サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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サイコスキャニングモード

13話

 

 

ファイナルステージ最後の出場者を決める。Eブロック。控え室でバトルを見ているレイは、特に灰原ユウヤのバトルに注目している。

 

 

「1回戦、2回戦、3回戦、全てが調整用の動きか。ねぇ、ユウヤ君の調整内容を教えてくれない?」

 

「加納所長よりお前には教えるなと言われている。技量面での良いハンデだと思え」

 

「そうですかい。ま、良いけどね。あの程度じゃあボクは負けないし」

 

 

現在、ユウヤはEブロック決勝戦の真っ最中。ハンニバル・ハーンの操るカブトの攻撃を躱している所だ。

 

 

「……5ミリ。次は3ミリか。2ミリ以下までいけなかったの?」

 

「無茶を言うな。お前と違って薬物投与をしているんだ。ここらが限界だろう」

 

「ふーん。あ、コマンドハンドガンに変えた。てことは……うん、まあそうなるよね」

 

 

ユウヤのLBXジャッジは、後ろで控えていたアヌビスから拳銃を手渡されカブトに向けて5発撃つと、それぞれ両肩、両膝、首の駆動部に直撃しブレイクオーバーさせた。これでユウヤのファイナルステージ進出が確定した。

 

 

「準備は?」

 

「バッチリだよ」

 

「分かった。CCMヘルメットとCCMグローブの調整も完了している。付けていくか?」

 

「いや、ヘルメットをしてたらボクだって認識されずに失格になるかもしれないからね。あっちでつけようと」

 

「分かった」

 

 

研究員2人とレイは、怪しく笑いながら控え室を出たのだった。

 

 

 

 

〜中央ステージ〜

 

 

 

『おまたせしました!!これより、第3回アルテミスファイナルステージを始めたいと思います!!まず初めに、進出を決めた5人の選手をご紹介しましょう!!』

 

 

 

MCの声で会場が沸き立つ。ステージ中央に集まった5人、山野バン、海道ジン、灰原ユウヤ、マスクドJ、そしてレイ。

 

 

『Aブロック代表、海道ジン!!』

 

「……」

 

 

ジンにスポットライトが当てられた。彼は何も言わずバンを見ている。

 

 

『Bブロック代表、マスクドJ!!』

 

 

『Cブロック代表、山野バン!!』

 

 

続けてマスクドJとバンにもスポットライトが当たる。彼らは観客席に手を振ってサービスしている。

 

 

『Dブロック代表、レイ!!』

 

「アッハハ!!盛り上がってるね〜」

 

 

手を振りながら笑う。その顔は嬉しそうだ。

 

 

『Eブロック代表、灰原ユウヤ!!』

 

「…………」

 

 

ユウヤもジンと同じように何も言わない。それどころか虚空を眺めている。

 

 

「バン君、遂にこの瞬間が来たね」

 

「レイ……絶対に負けない!」

 

「アッハハ!!楽しみだよ」

 

 

バンの目には闘志が宿っている。そこへすかさずジンも入ってきた。

 

 

「僕も負けるつもりはない。もちろん、君にも」

 

「へぇ?秒殺の皇帝様の実力、堪能させてもらうさ」

 

「2号、そろそろ」

 

「うん、頂戴」

 

 

レイの後ろにいる研究員から声がかかり、ヘルメットとグローブが手渡された。レイはそれらを手慣れた手つきで身につけていく。

 

 

「バン君、ジン君、ユウヤ君……今日のボクは本気だ。どんな手段も使わせてもらう」

 

「「「「「「ッ!?!?」」」」」」

 

 

手にグローブを付けたレイは、そう言ってヘルメットをかぶる。それと同時に、ヘルメットとグローブがコードで繋がれた。そしてユウヤも、このステージに上がる時に羽織っていた布を取り、CCMスーツを着た姿が露わになった。

 

その不審な光景に会場は静まり返る。

 

 

「レイ……それは?」

 

「CCMだよ。このバトルのね」

 

『なんとぉ!!レイ選手が身につけたグローブとヘルメットはCCMだそうです!!携帯型ではない、今までに類を見ない特殊な形状だぁ!!

 

これはすでに波乱の展開が予想できます。さて、各選手準備が整ったようです!!それでは、第3回LBX世界大会アルテミス、ファイナルステージ……ready!!』

 

 

MCのコールがかかった。ユウヤとレイは両手を広げ、モニターを出現させる。他の3人は通常通り携帯型CCMだ。

 

 

「アキレス!!」

 

「エンペラー・M2!!」

 

「マスカレードJ!!」

 

「トロイ!!」

 

「…………」

 

 

 

5体のLBXが今回の戦場に舞い降りた。そこは火山に建てられた古代遺跡。5角形からなるそのステージは5体が同時にバトルするとあって広大だ。

 

 

『2号、聞こえているな?』

 

「うん、感度良好」

 

 

レイのヘルメットには、イノベーター研究所からアルテミスの様子を見ている加納の声が聞こえる。

 

 

『灰原ユウヤのサイコスキャニングモードを先に実験する。お前はその後だ』

 

「了解。それまではユウヤ君とも楽しませてもらうよ」

 

『好きにしろ』

 

 

それぞれ向かい合うLBX達、全てが一点物のレアなLBXなこの舞台で遂にMCから、全世界が待ちわびたであろう一言が放たれた。

 

 

『バトル、スタートッ!!』

 

 

「……え?」

 

 

バトルが始まった瞬間、4体のLBXがトロイの方を向いた。

 

 

「食らえ!!」

 

 

ジンの掛け声でエンペラーの持つハンマーの先端部からミサイル群が放たれる。それに続くように、アキレス、ジャッジ、マスカレードJがトロイに向かって駆け出した。

 

 

「えええぇぇえええ!?!?え、なに、キミ達組んだの!?」

 

 

レイが急いで腕を振るうと同時にトロイが動き出し、その場でミサイルに向かってデスバレルを発射した。弾丸は全てのミサイルを正確に捉え爆発させた。その爆煙の中から3機のLBXが飛び出して、武器を構えながらトロイに飛びかかっている。

 

 

『おおっと!!何ということでしょう!!バトル開始から早くも全員の狙いがトロイに集中しています!!ブロック戦で警戒されたのでしょうか!?』

 

 

「まとめて穴だらけになれ!!」

 

 

ミサイルを迎撃したトロイは次に3体に照準を向け発射。ジャッジとアキレスは各々の盾でガードしながら突き進み、マスカレードJは空中で体を捻り、回転させ上手く躱している。

 

 

「レイ!!」

 

「バン君!!」

 

 

一足先に着地したアキレスがトロイに向かって突撃。水月棍をトロイに向け、走りながら突き出す。

 

トロイはすぐさまデスバレルで受け止め鍔ぜり合いになる。始めは突撃の勢いもあってかアキレスが押していたが、徐々にトロイが押し返していく。

 

 

「私達を、忘れていないかい?お嬢さん」

 

「ッ……左右に……」

 

 

アキレスと唾迫り合いになっていたトロイの右にジャッジが、左にマスカレードJが陣取り剣をトロイに向かって構えている。

 

 

「悪いが先に墜ちてもらう!!」

 

 

さらに上空から迫ってきたのは上段にハンマーを構えたエンペラーM2。4体による同時攻撃に、会場の誰もがこれまで圧倒的な実力で勝ち抜いてきたレイの敗北を悟った。しかし……

 

 

「アッハハッ!!あぁ……楽しいッ!!」

 

「アキレス!?」

 

 

槍を弾き返したトロイはすぐさま腕を左右に向け発射。2体も攻撃を中止して離脱。エンペラーM2だけはそのままトロイを叩き潰そうと迫る。

 

 

「はぁあ!!」

 

 

エンペラーM2のハンマーが確実にトロイを捉え破壊……することはなく、その攻撃は地面を凹ませるにとどまった。

 

 

「ッ……トロイはどこに……ッ!!上か!?」

 

「楽しいぃ……楽しい……ああ、最高だッ!!」

 

 

ジャンプして回避していたトロイはエンペラーM2がハンマーを構え直す前にその上に乗り、武器を使えなくした。その時のレイはヘルメットで表情が見えないがとても人様に見せられないような恍惚な顔をしていたそうな。

 

 

「ジン君はここで終わりだね♪」

 

「ッ!!」

 

 

レイの楽しそうな声と共に、ハンマーの上に乗っていたトロイがデスバレルをエンペラーM2の顔に向けた。そのままキュルキュルとデスバレルが回転し始めた時に……

 

 

「ッ……トロイ」

 

 

後方からレイピアが飛んできた事により、行動を中断して一旦下がった。

 

 

「……マスクドJ」

 

 

エンペラーM2を助けたのはマスカレードJ。そのまま高速でエンペラーM2の横を走り抜けてレイピアを回収したマスカレードJは、アキレスの元へと向かっていった。

 

 

「待て、山野バンは僕が……ッ、灰原ユウヤ」

 

 

体勢を立て直したエンペラーM2がマスカレードJを追おうとするが、それに立ち塞がるようにジャッジが現れた。

 

 

『2号、一旦下がれ。CCMスーツのテストが終わった。次はサイコスキャニングモードを実効する』

 

「えぇ?……仕方ないな。了解」

 

 

レイは加納の指示で火山中央部の高台に向かい、他の4機のLBXの戦闘を眺め始めた。

 

 

「あのヘルメットとグローブ……思ってた以上に性能が高い……」

 

 

バンは呟く。会場の雰囲気もバトルの様子で多少は良くなったが、それでも携帯型CCMを使った操作よりも繊細で人間味のあるトロイとジャッジの動きに驚いているようだ。

 

 

「灰原ユウヤ、サイコスキャニングモード」

 

「…………」

 

『サイコスキャニングモード』

 

 

ユウヤの後ろでPCを操作している男の指示で、ユウヤが遂にサイコスキャニングモードを発動させた。ユウヤの髪が白くなり、光の灯っていなかった瞳が赤く光る。

 

 

「ぐぅぁ!?……う……頭が……」

 

 

ジャッジからライトグリーンのオーラが現れたと同時に、レイ自身から嗚咽の声が聞こえてきた。

 

 

『ぱぱぁ……ままぁ……どこにいっちゃったの……』

 

「ッ!?……なに、今の……(いや、どうでもいい。今はバトルに集中しないと)」

 

 

レイの脳裏に浮かんできたのは謎の映像と声。真っ暗な景色の中でボロボロの建物が見えた。しかし彼女は頭を振り、無視して目下のバトルに視線を戻した。

 

 

(ユウヤ君の髪が白くなってる……多分サイコスキャニングモードの負荷で色素が抜けてるんだ。薬物投与で抑えられてるとはいえ、いつまでも持たないでしょあれ)

 

 

遺跡中央部では、サイコスキャニングモードにより性能の上昇したジャッジがアキレスやエンペラーM2、マスカレードJの3機に対してその出力を生かし大立ち回りをしている。しかし、流石に3機を相手にするのはキツそうだ。

 

 

「加納……エンペラーM2の相手はボクがするよ?」

 

『ああ、少し経ったらパワースラッシュを使用させる。それまで持たせろ』

 

 

トロイは高台からステージを駆け抜けているエンペラーM2に照準を合わせてデスバレルを発射。上方からの無慈悲な弾丸の雨がエンペラーM2に降り注ぐが、ジンはさらに素早くCCMを操作し回避していく。

 

 

「アッハハ!!流石ジン君……我らがボスの孫!!」

 

 

ジャッジがアキレスとマスカレードJの相手をしているのを確認したレイはトロイを動かし、エンペラーM2の元に向かって飛び降りた。

 

 

「レイ君……君は、いや、灰原ユウヤと君は一体……」

 

「アッハハ!!それを知るのはまだ早いんじゃないのかい?海道せんせーの秘蔵っ子?」

 

「ッ!!やはり君達は、お爺様が……」

 

「ほらほらァ!!ボーッとしてちゃ破壊しちゃうよ!?」

 

「くっ……強い!!」

 

 

トロイのデスバレルによる乱舞をエンペラーM2はハンマーで受け止める。しかし防戦一方のエンペラーM2はやがて押し負けていき、少しずつ後ろに下がっていく。

 

 

「必殺ファンクション!!」

 

『アタックファンクション 地獄乱舞』

 

「なにっ!?」

 

 

さらに深く詰め寄ったトロイは地獄乱舞を発動。両手にエネルギーを貯めエンペラーM2にさらなる打撃を加えようとしたところで………

 

 

『アタックファンクション パワースラッシュ』

 

「へっ?……がっ……ッ!?アァ!?」

 

「なっ……」

 

 

少し遠い場所で剣にエネルギーを溜めていたジャッジによる、異常な威力のパワースラッシュが飛んできてトロイの左腕を切り裂き、直線上にいた唾迫り合いをしているアキレスとマスカレードJにも飛んで行った。

 

 

『うぅ……痛い……痛いよぉ……』

 

「何なんだよこれ!!こんな記憶は知らない!!ボクは泣いたことなんか無いのにぃ!!」

 

 

左腕で頭を押さえながら叫ぶレイ。今の彼女の視界には、手の甲に涙が落ち巻かれた包帯にシミが出来ている映像が浮かんでいる。それと同時にユウヤの様子も可笑しい。全員がCCMを操作する手を止めおかしくなった2人を見ている。

 

 

『どうした2号?おい、返事をしろ!……灰原ユウヤはどうなっている!?……なんだと、実験中止!!強制停止させろ!!』

 

(なんて言ってんの?……聞こえにくい……頭が割れそうだ)

 

「さっきからうるさいんだよ!!ボクの中に、これ以上入ってくるなァァ!!」

 

 

レイの動きに応じて、トロイもヘッドパーツに腕をつけてもがく。その間にエンペラーM2は一旦後退したのだった。

 

 

「『1人に……しないで……』」

 

「ッ!!はぁ……はぁ……そういうことね」

 

 

ユウヤが発する言葉と、レイの脳内で響く言葉が重なった。

 

 

「レイ……?」

 

『マスカレードJ、ブレイクオーバー!!マスクドJ選手、敗退です!!』

 

(脳波も使ってるせいかな……頭に埋め込まれてるチップを通して、ユウヤ君の記憶でも受信してるんだろうね。すごく……胸が苦しい……痛い……辛い……これ全部、ユウヤ君の経験?)

 

 

いつのまにやら、パワースラッシュの直撃を受けたマスカレードJはブレイクオーバーしていた。

 

 

「あははははは!!!!あーっはははは!!」

 

 

狂ったようなユウヤは笑いながらLBXを操作し始めた。

 

 

「1人にしないで」

 

「勝手な事言わないでよユウヤ君……はぁ……あの頃はいつも2人一緒だったのにさ……ほとんど話してないけど……はぁ……」

 

 

ジャッジが大きな風切り音を発しながら剣を振り回している。いや、暴走していると言ったほうが正しいだろう。

 

 

『被験体を破棄。離脱しろ』

 

『『了解!!』』

 

「なッ!!アイツら……見捨てるつもりか」

 

(そうだね、イノベーターはそういう奴らだ)

 

 

ユウヤの後ろの2人がPCを閉じてステージを去っていった。どうやら現段階までのデータで妥協する事にしたのだろう。

 

 

「はぁ……はぁ……ねぇ、ボクは?」

 

『ぬぅ……本来なら棄権して離脱しろと言うべきだが……ジャッジのCPUに記憶されたデータは惜しい。出来る限り回収しろ』

 

「了解……(ユウヤ君自身についてはなにも言わない……使い捨てだとでも言いたいのかな?)」

 

 

頭を押さえながら加納の指示に返事をしたレイは、なんとか呼吸を整えて空中のディスプレイに両手を戻した。

 

 

「でも……やり方はボクが決めるよ」

 

『好きにしろ。だが、サイコスキャニングモードは出来るだけ使うな。なにが起きるか分からない』

 

「オッケー」

 

 

レイは一息ついて、ユウヤの苦しんでいる様子を見ているバンとジンを見る。

 

 

(ま、いっか。これはボクの役目だ。さっきから頭の中に流れ込んでくるユウヤ君の記憶。ホント……薬物で表に感情が出ないとはいえこんな実験をよく耐えてきたよボク達は。はぁ……クソ食らえだ。今更だけどアイツら絶対に許さない)

 

「ユウヤ君……10年以上続いたボク達のこんな生き方に終止符を打とう。ボクは……キミを解放する。サイコスキャニングモード……起動ッ!!」

 

『サイコスキャニングモード』

 

 

覚悟を決めたレイは数秒前に使うなと言われた禁じ手を使った。ジャッジと同じくライトグリーンに光るオーラを放つトロイは、先ほどまでとは迫力が段違いだ。

 

 

「うっ……あははははは!!!!1人に……ッ!!あぁぁあああああ!!!!」

 

「ッッッッッッ!!!!頭が……割れそうッ!!」

 

 

レイがサイコスキャニングモードを発動すると同時に、ユウヤとレイがさらに苦しみ始めた。

 

 

『…………』

 

『キミは……だぁれ?』

 

 

記憶の混濁が2人の中で起きる。病院で初めて出会ったあの日、研究員達に連れられてきた同じ境遇の2人。

 

 

『…………』

 

『ねぇ……どうしてここにいるの?』

 

 

(そうだったねぇ……あの頃からキミは全く喋らなかったね。別に気にして無かったけどさ。この世の全てに絶望したよう顔をして虚空を見つめてた。それなのにボクは空気も読まずずっと話しかけ続けて……バカみたいだった)

 

 

「キミを救うことが、ボクの贖罪さ。行くよ……トロイッ!!」

 

「あははははは!!」

 

 

同じ光を放つ2体のLBXが今、激突する。





「なにが起きるか分からない。サイコスキャニングモードは出来るだけ使うな」

「了解!!サイコスキャニングモードッ!!」



い つ も の

一回の戦闘シーンは長い?

  • 長い
  • 短い
  • ちょうど良い
  • もっと細かく描写して欲しい
  • トロイ弱体はよ
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