」
『アタックファンクション レインバレット』
「名前全然違うんだけど!?」
デスバレルの銃身では手を付けない。しかもトロイの特長的な大きな装甲が邪魔をしてうまく立ち上がれていない。その隙を突き、ユジンは必殺ファンクションを放つ。
その場で逆立ちし、片腕だけで体のバランスをとったビビンバードXは回転する。銃を持った右腕を広げそのまま銃を乱射。トロイのデスバレルにも劣らない弾丸の雨が必殺ファンクションの威力で放たれた。
「アッハハ。ちょっと焦ったけど、早計だったねぇ!!」
それを確認したレイはすぐにCCMを操作。倒れた姿勢のまま地面を蹴り、後転する事で体勢を立て直したトロイはデスバレルを撃ち始めた。
『レインバレットとデスバレルにもよる銃撃の攻防!!両者一歩も引いていません!!これまで圧倒的な力を見せつけてきたレイ選手!!少し苦戦しています!!』
(勝手な実況をしてくれるじゃないか!!ボクが苦戦?あり得ないね!!)
やがて、両者とも攻撃が収まった。トロイはリロード、ビビンバードXはファンクションの体勢から復帰し地面に立つ。しかし……
「ビビンバードX!!そんな、どうして!?」
ビビンバードXのボディの色々な箇所からスパークが迸る。それに応じてか動きもいまいち良くない。対するトロイに、ダメージの様子はない。ビビンバードXは必殺ファンクションを用いたはずの名前の通り必殺の技だったはずだ。無傷では無いだろうが、トロイの動きに問題はなさそうだ。
「アッハハ!!ボクぼトロイに負けない良い射撃だったよユジンさん。で・も♪ただ乱射するだけのファンクションじゃあボクは倒せないよ」
「それは……どう言う意味ですか?」
「跳弾って知ってるかい?」
跳弾、目標に命中しなかった弾丸が地面や壁など障害物に当たって跳ね返る事だ。すでに100年以上に遡るであろう歴史の世界、それこそ人が戦争をしていた時代に実際に跳弾を用いていた者が居たそうだが、その難易度から意図して成功させる者は数える程もいないだろう。
しかしレイは意図して成功させる。
「……まさか、狙ってやったとでも!?集弾率の悪いガトリング系統の武器で……なんていう操縦精度だ」
本来は単発銃で行い、尚且つ跳弾をさせる反射角や風の強さ、弾速、距離その他諸々を全て計算し尽くさなければ成功することのない技術をレイは当然のように行う。これは才能、そしてそれを開花させた皮肉な環境、イノベーター。技術、訓練、研究、そして実験。度重なるレイへの試練が彼女の潜在能力を最大限まで高め、それはLBXで生かされることになった。
野菜は厳しい環境に置くことで美味しくなるというが、そのレベルを彼女は超えている。そして何より恐ろしいのは、訓練さえすれば実銃でも彼女は成功させるだろう。それだけのポテンシャルが秘められているのだから。イノベーターが灰原ユウヤのような無理な実験をレイに行わなかった原因はそこにある。元々薬が効きにくい彼女に無茶をすれば本当に壊れてしまう。ならば自由にさせようと、イノベーターの思惑は完璧に彼らの利益になっている。
「貴方が撃った37発、ボクはそれの半分を撃って迎撃し、その撃たれた弾丸を跳弾させて全部迎撃。そして残りのマガジン全てを攻撃に回した。ほとんど弾かれちゃったけど、なかなか良いダメージは通ったみたいだね?」
『ブラッディーレイン』という必殺ファンクションがある。二丁の拳銃で行うそれはCCMの補助による跳弾を行って敵を攻撃するファンクションだが、レイは手動で行っているのだ。
「くっ……ビビンバードX!!」
そんな圧倒的な技術を見せられてもユジンは諦めない。今の自分はオタレンジャーのリーダー、オタレッドにしてオタクロスの弟子。仲間にも師匠にも半端なところを見せられない。何より、巨悪(彼の中で)をこのまま放っておくことはできないのだ。
ビビンバードXは動作の重い体をなんとか動かしてトロイに向かう。そのままさらに跳躍し、射撃をしながらキックの態勢に入った。
「負けるわけには、いかない!!」
「アッハハ!!世界レベルのLBXプレイヤー、やはりここは最高の遊び場だよ!!必殺ファンクション!!」
『アタックファンクション 光速拳・一閃』
後ろに引かれたトロイの右腕にエネルギが溜まる。そして跳躍したトロイは光となりキックをしてくるビビンバードXを正面から相手取り……閃光がフィールドを支配した。
「「ッ!!」」
数秒経って、視界が晴れる。フィールドには、胴体を穿たれたビビンバードXと、その後方で右腕を突き出しているトロイ。そして……ユジンがCCMを閉じた。
刹那、爆発。ビビンバードXが爆散し、トロイの、レイの勝利が確定した。
『ビビンバードX、ブレイクオーバー!!銃撃による激しい攻防を制したのはレイ選手!!見事ファイナルステージ進出を果たしましたアァア!!』
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」
レイとトロイは右腕を高く突き上げる。それに呼応して観客席のテンションもマックスになった。
「良いバトルでした。ありがとうございます!!」
「ボクも楽しかったよ。またいつか、バトルできたら良いね」
激闘を演じた2人は握手をする。仮面を外したユジンは負けたにもかかわらず晴れやかな顔で満足している様子だ。そんな2人に様子に会場もさらに盛り上がっている。拍手まで起きている始末だ。
「ファイナルステージ、絶対勝ってくださいね。応援させていただきます!!」
「アッハハ、お願い。じゃあね〜」
「はい、また」
2人は背を向けてステージから去る。試合が終わって少し時間がたったにも関わらず会場の歓声が止むこともない。それは2人の姿が完全に見えなくなるまで続いたのだった。
〜控え室〜
「ビビンバードXの戦闘データはどう?何か使える?」
「……難しいな。2号も経験しただろうがキックなど、多少の格闘を行うために駆動部の強化、可動域の拡張をしているのは理解できる。必要だったかどうかは別だが」
控え室で、チームメイトに登録されている白の部隊の研究員2人はPCでデータの解析を行なっている。バトルが終わったレイも、トロイの調整をしながらそれに加わっている。
「まあねぇ……どうやら趣味と実用性の両方が重視されてるから中途半端になるのは仕方ないさ。そんなことよりもちょっと聞きたいんだけどいい?」
「どうした?」
男は、レイがわざわざ話題を変えてまでの聞きたいことに内心驚きながらも耳を傾けた。
「ビビンバードXのあの動く口と鳴き声みたいな奴、どうやって作るの?ボクすごい興味があるんだけど……」
「……知らん。実戦で使えんものなど要らないだろう?我々は実用性のみを重視して開発しているのだ」
「むぅ……まあいっか。よし、メンテナンス終わりっと。適当に工具を置いておくよ」
「ああ」
ドライバーや布、ヤスリ、グリスなどで簡易的にメンテナンスを終えたレイは立ち上がって伸びをした。
「気休めにアンプル頂戴。データも取るからさ」
「良いだろう。おい、渡してやれ」
「了解」
他の作業を行なっていた男から液体が入ったアンプルが手渡される。慣れた手つきでそれらをセットすると、レイは自分の首に向かって突き刺す。
「ッ…………ふぅ。やっぱ変わりないね。結局なんでボクってこういう普通の精神安定剤も効かないの?」
「それが分かれば苦労はしない。まぁ……異常体質としか言いようがないのが現状だ」
「ふぅん」
薬を投入したレイは特に変わらない様子で会話をする。バイタルチェックをしても変化がないため、本当に効いていないのだろう。
「分からないなら仕方ないね。とりあえず次はユウヤ君の番だし、高みの見物といかせてもらおっかな。結局ジャッジとバトルさせてもらなえなかったし」
どかっと椅子に座ったレイは、笑みを浮かべながらスクリーンを見始めたのだった。
〜???〜
ピロリン
「んあ?……レイからだぁ?はぁ……?なんだよ、この数字の羅列。まあアイツに限ってどうでも良いことは送ってこないだろうし……取っとくか。独立端末にコピーしてっと……よし。ていうか、今更だけど、俺も出ればよかったか?そうしたらお前も少しは計画が進むもんな?」
「ふっ……問題はない。いや、お前が出てしまってはこの大会が面白くはないだろう?」
「まあな」
「ところで、アレの開発は進んでいるのか?」
「滞りは無い。むしろ順調だよ。全く……大変なんだぞ?特殊モードのデータをパクって、尚且つ今存在するLBXを凌駕する物を作るのは」
「分かっている。だが、それくらいで折れる男でもない筈だ」
「当たり前だ。さて……もうひと頑張りしますか、俺達の移し身を作るために」
「ああ、頼んだ。俺は今から別件だ」
一回の戦闘シーンは長い?
-
長い
-
短い
-
ちょうど良い
-
もっと細かく描写して欲しい
-
トロイ弱体はよ