サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
18話
「…………」
「大丈夫か?」
「……………………」
「ダメそうだな……」
ここはエクリプスの病室ともいえる部屋。そこで座っている真崎はやれやれと言った感じの顔で、ベッドで横になっているレイに声を掛けていた。
「ぎもぢわるい……」
「まあ、病み上がりの体で無理したもんなぁ……お疲れさん」
「……あんなに叫ぶんじゃなかったぁ」
レイが加納達へと残したビデオ映像で、やけにテンション高く喋っていたがその場のノリでありあと先のことは考えていなかった。更には、エクリプスの元まで全力ダッシュ。途中真崎におんぶしてもらったが揺れから来る吐き気にひたすら耐えていたのだ。
「言っとくけどな、俺も相当疲れてるからな?お前がアレもコレもと開発室のLBXをもっていくから……」
「うぅ……悪かったけどさぁ……デクー達はこれ以上手に入らないんだからあそこで確保しなきゃいけなかったんだよ……」
レイが映像を録画し終わった後、棚に鎮座しているデクー、インビット、アサシン、デクー改、デクーエース、トロイの予備パーツなどイノベーターでしか手に入らないLBXやそのパーツを箱に詰めて盗んでいた。ちなみにレイのグロッキーの原因はこの大量の荷物にもあった。
「嬢ちゃん大丈夫かい?一応色々買ってきたけど……」
そんな話をしているうちに、ドアが開いて仮面を外した真野が帰ってきた。手にはビニール袋を持っていて、中にはスポーツドリンクや熱冷ましのシートなどが入っている。
「ありがとう姐さん……ちょっと休めば大丈夫」
「出会った頃の生意気なガキンチョが、随分としおらしくなって……よっぽどだったんだね」
「ん……くすぐったい……」
真野は優しい表情でレイの頭を撫でる。レイはくすぐったそうに顔を背けるが、振り払うような動作はしない。嬉しげに笑っている。
「そういや真野さん。こっからどうするんだ?」
「八神さんが言うには、一旦シーカーに合流するらしい。あたしらがしてきた事を考えたら受け入れられるかは怪しいけど、やってみないと分からないからねぇ……」
「なるほど……すいません真野さん。コイツのこと、お願いできますか?」
「何処かいくのかい?」
「ええ、ちょっと……やることがあるので」
「…………分かった。行って来な。ただし、帰ってくるんだよ。この子のためにもね」
「もちろん」
そう言って真崎は部屋を出た。レイや真野は神妙な面持ちの真崎を眺めていたが、レイが口を開いた。
「いつもあんな感じなの?」
「まあ、そうだねぇ……ふらっといなくなる時もあれるけど、任務の遂行率は100%。LBXを使わせれば敵なしだが性格に難あり」
「ボク、真崎さんがLBXを使ってるところ見たことない」
「アイツは支給されたデクーしか使わないから無理ないよ。それに今の任務は嬢ちゃんの護衛さ。必ず遂行するから安心しときな。『鬼神』の名は伊達じゃないってね」
「うん……」
「よし、あたしはエクリプスの点検をしてくるよ。ビニール袋の物は好きに使いな」
「色々ありがとう姐さん」
そう言って真野も部屋を出て行った。1人残されたレイ、幸い熱も出ておらず体の怠さが有るだけだが彼女にとっては珍しいビニール袋。興味本位でゴソゴソと中身を漁っている。
「なにこれ……どうやって使うの?」
レイが手に取ったのは、よくあるペットボトルだった。
◆
「ん………ここは、ああ……逃げたんだった」
次にレイが目覚めたのは、脱走翌日の朝だ。あれから試行錯誤を繰り返しなんとかペットボトルを開けることに成功したレイは、今までの疲労が襲って来たのか死んだようにぐっすりと眠った。
「姐さーん……いない?」
最近ずっと着ていた病院着のままエクリプス機内を歩く。廊下で真野を呼ぶがどうやらいないようだ。何処かの部屋かと思い恐る恐る色んな部屋のドアを開けるが誰もいないらしい。
「……八神さん……もいないじゃん」
次に向かったのは司令室。エクリプスの操縦も担っているまさに核の部分だ。しかし全ての機能が停止しているのか真っ暗。
「…………んお?」
「ッ(誰かいたぁー……)」
突然男の声が聞こえた。そして司令室の照明が付き、誰がいるのかレイの目に映った。
「あ、起きたみたいっすね。えっと……」
「レイで良いよ。確か、姐さんと一緒にいた人。や………ごめん、忘れちゃった」
「矢壁って言うっす。まあ一度も話をした事がないから仕方ないっすよ。同じ女性って事でボスに任せっきりにしてましたし」
操縦席に座っていた…というよりは、黒い帽子を顔にかぶせて寝ていたであろう恰幅の良い男、矢壁は気楽そうな表情と声でレイに話しかけた。
「えっと……矢壁さん、この飛行機って今何処にいるの?」
「あー……少し待ってくださいね…………1番近いところで言うとアキハバラ近くの倉庫っす。いやほんと、なんで都合よくこんな場所あるんすかね」
「それは知らないけど……他の人は?」
「八神さんはボスと一緒に仕事に、細井……ああ、もう1人いた青髪の男っす。ソイツは食料や生活用品の買い出しっす。非常食や寝具はあるんすけど、それ以外はなにも積んでないっすからねぇ……正直、こんな逃亡生活じゃいつ飢え死にするか分からないっすよ」
「あはは……世知辛いね」
困ったように首を振って言う矢壁。内容とは裏腹にそこまで深刻そうな声音ではない。
「それともう1人……」
「え……?」
矢壁は、本当に困ったような顔をして扉を指さした。すると、扉が開き女性が入って来た。
「…………見たことあるような、無いような」
「石森里奈よ。えっとレイちゃん、で良かったかしら?」
「うん。で、誰?」
「元イノベーターの研究者で、今は裏切ってシーカーの一員っす。何故かイノベーター研究所にいて、八神さんが連れて来たっす」
「へぇ?面白い人だね」
「ッ……」
レイが笑って興味深そうに里奈を見た。里奈はジロジロと見られて少し気まずそうだ。
「まあ良いや。あのお人好しが連れて来たんだったら悪い人じゃ無いんだろうし。よろしくね〜里奈さん」
「え、ええ……」
「ああ、それと。はいこれ」
「ん?CCM……誰の?」
「君のっすよ。真崎が君用にって買って来てたっす。そのあとすぐ何処かに行ったっすけどね〜」
矢壁はレイに近づいてシルバーカラー、そしてスライド式のCCMを手渡した。
「サイバーランス社の試作高性能CCMらしいっす。アイツ……変なとこで人脈があるんすよね……ああそれと、なんかデータを入れてあるって言ってたっすね」
「データ……?ッ!!」
レイは早速CCMを開き確認する。通常のCCMとほぼ同じ機能で、アルテミスで使っていた物と操作感も変わらずレイも扱いやすそうだ。そしてメールの欄にあった2つのメール。一つずつ確認すれば、それは以前山野淳一郎からもらった2枚の設計図だった。
「……ありがとう真崎さん。矢壁さん、ボクは部屋に戻るね」
「了解っす。何かあったら電話でも直接でも言ってくださいっす。連絡先は全員分入っているらしいっすから。ちなみになにするんすか?」
「研究所から貰ってきた子達の調整♪」
「ああ、デクーシリーズっすか。あの……デクー改、見てもらっても良いっすか?最近忙しくてろくに整備出来てなかったんすよ」
「うん、良いよ。じゃあまた後で」
レイは矢壁からデクー改を受け取ると、楽しそうに部屋へと戻って行った。
◆
「結構傷んでる……よくがんばったね」
レイはリペアキットや工具を使って、矢壁のデクー改を整備していた。イノベーター研究所で学んだ知識や技術は、確実に彼女の糧となっている。
「…………よし、こんなもんかな」
30分ほどの作業の末、デクー改は新品のように綺麗になった。アーマーフレームの傷はまるで元から無かったかのような光沢を放ち、コアフレーム関節部の摩耗も、レイが盗んできたデクー改の新品と交換して一切の歪みもない。極め付けはこの女、肩のスパイクアーマーに無駄があると言って一部をカット。そして駆動域の拡張をしてより操作性をアップさせた。
「ふふふ、最初は慣れなくてちょっと癖があるけど、これに慣れたらもう戻れなくなっちゃうよきっと」
恍惚な笑みを浮かべて完成したデクー改を見つめるレイ。とても楽しそうだ。
「さて次は……」
スッと表情を戻すと、部屋の棚に飾られたLBX達に目を向けた。
「デクー、デクーエース、デクー改……はさっき使ったからダメだ。エジプト、アヌビス、アサシン……違うね。インビット……あ、後でAI外さなきゃ。マスターコマンドは……改良することないかな。トロイは、今の設備じゃこれ以上は無理」
1機ずつ眺めて考察していくがいまいちピンとこない様子。そして最後の列に移った時、レイから表情が消えた。
「機体情報……ッ!?スペックが高すぎる……神谷がこんなの作ってるなんて。でもこんなのイノベーターじゃ誰も……機体コード表示」
レイはCCMグローブを装着しディスプレイを表示させた。
「セイリュウ」
青と白が基調のアーマーフレームで、装甲が薄いナイトフレームの機体、『セイリュウ』
「ビャッコ」
インビットやハンターのように胴体と脚部のバランスが歪なワイルドフレーム、『ビャッコ』
「スザク」
赤と青がメインカラーだが、何より目立つのはその腰部にある大きな孔雀の羽のようなエネルギーウイング。ストライダーフレーム特有のボディラインによくマッチしていて美しいという印象を受ける『スザク』
「ゲンブ」
4機の中で最も異質といえるフォルムを持つその機体は、腰から下が大きな浮遊ユニットとなっており、岩石に上半身がくっついているような黄色のパンツァーフレーム、『ゲンブ』
「すぐにボク専用に染め上げてあげる」
中国神話における天の四方を司る聖獣達が、とある戦争で勝利をもたらした木馬の名を冠するLBXを操る少女の元に集った。しかし……
「うぁ!?あ、たまが……!!」
突然レイが苦しみ始めた。急いでベッドに戻り頭を抱えてうずくまる。
「なにか、が………暴れ回ってる……!!やめろ……入ってくるなぁ!!」
痛みに悶え苦しみながら、レイは思考する。原因は明らかに頭に搭載されたメタナスGXなのは分かっているがなにが起こっているのか分からない。
「うぐぅ……もう……むり……」
レイは気絶した。おそらく脳が負荷に耐えきれず強制的に意識をシャットダウンさせたのだろう。
(外部からの……ハッキング……それしか……考え、ら……れn……)